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【岡山×東京V】母親がベネズエラ人のMF北脇健慈がチームを救う。 | | |　

■　J2の第6節

J2の第6節。3勝2分けで勝ち点「11」。開幕から負けなしで3位と好調のファジアーノ岡山がホームのシティライトスタジアムで東京ヴェルディと対戦した。東京Vは2勝3敗で勝ち点「6」。11位と出遅れた。岡山は開幕6試合のうち4つがホーム戦。日程的に恵まれたところもあるが申し分ないスタートを切った。首位を走る熊本との差は「2」。1位の熊本と2位のC大阪の結果次第で首位に浮上できる可能性がある。

ホームの岡山は「3-4-2-1」。GK中林。DF篠原、岩政、竹田忠。MF島田譲、矢島慎、加地、片山瑛、豊川、伊藤大。FW赤嶺。ここまでの5試合で3ゴールを挙げているエースのMF押谷は怪我のためベンチ外。ポルトガル遠征から戻ってきたばかりのMF豊川が開幕の山口戦(A)以来のスタメンとなった。ボランチはMF渡邊一が怪我で欠場。MF島田譲が起用された。FW赤嶺にはまだ初ゴールが生まれていない。

対するアウェイの東京Vは「4-4-2」。GK柴崎貴。DF安西、田村直、井林、大木。MF中後、高木純、高木善、南。FWアラン・ピニェイロ、高木大。攻守の要となるMF中後がようやく戦列に復帰していきなりスタメン出場。中盤はダイヤモンド型でMF中後はアンカーの位置に入った。右サイドはMF高木純、左サイドはMF高木善、トップ下はMF南。左SBはDF安在ではなくて大卒2年目のDF大木が起用された。

■　試合は1対1のドロー

前半はアウェイの東京Vペースとなる。ようやく司令塔のMF中後が戦列に復帰してきた東京Vはダイヤモンド型の中盤が機能。トップ下のMF南、左サイドのMF高木善、2トップの一角のFW高木大が頻繁にボールに触って主導権を握る。これまでは「4-2-2-2」や「4-2-3-1」を採用していたので相手の岡山が面食らったところもあったと思うが「機能させるのは難しい。」とされるダイヤモンド型の中盤がうまく機能した。

0対0で迎えた後半12分に岡山は大卒ルーキーのMF藤本佳を投入。この交代で流れを引き寄せた岡山は後半30分にMF伊藤大のFKからゴール前に飛び込んできた左WBのMF片山瑛が豪快に頭で合わせてホームの岡山が先制に成功する。MF片山瑛は今シーズン初ゴールとなった。岡山はJリーグ初出場となる22歳のMF藤本佳がいいプレーを連発して1対0とリードした状態で終盤を迎えることに成功した。

このまま1対0で岡山が逃げ切るかと思われた後半44分に東京Vは途中出場のMF北脇がやや距離のある所から左足で目の覚めるようなミドルシュートを突き刺して1対1の同点に追いついた。FW北脇はJ2通算6試合目の出場で2ゴール目となった。結局、試合は1対1のドロー。岡山は3節の京都戦(H)に続いてまたしても目前まで迫っていた勝利を逃した。岡山は3勝3分け、東京Vは2勝3敗1分けとなった。

■　もったいないドローとなった岡山

岡山は開幕から6試合負けなし。いいスタートを切ったが、3節の京都戦(H)と6節の東京V戦(H)はいずれも後半の終了間際に追いつかれてドロー。内容や試合展開を考えると「5勝1分け」でもおかしくなかったが、現実は「3勝3分け」。もちろん、6試合で勝ち点「12」というのは相当にいいペースであるが、流れをつかんでいた中で追いつかれてドローに終わったこの2試合は非常にもったいない試合だったと言える。

リードを奪った後、選手やシステムを交代して守備を固めて逃げ切るパターンを持っているチームではない。さらにはビハインドの展開になると相手もリスク覚悟で攻め込んでくるのでアクシデント的に同点ゴールを許すことはある。これほどいいシュートを打たれると防ぎようがないのは確かであるが、終了間際に追いつかれるのがパターンになると余計にそういう展開になったときにプレッシャーがかかってくる。

嫌な形でのドローと言えるが、収穫はプロ初出場を飾った大卒ルーキーのMF藤本佳。MF押谷が怪我で欠場してMF豊川がスタメンで起用されたこともあってルーキーに出場機会が巡ってきたが、アグレッシブかつトリッキーなプレーでチャンスに絡んだ。サイドの裏を取ったときのスピードも相当なレベルである。「泥臭い仕事もこなせるタイプ」と評価されており、途中出場でも存在感を発揮できそうな選手である。

左WBで起用されているMF片山瑛がコンスタントにゴールに絡めているのもポジティブな要素と言える。先の北九州戦(H)は欠場したが、5試合で1ゴール4アシスト。左サイドのスペシャリストのDF田所が横浜FCに移籍したので「左WBを誰にするのか？」が大きな注目ポイントだったが本来はアタッカーの選手であるMF片山瑛を左WBに回したことで攻撃の厚みは格段に増した。ここまでは大きな武器になっている。

■　チームを救ったのは途中出場したMF北脇健慈

一方の東京Vは最後の最後に追いついてドロー。内容的にはどちらかというと東京Vの方が良かったので0対1で負けていると精神的なショックは大きかったのでMF北脇の一撃がチームを救った。パワーのある左利きの選手であれば「シュートも狙える。」という位置だったが、MF北脇は右足が得意な選手である。逆足であれだけのシュートを打たれたら堅守を誇る岡山の守備陣と言えどもお手上げである。

MF北脇は父親が日本人、母親がベネズエラ人。兄はMF北脇里規。兄は1985年生まれなので6学年違いとなる。兄は東京Vユースでプレーしていた頃から注目と期待を集めていた。7年ほどパラグアイでプレーして、2012年に磐田に入団。最後はアスルクラロ沼津でプレーした。兄も身体能力が高くて将来性を高く評価されていたが、弟も左足での強シュートを見るだけで相当なポテンシャルを持っていることが分かる。

開幕からチーム自体があまりうまく機能していなかったこともあって今シーズンは期待されていたリオ世代の若手のパフォーマンスが軒並み低調。アタッカーのポジションで「スタメンの座が安泰」と言える選手は1人もいない。チームを救うゴールを決めたMF北脇は大きなアピールに成功した。「どういうメカニズムなのか？」について詳しくは分からないが、ハーフの選手の持つパワーやスピードや意外性は魅力がある。

この日はダイヤモンド型の中盤を採用したが非常に良かった。明らかに岡山の守備陣は対応に苦慮していた。このシステムは先のアフガニスタン戦(H)で日本代表が採用したことでにわかに注目を集めるシステムになっているが、味方との距離感が近くなるので攻撃においては威力を発揮しやすい。両サイドの選手の立ち位置が重要となるが、MF高木純も、MF高木善も、いい位置取りをして攻守両面で貢献した。