■ J1リーグ・第2節 その507年のJ1を制してJ1復帰を果たしたコンサドーレ札幌のホーム開幕戦。相手は開幕戦で浦和レッズを1対0で下して波に乗る横浜Fマリノス(
試合レポート [横浜FM vs 浦和])。
札幌ドームでのJ1の試合は、実に6年ぶり。その試合は、サンフレッチェ広島がチーム史上初のJ2降格が決まったゲームであり、現在はDFリーダーとしてプレーする当時FWの曽田が途中出場ながら、プロ入り初のハットトリックをマークしたJリーグ史上に残る壮絶なゲームだった。その当時の札幌の2トップは新居辰基(現ジェフ千葉)と相川(現FC岐阜)。トップ下には小倉隆史が起用されていた。
札幌は開幕戦で鹿島アントラーズに0対4で完敗。しかしながら、落ち込んでいる暇はなく、ホームで自分たちの戦いを見せなければならない。(
試合レポート [鹿島 vs 札幌])。
■ 待望の先制ゴール試合は前半から横浜FMがしっかりした展開からチャンスを作る。出場停止のFWロニーの代わりに先発で起用されたFW坂田のスピードが効果的で、札幌のDFラインをかき回した。しかしながら、そのFW坂田の決定的なシュートを札幌DFが体を張って防ぐなど、高い集中力で失点を許さない。
すると、前半41分に札幌がビッグチャンスを生み出す。ミドルシュートのこぼれ球を巡って、札幌のFWダヴィと横浜FM榎本が交錯。一歩だけで足の速かったFWダヴィがGK榎本に倒される形で札幌にPKが与えられる。絶好のチャンスを迎えた札幌だったが、そのPKをFWクライトンが失敗。0対0で折り返した。
後半に入ると、札幌は左MF西らの攻撃力が徐々に発揮されるようになる。すると、後半7分に左サイドからのクロスボールから待望の先制ゴールが生まれる。左からのクロスに対して右MF藤田が素晴らしい動きでカットインしてゴール前に切れ込むと、高度な胸のパスでFWダヴィに落とすと、FWダヴィが右足でゴールに突き刺した。
■ あっという間の逆転ゴール先制点を奪った札幌は、思い通りの試合展開に持ち込むことに成功。横浜FMの鋭い攻撃に対しても、最終ラインの選手が踏ん張って、残り5分までリードを保った。GK佐藤のファインセーブも続いて、札幌がこのまま逃げ切る気配が強くなってきた後半41分に、ショートパスの連続からCKを勝ち取ると、MF山瀬のキックに合わせたFW大島がドンピシャのヘディングゴールを決めて追いつく。
さらに手を緩めなかった横浜FMは、続く攻撃でMF山瀬がペナルティエリア内で相手DFをかわしてミドルシュート。このシュートはGK佐藤がはじくが、そのこぼれ球をFW大島が再び、ゴールの押し込んで逆転に成功。
結局、2対1で横浜FMが勝利し開幕2連勝。一方の札幌は、いいゲームを見せたが最後の詰めが甘く、逆転負け。連敗スタートとなった。
■ パワープレーに頼らなかったマリノス横浜Fマリノスの勝因の1つは、最後までパワープレーに頼らなかったこと。たいていの場合、1点あるいは2点のリードを許しているチームは前線に背の高い選手を送り込んで、ロングボールを前線に送り込むパワープレーを見せるが、この試合の横浜FMの交代は非常に面白くて、まず後半31分に左WBのMF小宮山に代えてMF清水を起用し、さらに後半37分には右WBのMF田中隼に代えてMF山瀬幸を起用してきた。交代によるポジション変更もなく、サイドアタッカータイプの選手も外して、さらにポゼッション力を高める戦法を取った。
確かに札幌のDFラインはハイボールに強く、常識的な攻撃では通用しにくいことは理解できるが、こういうやや奇抜なやり方を開幕2戦目で披露し、さらには成功に導いた桑原氏の采配は見ごたえがあって素晴らしかった。
■ キーとなるMFロペスのキープ力横浜FMでは、やはりMFロペスの使い方が興味深い。もともと仙台時代から個人能力の高さに定評のある選手だが、一方でボールを持ち過ぎたり、ラストパスを狙いすぎたりする弊害の部分も少なくなかった。今シーズンを見ても、G大阪がFWルーカス、川崎FがFWフッキといった枠を外れるスペシャルな才能を持つ選手の融合に苦悩しているが、そのなかで、MFロペスはうまくチームの中で適応を見せていて、幅広い攻撃の担い手になっている。
もっともプレッシャーのきついエリアでボールを持てることが強みで、FW大島、FWロニー(坂田)、MF山瀬功というトライアングルの才能を生かすべく奔走している。これで、MFロペスの持っているまだマリノスでは見せていない才能(高さやシュート力)が発揮されるようになると、攻撃はさらに厚くなる。
■ 理想的な展開だったが・・・一方の札幌は、非常に惜しい試合を落とした。もしそのまま1対0で勝利できていれば、J1で戦っていく上で大きな自信になっただろうが、ラスト5分で横浜FMの自力の前に逆転を許した。ただ、最初の85分間の戦い方は見事であったし、ホームのサポーターに可能性を感じさせる戦いだった。
開幕戦の鹿島戦では、攻撃が2トップ(ダヴィと中山)だけという形が多かったが、この試合ではホームということもあって、左MFの西大伍やダブルボランチがチャンスの場面では積極的に前に押し上げて、2トップをサポートした。動きながらボールをキープできるFWクライトンをフォワードで起用したことも、前線と中盤の連係を促す意味では大きかった。
まだFWクライトンは合流して間もないのでコンビネーションやコンディションに問題を抱えるが、今後、大きな戦力となることは間違いない。
■ 求められる中盤の落ち着きただ、プレーの精度という意味では、横浜FMに大きく見劣りしたのは否めない。もちろん、もともとの技術レベルの差があるのは間違いないが、もっと的確に味方をサポートし、ボールをつないで試合を落ち着かせることができそうな場面でも安易に前線にけりこんで跳ね返されることが多かった。
期待したいのは、左右の攻撃的MFで起用されているMF藤田とMF西の頑張り。ともにテクニックのある選手であり、1人でボールを保持して相手DFを突破出来るだけの才能をもつ。ボランチの展開力に期待できないのであれば、当面は比較的プレッシャーの薄い両サイドのアタッカーにボールを回して、そこから展開するようなシーンを期待したい。
現時点ではMF藤田もMF西も守備面に気を使い過ぎているが、むしろ、自分の持つ攻撃性で相手のサイドプレーヤーを牽制して、主導権を握るくらいでないといけないし、J1の舞台では、守り切るだけでは限界が来る。有能な選手なので、もうワンランク上のプレーを期待したい。
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