■ 4回目のアジア制覇日本の優勝で幕を閉じたアジアカップ。これで日本は過去の6大会で4度の優勝となって、アジア中に、「日本強し。」をアピールすることが出来たことだろう。もちろん、2013年のコンフェデレーションズカップの出場権を獲得できたことも強化の上では大きい。
2022年のW杯が開催されるカタールで行われた大会は、終わってみれば、日本が優勝、準優勝がオーストラリア、3位が韓国、4位がウズベキスタンとなった。
準決勝のオーストラリアとウズベキスタンの試合が6対0、3位決定戦の韓国とウズベキスタンの試合も途中まで韓国が3対0と圧倒していたということ、さらに準決勝の日本と韓国、決勝の日本オーストラリアが延長戦に入って、グループリーグの韓国とオーストラリアの試合も引き分けだったことを考えると、トップ3に大きな差はなく、日本・オーストラリア・韓国の3強時代が幕を開けた大会といえるかもしれない。
■ 3強時代の幕開けただし、その3つの国も状況は異なる。
日本は、DF中澤、DF闘莉王、DF駒野、MF大久保といったW杯のレギュラー選手が怪我等で招集できず、さらに、MF阿部、MF中村憲、FW玉田という中堅どころも代表からは外れた。そのため、国際Aマッチの出場数がゼロあるいは一桁の選手が多く、少し先を見据えたメンバーであった。大会前は経験不足も心配されたが、試合を重ねるごとにチームは成熟していって、苦しい試合を勝ち抜くことでタフさを身に付けた。
対して、韓国はエースのモナコに所属するFWパク・チュヨンが怪我で出場できなかったことを除くと、ベストに近いメンバーを組んできた。ハンブルガーSVで出場機会をつかみつつある18歳のFWソン・フンミンら若手もメンバーに入っていたが、軸となったのはMFパク・チソン、DFチャ・ドゥリ、DFイ・ヨンピョという2002年組であり、51年ぶりのアジア制覇に並々ならぬ意気込みで臨んできたが、日本にPK戦で敗れた。
一方、オーストラリアはベテラン中心の構成。2006年のW杯でベスト16に入ったメンバーの多くが残っており、コンビネーション等に問題はなかったが、フレッシュさには欠けてしまった。完全に世代交代に失敗しており、思い切って若手を投入して経験を積ませることも考えられたが、継続路線で戦って準優勝となった。日本が少し先を見据えたメンバーを招集し、韓国は現在のベストメンバーを招集し、オーストラリアは少し前の時代のベストメンバーをそろえたといえる。
■ 優勝した日本4度目のアジア制覇を果たした日本だったが、6試合のうちで楽勝と言えたのはサウジアラビア戦のみで、苦しい戦いが続いた。
ザッケローニ監督になってから、こなした親善試合はわずかに2試合のみであり、準備不足は明らかだった。特に、センターバックに人材を欠いており、絶えずロングボールに苦しめられた。DF吉田が経験を積んだことは大きな収穫といえるが、DF闘莉王やDF中澤と比べると、まだ見劣りしてしまう。
また、途中出場で切り札となれる存在もいなかった。準決勝でMF細貝、決勝でFW李忠成がゴールを決めてヒーローになったが、MF松井とMF香川が途中で離脱したこともあって、試合の流れを変えられる選手はベンチに残っていなかった。韓国戦、オーストラリア戦と相手に流れがいったときに対応できなかったとしてザッケローニ監督の選手交代に疑問符が投げかけられたが、「手腕の問題」というよりは「駒」がいなかったのでどうしようもなかったというのが本当のところであり、ザッケローニ監督の責任とするのは酷である。
幸いにも、MF本田圭、MF香川、MF長谷部、DF長友、GK川島らチームの中心となる選手は決まったので、他の薄いポジションをどうパワーアップさせるかがポイントになる。次の目標は7月にアルゼンチンで行われるコパ・アメリカであるが、怪我等の理由で外れたDF闘莉王、DF中澤、DF駒野、MF中村憲らの復帰があるのかどうかに注目したい。
さらに、若手の台頭も期待される。今回は、DF酒井が大会前にメンバーから外れたことで89年生まれのGK権田とMF香川が最年少になったが、MF宇佐美を筆頭に、FW永井謙、MF金崎、MF米本、DF丸橋らロンドン世代で試しても面白い選手が何人もいる。ベテランの力を借りつつ、うまく若手を組み込んでチームを強化していってほしいところである。
■ 3位の韓国一方、3位となった韓国は、今大会をもってMFパク・チソン、DFイ・ヨンピョが代表を引退し、一つの時代が終了したことを印象付けた。大会の得点王になったMFク・ジャチョル、3ゴールのFWチ・ドンウォンらロンドン世代の若手も伸びてきているが、中堅の北京世代に著しく人材を欠いており、ベテランか、若手かという、いびつなメンバー構成であった。
代えの利かない存在だったMFパク・チソンの穴をどう埋めるのか?MF本田圭佑、MF香川真司と次世代の代表の軸となれる選手が出てきた日本とは対照的に、チームの軸を探す作業からスタートすることになる。パスサッカーを志しながら、準々決勝のイランや準決勝の日本戦はロングボール一辺倒となるなど、戦い方に「ブレ」があった。グループリーグのオーストラリア戦、3位決定戦のウズベキスタン戦は丁寧につなぐサッカーを見せていただけに、決勝トーナメントに入ってからは勝利にこだわるあまり「臆病なサッカー」になって、戦い方が統一されなかった印象が残った。
■ 中東勢の不振対照的に、中東勢の不振も目に付いた。中東の雄のサウジアラビアが3連敗でグループリーグ敗退に終わったことが象徴的であったが、全てのチームがベスト8までで姿を消した。場当たり的な「強化方針」が限界に来ており、南アフリカW杯のアジア予選に続いて、東アジア勢との差を見せつけられる結果となった。
ただ、イラン、カタール、ヨルダンといったチームは、組織的なサッカーを身に付けつつある。ベスト8に終わったイランも、ゴドビ監督の下、個人技主体のサッカーではなく組織的なサッカーで韓国を苦しめた。中東のチームの特徴であった「個の強さ」があまり見られずにスーパーな選手が少なくなった印象もあるが、秩序を欠くチームが多かった中東勢が変わりつつあるということも感じられた。
■ 期待外れの北朝鮮と中国日本、韓国、オーストラリアとともに、南アフリカW杯に出場した北朝鮮であるが、グループリーグで敗退。UAE、イラン、イラクと厳しいグループに入ったとはいえ、3試合で無得点に終わった。W杯の本大会ではブラジルを苦しめるなど存在感を発揮したが、軸となるFW鄭大世とFWホン・ヨンジョが不調で、攻撃の形を作れなかった。
また、2010年の東アジア選手権を制した中国もグループリーグ敗退。シャルケのMFハオ・ジュミンらタレントは出てきているが、勝負弱いところは相変わらずで、初戦でクウェートに勝利したが、1勝1敗1分けで決勝トーナメント進出を逃した。
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