- 更新日 : 2024年12月27日
個人事業主が廃業届を提出する手続き・タイミング・書き方を解説
2025年(令和7年)提出 確定申告まとめ
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個人事業主が事業を廃止した場合には、廃止届を提出します。経営不振で事業を廃業する場合だけでなく、家族の事情、健康上の理由、あるいは、事業を法人化するためなど、個人事業を廃業する事例はさまざまです。
ここでは、さまざまなケースで個人事業主が廃業をする場合の主な手続き方法やタイミング、注意点について説明します。
目次
廃業届とは
廃業届とは、個人事業主が事業をやめる際、個人事業主をやめた事実を通知する書面です。
国や都道府県は、その個人が事業を営んでいるかどうかを知ることはできません。「廃業届」や、事業を開始するときに提出する「開業届」の提出をもって、個人がいつ事業を開始したのか?いつ事業をやめたのか?を認識します。
廃業する際の手続き
法人と違い、個人の場合「解散」「清算」という概念がありません。「事業を廃業しました」となった時点で事業はなくなります。
しかし、個人事業主は、国税である所得税や消費税、地方税である個人事業税などを支払っています。また、従業員を雇用していれば、支払った給与にかかる源泉所得税を徴収し国に納税する義務を負いますし、都道府県民税(住民税)の特別徴収義務もあります。
事業を廃止して、個人事業主でなくなった場合には、税務署や税事務所に廃業の届を提出しなければなりません。廃業届だけではなく、種々の廃止にかかる手続きが必要となることもあります。
廃業の際に税務署等に提出する書類
では、それぞれの届出書の提出期限や提出先を見ていきましょう。
1.個人事業の開業・廃業等届出書の提出
個人事業を廃業したときは、「個人事業の開業・廃業等届出書」を税務署に提出します。提出期限は廃業した日から1か月です。ただし、廃業後に行った支出などが経費として認められないこともあるので、廃業日の決定には注意しましょう。
もし仮に「廃業届」を提出しなかったとしてもペナルティはありませんが、税法上提出しなければならないとされる手続きです。
「いつまでも税務署からお知らせのハガキが郵送されてくる…」等ということにもなりますので届出書は確実に提出しましょう。
なお、廃業届を提出しても、その廃業年度に税額があれば確定申告をする必要がありますので要注意です。
2.青色申告の取りやめ届出書の提出
青色申告している場合は、廃業届とともに「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出する必要があります。事業を廃止しようとする年の翌年3月15日までに提出することとなっていますが、通常は廃業届と同時に税務署に提出します。
3.消費税の事業廃止届出書の提出
個人事業主で消費税の課税事業者の場合は、廃業後すみやかに「事業廃止届出書」を提出します。消費税の届については、例えば「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出すれば、他の不適用届や事業廃止届出書の提出があったものとされます。
どの届出書を出せばよいか不明な場合には、税務署に問い合わせましょう。なお、事業廃止の場合には、インボイス発行事業者であったときでも取消の届出は不要です。
課税事業者の場合には所得税同様、消費税の確定申告が必要となる場合があります。
4.給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書の提出
源泉徴収に関する手続きです。給与の支払いがある場合(専従者も含む)は、所轄税務署に「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書」を提出します。
なお、事業を廃業した場合に給与から預かった源泉所得税は、廃業した日の翌月10日までに納付します。半年に一度まとめて支払う納期の特例を受けていた場合においても、翌月の10日までに納付することとなります。
また、従業員の個人住民税を特別徴収していた場合には、市区町村に「異動届」等を提出します。
5.所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書を提出
予定納税をしている個人事業主が廃業することになり、予定納税額が多すぎることが予想される場合、予定納税額の減額を申請できます。この場合、廃業の時期に従って「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」を所轄税務署に下記の期間に提出することになります。
- 第1期分及び第2期分の減額申請:その年の7月1日から7月15日までに提出
- 第2期分のみの減額申請:その年の11月1日から11月15日までに提出
参考:所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続|国税庁
6.個人事業税の事業廃止届出書
事業廃業に際して、個人事業税についての手続きは、事業の廃止の日から10日以内に管轄の都道府県税事務所に、「事業開始(廃止)等申告書」を提出しなければいけません。
また、廃業年分の事業税は通例は納付が翌年になるという事業税の性格を考慮し、特例として、課税見込額を廃業年分の必要経費とすることが可能です。
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廃業届の書き方
では「廃業届」の書き方について解説しましょう。
届出書の上段には「納税地」や「氏名」「職業」「屋号」などを記入し、中段には廃業についての事由を記入します。
届出の区分
「廃業」にチェックをつけ、廃業の事由について具体的に記載します。例えば、次のようなものが考えられます。
- 経営不振によって事業継続が難しくなった
- 個人事業を法人化するため
- 事業主の健康上の理由で事業継続が難しくなった
- 事業主の会社員への転職のため
- 事業主の高齢化により廃業に至った など
所得の種類
現在営んでいる事業で該当する所得全てにチェックをつけます。全てを廃業する場合は右欄の「全部」にもチェックをつけましょう。
開業・廃業等日
廃業日を記入します。
廃業の事由が法人の設立である場合
個人事業から法人化した場合、いわゆる「法人成り」の場合のみ記入します。設立する法人の名称や本店所在地などを記入します。
開業・廃業に伴う届出書の提出の有無
当該廃業届と同時に「所得税の青色申告の取りやめ届出書」「(消費税)事業廃止届出書」を提出する場合、該当する項目の「有」にチェックをつけます。
個人事業の廃業の適切なタイミング
個人事業を廃業した場合は、「個人事業の開業・廃業等届出書」を、廃業した日から1か月以内に所轄税務署に提出することになっています。
ただし、個人事業の場合は、廃業の後でも、仕事場のかたづけや整理などのさまざまな支出が発生します。本来、これらの支出は事業に関係するものなので、経費にできるはずのものです。しかし、所得税では、廃業後の支出について、経費に認められないものもあります。事業に関係する支出がある場合は、できるだけ廃業前に行いましょう。
個人事業主が廃業するメリット
事業主にとって、自らの意思で開業した事業の廃業には勇気がいるものですが、廃業で得られるメリットもいくつか挙げられます。
倒産よりも取引先や従業員への影響が少ない
倒産は、資金繰り(支払い)ができなくなり、事業継続が困難になる状態を指します。個人事業主が取引先や従業員への支払ができなくなった場合には、株式会社等とは異なり、事業における債務や責任を自己財産のすべてによって弁済する責任があります。したがって、倒産によって個人事業主自身のプライベートにも大きな影響がでます。
その点、廃業は事業主の自らの判断によるものであるため、周囲への影響が少ないと言えます。
破産手続きをしなくてよい
破産手続きとは、裁判所が任命した破産管財人が破産者に代わって破産者の財産を管理し、その財産をお金に換えて、債権者への支払に充当する手続きを言います。
また、債務者が自分で破産を申し立てることを「自己破産」と呼びます。破産の手続き中は一定の義務や制限が生じるため、留意が必要です。廃業であれば、特段の制限等は受けません。
個人事業主が廃業するデメリット
廃業によるデメリットや影響はもちろん多いと言えます。廃業の際には、これらの影響を最小とする努力が求められます。
事業や許認可が消滅する
廃業によって、継続して行ってきた事業がなくなります。許認可についても、営業をすることに基づくものなどで失効・消滅するものがあります。例えば、次のような許認可は廃業とともに失効・消滅します。
- 飲食店営業許可
- 建設業許可
- 古物商許可
- 保健所等の許可 など
許認可ごとに届や返納手続き等が必要なこともあるため、よく確認しましょう。
資産売却の利益が少なくなる
事業を実施していた場合には、固定資産の減価償却が進みますが、廃業によって減価償却が進まなくなると、同じ固定資産を売却した場合の利益は減ります。
また、棚卸資産の売却では、事業中においては「事業所得」として扱われるため青色申告特別控除額などが影響しますが、廃業した場合には「譲渡所得」としての扱いとなるため、利益が少なくなる可能性があります。
従業員を雇用していた場合は解雇しなければならない
個人事業主と雇用関係にあった従業員は、解雇しなければなりません。廃業の場合は「整理解雇」となりますが、整理解雇するためには一定の要件を満たす必要があります。また、解雇する人数や対象者によっては、ハローワークへの届出や通知が必要となる場合があります。
合理的な理由がなく、社会通念上認められない解雇は、権利の濫用として労働契約法により無効となるため注意が必要です。
参考:整理解雇(経営悪化を理由とする解雇)の要件について|埼玉県
「所得税の青色申告の取りやめ届出書」の手続きとは?
「所得税の青色申告の取りやめ届出書」とは、青色申告の承認を取りやめる際に税務署に提出する書類です。青色申告をしていた場合は、事業を廃業する際に廃業届とともにこの書類も最寄りの税務署に提出します。事業の廃業を申請すること、青色申告を取りやめることにはそれぞれ別の届け出が必要になります。
実は、廃業届の提出は形式的なものにすぎません。廃業届を提出していても、事業を継続していると申告・納税の義務は生じます。
これに対して、青色申告の承認は「取りやめ届出書」を提出しない限り適用が継続されます。
例えば、廃業する事業の他に不動産所得があり確定申告書を提出するようなケースで「取りやめ届出書」を出していないとしましょう。このケースでは事業は廃業していますが「青色申告の承認」が有効な状態です。つまり、不動産所得は従来同様青色申告となるので注意が必要です。
提出時期
取りやめの届出書は青色申告による申告の取りやめをしようとする年の「翌年3月15日まで」に提出します。つまり廃業した年の確定申告書と一緒に提出しても間に合うことになります。
提出方法
必要事項を記入し、作成した届出書を税務署に直接持って行くか郵送します。e-Taxでも手続きは可能です。
郵送の場合、記入した届出書のコピーと切手を貼った返信用封筒を同封して送付すると、届出書のコピーに受付印を押して返送してくれます。
手数料
手数料は不要です。
記入方法
届出書の上段には「納税地」や「氏名」「職業」「屋号」などを記入し、下段には「青色申告の承認を受けていた期間」と「青色申告を取りやめる理由」を記入します。
「青色申告書提出の承認を受けていた年分」は、「青色申告の承認申請書」を提出した際に記入した年分から当該取りやめ届出書を提出する年分までを記入します。
例えば承認を受けたのが「X1年分」、取り下げるのが「X3年分」であれば「X1年からX3年まで」となります。また、「取りやめようとする理由」は、廃業ですから「事業を廃業するため」と記入すればよいでしょう。
届出書は、個人事業の廃業届と同じく、国税庁のホームページからダウンロードするか、税務署でもらうことができます。
事業を休業したい場合は?
新型コロナウイルス感染症の流行などにみられたように、事業の見通しが一時的に悪くなるケースがあります。また、事業主がケガや病気で短期間、事業を休まなければならないといったケースも考えられます。一時的に事業の継続が困難になった場合、「廃業」ではなく「休業」するという選択肢もあります。
個人事業主が事業を「休業」する場合について解説していきましょう。
所得税には「休業」の届出はない
所得税の届出書のなかに「休業届」というのは存在しません。個人事業主には休業という概念がないからです。したがって、仮に事業を休業したとしても、事業が自動的に廃業扱いになることはありませんし青色申告の承認取り消しを受けることもありません。この先事業を再開する予定がある場合には、あえて「廃業届」は提出しない方がよいでしょう。
休業するからといって「廃業届」や「青色申告の取りやめ届出書」を出してしまうと、将来事業を再開するときに大変です。再度「開業届」や「青色申告の承認申請書」などを出さなければならず、手間がかかることになります。
ただし、個人事業税については自治体によっては「事業休止届」の提出を求めるところもありますので、自治体に確認しましょう。
参考:個人事業税(よくあるご質問)|岡山県ホームページ(税務課)
「純損失の繰越控除」がある場合は注意が必要
確定申告を要する事業を休業し、かつ事業以外の所得がなければ、原則として確定申告をする必要はありません。ただし、「純損失の繰越」がある場合には注意が必要です。
所得税では、事業所得や山林所得、不動産所得や譲渡所得の一部で生じた赤字を、その他3つの所得の黒字と相殺できます。これを「損益通算」と呼びます。純損失とは「損益通算」をしてもなお余った赤字部分を指します。
青色申告事業者の場合、純損失を翌年以降3年間繰り越しでき、翌年以降に計上した黒字と相殺できる制度があります。これが「純損失の繰越」です。
ただし、この繰越には「毎年連続して確定申告書を提出しなければならない」という要件があります。つまり、休業中だからといって確定申告書を提出しなければ純損失は消えてしまいます。
したがって純損失を繰り越している場合、青色申告・白色申告を問わず「収入0円経費0円」の確定申告書を提出して純損失の繰越を継続しなければなりません。
事業を継承したい場合は?
廃業ではなく、経営者が事業を次世代へと引き継ぐ「事業承継」により、取引先や従業員との関係を続けていくこともあります。
事業継承の種類
事業用の資産を次世代に引き継ぐ方法としては大きく次の3種類があります。
- 贈与
贈与契約によって、事業用資産を「無償」にて承継する方法です。贈与を受けた人は、贈与税の対象となるため負担を考える必要があります。 - 相続
相続は個人事業主の死亡により発生するため、個人事業主が存命のうちは考えられません。しかし、個人事業主の資産を引き継ぐ方法の一つだと言えます。 - 譲渡(事業売却やM&A含む)
現経営者から後継者に売却する方法です。贈与や相続は対象が親族であることが多いですが、譲渡は従業員や買収予定者に資産を承継する際に用いる方法です。
後継者の開業手続き
事業を引き継いだ場合、個人事業主となるためには新たに開業届を提出するところから始めます。
相続の場合には、開業手続きと並行して相続財産について遺産分割協議、相続税の申告納付などの手続きが発生します。相続により取得した資産については、名義変更などの手続きが必要です。主な手続きとして、次のようなものがあります。
- 営業許可等の名義変更や再取得等
- 事業資産の名義変更(不動産、車両)
- 取引先等への連絡
- 事業用口座の開設
相続の場合、一定の要件を満たすと個人事業主が引き継いだ事業用の資産について納税猶予が摘要される場合があります。「個人版事業承継税制」と呼ばれるもので、相続税の全部または一部が免除されます。
その他、新たな個人事業主としての手続きには次のようなものがあります。
- 開業届や青色申告承認申請書の提出
- 消費税関係の届出(課税事業者の場合)
- 源泉所得税関連の手続き(従業員がいる場合)
- 社会保険や労働保険の引継ぎや更新の手続き(該当する場合)
開業届の提出を取り下げたい場合は?
いったん税務署に提出した開業届を取り下げるための届け出には、決まった様式は存在しません。何らかの取引があった場合には、廃業届を提出することになります。しかし、開業届を提出したものの、諸事情でやはり開業届を提出したことを取り下げたいことはあり得ます。
その場合は自分で(開業届の)撤回届または取下書を作成して税務署に提出し、所轄税務署長の承認を得る必要があります。イレギュラーなケースであるため、税務署に相談してから提出しましょう。書式は決まった様式はありませんが、通常、以下のことを記載します。
- 提出日
- 提出した届出名
- 撤回の理由など
撤回届の作成例は、次のようになります。
廃業届の理解を深め、手続きをスムーズに行いましょう!
個人事業主が事業を廃業するのは、法人と違って意外と簡単です。基本的には所轄税務署と管轄の都道府県税事務所に、廃業届を提出するだけです。注意するべき点は、廃業届を提出する時期です。廃業しても、廃業した年の事業所得を確定申告しなければなりません。
法人には「会社法」という縛りがありますので、事業を廃止するためには商業登記で「解散」「清算」という手続きを踏まなければなりません。
その点、個人事業主に会社法は適用されませんので比較的簡単に事業を廃止できます。ただ、手続きは簡単でもタイミングは大切です。
取引先が多くある場合には、それぞれの取引先との精算を済ませておきましょう。廃業するにも社会的な責任を意識して行動すべきです。
廃業日は事業をやめるためにかかる支出を必要経費で全て計上し、決済も済ませた後の日付が良いでしょう。また、年を跨ぐと確定申告を2回(2年分)しなければなりませんので、年末間際に廃業を考えている方は年内で廃業するようにしましょう。
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廃業の際に、税務署に提出する手続き書類は?
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「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出するタイミングは?
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廃業の際に注意すべきポイントは?
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※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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