■ レンタル移籍が決定!!!J2で話題になっているのは、コンサドーレ札幌がベトナム代表のFWレ・コン・ビンを獲得したというニュースである。7月22日にレンタルでの加入が正式に決まって、2014年1月1日までの5ヶ月間の契約になることが発表されている。1985年12月生まれで27歳というのは、脂の乗り切った時期であり、「国民的なヒーローがJリーグにチャレンジする。」ということで、ベトナム国内での注目度は非常に高いと報道されている。
FWレ・コン・ビンはベトナム代表では55試合に出場して31ゴールを挙げていて、2004年・2006年・2007年と3度も国内最優秀選手に選ばれている。ベトナム代表というと2007年のアジアカップを4カ国共同で開催しており、オシムジャパンと同じグループに入ったが、このときは、日本が4対1で勝利した。ただ、非常にタフな試合で、苦しい試合だった。近年、急速に力を付けているのは、間違いないところである。
その原動力の1人と言えるFWレ・コン・ビンは、日本のサッカーファンにも名前の知られた選手で、今回、大きな挑戦をすることになったが、20年前にヴェルディ川崎からセリエAのジェノアに移籍したFW三浦知を送り出したときの日本のサッカーファンの心境によく似ているのではないかと思う。Jリーグで成功した東南アジアの選手はいないので、大きな期待を背負ってJリーグでプレーすることになるだろう。
■ 国民的なスーパースター気になるのは、本当に活躍できるのかという点である。全然、活躍できないとなると、ベトナムの人もがっかりすると思うが、その反対で、試合に出場して、コンスタントにゴールを決めるようなことがあると、ベトナムでJリーグならびにコンサドーレ札幌がフィーバーするのは確実である。そうなった場合のベトナムや東南アジアのサッカー界に与えるプラスの効果というのは、計り知れないものがある。
ただ、その分、プレッシャーは大きい。どの分野でも同じだと思うが、先駆者は大変である。Jリーグを例に出すと、初年度の1993年に韓国人のFW盧廷潤が広島に加入して、中国人のDF賈秀全がG大阪に加入したが、FW盧廷潤は成功したが、DF賈秀全は全く活躍できなくて、その後、韓国人Jリーガーは数え切れないほど誕生したが、中国人Jリーガーは、DF賈秀全以外では、2005年に札幌でプレーしたFW徐暁飛しかいない。
言うまでもなく、日本と中国は経済的な結びつきが強くて、中国代表も2002年の日韓W杯に出場するなど、アジアの中では、それなりの力を持った国と言えるが、DF賈秀全が道を閉ざす形となって、「日中間の人材交流はほとんどない。」というのが現状である。もちろん、他にも理由はあると思うが、1人目が活躍できるか、失敗に終わるか、その後、大きな差となって表れることを2人のケースが如実に示している。
■ 先駆者のプレッシャーでは、FWレ・コン・ビンは札幌で活躍できるのか?これに関しては、「活躍できる。」と断言することは出来ない。もちろん、アタッカーとしての才能はあると思う。J2でこれだけ国際経験を持っている選手はほとんどおらず、技術やスピードなどは、J2の中では上位レベルだと思うが、母国でスーパースターの扱いを受けている選手はプライドが高くて、異国に順応できないケースも珍しくない。
日本人が欧州でプレーする場合も同じことが言えるが、実力的に問題がないケースでも、環境に順応できなくて苦労することは十分にありえる。そして、札幌のアタッカー陣というのは、それなりに駒が揃っていて、競争も大変である。FW内村、FW前田俊、MF荒野、MF三上、MF砂川といった選手たちとの競争に打ち勝って、プレーする機会を得るのは、そんなに簡単な話ではない。
とはいっても、日本のサッカーファンにとっても、ベトナムのサッカーファンにとっても、夢のある話なので、何とか、Jリーグで成功をおさめて欲しいと思う。Jリーグが欧州の4大リーグを上回るのは難しいが、アジアの一員であるということをプラスに変えて、アジア各国の代表のエース級が集まって切磋琢磨するアジアのトップリーグになることは、Jリーグの目指すところであり、彼の加入は、きっかけの1つになり得る。
そして、東南アジアの選手にとっては、もし、FWレ・コン・ビンが成功するとなると、Jリーグでプレーするチャンスが広がってくる。現実的には、東南アジアの選手が、いきなりイングランドやドイツやイタリアといったトップリーグで活躍するのは、難しいと思うが、少しレベルの落ちるJリーグであれば、活躍できる可能性は高くなる。新たなルートを切り開くためにも、ベトナムの英雄の活躍に期待したいところである。
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