20周年を迎えたJリーグ。秋春制にはじまり2ステージ制、J3や若手育成など様々な話題で現在議論がなされている。その中でもホットなトピックの一つといえるのが、「ビッグクラブ待望論」だろう。三浦知良選手も「ビッグクラブが必要」と、20周年のJリーグへコメントを求められた際発言している。では、果たしてビッグクラブは必要なのだろうか。また、必要というのならばその理由はどこにあるのだろうか。今回は「日本代表の強化」というJリーグが担ってきた役割から、このことについて論述していこうかと思う。
ザッケローニ監督は5月23日に、ブルガリア戦、そしてワールドカップ最終予選オーストラリア戦に向けた日本代表メンバーを発表した。その直後から多くの不満がザッケローニ監督に寄せられている。そのほとんどが「新しい選手を呼ばず、顔ぶれを固定している」というもの。特に、現在リーグで好調の柿谷選手や山口選手、継続した出場機会を得ている柴崎選手ら若手選手の非召集が不満の種となっている。もちろん、新たに招集された選手はいる。柏レイソル所属の工藤選手、そしてFC東京に所属の東選手。今回、特に注目したいのが工藤選手の招集である。
工藤選手は柏レイソルの下部組織出身。1年目こそ、3試合0得点と昇格1年目の選手としては一般的な成績に終わったが、2年目にはクラブユース選手権得点王の実績も持つ才能が開花する。J2で10のゴールを積み重ねると、その後はJ1へと活躍の舞台に移し、今シーズンはリーグ戦では13試合8ゴール。1試合2得点も既に2度達成と順調な成長っぷりを見せ付けている。何より今シーズン最もクローズアップされているのは、アジアチャンピオンズリーグにおける活躍だろう。昨シーズンは、2試合のみの出場で得点はなし。全くインパクトを残せなかったが、2年連続での出場となった今期は、主力として8試合に全てに出場。ゴール数も6を記録しておりランキング3位。すでに、アジア屈指のストライカーと言っても過言ではない結果を出している。
さて、もちろん日本代表が対戦するのは同じ日本のチームではない。ワールドカップに出場するにはアジアのチームと対峙する必要がある。そして、ワールドカップに出れば各大陸の予選を通過した国々と戦わなければならない。となると海外のチームと対戦しても、持っている能力を発揮できるかどうか。いわば適応力が代表選手にとって重要な能力の一つであるのは、自明の理である。
そして適応力を証明するには、海外チームとの対戦で結果を残すことが一番早い。かつての日本は、代表が多くの試合を組むことで、実証の場を提供し選手の成長を促してきた。しかし、アジア諸国は日進月歩の勢いでレベルアップしてきている。また欧州でプレーする選手の数も増加する一方だ。代表戦を多く組むことは、欧州と日本の移動を考えると、どちらに行くにしても非現実的。アジア予選で実験するというのも難しい。となれば、クラブチームで結果を証明することが一番の近道であろう。欧州のクラブチームで活躍することが最も分かりやすい。
しかし、Jリーグにいても、アジアチャンピオンズリーグで自らの実力を立証することもできる。例として挙げられるのは、2011年、アジアチャンピオンズリーグでそれぞれ4ゴールを上げた清武選手、乾選手。特に清武選手はその年に初召集を受けて、そのまま代表に定着した。工藤選手も、アジアを舞台に結果で能力を証明し、代表召集を勝ち取った。このまま定着する可能性も高いのではないかと思う。
だが、ここで大きな問題がある。近年のJリーグの大陸大会での低迷である。2009年の名古屋グランパスのベスト4以来、日本のクラブチームはアジアの舞台においては苦杯を舐めさせられ続けている。昨年からは、常連であったガンバ大阪、鹿島アントラーズの低迷もあり、出場チームが安定しないという問題も発生しつつある。今年は優勝経験者の浦和が出たことで、多少いつもの顔ぶれに戻った感もあった。だが、浦和にしても2008年以来の出場であり、チームとしての経験不足は明白であった。
2年連続での出場となった柏が順調にノックアウトラウンドに進んだ。それに対し、仙台、浦和、広島の3チームがグループリーグで敗れ去った。もちろん広島や仙台の場合、資金面での制約という壁があったことは確かだろう。だが、アジアでの戦いの経験が決定的に不足していたことも、一つの原因ではないだろうか。
それでは本題に入ろう。Jリーグにビッグクラブは必要かどうか。私は「アジアチャンピオンズリーグに毎年出場し、ノックアウトラウンドに進出する」チームがJリーグには必要だと考える。日本代表の強化という観点からすると、継続的に海外勢との対戦経験を積めるチームがあると、より安定的に国内から代表選手を供給できると考えられるからである。
継続参戦という面を捉えれば、ビッグクラブでなくても良いかもしれない。賞金体制がより旨みのあるものならば、出場することでビッグクラブになる。そういうチームも出現するだろう。しかし、現状は資金面ある程度余裕がなければ、リーグに比べ優先度を下げざるをえないチームが出てきても仕方のない状態である。となれば、やはり資金力豊富なビッグクラブの出番である。遠征費用等、参加のために必要な資金。リーグと並行して戦う選手層を形成するための資金。
もちろん、資金だけでなんとかなるとは思わない。しかし、なにより先立つものである。高いハードルをクリアしうるクラブの出現が望まれる。アジアでの経験を、代表ではなくクラブレベルで積めるようになれば、日本代表更に上のステップを見据えることが出来るはずだ。Jリーグ創設の大義名分の一つが日本代表の強化であるならば。ビッグクラブ誕生、これからのJリーグに課せられた重要なミッションではないだろうか。
(おわり)
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