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過去についての知識は馬鹿や間抜けや敵が書いたものに由来している

今、『薔薇の名前』や『フーコの振り子』などの小説でも知られるイタリアの中世学者・記号学者であるウンベルト・エーコと、フランスの劇作家・脚本家であるジャン=クロード・カリエールという、いずれも勝るとも劣らぬ大読書家にして蔵書家の2人による対談集『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』を読んでいます。 いや、正確には「今読んでいる」というより、思い出したときに手に取ってはすこしずつ読み進めているという感じでしょうか。 その意味では、本って、自分が好きな時にゆっくりしたペースで読めばいいのだというのをあらためて思い出させてくれる本です。 さて、その本のなかでウンベルト・エーコがこんなことを言っています。 「じっさい、過去を再構築するとき、ただ1つの情報源に依拠するのは望ましくありません」と。 さらにエーコは「時間がたつと、ある種の文書はどんな解釈も撥ね返すようになります」と続けます。 そして、そのことを説明するのに、こんな例を出します。 20年前、NASAかどこかの米国政府機関が、核廃棄物を埋める場所について具体的に話し合いました。核廃棄物の放射能は1万年—とにかく天文学的な数字です—持続することが知られています。問題になったのは、土地がどこかに見つかったとしても、そこへの侵入を防ぐために、どのような標識でまわりを取り囲めばいいのか、わからないということでした。 2、3000年たったら、読み解く鍵の失われた言語というのが出てくるのではないでしょうか。5000年後…

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