■ J2の第33節J2の第33節。11勝12敗9分けで勝ち点「42」のコンサドーレ札幌(12位)と、13勝6敗13分けで勝ち点「52」のファジアーノ岡山(4位)が札幌ドームで対戦した。6位とプレーオフ圏内に位置する大分が勝ち点「49」を稼いでいるので、12位の札幌との差は「7」。バルバリッチ監督が就任した札幌は勝たないといけない試合が続いていく。
ホームの札幌は「3-4-2-1」。GK李昊乗。DFパウロン、河合、奈良。MF宮澤裕、上里、石井謙、上原慎、前田俊、中原彰。FW都倉。前節の群馬戦(A)で0対3で大敗したことを受けてシステム変更を実施。「3-4-2-1」という新システムを採用した。MF小野、FW内村などは欠場で、MF荒野はアジア大会に参加しているためチームを離れている。
対するアウェーの岡山は「3-4-2-1」。GK中林。DF久木田、後藤圭、田所。MF千明、島田譲、田中奏、片山瑛、押谷、清水慎。FW久保裕。攻守の要となるボランチのMF上田康は欠場で、2シャドーの一角のMF石原崇も欠場となったため、MF押谷とMF清水慎とFW久保裕というストライカー色の強い選手を前に3人並べる形になった。
■ 3対1で札幌が快勝試合は開始4分にホームの札幌が先制に成功する。MF前田俊のスルーパスに対応した岡山の3バックの中央のDF後藤圭がキーパーのGK中林にバックパスをするが、このパスがちょっとずれてしまう。ルーズになったボールに反応した札幌の1トップのFW都倉が倒れこみながらシュートを決めて札幌が幸先よく先制に成功する。
なかなか攻撃の形を作れなかった岡山だったが、前半25分にFKを獲得すると、FW清水慎がうまくボールを落としてDF後藤圭がミドルシュートを放つ。これがゴール前にいた札幌の選手に当たってゴールイン。ラッキーな形で岡山が同点に追いつくが、直後の前半30分にMF前田俊のミドルシュートが決まって札幌がすぐさま2対1と勝ち越しに成功する。
2対1の札幌リードで迎えた後半17分に岡山はドリブラーのMF三村を投入。「3-4-2-1」から「4-2-3-1」のような形に変更すると、右サイドハーフで起用されたMF三村のところからチャンスシーンを作るようになる。しかし、後半40分に札幌がカウンターを仕掛けると、最後は途中出場のMF工藤光のクロスからFW都倉が決めて3対1と突き放す。
結局、1トップで起用されたFW都倉が2ゴールを挙げる大活躍を見せたホームの札幌が3対1で勝利してプレーオフ争いに何とか踏みとどまった。32節を終えた時点で6位だった大分はアウェーで横浜FCと引き分けたため、大分との差は「5」となった。一方の岡山はここ7試合は2勝3敗2分けと勝ち点が伸びなくなっている。
■ バルバリッチ監督は初勝利を飾る。思うような結果が出ていない札幌はシーズン途中に財前監督を解任して、2009年から2012年まで愛媛FCの監督を務めたバルバリッチ監督がチームを指揮するようになった。この日がバルバリッチ監督になってから3試合目のリーグ戦で、ホームの札幌ドームでは初采配となったが、3試合目にして初勝利を飾った。これで1勝1敗1分けとなった。
前節の群馬戦(A)の大敗を受けてシステムを3バックに変更してきた。試合の途中から3バックを採用することは珍しくなかったが、試合の最初から3バックを採用するのはJ1時代の2012年シーズン以来ということで久々だったが、3バックの中央に入ったDF河合が守備の局面では効いていた。不慣れなシステムだったが、まずまず機能したと言える。
「3-4-2-1」なので、前の3人が攻撃においては中心になってくるが、3人ともゴールに絡む活躍を見せた。1トップのFW都倉は先制点と3点目を記録して、MF前田俊は豪快なミドルシュートで2点目のゴールをマークして、若いMF中原彰は1点目に絡んで、2点目のMF前田俊のゴールもお膳立てした。3人の関係性は非常に良かったと言える。
札幌U-18出身でプロ2年目のMF中原彰はここに来て5試合連続スタメンと出場機会が激増している。MF荒野がアジア大会に参加していて、MF小野が怪我で離脱しているという事情も絡んでいるが、新体制になってチーム内での立場が大きく変わった選手である。シーズン途中に監督が代わった場合、こういう選手が出てくるケースというのは珍しくない。
育成力に定評のある札幌はリオ世代が充実しており、何人もの選手がトップチームに昇格している。テクニックやスピードといった部分ではMF中原彰よりも優れた選手は何人かいるが、下部組織でプレーしていたときから運動量が多くて、タフに戦える選手だった。実践的な選手と言えるが、トップチームでも泥臭いプレーでチームに貢献できている。
■ 人気者のMF前田俊介2点目のMF前田俊のゴールは驚きだった。アンラッキーな形から同点弾を喫したが、すぐに取り返して2対1とリードを奪うことができた。ここ最近の流れはいいとは言えなくて、さらにはホームで勝たなければならない試合である。1対1のままで時計が進むと非常に嫌な雰囲気になってきたと思うが、失点からわずか5分後に勝ち越すことができた。
MF前田俊はレフティーで、しかも、技巧派のアタッカーである。シュートテクニックが高くて、左足でカーブをかけたシュートであったり、ループシュートであったり、キーパーが対応しにくいテクニカルなシュートでネットを揺らすシーンが多い。得意の左足でも弾丸シュートを披露する機会は多くないので、右足の弾丸ミドルは意外性たっぷりだった。
札幌は1.5列目や2列目は充実している。この日は欠場したが、FW内村がいて、MF砂川がいて、MF小野がいて、MF荒野がいて、FW榊やMF菊岡なども控えている。1.5列目と2列目に限定すると層の厚さはJ2ではトップレベルなので、MF前田俊と言えども常時スタメンとはいかないが、彼も監督交代によって出場機会が増えてきた。
数年前と比べるとかなり改善されてきたが、それでも守備力や運動量という点ではMF前田俊は他の選手と比べると見劣りする。使い勝手のいい選手とは言えないが、意外性溢れるプレーが魅力で、ボールキープも高い。「何かをやってくれそうな雰囲気」を持った選手と言えるが、こういう選手というのはどんな分野でも人気者になる。
■ 下り坂に入っているファジアーノ対する岡山は致命的なミスが起こってしまった。1失点目と2失点目は自分たちのパスミスがきっかけになったが、「相手をゼロに抑えてどこかのタイミングで先制ゴールを奪って勝利する。」というのが岡山の必勝パターンである。計算外のミスが生じた。ミスから先に失点するようだとゲームプランは大きく狂ってしまう。
この日はMF上田康とMF石原崇が不在だったが、影響は大きかった。積極的な縦パスで攻撃のスイッチを入れることがMF上田康と、バイタルエリアでボールを受けることができるMF石原崇がいると相手にしっかりと守られたときも突破口を見つけ出すことができるが、この日はなかなか有効な縦パスが入ってこなくて、変化に飛んだ攻撃はできなかった。
先のとおり、FW久保裕、MF清水慎、MF押谷とストライカータイプの選手を併用したが、これはあまり成功しなかった。岡山はその他にもFW荒田がいて、FWウーゴがいて、MF片山瑛がいる。ストライカー色の強い選手を前線に並べるケースはこれまでにも何度かあったが、こういう並びのときは攻撃が行き詰ることが多くて、有効なやり方とは言えない。
ただ、後半17分にMF三村を投入してから流れが良くなった。札幌の高さ対策の意味合いがあったのか、左WBはMF片山瑛をスタメンで起用して、MF三村はベンチスタートになったが、途中出場のMF三村が積極的にボールを受けて仕掛けたことで流れは大きく変わった。しかしながら、いい流れになった時間帯に訪れたチャンスを生かすことはできなかった。
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