- 更新日 : 2024年9月2日
課税所得とは?計算方法や所得控除・税額控除、非課税所得も解説!
所得税の課税所得とは、所得税を計算するために必要な金額です。
課税所得の計算を正しく理解することができれば、同じ年収でも税金に差が出る理由が理解できます。
ここでは所得税がどのように計算されているのか、順を追って解説していきます。なお、税法は毎年のように変更がありますから注意が必要です。
目次
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課税所得とは
所得税の計算をする上で「課税所得」を認識するのはとても大切です。課税所得とは正式には「課税所得金額」と言い、いくつかの課税所得金額がありますが、「課税総所得金額」について見ていきましょう。なお、この記事では「課税総所得金額」ではなく、「課税所得」と略しています。
所得税では、1年間に生じた収入から所得ごとに差し引かれる金額を引いた後の金額を「所得金額」と言います。例えば、会社員であれば、1年分の給与収入から「給与所得控除額」を差し引き、個人事業主であれば必要経費などを差し引いて所得金額を求めます。
次に、その所得金額から「所得控除」と呼ばれる金額を差し引いて「課税所得」を求めます。まとめると、次のとおりです。
所得金額 | 1年分の収入金額 - 収入から差し引かれる金額 |
---|---|
課税所得 | 所得金額 - 所得控除額 |
課税所得・所得税額の計算方法
では、具体的な例を挙げて、収入から課税所得、そして所得税額までの計算の流れを見てみましょう。例として個人事業主の課税所得、所得税額の求め方となります。
例:個人事業主(簡便化のため白色申告とします) 1年間の収入(売上高) 800万円、1年間の必要経費 450万円 所得控除合計額 100万円、税額控除額 5万円 |
所得を計算する(収入 – 必要経費)
所得金額 = 800万円 - 450万円 = 350万円
課税所得を計算する(所得 – 所得控除)
課税所得 = 350万円 - 100万円 = 250万円
所得税額を計算する(課税所得 × 所得税率)
所得税率は次のとおりであり、この式にあてはめてみましょう。表中から税率は10%となります。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
出典:No.2260 所得税の税率|国税庁、「所得税の速算表」を加工して作成
(課税所得に対する)所得税額 = 250万円 × 10% - 97,500円 = 152,500円
税額控除を行う
上記で計算した課税所得に対する所得税額から、税額控除がある場合には差し引きます。
所得税額 = 152,500円 - 50,000円 = 102,500円
このように段階的に計算して、基準となる所得税額を求めます。
所得の種類
所得税ではそれぞれの所得の性格によって、所得を次の10種類に区分しています。ここでは10種類の所得について簡単に解説します。
1. 利子所得
預貯金や公社債の利子、合同運用信託・公社債投資信託・公募公社債等運用投資信託の収益分配に係る所得のこと。
源泉徴収される前の利子等の収入額が、利子所得となります。
参考:No.1310 利息を受け取ったとき(利子所得)|国税庁
2. 配当所得
株主が法人から受ける配当金などの所得のこと。
株式などを取得するための借入金の利子は、源泉徴収される前の配当金等から差し引きます。
参考:No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)|国税庁
3. 不動産所得
土地や建物などの不動産の貸付け、借地権などの権利の貸付け、船舶や航空機の貸付けなどによる所得のこと。
総収入金額から必要経費を差し引いて不動産所得を求めます。
参考:No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)|国税庁
4. 事業所得
農漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営む個人のその事業から生ずる所得のこと。
総収入金額から必要経費等を差し引いて事業所得を求めます。
参考:No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)|国税庁
5. 給与所得
勤務先から受け取る給料、賃金、賞与などの所得のこと。
源泉徴収される前の収入金額から給与所得控除額を差し引いて給与所得を求めます。
給与所得控除額とは、次のように収入によって決まっています。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 | |
---|---|---|
1,625,000円まで | 550,000円 | |
1,625,001円から1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 | |
1,800,001円から3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 | |
3,600,001円から6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 | |
6,600,001円から8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 | |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
6. 退職所得
退職に伴って、勤務先から受ける退職手当などの所得のこと。
社会保険制度などによる退職時の一時金、企業型年金規約や個人型年金規約に基づき老齢給付金として支給される一時金なども退職所得となります。
源泉徴収される前の収入から退職所得控除額を差し引いた金額に1/2を乗じて求めます。
参考:No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁
7. 山林所得
山林を伐採して売却したり、立木のままで売却することによる所得のこと。
山林の取得から5年以内に売却した時は、山林所得ではなく事業所得又は雑所得となります。
8. 譲渡所得
資産の譲渡による所得のこと。
土地、建物、株式等その他の資産で、もともと販売を目的としない資産を売却した時には譲渡所得となります。総収入から譲渡費用を差し引き、さらに特別控除額があれば差し引いて求めます。
参考:No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)|国税庁
9. 一時所得
営利目的で継続的な取引から生じた所得以外の所得のこと。
懸賞金や福引の賞金、競馬などの払戻金、生命保険等の満期返戻金などがあります。総収入から収入を得るための費用を差し引き、さらに特別控除額を差し引いて求めます。
10. 雑所得
上記9種類の所得区分にあてはまらない所得のこと。
例えば、公的年金等、営業用でない貸付金の利子、副業による所得などがあります。
所得控除の種類
所得税の所得控除とは、所得金額から控除することのできる金額であり、現行では15種類あります。それぞれの所得控除の持つ意味ごとに、5つのグループに分けて大まかに解説します。
所得控除 | 控除される理由等 | 控除額の例 |
---|---|---|
基礎控除 | 人的控除(個人の実情に応じた税金負担となるための控除)であり、本人及びその家族の最低限度の生活維持のためとされる控除 | 0円~48万円 |
配偶者控除 | 0円~48万円 | |
配偶者特別控除 | 0円~38万円 | |
扶養控除 | 38万円~63万円 | |
障害者控除 | 生活上追加的経費が必要であるという考慮に基づく控除 | 27万円~75万円 |
寡婦控除 | 27万円 | |
ひとり親控除 | 35万円 | |
勤労学生控除 | 27万円 | |
雑損控除 | 一定以上の損失、医療費は納税者の税金を支払う能力(担税力)を弱めるという考慮に基づく控除 | 一定額 |
医療費控除 | 最高200万円 | |
社会保険料控除 | 法律によって加入義務のあるものや多くの人が加入する保険料等の支払いは、納税者の担税力を弱めるためという考慮に基づく控除 | 支払った保険料の額 |
小規模企業共済等掛金控除 | 支払った掛金等の額 | |
生命保険料控除 | 最高12万円 | |
地震保険料控除 | 最高5万円 | |
寄附金控除 | 公益的な事業への寄附奨励のための控除 | 寄附金合計 - 2,000円 |
税額控除の種類
所得税の税額控除とは、課税所得に税率を乗じて計算した所得税額から、一定の金額を控除するものです。税額控除には多くの種類がありますが、ここでは4つについて概要を解説します。
税額控除 | 控除の特徴 |
---|---|
配当控除 | 総合課税の配当所得がある時、配当所得の一定割合を控除 |
外国税額控除 | 日本と外国の二重課税を防ぐための控除 |
寄附金特別控除 | 一定の寄附金で所得控除を受けない場合に適用する控除 |
住宅借入金等特別控除※ | 住宅の新築等のための一定のローンがある場合の控除 |
※住宅ローン控除と呼ばれるものです。
課税所得と非課税所得の違い
所得税においては課税所得に対し、「非課税所得」があります。また、よく耳にする「住民税の非課税世帯」についても基本的なことを押さえておきましょう。
非課税所得とは
所得税において、社会政策などの見地から所得税を課さない所得があり、それらを「非課税所得」と呼びます。非課税所得の例としては、遺族の受け取る年金、生活に必要な動産の譲渡による所得、オリンピックで選手に交付される金品、損害賠償金など多岐にわたります。
非課税所得について、非課税の適用を受けるための手続きは原則として不要です。
住民税の非課税世帯とは
住民税の非課税とは、住民税において前年の所得が一定以下である場合に、住民税が非課税になることを言います。「住民税の非課税世帯」とは、世帯の構成員全員の住民税が非課税となる世帯のことです。住民税には均等割と所得割がありますが、所得や条件により、所得割だけが非課税となる場合と、均等割も所得割も非課税となる場合があります。
例えば、単身世帯で前年の所得が45万円以下の場合には所得割のみ非課税となり、生活保護を受けている人などは均等割も所得割も非課税となります。
所得税の計算の流れを理解しよう
会社員の年末調整、個人事業主の確定申告などは、毎年同じような手続きの繰り返しのように感じますが、税制は毎年のように改正されます。所得控除の要件や金額が変わると、住民税や国民健康保険料にも大きな影響が出ます。
所得税の大まかな計算の流れがわかると、年の初めにニュースなどで取り上げられる税制改正によって、少なくとも自分がどのように関係するかが分かってきます。所得税の計算の大きな流れは変わらないので、ざっくりと理解しておきましょう。
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