- 更新日 : 2024年2月20日
矯正歯科治療の確定申告 – 歯列矯正は医療費控除の対象?
噛み合わせの調整や審美のためなど、さまざまな目的で歯列矯正(歯科矯正)が行われています。一般的に、治療を受けた者が負担した医療費は所得税の所得控除である医療費控除の対象になりますが、歯列矯正も医療費控除に含めることができるのでしょうか。
この記事では、歯列矯正と医療費控除の関係、医療費控除を申告する場合の確定申告書の書き方などについて解説していきます。
目次
歯列矯正(歯科矯正)は医療費控除の対象になる?
歯列矯正の費用は、医療費控除の対象になる場合とならない場合、両方のケースが考えられます。医療費控除においては、治療の目的が重視されます。では、どのような条件だと医療費控除の対象になるのか、子供の場合と大人の場合に分けて解説します。
子供の歯列矯正の場合
歯列矯正の費用が医療費控除の対象になるかは、矯正時の年齢や目的で判断されます。歯列の状態から一般的に治療が必要と考えられる場合は、歯列矯正にかかった費用が医療費控除の対象にできます。
歯列矯正の代表例として挙げられるのが、発育段階の子供の歯列矯正です。子供の成長には、噛み合わせが大きな役割を果たします。良好な成長を促すための歯列矯正は社会通念上必要な治療と考えるため、医療費控除の対象と考えられます。
年齢が判断の材料になると前述しましたが、成長過程にある子供の歯列矯正については、おおむね医療費控除に含められると考えて問題ないでしょう。
なお、治療に親の付き添いが必要な場合は、親子で利用した公共交通機関による交通費(自家用車による移動のガソリン代や駐車場代などは不可)も医療費控除に含めることができます。
大人の歯列矯正の場合
子供の歯列矯正の費用はおおむね医療費控除に含まれる一方、大人の歯列矯正はどうなのでしょうか。医療費控除の適用には年齢が左右すると前述しましたが、大人だから絶対に医療費控除を受けられないというわけではありません。
見た目を整えるために行う歯列矯正は医療費控除の対象になりませんが、機能的な問題を解決するための歯列矯正は治療にあたり、医療費控除の対象となります。また、動機は見た目の改善から歯列矯正を始めたとしても、治療に該当する処置が行われたならば、医療費控除に含められます。
この場合の機能的な問題とは、噛み合わせが原因で咀嚼がうまくできない、噛み合わせが原因で発音に支障があるといったように、生活上に問題が生じる場合を指します。機能的な面の問題は専門家でないと判断が難しい場合もありますので、歯列矯正を考えているなら、矯正歯科で治療にあたるかどうか見てもらうとよいでしょう。
そもそも医療費控除とは
医療費控除は、所得税の所得控除のひとつです。所得控除は所得税の計算上、総所得金額等から差し引ける金額で、課税所得額を減額する効果があります。納税者の医療負担を鑑みて設けられている制度です。
医療費控除は、1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費が一定額を超えたときに適用できます。納税者本人の医療費だけでなく、配偶者や子供など、納税者と生計を一にしている家族の医療費も合算して医療費控除に含めることができます。
医療費控除については、以下の記事で詳細を解説していますので、こちらもご覧ください。
デンタルローンやクレジット払いは医療費控除の対象?
歯科矯正の治療費は高額になることも多く、デンタルローンやクレジットカードを利用して分割払いにする場合もあります。
医療費控除では支払方法は問われませんので、デンタルローンでの支払分も、クレジットカードでの支払分も医療費控除に含めることが可能です。
デンタルローンの場合も、クレジットカードの分割払いの場合も、月々の支払いは信販会社への返済であって、治療費分はすでに立て替えられて支払われているため、ローンを契約した年、またはクレジットカードで支払った年分の医療費控除に計上します。
なお、医療費控除に含められるのは治療費の支払分のみで、ローンの利息やカード分割の手数料は含まれないため、注意しましょう。
確定申告によって還付金はいくら戻ってくるのか
会社員の年末調整の項目には、医療費控除の項目がありません。医療費控除を適用したい場合は、確定申告が必要です。
会社員は年末調整で所得税を精算している状態ですので、医療費控除を確定申告すれば、所得税の一部が還付金として後日戻ってきます。さらに、医療費控除の確定申告により住民税も安くなります。
確定申告で戻ってくる還付金を求めるには、まず医療費控除の額を算出する必要があります。また、医療費控除は以下の計算式によって求めます。
歯列矯正分を含めて支払った医療費から保険金などの補てん額を差し引き、さらに10万円(総所得金額等200万円未満の人は総所得金額の5%)を差し引いた額を医療費控除の額とします。
還付金として戻ってくる額の目安は、以下の図のように、医療費控除に所得税率をかけた額です。
(例)給与所得(給与の支払金額から給与所得控除を差し引いた額)450万円の人が、その年に支払った医療費の額50万円(補てんされた保険金は20万円)について医療費控除を適用して確定申告した(所得控除は基礎控除と医療費控除のみとする)。
※給与所得額は、勤務先から配布される源泉徴収票で確認できます。
20万円×20%(所得税率※)=4万円(還付金の目安)
【所得税の速算表】※参考
参考:No.2260 所得税の税率|国税庁
なお、給与所得者と同様に、年末調整の対象でない個人事業主は、確定申告において医療費控除によって課税所得金額を減じることができます。また、確定申告の際、すでに源泉徴収されている金額があれば、還付されるケースもあります。
歯科矯正において、医療費控除を受けるために必要な確定申告のやり方(方法)
歯科矯正にかかる医療費控除を受けるには、給与所得者・個人事業主にかかわらず、確定申告が必要です。
確定申告を行うにあたって、まずは、確定申告書に添付の必要がある「医療費控除の明細書【内訳書】」を作成します。
引用:確定申告書等の様式・手引き等(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
「医療費控除の明細書【内訳書】」
納税者が加入する保険組合から「医療費通知(医療費のお知らせ)」が発行されている場合、通知に記載されている医療費の合計額を「1 医療費通知に記載された事項」の該当欄へ記載します。この医療費のうち、生命保険や社会保険で補てんされている分があるなら、そちらも漏れなく記載しましょう。
医療費通知が発行されない場合には、「2 医療費(上記1以外)の明細」欄へ、支払った医療費の額や支払先の医療機関などの情報を記載します。また医療通知書がある場合でも、子供の治療に付き添った際の公共交通機関の交通費などがあれば、こちらの欄へ記載しましょう。
「所得税確定申告書」を加工して作成
医療費控除明細書を作成したら、確定申告書にある「所得から差し引かれる金額」の「医療費控除」に、医療費控除の額を記入します。医療費控除の欄には区分という枠が設けられていますが、この区分は「セルフメディケーション税制」を選択した場合に使用し、通常の医療費控除に該当する歯列矯正では記入する必要はありません。
会社員であれば源泉徴収票を参考に、ほかに必要な箇所を記入して、先に作成した医療費控除の明細書とともに確定申告書を所轄の税務署に提出します。
医療費控除を受けるときの注意点
医療控除を受ける際に、注意しておきたいポイントを紹介します。
- 本人以外の歯列矯正の治療費も医療費控除に含められる医療費控除は、確定申告をする納税者本人だけでなく、生計をともにしている家族も対象に含まれます。そのため、子供の歯列矯正の治療費も含めて医療費控除できます。また、歯列矯正は高額になることも多いので、忘れずに確定申告しましょう。
- 保険金の給付を受けたときは控除を忘れずに歯列矯正は、生命保険(医療保険)の保険金支給の適用外であることもありますが、症状や治療の内容次第では保険金の支給対象になることもあります。保険金の支給があったときは、歯列矯正の治療費から差し引いて医療費控除を計算するようにしましょう。領収書は保管しておきましょう。確定申告時に領収書を提出する必要はありませんが、領収書は5年間保存することが義務付けられていますので、確定申告後も失くさないように保管しておきましょう。
- ローンやクレジット利用時は契約書や明細書を保管する医療費控除を受けるときは領収書の保管が必要であると説明しましたが、デンタルローンを利用すると領収書が発行されないこともあります。客観的な証拠を残しておくためにも、ローンやクレジットカードを利用するときは、利用した日や利用額がわかる契約書、または明細書を保管しておきましょう。
- 治療中に年度が切り替わったとき歯列矯正の場合、複数ヶ月、あるいは複数年にわたって治療をすることも多いかと思います。もし治療中に年度が切り替わったとしても、医療費控除はその年内に支払った治療費の金額で計算します。また、すでに治療が終わっていても未払分がある場合、未払分はその年の医療費控除には含まれない点に注意しましょう。未払分は、支払った年の医療費控除の計算に含めます。
歯列矯正も場合によっては医療費控除の対象になるため、しっかりと理解を深めましょう!
歯列矯正は、審美目的で行ったものであれば医療費控除の対象になりませんが、子供の成長過程で必要なもの、機能的な問題の治療が必要なものであれば、医療費控除の計算に含められます。医療費控除の適用には確定申告が必要ですので、この記事でも紹介した確定申告のやり方やポイントをしっかり押さえて確定申告を行いましょう。
医療費控除については、医療費控除の明細書の明細欄を記載する代わりに、「医療費通知(医療費のお知らせ)」を添付することもできます。発行元は納税者の加入する保険組合などからです。郵送の場合もありますし、専用WEBサイトでダウンロードすることができます。
医療費通知は、医療保険者等が発行する医療費の額等を通知する書類で、被保険者等の氏名、療養を受けた年月、療養を受けた者など一定事項が記載されたものです。医療費通知を利用する場合には、明細欄への記入ではなく「1医療費通知に記載された事項」(右上にある欄)に直接合計額を記載します。
参考:No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|国税庁
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もっと読むよくある質問
歯列矯正は医療費控除の対象にできる?
見た目をきれいにする審美目的の歯列矯正は医療費控除の対象にはなりませんが、成長段階の子供の歯列矯正や、機能面の回復など治療を目的にした歯列矯正は医療費控除の対象になります。詳しくはこちらをご覧ください。
歯列矯正で医療費控除を受けるには?
必要事項を記載した医療費控除の明細書を添付して、確定申告を行う必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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