■ スタートダッシュに失敗したヴァンフォーレ甲府2014年にヴァンフォーレ甲府はクラブ史上初となる「2年連続でのJ1残留」を果たしたが、城福監督は昨シーズン限りで勇退。レギュラーの右CBのDF青山直と左CBのDF佐々木翔が揃って退団して、攻撃の軸だったFWクリスティアーノも柏に移籍するなど欠かせないレギュラー格の選手が数名退団した。その一方で、「彼らの後釜として確実に戦力として計算できる。」というバリバリの新戦力の補強はできなかった。
開幕前から「降格候補の1つ」と言われていたが、3月・4月は苦しんだ。天皇杯を制した経験がある横浜FMの樋口監督を招へいしたが、3節のG大阪戦(H)から6連敗。8節を終えた時点で1勝7敗。開幕8試合でわずか2ゴールと極度の攻撃力不足に苦しんだ。期待された新戦力のFWアドリアーノは本来のプレーができなくて、新外国人のMFウィリアム・エンリケとMFブルーノ・ジバウは戦力にならなかった。
非常に苦しいスタートを切ったが、9節はアウェイで鹿島に1対0で勝利。連敗を「6」で止めると、佐久間監督の初陣となった12節の山形戦(H)は2対0の完勝で、13節の仙台戦(A)は後半20分にチームに戻って来たFWバレーが決勝ゴールを挙げて1対0で勝利。通算では4勝9敗となって、ひとまず最下位を脱出した。一時は残留争いからも取り残されそうな雰囲気もあったので、見事なリカバーを見せたと言える。
■ 監督交代前からあった浮上の兆し11節の湘南戦(H)で0対1と敗れた後の5月13日(水)に樋口監督との契約を解除。GMだった佐久間監督が就任してから2連勝。単純に結果だけを見て「監督交代が吉と出た。」となるのは致し方ないが、実際には樋口監督がチームを指揮していた5月2日(土)の9節の鹿島戦(A)あたりから内容が劇的に改善されていたので、監督交代というショック療法だけが浮上のきっかけとは言えない。(※ 言い換えると、劇薬を投与したが故に短期的に結果が出たわけではないので、今後、監督交代による副作用が出る可能性は低い。)
城福監督が指揮していた頃は「堅守」がウリだった。2014年は34試合で31失点。34試合で29失点の横浜FMに次ぐリーグ2位タイとなる失点の少なさだったが、ある程度は攻撃が出来ないと守備陣が辛抱し続けるのは難しくなる。当然のことながら、DF青山直とDF佐々木翔という2人のレギュラーCBが抜けた影響は大きかったが、「攻撃力低下が失点数の増加につながった。」という見方が正しいのではないか。
3月・4月の時期はほとんど点が取れないどころか、チャンスシーンすらほとんど作れなかった。「枠内シュートすらほとんど打てない。」という試合が多かったが、大卒ルーキーのMF伊東純が躍動して1対0で勝利した9節の鹿島戦(A)から明らかに攻撃の迫力が増してきて、結果的にはFW大槻にゴールを許してホームで0対1で敗れたが、11節の湘南戦(H)などむしろ甲府が終始ペースを握っていた。
5月に入ってチャンスシーンを多く作れるようになったことはキャンプ期間中から樋口監督が中心となって地道にトレーニングを重ねてきたことの成果であり、さらには3月・4月はイマイチ調子が上がらなかった左WBのMF阿部翔とシャドーストライカーのMF阿部拓という2人のキーマンの調子が上がって来たことも大いに関係しているだろう。(※ 実際にここ数試合の2人の活躍は目覚ましいものがある。)
さらには大卒2年目となるMF稲垣のプレーの質が上がってきている点も攻撃に厚みが出て来た要因の1つと言える。本職はボランチだというが、ここ最近はシャドーの位置で起用されるケースが増えている。運動量の多さはJ1の中でも屈指のレベルで、ピッチ上の至るところに顔を出してくる。現状はフィニッシュの精度を欠く場面が目立つが、彼が点に絡めるようになるとさらに攻撃の迫力が出てくる。
■ これ以上にいい補強は考えられない。ということで、「監督交代だけが浮上の理由ではない。」、「監督交代を実施する前から浮上の兆しは感じられた。」という2点を強く主張したいが、まだ16位と降格圏に位置する。本当の勝負はここからだと言えるが、FWバレーの効果というのも当然のことながら大きい。5月3日(日)に「獲得内定」のリリースが流れているが、クラブを取り巻く重苦しい雰囲気を変える大きなニュースだったことは間違いない。
5節の神戸戦(A)の終了間際に今シーズン初ゴールを決めてからのFWアドリアーノの状態はかなり良くなっていたとは言っても、「頼りになるストライカー」を必要としていたのは明らかだった。『今夏に獲得する新外国人ストライカーが今シーズンの甲府の命運を左右する。』と思っていたが、幸運にも(移籍市場がオープンになる前の)11節の湘南戦(H)からFWバレーはJ1のリーグ戦に出場できることになった。
期待のFWバレーは早くも結果を出している。復帰戦となる11節の湘南戦(H)で途中出場を果たすと、初スタメンとなった12節の山形戦(H)はPKで貴重な2点目のゴールを記録。2試合連続スタメンとなった13節の仙台戦(A)は先のとおり、後半20分に値千金の決勝ゴールを記録した。心配されたコンディションは試合を重ねるごとに良くなっており、ここからさらに状態が良くなっていくと考えられる。
「FWバレーの獲得」というのは現状の甲府にとっては『考えられる中で最高の補強だった。』と言える。独力で決定機を作り出す飛び抜けた能力を持っている選手であることが理由の1つで、190センチと高さがあるので今シーズンの甲府の最大の弱点と言えた「セットプレーのときの高さ不足」も彼が入ることで幾分かは解消される。そして、相手に脅威を与える選手を獲得できたというのも意味のあることだった。
さらに言うと、2005年12月に甲府がJ1初昇格を決めたときの大ヒーローなので、古くからの甲府サポーターのテンションが高まる補強だったことも好材料で、「これ以上にいい補強は考えられない。」というほどの120点満点の補強だったと言える。極度の得点力不足で苦しんでいた甲府が急浮上したことで残留争いの行方はさらに混沌としてきた。残留争いに大きな影響をもたらす補強だったと言える。
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