うれしい発見があった。
9月10日のガーナ戦。
3点目を決めたFKのシーンだ。
セットされたボールに近づいたのは、遠藤と香川。
いつも、仁王立ちでゴールを見据える本田は居ない。
違和感を感じつつ、画面に見入った。
遠藤が助走を取るため下がると、香川がフラッとボールから離れた。
するすると、中央へ走る香川。
2枚居た壁の左側の選手が、慌てた様子で後ろを振り返る。
GKに判断を仰いだのだろう。
その間も、香川はゆっくりと走り続ける。
堪らず、先ほどの選手が、壁を離れようとした瞬間、遠藤の右足が一閃。
ピンポイントでファーサイドの本田に届き、ゴールが決まった。
ポイントは3つある。
1つは、本田がゴール前にいたこと。
2つ目は、香川の動き。
3つ目は、本田、香川の“名前”だ。
日本のFKが、本田、遠藤の2人から放たれることは、周知の事実だ。
ガーナの選手も、当然知っていたはず。
その本田が、ボールを離れてゴール前にいる。
この時点で、ガーナディフェンスに、若干の戸惑いが生じたのは、想像に難くない。
戸惑いが拭えぬまま、守備についたところに、香川の不可思議な動き。
スカウティングにない動きに、彼らの戸惑いが増す。
壁の選手の動きを見る限り、GKの指示は曖昧。
統率は取れていなかったのだろう。
しかも、それらの“ノイズ”を送り込んだのは、日本が誇る2大スター、本田と香川だ。
奇しくも自国の英雄・ボアテングに代わり、ミランの中心に座りかけた“あの本田”と、マンチェスターユナイテッドでファーガソンの薫陶を受けた“あの香川”が、予測不能な動きをする。
これによって、彼らの混乱は一層深まったはずだ。
アンコントロールになったディフェンスは、身体能力で圧倒的に上回りながら、あっさり競り負け、ゴールを許してしまった。
ただのトリックプレーではない。
本田・香川の高い知名度を効果的に活用し、劣勢に焦る若い代表チームを揺さぶった。
非情に高度な“マリーシア”だ。