■ 熊本での代表戦 アジア杯の最終予選。Aグループ第1戦で日本代表はイエメン代表と対戦。開催地は熊本県の熊本県民総合運動公園陸上競技場(KKウイング)。熊本での日本代表開催は初めてである。
初戦となる日本は<4-5-1>。GK川島。DF内田、寺田、高木、駒野。MF青木、中村憲、岡崎、田中達、香川。FW興梠。地元出身のFW巻誠一郎はベンチスタート。MF遠藤、DF中澤、FW玉田といった国内組の数名とMF中村俊、MF松井、FW大久保ら海外組は召集されていない。
■ 2009年の初勝利試合は前半から日本の一方的な展開となった。試合を終えてイエメンのシュートはわずかに1本だけ。対する日本のシュートは30本に迫った。
前半7分、右サイドを抜け出たMF田中達のグラウンダーのクロスをMF岡崎が決めて日本が先制する。後半立ち上がりのセットプレーでイエメンに同点ゴールを許すが、後半20分にCKからファーサイドでフリーとなっていたMF田中達が決めて勝ち越しに成功。
終盤はMF乾、MF金崎を投入したが、追加点は奪えず2対1で終了。2009年の初戦を勝利で飾った。
■ 切り替えの早さ最終スコアは2対1であったが、失点シーンのセットプレー以外はイエメンに攻撃らしい攻撃を許さなかった。警戒していたはずのセットプレーでマークを外されて失点を許したのは反省材料ではあるが、「攻」から「守」への切り替えで問題はなく、イエメンはパスをつなぐことさえできなかった。
岡田監督が中盤で起用するメンバーを見ると、この試合は、MF岡崎、MF田中達、MF香川と機動力があって、守備面でもサボらない選手を積極的に起用している。この中盤の人選を見ると、例えば、海外組が入ってベストメンバーが集まったときよりも、岡田監督がやりたいサッカーを実現するためにふさわしいメンバーを選んでいて、岡田監督のカラーが出ているように思える。
■ サイドで起点を作ってから・・・この試合の日本は、左サイドのMF香川とDF駒野が攻撃の起点となった。前半から左サイドで引きつけてボランチを経由して右サイドに展開するシーンが多かった。このプレーは相当に合宿で訓練してきたようで、右サイドでフリーになったDF内田に何度かいいチャンスがもたらされた。
この形作りは良かったが、右サイドに展開した後のプレーにアイディアを欠いてしまった。そのため、思うようにチャンスが作れなかったように思う。右MF岡崎は右に張るよりも中央で構えてゴールチャンスを狙いたいストライカータイプの選手である。何度かDF内田もいい突破を見せたが、詰まってしまうシーンも多かった。
■ 流動的では無かった中盤1つ疑問に感じたのは、中盤の選手が比較的ポジションを固定していたことである。例えば、MF岡崎が左サイドに流れたり、MF香川が右サイドに流れたり、そういったポジションチェンジはほとんどなかった。
これまでの岡田ジャパンの戦い方を観ていると、中盤はもっと流動的に動いていたはずである。機動力のある選手を使っていた割にはである。普通にプレーしていれば、中盤がグチャグチャしても良かったが、意図的にポジションチェンジをしなかったのか、という考えも浮かぶ。
■ 1トップの興梠1トップはFW興梠が抜擢されたが、なかなか持ち味を発揮できなかった。イエメンのディフェンスラインの裏には、スペースがほとんどない状態で、非常に気の毒ではあった。
これまでの岡田ジャパンではFW玉田が務めることが多いが、FW玉田のようなプレーをFW興梠にも求めていたと思うが、FW玉田ほど下がったときのプレーに精度が無いので、前線の起点にはなれなかった。
■ アンカーの青木剛1つ収穫を挙げると、ボランチとしてAマッチ2試合目となったMF青木のプレーは悪くなかった。MF中村憲と組んだため、ゲームメイクはMF中村憲に任せて、つなぎ役や潰しの役目を負い、安定したプレーを見せた。前回のウルグアイ戦は緊張もあったのか信じられないミスも多かったが、この日は落ち着いてプレーした。
岡田ジャパンではMF長谷部とMF遠藤が組むことが多いが、ともに攻撃的なタイプのため、守備力では不安がある。アジアレベルであれば問題ないが、体格のいい相手と戦う場合、中盤の攻防で非常に不利になる。この日はマークミスで失点を喫したが、182cmの高さはこれまでの日本代表にはなかった新しい武器であり、DF寺田の189cm、DF高木の188cmを加えた中央のトライアングルは跳ね返すだけでなく、イエメンの前線への放り込みを跳ね返すだけではなく、しっかりとパスで味方につなげた。
イエメンのレベルは間違いなく日本よりも劣るが、それでも普通に戦うことが出来れば、もう少しイエメンもチャンスを作れたはずである。MF青木自身、もう少し前線に際どいパスを出すことができれば申し分ない出来だと言えたが、相手に攻撃のチャンスを与えなかった部分でMF青木の貢献は高かったと思う。
■ 空回りした新戦力期待の新戦力のMF乾とMF金崎の2人は短い出場時間でアピールしようと懸命にプレーしたが、若干、空回りした。自分をピールしたい気持ちと、チームがリードしていて勝利のために戦わなければならないという気持ちをうまく消化できなかった。
ただ、日本代表という舞台で出場機会を与えられるチャンスは多くなく、アピールする気持ちは悪くない。若い選手は失敗して学ぶことも多いので、次の機会に生かすことができれば問題はない。ポテンシャルは間違いないので、どれだけ普段通りのプレーができるか、これが代表で生き残るためには求められる。
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