- 更新日 : 2024年11月27日
個人事業主もふるさと納税をした方が良い?節税効果やデメリットを解説
ふるさと納税は税金の使途を自身で選択できるため、自分の故郷や考え方に合った自治体に貢献できるというメリットがあります。直接的な節税にはなりませんが、結果として得られる現物である「返礼品」の分だけお得とも言えるでしょう。この記事では、納税者を個人事業主に絞って、ふるさと納税についての計算の仕方を詳しくご紹介します。
目次
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個人事業主もふるさと納税をした方が良い?
ふるさと納税とは、自分が選んだ自治体に寄附をすると、税金(所得税、住民税)の控除を受けられる制度です。また多くの場合、寄附をした自治体からその地域ならではの返礼品等を受け取ることができます。同じ税金を支払うのであれば、返礼品がもらえる「ふるさと納税」の方が確かにお得感はあると言えるでしょう。
確定申告で税金の控除を受けられる
ふるさと納税について確定申告で申告すると、寄附額のうち2,000円を超える部分は、原則として所得税と住民税から控除されます。ただし、控除には限度額があります。先に支出があるため厳密には節税とは言えませんが、次項で説明する返礼品と合わせて考えてみましょう。
返礼品も受け取れる
ふるさと納税では、基本的に寄附をした地域ならではの返礼品を受け取ることが可能です。なお、地方税法第37条の2第2項において、返礼品の返礼割合は寄附額の30%以下であることや地場産品であることなどが定められています。
個人事業主であれば、返礼品として送られた消耗品などを事業の用に供することも可能でしょう。
控除の上限額が大きくなる場合も
ふるさと納税の上限額は、寄附者の所得や家族構成によって変わります。なお、ふるさと納税は所得税からの控除と、住民税における基本分と特例分という3つの控除から成り立っています。
控除額の内訳 | 控除額の計算 | 上限額 | |
---|---|---|---|
所得税からの控除 (所得控除) | (寄附額-2,000円)×所得税の税率 (A%) | 総所得金額等の40% | |
住民税からの控除 (税額控除) | 基本分 | (寄附額-2,000円)×10% | 総所得金額等の30% |
特例分 | (寄附額-2,000円)× (100%-A%-10%) | 住民税所得割額の20%* |
*(寄附額-2,000円)が住民税所得割額の20%を超える場合は別途計算あり。上記の表は復興税を考慮していません。
表の通り、課税所得が高いほど控除上限額も高くなると言えます。個人事業主の場合、経費が少なければ課税所得が高くなり、結果として控除上限額も大きくなる可能性があります。
反対に、必要経費や扶養家族が増えると、配偶者控除や扶養控除により所得控除が増えるため、所得金額が減り、結果としてふるさと納税における上限額も減ります。
個人事業主はふるさと納税でどのくらい節税されるか
事例を使って、ふるさと納税がどのように計算されるかを見ていきましょう。
なお、冒頭にも述べましたが、ふるさと納税は税金の先払いであるのでトータルで見ると節税とは言えません。しかし、届いた返礼品が例えば寄附額の25%程度だとすると、寄附額の25%について節税効果があったとも言えます。
返礼品の価値をどうとらえるかは寄附した人の主観によるため、この概算には含めないでおきます。
<事例>
- 個人事業主(独身、40歳未満)
- 事業収入800万円、必要経費300万円、ふるさと納税以外の所得控除合計額114万円とする。
- 青色申告特別控除額65万円を適用する。先にふるさと納税として52,000万円支出した。
※計算の都合上、住民税は所得割のみを考慮するものとします。
<シミュレーション>
- 総所得金額
800万円 - 300万円 - 65万円 = 435万円 - 課税所得金額
435万円 - (114万円 + 5万円)= 316万円 - 算出税額
316万円 × 10% - 97,500円 = 218,500円 - 復興所得税
218,500円 × 2.1%(円未満切捨) = 4,588円 - 所得税額
218,500円 + 4,588円 =(100円未満切捨)223,000円
※ここまででふるさと納税により、5万円 × 10% × 1.021 = 約5,100円分の所得税が低減。
- 総所得金額
所得税と同様(435万円) - 所得控除
114万円(所得税より基礎控除額が5万円少ないため) - 住民税所得割
(435万円 - 114万円)× 10% = 321,000円 - 住民税特別控除
- 基本分 5万円 × 10% = 5,000円
- 特例分 5万円 ×(90% - 10% × 1.021)= 約39,800円
- 小計 44,900円
- 住民税額
321,000円 - 44,900円 = 276,100円
52,000円の寄附をした結果、約50,000円分の税金が安くなりました。結果的には2,000円の支出で種々の返礼品がもらえることになります。
なお、上記のシミュレーションは概算で、実際には途中の計算で端数処理などもあり、差額が2,000円だけにならないことも多いですが、基本的には納税者が有利になるように計算されます。
個人事業主がふるさと納税をするデメリット
個人事業主がふるさと納税をする場合に、注意すべき点を挙げていきましょう。
ワンストップ特例を利用できない
確定申告が不要な給与所得者の場合、ふるさと納税先が一定以内のときは納税先に申請することのみで寄附金控除を受けられます。これをワンストップ特例と言います。個人事業主は、原則として確定申告が必要であるためこの特例を受けられません。そのため、寄附の証明書などの管理が必要です。
すぐに節税の効果を実感できない
寄附をしてから、実際に住民税の税額控除を受けるまでには期間が必要です。6月に寄附をした場合、住民税の税額控除を確認できるのは翌年の6月になってしまいます。ただし、返礼品のなかには比較的早く届くものもあるため、若干の効果は実感できます。
寄附額を一度支払わなければならない
ふるさと納税が「寄附金控除」の中で行われている限り、寄附を先にしなければなりません。事業に影響があるほど高額を寄附することはないと考えられますが、大きな負担を感じるようであれば寄附金の額を見直してみましょう。
収入が不安定なので控除の上限がわかりづらい
ふるさと納税の上限額は所得の何%などとなっており、すぐにはわかりづらいと言えます。特に収入や支出の不安定な個人事業主の場合には、どこまで寄附が可能なのかがすぐ計算できないのはデメリットでしょう。
個人事業主のふるさと納税の上限額の目安
ふるさと納税は、所得税からの控除と住民税における基本分と特例分という3つの控除から成り立っています。
先のシミュレーションにおいて、上限額はどうであったのかを見てみましょう。ここで、先述のふるさと納税の控除額の式を再度確認してみてください。
控除額の内訳 | 控除額の計算 | 上限額 | |
---|---|---|---|
所得税からの控除 (所得控除) | ①(寄附額 - 2,000円)× 所得税の税率 (A%) | 総所得金額等の40% | |
住民税からの控除 (税額控除) | ②基本分 | (寄附額 - 2,000円)× 10% | 総所得金額等の30% |
③特例分 | (寄附額 - 2,000円)× (100% - A% - 10%) | 住民税所得割額の20% |
上記において、それぞれの上限額を求めてみましょう。
① 所得税からの控除
所得税の総所得金額 435万円 × 40%
② 住民税からの控除基本分
住民税の総所得金額 435万円 × 30%
③ 住民税からの控除特例分
住民税所得割額 301,000円 × 20% = 60,200円
事例では、上限までもう少し寄附額を増やすことはできたようです。
したがって、実質的な上限値は③(住民税の特例分)であり、①や②で上限に達する場合にはふるさと納税を控えた方が賢明でしょう。ただし、見返りがなくとも地域に貢献するつもりの人は例外です。
先のシミュレーションでは、青色申告特別控除額65万円を差し引いていましたが、白色申告では青色申告特別控除がない分、ふるさとの納税は多めにできる計算となります。
個人事業主のふるさと納税から確定申告までの手順
個人事業主がふるさと納税をする場合の流れを見ていきましょう。なお、赤字の場合や繰越欠損金がある場合などは、来期に見送るのがおすすめです。
①寄附する自治体を決める
まずは、寄附をする自治体を決めます。様々なふるさと納税サイトがありますので、自治体よりも返礼品や金額から決めても良いでしょう。自治体のサイトでは、ふるさと納税をどのように活用しているかなど事業の様子がわかります。
②寄附金を支払う
ふるさと納税サイトなどを通じて寄附金を支払います。支払方法には、銀行振込、コンビニ払い、クレジットカード、Pay払いなど種々の方法があります。なかには現金書留や直接持参する方法もあるようです。ふるさと納税サイトや該当の自治体のサイトで確認しましょう。
③返礼品を受取る
寄附からしばらく経つと、返礼品が自宅に送られてきます。季節の品物の場合には、収穫等ができる季節まで待つこともありますが、事前にメール等で連絡があるものが多いです。
④寄附金受領証明書を受取る
返礼品よりも前に、受領証明書が届く場合があります。確定申告のときに必要となるため、保管しておきましょう。また、電子申告の場合には、「寄附金控除に関する証明書(XMLファイル)」の発行サービスまたは、マイナポータル連携を利用します。
⑤確定申告を実施する
確定申告書にふるさと納税を反映する箇所は3箇所あります。忘れないようにしましょう。
①確定申告書第一表(1箇所)
第一表には、「全体の寄附額 - 2,000円」を記載します。
②確定申告書第二表(2箇所)
出典:所得税の確定申告|国税庁、「令和6年分の所得税等の確定申告書(案)」 を加工して作成
第二表の「寄附金控除に関する事項」には、ふるさと納税先と寄附額を記載します。こちらには、2,000円を差し引く前のふるさと納税の合計額を記載してください。
また、住民税の欄の「都道府県、市区町村への寄附(特例控除対象額)」にも2,000円を差し引く前のふるさと納税の合計額を記載します。ふるさと納税では住民税の控除が大きいため、第二表の住民税欄は必ず記載しましょう。
ふるさと納税の趣旨を理解しよう!
「返礼品がもらえる!」「お得!」などのイメージから、ふるさと納税は現在も利用者が少なくありません。年末が近づいて、他に節税策がない場合の第一候補がふるさと納税かもしれません。
税金として控除される元になるお金は先に支払いますが、地域への貢献と返礼品の楽しみはプライスレスとも言えます。個人事業主の方は、自身の事業コンセプトに合致する自治体を探して、ふるさと納税を行ってみませんか?
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