■ 決勝戦アジアカップは決勝と3位決定戦を残すのみ。その決勝戦は、初優勝を目指すオーストラリアと、4回目のアジア制覇を目指す日本の対戦となった。過去のオーストラリアとの対戦成績は5勝7敗6分けとなっている。(日本のPK戦勝利:引き分け扱い)。
記憶に新しいのは2006年のドイツW杯。グループリーグの初戦で対戦したが1対3と逆転負けを食らった。そのリベンジに燃えた2007年のアジアカップは準々決勝で対戦し、PK戦の末に勝利。さらに、南アフリカW杯の予選でも同じグループに入って日本の1敗1分けだった。
日産スタジアムで行われたホームゲームは0対0のスコアレス・ドローで、アウェーでは1対2と逆転負けを喫したが、アウェーで対戦した時は、すでに両チームとも本大会出場を決めており、日本は海外組(MF中村俊、MF大久保、MF長谷部、MF本田ら)と体調不良のDF中澤、MF遠藤を欠いており、ベストとは程遠いメンバーだった。よって、あまり参考にならない試合である。
■ オーストラリアの守備陣オーストラリアは、グループリーグは2勝1分け。初戦はインドに4対0で勝利し、2戦目は韓国に1対1でドロー。3戦目はバーレーンに1対0で勝利し、グループ首位で通過した。決勝トーナメントは初戦でイラクに延長戦の末に1対0で勝利し、準決勝のウズベキスタン戦は相手に退場者が出たこともあって、6対0と大勝している。
目立つのは失点数の少なさである。ここまで許したゴールは韓国戦の1失点のみ。そのゴールを守っているのがプレミアリーグのフラムでプレーするGKマーク・シュワルツァー(背番号:1)。198㎝の長身でリーチも長い。38歳になったが、ずっとオーストラリアのゴールを守り続けており、アジアのゴールキーパーの中では頭一つ抜けた存在である。GKシュワルツァーからゴールを奪うのは大変である。
DFラインは、右からウィルクシャー(背番号:8)、ニール(背番号:2)、オグネノブスキ(背番号:6)、カーニー(背番号:3)が濃厚。センターバックは、DFニールが185㎝、DFオグネノブスキが195㎝と長身である。当然、空中戦には強いセンターバックコンビであるが、スピードには難がある。この点に関していうと、大型ディフェンダーとの対戦に慣れているMF香川の不在は痛いところで、日本の前線にはスピードのあるタイプがいなくなってしまったが、MF岡崎の運動量でかき回して混乱させたい。
右サイドバックのDFウィルクシャー(背番号:8)はユーティリティーな選手で、今回は右サイドバックで起用されている。基本的な技術は高く、守備でも穴を作らないが、頻繁に攻撃に参加してくるわけではないので、そこまでケアする必要はないだろう。逆に、左サイドバックのDFカーニー(背番号:2)はウズべキスタン戦でも3点目のゴールを決めており、サイドハーフのMFマッカイとのコンビで崩されると厄介である。今大会のオーストラリアは左サイドから崩してゴールを奪うことが多いので、日本の右サイドの守備は大事である。
■ オーストラリアの中盤ダブルボランチは主力のMFクリーナ(背番号:5)が怪我のため、大会途中から、MFバレリ(背番号:16)とジェディナック(背番号:15)がコンビを組んでいる。
スキンヘッドのMFバレリの持ち味は運動量で、走行距離の多さはチーム№1。だいたい1試合で12kmくらい走っており、大会でもトップクラスの量である。コンビを組むMFジェデイナックもMFバレリ同様にゲームを作る仕事はしていないが、バランスを取るのがうまい。グループリーグの韓国戦とバーレーンでゴールを決めており、今大会2ゴールをマークしている。
キーを握るのは2列目の選手。右にMFホルマン(背番号:14)、左にMFマッカイ(背番号:17)が入ることが予想される。2トップはそれほど活動量がある選手ではないので、2列目の二人が頑張って攻撃に変化をつけないと、オーストラリアはセットプレー以外ではチャンスを作れなくなるので重要な役割を担っている。日本が試合を優位に進めるには、MFホルマンとMFマッカイを封じる必要がある。
右のMFホルマンは運動量が豊富で、スピードもあるダイナモ・タイプ。今大会、2トップと上手く絡んでチャンスを作っている。一方、左のMFマッカーはウズベキスタン戦で3アシストを記録。左サイドで起点になっており、サイドバックのDFカーニーとのコンビネーションもいい。
■ オーストラリアのフォワード最後は前線。今大会は名古屋グランパスのFWケネディが欠場しているため、FWケーヒル(背番号:4)とFWキューエル(背番号:10)が2トップを組んでいる。
日本キラーと呼ばれているFWケーヒル(背番号:4)は、2006年のドイツW杯、2009年の南アフリカW杯の予選のアウェーゲームで、ともに日本から2ゴールをマークしている。プレミアリーグのエバートン所属で今シーズン19試合で9ゴールをマークしており、得点ランキングで5位につけている。中盤の選手であるが、持ち味は「得点力」であり、特にヘディングシュートが脅威である。178㎝なのでそれほど大きいわけではないが、「打点の高さ」と「ポジショニングセンス」は世界トップクラスといえる。
スタイルは「消えるタイプの選手」であるということであり、試合中に存在感が無いことも多いが、突如、いいところに現れて貴重なゴールをマークする。ただ、今大会は、FWケネディ不在ということもあって、ずっと消えているわけにはいかないので、ポストプレーなど、ゴール以外の仕事もしなければならなくて、FWケーヒルにかかる負担は大きい。コンディションも下降気味なので万全の状態には見えない。DF今野がケアすることになると予想されるが、DF今野の役割は重要となる。
日本としては、試合から消えられた方が厄介であり、サイドに流れて起点になっていたり、下がってポストプレーをしたりと、いろいろなことに顔を出して精力的に仕事をしているうちはそれほど怖くない。「FWケーヒルは出てるの?全然、目立たないなあ。」という流れになったときの方が危険である。
一方、FWキューエル(背番号:10)は90年代の末から00年代のはじめの時期は世界トップクラスのアタッカーだったが、度重なる怪我で輝きを失っており、すでにピークは過ぎて、全盛期のスピードやキレはない。しかし、左足は正確で、今大会はポストプレー等でも頑張っている。イラク戦、ウズベキスタン戦と決勝ゴールを決めており、韓国戦でもシュートチャンスは多く作った。左足が武器で、インド戦やウズべキスタン戦のように「得意の形」になると、高い確率でネットを揺らす。
■ 戦いにくい相手ではない 2006年のW杯で対戦した時のメンバーで残っているのは、日本がMF遠藤のみ(=出場機会は無し)であるのに対して、オーストラリアはGKシュワルツァー、DFニール、FWケーヒル、FWキューエルら多くのドイツ組がメンバーに残っており、コンビネーションに問題はない。ただ、FWビドゥカやFWケネディといったターゲットマンが不在で、有望な若手も少ないので、ドイツ大会と比べると主力が年を重ねただけで、そこまで戦いにくい相手とは思えない。
オーストラリアは前線の運動量が多くないので、前からプレスをかけてくるわけでもなく、日本がボールを保持する時間が長くなるだろう。攻撃ではMF遠藤を中心に韓国戦の前半のように素早くボールを回して、チャンスを作りたい。1対1の守備はしっかりしており、ポジショニングもいいので、決定機を作るのは大変であるが、何とか早い時間帯に決定機を作って、日本の流れで試合を進めたい。
一方、オーストラリアの攻撃は、ゲームを作るタイプの選手がいないので、ロングボール中心になるだろう。韓国戦では、186㎝のFWチ・ドンウォンと、196㎝のFWキム・シンウクの高さに苦しめられたが、オーストラリアの2トップは最終ラインからの単純なロングボールを競って味方につなぐプレーを得意とするわけではないので、韓国戦ほどロングボールに苦しめられるとは思えない。
要注意はセットプレー。MFマッカイらのキックの精度も高く、195㎝のDFオグネノブスキ、MFジェデイナック、FWケーヒルら脅威となる選手が多く、韓国もセットプレーだけは劣勢だった。
総合力で言うと、準決勝で対戦した韓国よりも1枚劣るチームで、AFCの一員になったとはいえ、アジアカップというアジア一を決める大会のカップを、オセアニアのオーストラリアに獲られることに違和感は残る。日本もMF香川の欠場などマイナスな要素もあるが、何とか、あと1つ勝って、アジア王者の地位を取り戻したい。
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