■ トヨタプレミアカップ2015恒例になりつつあるトヨタプレミアカップが2月13日(土)にブリーラム・ユナイテッドのホームのニュー・アイモバイル・スタジアムで開催された。対戦カードはタイの国内リーグを制したブリーラム・ユナイテッド vs アルビレックス新潟。トヨタプレミアカップは今年で6回目となるが過去の対戦成績はタイが4勝1敗と大きく勝ち越している。Jリーグ勢で勝利したのは2012年大会の名古屋のみ。結果が出ていない。
新潟は「4-1-2-3」。GK守田。DF松原健、早川、大野、コルテース。MF小林裕、小泉慶、レオ・シルバ。FW伊藤優、指宿、山崎亮。柳下監督時代は「4-2-2-2」を採用することが多かったがこの日は「4-1-2-3」を採用。MF小林裕がアンカーの位置に入ってMFレオ・シルバとMF小泉慶が前目に並ぶ形になった。CBは大卒ルーキーのDF早川が抜擢された。京都から加入のFW伊藤優は右ウイングでスタメンとなった。
対するブリーラムUは「5-1-2-2」。GKシワラック。DFアナウィン、シティパット、トゥネス、コラウィット、ティーラトン。MFスチャオ、ジャクラパン、コ・ソルギ。FWカイオ、モリス。リーグ3連覇中のブリーラムUはACLの出場権を獲得しており広島と同じF組となった。左SBのDFティーラトンの高精度の左足は脅威そのもの。C大阪と横浜FCで活躍したFWカイオはオフに水原三星からブリーラムUに移籍した。
■ 2ゴールを奪ったブリーラムUが2対1で逆転勝利試合の前半はどちらかというとアウェイの新潟ペースとなる。右のFW伊藤優、左のFW山崎亮が積極的にドリブルで仕掛けてチャンスを作っていく。特にFW山崎亮のドリブルが効果的。切れ味鋭いドリブルは相手の脅威となった。前半40分にはMF小林裕のクロスから中央でボールを受けたFW指宿が決定機を迎えるが最初のシュートはポスト直撃。跳ね返ったボールを流し込もうとするがキックミスで先制ならず。
0対0で迎えた後半開始から新潟は右SBのDF松原健を下げてMF加藤大を投入。DF小泉慶を右SBにスライドさせる。すると後半10分に左サイドでテンポよくボールを回して相手の穴を作ると最後はFW指宿の丁寧なパスを受けたMFレオ・シルバがコースを突いた見事なシュートを決めて新潟が先制に成功する。しかし後半15分にDFティーラトンのCKからMFコ・ソルギが頭で合わせてブリーラムUが1対1の同点に追いつく。
さらに後半34分にも1点目とほとんど同じでDFティーラトンの左CKから183センチのMFコ・ソルギがニアサイドで頭で決めて2対1と逆転に成功する。結局、2対1でブリーラムUが逆転で勝利。通算成績はタイ側の5勝1敗となった。韓国出身のMFコ・ソルギが2ゴールを挙げてヒーローになった。新潟はほとんど同じ形から2失点。MFコ・ソルギをマークしていたのはMFレオ・シルバだったが非常にルーズだった。
■ 広島と同じグループに入っているブリーラムUタイのビッグクラブでACLの常連になりつつあるブリーラムUはACLではF組となった。Jリーグ勢では広島と同組になった。GLの3節・4節でブリーラムUと広島が対戦するがセットプレーが脅威。キッカーのDFティーラトンの精度の高い左足はこのチームの最大の武器になっている。2013年のタイリーグのMVPのDFティーラトンは2015年のACLではG大阪を大いに苦しめたが広島も彼の左足には手を焼きそうだ。
タイというと「身長の低い選手が多い。」という印象が強い。U-23アジア選手権のGLの2試合目で手倉森JAPANと対戦したU-23タイ代表も高さに欠けるチームだったが「ブリーラムUはむしろ高さのあるチーム」と言える。お馴染みのFWカイオは187センチで、現役のベネズエラ代表のDFトゥネスも187センチ。この試合には出場しなかったが国内リーグの得点王のFWジオゴも182センチ。サイズに恵まれている。
一方でMFドウグラスが抜けた広島は「セットプレーの守備」に課題を抱えている。セットプレーを多く与える展開になると失点する確率が高くなる。広島は初戦の山東魯能戦を落としたので「ブリーラムUとの2試合は最低でも1勝1分け。できれば2連勝」が求められるが4節のアウェイ戦は難しい試合になるだろう。C大阪と横浜FCで活躍したFWカイオの精力的な動きも目立った。彼のダイナミックな動きも危険。
■ 吉田達磨監督を招聘したアルビレックス新潟前柏の吉田達磨監督を招聘した新潟。プレッシングで旋風を巻き起こした柳下監督時代のサッカーから大きく変化することは確実。「新監督になってどういう違いが生まれるのか?」が注目されたがシステムは「4-1-2-3」を採用。『就任当初は「4-2-2-2」を試していたが今は「4-1-2-3」を試している。』ということなので模索段階と言えるがボール奪取力の高いMFレオ・シルバとMF小泉慶がIHに並ぶのは面白い。
両者ともボールを奪い取る能力が高いので後ろのことをあまり気にせずにボールにチャレンジできるようになると大きなプラスの効果が生まれる可能性が高い。(柏時代と同様で)攻撃はパスワークが中心になるかと思われたが、どちらかというとドリブルが主体になった。FW伊藤優とFW山崎亮の2人は単独で仕掛けることができるので1対1に近い状態でボールを受けることができると高確率で局面を打開することができる。
「イメージしていたよりは攻撃のときにドリブルを多用する。」というのが新体制となった新潟の簡単な印象。アンカーのMF小林裕がボールを触るシーンは比較的多かったがMFレオ・シルバやMF小泉慶が絡む場面はそこまで多くなかった。「IHの2人をボール回しの中心にしたかったのに出来なかったのか」、「このあたりは想定の範囲内。ある程度は意図どおりの攻撃が出来ていたのか」を判断するのは現段階では難しい。
■ 170センチながらCBで起用されているDF早川史哉吉田監督の特徴の1つである「4-1-2-3」は守備のときは効果的。さらに熟成されていくと面白いことになるかもしれない。パスにこだわりすぎることなくMFレオ・シルバやMF小泉慶が高い位置で奪ったボールを速攻につなげることができるとリズムに乗ることが出来るはず。キーマンはFW指宿だろう。吉田監督のサッカーを一番理解していると思うがこの日のように決定機に決められないようだと苦しくなる。
オフの入れ替えは最小限にとどまったのでスタメン11人のうち新加入選手は2人だけ。軸となる選手は変わらないと思われるが注目したいのは筑波大出身で大卒ルーキーのDF早川。吉武監督の下、18年ぶりにベスト8に進んだときのU-17日本代表で活躍した選手である。DF植田直、DF岩波、FW鈴木武蔵、MF南野、DF室屋、MF石毛などがチームメイトだったがU-17W杯の本大会は5試合で3ゴールと活躍した。
新潟のユースからそのままトップチームに昇格せずに筑波大を進路先に選んだことはかなり大きな話題になったが大学生活を経て新潟に戻ってきた。「94ジャパン」では攻撃の中心の1人だったのでアタッカーのイメージが強いがDF登録になっている。プロの世界では右SBが主戦場になりそうだったがこの日はCBの一角でプレーした。登録上は170センチ/70キロ。CBとしては極めて小さい選手である。
昨シーズンは愛媛FCのDF江口がCBにコンバートされて3バックの中央でプレーした。DF江口は170センチ/64キロ。同じ170センチとなるが同じCBでも「3バックの中央」と「4バックを採用するチームのCBの1人」では役割は大きく異なる。3バックの中央であれば170センチのサイズでも何とかなるケースはあるがCBコンビの一角が170センチとなるといろいろな面で不都合が生じる。かなり大胆な起用法と言える。
相方のDF大野も180センチとCBとしては小さめ。中央の高さが不足するのは難点と言えるがDF早川が最終ラインの真ん中にいるといいパスがどんどん出てくる。球際にも強いので地上戦においては問題なかった。新潟は190センチ台のGK守田やFW指宿を筆頭にチーム全体で見ると高さがあるチームなのでセットプレーの守備のときも対応できる可能性はある。いずれにしても興味深いチャレンジと言えるのは確かである。
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