- 更新日 : 2025年1月7日
個人事業主が妻を従業員として雇う手続きは?節税メリットや注意点も解説
2025年(令和7年)提出 確定申告まとめ
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個人事業主が妻を従業員として雇う場合、給与について問題になる可能性があります。妻を雇う場合、個人事業主の確定申告にどのような影響があるのでしょうか。個人事業主が妻を雇う場合の手続きや給与をいくらまで経費にできるのか、生計を一にしない家族の取り扱いについて解説します。
目次
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個人事業主が妻を従業員にすることはできる?
個人事業主は、親族である妻を従業員として事業に従事させ、給与を支給できます。ただし、通常の従業員とは異なり、個人事業主の事業に従事させる配偶者や事業主の親族で、かつ生計を一にしている場合は「専従者」といいます。
専従者に支払う給与は、原則として経費計上できません。しかし、特別の取り扱いにより、青色申告者と白色申告者のそれぞれについて、一定の給与は必要経費に算入することが認められています。
個人事業主が妻を雇うために必要な手続き
個人事業主が妻を専従者として雇用するには、一定の手続きが必要です。
「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する
個人事業主が、新たに給与の支払者になったとき、つまり専従者や従業員を雇って給与を支払うことになったときは、税務署に「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を提出します。開設時だけでなく、給与支払事務所の移転や廃止があったときにも同様の書類を提出します。提出期限は、開設等の事実があった日から1カ月以内です。
ただし、個人事業主が開業時に「個人事業の開業・廃業等届出書」を税務署に提出する場合は提出の必要がありません。開業届出書には、給与等の支払いについての記載項目が設けられています。
国税庁「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」
給与支払事務所等の開設届出書の書き方などは、こちらの記事で詳しく説明しています。
「給与支払事業所等の開設・移転・廃止届出書の書き方<記入例付き>」
青色申告の場合「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する
青色申告をしている個人事業主が妻を専従者として雇用する場合は、「青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書」を税務署に提出します。青色申告をする個人の専従者への給与を、必要経費にする場合に必要な手続きです。開業日または新たに専従者となった日から2カ月以内に提出します。
国税庁「青色事業専従者給与に関する届出手続」
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個人事業主が妻を雇うメリット
個人事業主が妻を雇うメリットを4つ紹介します。
青色申告の場合「青色事業専従者給与」を経費に計上できる
青色申告者の妻(配偶者)については、青色事業専従者給与が認められる可能性があります。青色事業専従者給与が認められるのは、以下の条件を満たす場合です。
- 青色申告者と生計を一にしていること
- 青色申告者の配偶者または親族であること
- その年の12月31日時点で15歳以上であること
- その年の6カ月超の期間を専らその事業に従事していること
- 青色事業専従者給与に関する届出書を提出していること
- 届出書に記載の方法でかつ記載の金額の範囲内で給与が支払われていること
- 労働の対価として相当な金額であること
上記の条件を満たす妻への給与は青色事業専従者給与となり、労働の対価として相当な金額は必要経費にできます。
白色申告の場合「事業専従者控除」が受けられる
白色申告者の妻(配偶者)については、事業専従者控除が認められる可能性があります。事業専従者控除を適用できるのは、以下の条件を満たす場合です。
- 白色申告者と生計を一にしていること
- 白色申告者の配偶者または親族であること
- その年の12月31日時点で15歳以上であること
- その年の6カ月超の期間を専らその事業に従事していること
- 確定申告書に控除の金額などの記載があること
白色申告者については、妻に支払った給与を必要経費にはできません。代わりに、事業専従者控除が認められています。事業専従者控除は、配偶者と親族で異なり、配偶者の場合は最高86万円までの控除が受けられます。
青色事業専従者給与と事業専従者控除の違いについては、以下の記事を参照ください。
「青色事業専従者給与とは?事業専従者控除との違いや届出手続、家族の条件まで解説」
従業員の採用コストを削減できる
従業員の採用にあたって、知り合いからの紹介などではなく一般向けに募集する場合、採用コストがかかることがあります。例えば、求人広告を掲載して求人募集をする場合や人材紹介会社を介して採用する場合です。採用コストのほか、採用のための書類選考や面接などの労力もかかります。
妻を雇う場合は、採用のためにコストや労力をかけることなくすぐに雇用できる点で、採用コストを削減できるメリットがあります。
労働保険の手続きが不要
原則として、雇用形態に関わらず、労働者を1人でも雇用する場合は、個人事業主であっても労働保険の加入が必要です。労働保険とは、業務中の傷病などに関わる「労災保険」と、失業時の生活と雇用の安定に関わる「雇用保険」の総称です。
ただし、労働保険法では、個人事業主と同居する親族は、労働者から除かれます。そのため、青色事業専従者や事業専従者である妻は労働保険には加入しません。第三者の従業員を雇用する場合と比べて、妻を雇用する場合は、労働保険の手続きが不要になるメリットがあります。
個人事業主が妻を雇うときの注意点
個人事業主が妻を雇う場合の注意点を3つ取り上げます。
仕事とプライベートの区別が難しい
個人事業主が妻を雇う場合、妻は青色事業専従者または事業専従者になります。専従者は労働者とは異なるため、労働時間の規定はありません。事業の状況によっては、妻が事業にばかり時間をとられ、プライベートな時間を確保できないなどの問題が発生することがあります。
また、個人事業主は、プライベートでも関わりのある妻を雇用することで、仕事とプライベートのメリハリをつけられない問題も生じる可能性があるでしょう。
家族以外の従業員と平等な待遇にする必要がある
一定の金額を上限に控除を受けられる白色申告者の「事業専従者控除額」と異なり、青色申告者の「青色事業専従者給与」は相当と認められる金額まで必要経費にできます。裏を返せば、相当以上の金額については経費にできないということです。
妻の給与を相当以上に高額にすることについては、ほかに従業員がいる場合、不公平感を生むことにもなります。家族以外の従業員との関係性のためにも、妻の給与は、ほかの従業員と平等に取り扱うようにしましょう。
高額な給与は経費として認められない
青色事業専従者や事業専従者である妻は、税務上の扶養にできません。青色事業専従者は給与を経費に、事業専従者は一定額までを控除できる一方で、個人事業主は配偶者控除や配偶者特別控除を受けられなくなります。支給する給与額が少ないと、各種所得控除を適用するよりも所得から控除できる額が少なくなりますので、注意しましょう。
個人事業主の専従者給与の上限はいくらまで?
専従者給与で経費にできる金額の上限額は、青色事業専従者と事業専従者で異なります。
配偶者 | 親族(配偶者を除く) | |
---|---|---|
青色事業専従者 | 相当であると認められる金額 | |
事業専従者 | 86万円 | 50万円 |
出典:No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除|国税庁
白色申告者の妻(事業専従者)の、事業専従者控除額の上限は86万円です。例えば、1月から12月までの1年間に給与として100万円支給していた場合、86万円を超える14万円については必要経費に算入できません。
青色申告者の妻(青色事業専従者)の必要経費に算入できる給与の上限額は、相当であると認められる金額です。相当と認められる金額に明確な基準はありません。職種などで相当とされる金額は異なるためです。一般的に、同業同職種の平均的な賃金などを目安とします。
個人事業主が妻に支払う業務委託費用は経費にできる?
個人事業主が妻に支払う費用は、「業務委託費用」などの名目であっても、原則的に経費にはできません。租税回避の防止を目的に、生計を一にする配偶者や親族への対価は原則として必要経費にできないと、所得税法により定められているためです。そのため、妻に経理をお願いする場合でも、業務委託費として経費にできません。事業に関して、妻に支払う対価を経費にするには、先述した青色事業専従者給与や事業専従者給与の要件を満たす必要があります。
個人事業主は生計を一にしない家族への給与を経費にできる?
青色事業専従者給与や事業専従者給与の要件に、生計を一にしている配偶者または親族であることと定められています。生計を一にしない、つまり独立している家族に支給する給与は専従者給与にはなりません。親族以外の従業員と同じ扱いになり、生計を一にしない家族への給与は必要経費として計上できます。
個人事業主が妻を雇う場合は給与に扱いに注意しよう
個人事業主が妻を雇う場合、原則として妻に支給する給与は経費にできません。恣意(しい)的な操作がしやすく、租税回避目的などで利用される可能性があるためです。ただし、青色事業専従者給与や事業専従者として認められる場合は、一定の範囲内で妻への給与を経費にすることが認められます。上限や要件について、よく確認しておきましょう。
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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
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