いよいよ、海外での挑戦が始まりますね。
徳島ヴォルティスでの雌伏を経て、代表入りしたあなたが、こうして、世界に羽ばたいていく姿を見ると、ヴォルサポとして、感慨もひとしおです。
あれほど、セレッソを愛し、NO.8に誇りを感じていたあなたが、志半ばで海外への挑戦を決めたこと、とても、重たい決断だったのだろうと受け止めています。
それほど、ブラジルW杯が衝撃的だったのですね。
華々しく活躍した2013年に比べて、2014年のあなたは、ずいぶん苦しそうに見えました。
結果が出ないことへのもどかしさもあったでしょう。
迫りくるW杯への焦りもあったでしょう。
でも、一番大きかったのは、背負ったものに対する責任感だったのではありませんか?
マスコミやファンからかけられる期待だけではありません。
あなた自身が、自らの可能性に大きな期待を抱いて、臨んでいましたね。
ところが、彼の地であなたには、満足な出場機会すら与えられず、鬱屈とした不満を残す結果となりました。
あなたの失望は、端から見ても痛々しく思えるほどでした。
あれから、何度も自問したことと思いますが、改めて問います。
『2013年の柿谷に合って、2014年の柿谷になかったもの』
話は遡ります。
かつて、恩師レヴィー・クルピ監督は、あなたと香川選手をこう評しました。
「シンジとヨウイチロウは対照的で、シンジの場合はプロフェッ ショナルとして責任感が強いがゆえに、ミスを恐れてしまうところがある。逆にヨウイチロウは責任感がないがゆえに、時として非常に勇気あるプレーができる。」
この後のことは、あなたもよく覚えているはずです。
“無責任”のレッテルを張られたあなたは、辺境の地・徳島へと追いやられました。
不貞腐れ、そのまま埋もれかねない状況で、美濃部監督や濱田選手を始めとした多くの仲間に支えられ、あなたは変わりました。
汚名を灌ぐべく、懸命に、真摯にプレーし、チームの浮沈を担うようになったあなた。
徳島ヴォルティスで、副主将を任されるほどに成長したあなたは、古巣に戻り、飛躍の時を迎えました。
あなたにとって、汚点として記憶されているであろうクルピ氏の言葉…
この言葉には、見落としがちな別の意味が込められています。
「無責任であるがゆえに勇気のあるプレーができる」
クルピ氏は、あなたの無責任なプレーを、ある面では認めていたのです。
かつてのブラジルサッカーがそうでした。
生真面目なヨーロッパ選手を、あざ笑うかのようにフェイントをかけ、パスを回し、ループシュートを決めていました。
そうした南米スタイルへのテーゼが、プラティニであり、バッジョ。
アンチテーゼが、カテナチオであり、ゲルマン魂でした。
『真剣勝負の最中にあっても損なわれない遊び心』
それがまさに、ブラジルサッカーの強みでもありました。
時を経て、2014ブラジルW杯。
自国開催での優勝という64年越しの悲願を課せられたセレソンから、その強みは消えていました。
唯一、面影を残していたネイマールも悲劇的にピッチを去り、後に残された“責任感に満ち満ちたセレソン”は、見るも無残に散りました。
あなたのプレーを評価したのは、“古き良きブラジルサッカー”を知るクルピ氏。
後に彼は、あなたが、ブラジルサッカーの正統な継承者・ネイマールにも比肩する才能であると言ってくれましたね。
2013年、役割を削ぎ落とされ、フィニッシュだけを任されたあなたは、創造性溢れるプレーで躍動しました。
どんな名ストライカーであっても、シュートの決定率は3割程度。
7割の失敗を許されたあなたは、次から次へと、“勇気あるプレー”を披露しました。
2014年、セレッソの優勝、代表選出、ブラジルW杯での結果…
いつの間にか、多くのものを背負わされたあなたから、“遊び心”が消えました。
セレッソにあっては、若手を鼓舞し、フォルランに気を遣い、
代表にあっては、2列目を引き立て、システムへ恭順、
一挙手一投足に注目が集まり、マスコミフィルターを通して、あなたの言葉がネットに散乱する。
そんな日々が、あなたから余裕を奪ったように思います。
結果は、先に述べたとおりです。
“遊び心”は、あなたにとって一番の武器です。
きっと、あなた自身も覚えがあるはずです。
自分が一番輝いていた時、
あなたが考えていたのは、いつも、相手選手を驚かすことだったのではないですか?
ファンが、思わず歓声を上げるようなプレーを、いつも、狙っていたのではありませんか?
日本サッカーは、“自分たちのサッカー”を標榜して、負けました。
当たり前のことですが、サッカーは、相手のあるスポーツ。
いくら自分たちが、最高のプレーをしても、相手に対策を練られたら、負けてしまいます。
相手を欺き、騙し、惑わすことで、相手の力を封じるのは、自分たちの力を発揮することと同様に重要です。
私は、真面目な日本代表にあって、その役割をこなせるのはあなたしかいないと思っていました。
しかし、今回、それが発揮されることはなかった。
柿谷曜一朗様、
またの名を、大阪のクソガキ様。
どうか、もう一度思い出してください。
あなたの持ち味を。
あなたの魅力を。
僕らが、あなたに求めるのは、岡崎選手のような泥臭さでも、本田選手のような凄みでもないんです。
東アジア杯・韓国戦の相手GKの逆を突いたシュートや、2013年11月・鹿島戦のDFとGKを弄ぶようなゴール、そんなプレーを見たいんです。
唇を尖らして、真面目くさった顔でインタビューに答えるあなたは、“おもろない”んです。
目をキラキラさせながら、舌を出して、いたずらっ子のように笑うあなたが好きなんです。
そして、その“余裕”こそ、あなたを、ネイマールと同じレベルにまで引き上げてくれる“才能”だと思うのです。
日本に欠けている“ラストピース”なんです。
あなたは旅立ちを決めました。
外国嫌いを公言していたあなたが、日本人選手の少ないスイスリーグに行くということは、並々ならぬ決意の表れだと思います。
もちろん、決意や意志は、新天地に欠かせないものですが、そればかりでは、肩が…、もとい、足が凝ります。
あなたがスイスに持ち込んだスーツケースに、“遊び心”がたくさん詰まっていて、あなたの両足に、羽根のような軽さを与えてくれることを願います。
バーゼルに幸多からんことを。
敬具
追伸 本文中の「柿谷」は、いくつかの部分で「山田大記」にも置き換えられます。読み終わったら、カールスルーエに転送してください。
【 ハンドル名 】:ポコ
【 年 代 】:40〜49歳
【 性 別 】:男性
【 地 域 】:四国
【 自己紹介文を150文字程度で記述してください。(省略可) 】:
たびたび失礼します。
メキシコW杯以来のサッカー狂、
ヴォルティスサポのポコです。
推しメンは、山田大記、柿谷曜一朗、アーロン・ラムジー。
よろしければ、
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