* 桜宮高校の出来事「悲痛で残酷な事件だ。被害者であり、桜宮高校バスケ部の主将であった高校生は「一日に三十発殴られた」こともあり、「主将を止めるなら、二軍だ」と脅迫も受けていたという。本当に痛ましい限りだが、この事件の後にOBが「良い先生だったのです」と訴え、さらに在校生や保護者からも「今後も指導して欲しい」という声が聞かれるということは、やはり事件はまだ終わっていないのだな、と思わされる。
サッカー解説者のセルジオ越後氏は「今回の一件は、まだまだ氷山の一角だと思う。今行われている高校サッカーの現場でも、まだ根強く残っているよ」と語る。恐らくその通りなのだろう。では、何故今回の教員のような「暴力教師」が存在するのだろうか? それは、虐待の連鎖から来るものだろう。虐待、暴力を受けながら育った大人は、子供時代に体験した「残酷な出来事」のことを「愛情」と錯覚し、後に子供や生徒に対しても全く同じことをしてしまう場合がある。
これは、現在のほとんどの精神科医が肯定していることである。ひょっとすると、この暴力教師はそこまでの「悪人」ではなく、自分が過去に受けた虐待を自分の中で正当化するために行っていたのかもしれない。また、「技術指導力」も高かったのかもしれない。
だが、小説「悪の教典」に出てくるサイコパス教師(生まれつき愛情がない)よりも、むしろこちらの方がよほど怖いのではないのか。「お前のために殴ったんだ! 殴っている俺の拳にも痛みが・・・」と思いながら暴力を振るう教師は、自己陶酔に陥りながら生徒を殴り、蹴り、精神と肉体を追い詰める。
生徒を死亡にまで追い詰めても、まだ「強いチームのために、体罰は必要」と語る。また、暴力を受けた生徒も「愛を持って、自分を鍛えようとしてくれた」と錯覚し教員に逆らえず、保護者やOBは子供を虐待されながらも試合に勝つことで「洗脳」されてしまう。
もし、教育の際、どうしようもない問題児に対して、少し懲らしめようと思って軽く一発こづくことがあるとしても、「今のは暴力であり、自分の教育力不足のせいで、生徒に暴力を振るってしまった。今度からは気をつけよう」と思う教員の方が、まだ「お前のために殴ったんだ! 殴っている俺の拳にも痛みが・・・」という体罰と虐待に洗脳された教員よりもはるかにマシである。とはいえ、生徒に体罰を加えないと満足に指導できない教員というのは、やはり力不足なのだが。
もっとも、今回亡くなった高校生は模範生とされる優秀な生徒であり、桜宮高の暴力教師は単に「みせしめ」として虐待を加えていたというから、言語道断である。とはいえ、このまま放置しておくと、「次の学校」やあるいは他のグループで必ずまた同じことをやってしまうので、この教員にも「精神的な治療」が必要である。そして、恐らくはこの教員から暴力を受けたにも関わらず擁護しようとするOB達にも。
セルジオ越後氏が語るように、サッカー指導においても到底他人事ではない今回の事件である。「体罰という名の暴力」の中に愛情があると錯覚し生徒を殴り続ける指導者は、恐らくサッカー界にもいるだろう。日本サッカー協会が発行する「指導者ライセンス」では体罰を絶対に禁止しているが、それでも間違いなく中学、高校サッカー界にも「暴力監督」は存在する。(というか、よく遅刻したサッカー選手に罰走を加えているが、体罰問題に取り組む桑田真澄氏によると罰走自体がすでに体罰なのだが)。
是非、保護者、プロ選手、日本サッカー協会の力を持ってサッカー界から一掃して欲しい。そしてもしそういった事例が発覚したのなら、できれば精神科医や心理カウンセラーの元、彼らにも「治療」を行ってあげて欲しい。彼らの大部分が「過去に被害にあった者」であり、そしてただ単にチームやクラブから追放するだけでは「行く先」で必ずまた同じことを繰り返す。
日本の戦後体育教育が先進国とはかけ離れた物であった以上、「暴力と虐待の遺伝子」を持った指導者はバスケ、サッカー界に限らず必ずどこかに存在する。一度に一掃するのは不可能だが、少しずつ除去していくしかない。体罰というのは存在せず、それは暴力である。暴力の中に愛情は存在しない。こういう考えが広まれば、亡くなった生徒も少しは報われるかもしれない」 (END)
[ライター]
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