- 更新日 : 2025年1月20日
還付金とは?年末調整・確定申告のケースと還付申告のやり方を解説
2025年(令和7年)提出 確定申告まとめ
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初心者から経験者まで、毎年多く読まれている記事です。確定申告の必要性、やり方、簡単に済ます方法についてまるっと解説しています。
還付とは、もともと「自分のもの」であったものを元に戻すことです。所得税に限らず、税金を支払いすぎていた場合には元に戻す、つまり「還付」されます。会社員の方は年末調整によって交付された源泉徴収票をもとに還付申告ができる場合があります。この記事では、年末調整や確定申告で所得税を払いすぎた場合について解説します。
目次
還付金とは?
還付金とは、納税者が支払いすぎた税金を国や地方公共団体から返還してもらうお金のことです。所得税においても源泉徴収された所得税額、予定納税を行った所得税額が、年間の所得金額から計算した所得税額よりも多い場合に、確定申告を行うことで払いすぎた所得税の還付が受けられます。
この還付を受けるために行う申告のことを還付申告と呼びます。なお、還付申告は個人事業主やフリーランスだけでなくすべての納税者が行うことができます。
年末調整の還付金について
年末調整とは、給与所得について1年間の所得税の過不足を精算する手続きです。年末調整により、その年の税額が決まりますが、年末調整では調整することのできない医療費控除などについて、確定申告することにより還付金が発生することがあります。
年末調整で還付金がもらえるのはなぜ?
年末調整時に税金が調整されて税金が戻ってくるのは、毎月差し引かれる源泉所得税には所得控除が考慮されておらず、概算で計算されているためです。
多くのケースで「概算額>年税額」となり、過大の分は戻ってきます。しかし、年末調整の計算の結果、「概算額<年税額」となった場合には年末調整時に追加して税金を支払います。
年末調整は給与所得者が正しい所得税額を納付するための重要な仕組みであり、多くの場合において、個別に確定申告をする必要がなくなります。
年末調整で還付金のない人
年末調整において税金が戻らないケース、つまり「概算額<年税額」となるのはどのようなケースでしょうか?
この税金の戻りは、元は「自分の収入」です。年末調整時に「概算額<年税額」となった人は、「その年中には本来よりも源泉徴収される税金が低かった」と言えます。年末だけに焦点を当てず、年間を通して考えることが大切であり、還付がないからといって損をしているわけではありません。
その上で、「概算額<年税額」となって年末調整で税金が戻らないケースには次のようなものがあります。なお、下記4.と5.については年末調整の対象とならず確定申告の必要があります。
- 生命保険料控除や地震保険料控除について、提出を失念していた
- 配偶者の収入が増えたため、配偶者控除等の適用外となった
- 年の途中で扶養控除となる人が減った
- 給与が2,000万円を超え、年末調整の対象とならない
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出していない
年末調整の還付金の早見表
年末調整によって源泉税が戻ってくる額の早見表を作成しました。
(前提条件)
- 所得控除は、社会保険料控除、配偶者控除、扶養控除、基礎控除のみを考慮しています。
- 健康保険料については令和6年の東京都とし、介護保険料については考慮していません。
- 令和6分の定額減税については考慮しておりませんが、復興税は考慮しています。
年末調整において、大きな異動などがない場合にはほぼ還付される仕組みになっています。年収が上がるにつれて還付額も大きくなっていますが、配偶者及び扶養家族の人数が多くない場合にはあまり戻る税金は変わらないと言えます。
上の表では、年収400万円までについては課税所得が195万円に満たないため、所得税の税率が5%ですが、年収800万円の課税所得はどのケースでも330万円超であるため所得税率は20%になっており、税額も大きくなっています。
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確定申告の還付金について
「収入は給与だけだから確定申告の必要がない」と思っている人でも、還付金が受け取れるかもしれません。勤務先に保険料の控除証明書を提出し忘れたり、医療費控除などがあったりしたら確定申告をすることによって還付される場合があるからです。
通常は年末調整で控除内容を会社に申請し、過不足額の精算が完了します。確定申告で還付金が受け取れるケースは、「年末調整で会社への控除書類をそもそも提出し忘れていたケース」「年末調整では適用できない控除を使いたいケース」などです。
還付申告書を提出できる期間は、還付の該当する年の翌年1月1日から5年間です。確定申告の期間と関係なく行うことができます。
確定申告の必要がないと思って申告を行わなかった人でも、期間内に申告書を提出すれば、後からでも還付金を受け取ることができます。還付金が受け取れる可能性があるかどうか、確認してみてください。
年末調整の対象外となった還付金が確定申告で受けられるケース
証明書の記載漏れなどにより、年末調整では控除されるべき控除額が差し引かれていないことがあります。
生命保険料控除証明書が届いていたのを忘れていたり、給与以外の社会保険料控除の対象を含めていなかったり、「扶養控除等(異動)申告書」の提出後に配偶者控除の対象になったりした場合などに適用漏れが起こります。
また、初めて住宅ローン控除を受ける年度は、ローン控除を年末調整で受けることができないため確定申告が必要になります。ほかにも、扶養控除などの年齢は12月31日時点で考えるため、家族をうっかり扶養控除の対象に含めていないことも考えられます。
適用漏れで年末調整では受けられなかった控除も、確定申告で還付金を受けられるようになります。
確定申告で雑損控除の還付金が受けられるケース
災害や盗難、または横領による被害を受けた場合に、一定の金額の控除を受けられるのが雑損控除です。損害の原因が盗難や横領の場合は控除が受けられますが、詐欺や恐喝の場合は対象に含まれません。災害が原因となる場合には、震災、風水害、冷害、落雷など自然現象の異変によるものや、火災、火薬類の爆発など人為による異常なもの、害虫などの生物による異常なものなどがあります。
控除できる金額は、「差引損失額 - 総所得金額等 × 10%」か「差引損失額のうち災害関連支出の金額 - 5万円」のいずれか多い金額のほうになります。差引損失額とは、「損害金額+災害等関連支出の金額」から受け取った保険金の額を差し引いたものです。
損失が大きく1回で控除しきれない場合は、翌年から3年を限度に繰り越して控除することができます。
参考:災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)|国税庁
雑損控除について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。
確定申告で寄付金控除の還付金が受けられるケース
所得控除が受けられるのは「特定寄附金」を支払った場合です。「特定寄附金」とは、国や地方公共団体、公益社団法人、公益財団法人その他に対して行う寄附です。また、政治活動や認定NPO法人等への寄附などでも寄附金控除を受けることができます。
控除できる金額は、「その年に支出した特定寄附金の額の合計額」か「その年の総所得金額等の40%相当額」のいずれか低い金額から2,000円を引いたものになります。
寄付金控除について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。
確定申告で医療費控除の還付金が受けられるケース
確定申告の際の還付金に関して最も関心が高いのは医療費控除でしょう。医療費控除は年末調整では行えないので、その年の医療費が多かった場合は、まず控除の対象になるかを確かめてみましょう。
<医療費控除額の計算方法>
医療費控除額は、「医療費控除の対象になる医療費 - 保険金等で補てんされた金額」から10万円(総所得200万円未満の人は総所得金額等 × 5%)を引いた額になります。この額がゼロかマイナスになる場合には、医療費控除を受けることはできません。
医療費控除の計算方法を詳しく知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。
<医療費控除を受けられる範囲>
国税庁のサイトを見ると、医療費控除の対象となる医療費が意外に広範囲であることがわかります。対象になるかならないかのキーワードは以下の3つです。
- 一定の資格をもった人への支払いか
- 医療を目的とした行為への支払いか
- 一定の施設に対する支払いか
上記に該当していても、「予防」「美容」「健康」などが目的のものは含まれません。ただし、医療費控除の対象も広がっているようです。メタボ健診(特定健康診査)による指導では「積極的支援」への対価は含まれますが「動機付け支援」は含まれないなど、判断が分かれる対象もあります。
なお、医療費控除が受けられなくても、セルフメディケーション税制の対象となることもあります。
その他確定申告をすれば還付金が受けられるケース
以上見てきたもの以外にも、次のような場合等に確定申告により還付金を受けられます。
還付申告の必要書類
還付申告を行うための専用の申請書はなく、還付申告を行うため利用する書類は、一般的な確定申告の際に使用する確定申告書に内包されています。そのため、「確定申告書」「源泉徴収票(提出不要)」や各種明細書、「領収書・証明書等の控除関係書類(電子データ可)」などが最低限必要となります。申請の内容により必要書類は異なります。
還付申告のやり方・手順
出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
還付金を受け取る際の手順は以下のとおりです。
- 上記画像の確定申告書「還付される税金の受取場所」の欄に「銀行名」「支店名」「口座番号」を記入します。ただし、公金受取口座への振込みをする場合(すでに公金受取口座の登録が済んでいる場合のみ)は、「公金受取口座の利用」にチェックを入れることで「還付される税金の受取場所」の記載が不要になります。
- 確定申告書の必要箇所にすべての記入が終わったら、自身の納税地(居住地等)を管轄する税務署へ提出します。
あとは国税庁の処理が完了次第、払いすぎた税金が確定申告書に記載した銀行口座へ還付されます。
還付申告について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。
e-Taxを利用した還付申告の方法
電子申告(e-Tax)によって還付申告をした場合も、確定申告書への記載内容に違いはありません。e-Taxでは24時間いつでも申告が可能で、税務署の開いている時間を気にする必要がありません。また、原則としてデータアップロードで送れる添付資料が多く、手続きが簡素化されます。
医療費控除のデータが多い場合などは、マイナンバーカードを利用して、マイナポータル経由で必要な控除証明書等の情報を一括取得できます。自動的に申告書の該当項目に金額等が表示されるため、入力の手間を大幅に削減することが可能です。
このようなデータの連携を「マイナポータル連携」といいます。ただし、初めて電子申告をする場合は、事前準備や操作を理解する必要があるため、時間に余裕があるときに実施することをおすすめします。
参考:個人でご利用の方|【e-Tax】国税電子申告・納税システム
還付金の受け取り時期はいつ?
還付金の受け取りができるまで、通常、還付申請を行ってから1か月から1か月半程度の期間が必要となります。なお、e-Taxを利用して還付申告を行った場合には、3週間程度にまで短縮されます。
e-Taxで確定申告する方法は、こちらの記事をご参照ください。
参考:還付申告|国税庁
還付金が多すぎる場合はどうする?
還付申告で控除額を多く申告しすぎた場合などには、還付金が多すぎることになります。この場合には修正が必要になりますが、時期によって対応が異なります。
確定申告期限内の場合
確定申告期限内に申告の誤りに気付いた場合には、再度「還付申告書」を作成し、確定申告期限までに提出すれば問題はありません。
すでに還付金が支払われた場合で、再提出した確定申告書に記載のある「還付される税金」が当初提出した還付申告書の金額よりも少なくなるときや、再提出によって還付ではなく「納税」になったときには、すでに還付済みの税金との精算が必要です。
このような場合には、早めに税務署に相談したほうがよいでしょう。
確定申告期限を過ぎた場合
修正申告をして正しい納税額にする必要があります。修正申告時には、修正の内容を証明する資料や当初の還付申告書の控えなどを添えて、できるだけ早めに対応しましょう。過大に還付された税額を返金する手続きが必要となります。
修正申告せずにそのままにしていると、その期間にも延滞税が増えています。気付いたら即、対応するのがよいでしょう。e-Taxでも修正申告は可能です。
なお、還付金が多すぎるのではないかと不安になった場合には、還付申告書の控えを元に税務署に相談するなどの他、国税庁サイトでチャットボット(ふたば)に質問したり、タックスアンサーによって似た事例を探したりするなどの方法もあります。
参考:
確定申告を間違えたとき|国税庁
国税に関するご相談について|国税庁
チャットボット(ふたば)に質問する|国税庁
タックスアンサー(よくある税の質問)|国税庁
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もっと読むよくある質問
還付金とは?
所得税の支払いすぎなどの理由により、納税者へ返還されるべき税額のことを指します。詳しくはこちらをご覧ください。
確定申告で還付金が戻るケースは?
「年末調整で会社への控除書類をそもそも提出し忘れていたケース」「年末調整では受けることのできない控除を使いたいケース」のいずれかです。詳しくはこちらをご覧ください。
還付申告に必要な書類は?
「確定申告書」「源泉徴収票(提出不要)」や「領収書・証明書等の控除関係書類(一部電子データ可)」などが必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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