- 更新日 : 2024年9月25日
所得金額調整控除とは?調整控除の対象者や計算方法、申告方法を解説
所得金額調整控除は、一定の条件のもと、税の負担を軽減する制度です。子どもや介護者がいる世帯や、給与と年金両方の所得がある世帯の一部の税負担を軽減する趣旨があります。適用になる条件があるため、事前に確認が必要です。
本記事では、控除の内容や該当する人を解説します。申告方法や注意点・ポイントも説明しますので、参考にしてください。
目次
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所得金額調整控除とは
所得金額調整控除とは、2020年に導入された新しい制度です。一定の要件を満たす場合、所得から一定額が控除されます。
ここでは、制度の内容や導入の背景を解説します。
2020年分から導入された制度
所得金額調整控除とは、所得税を抑える控除制度のひとつです。子どもや特別障害者等がいる世帯や、年金を受給しながら給与を取得する世帯の一部の負担を軽くするため、2020年分から導入されました。
一定の要件を満たす人が手続きすることで、給与所得の金額から一定額の控除を受けることができ、税の負担を抑えられます。
導入の背景
所得金額調整控除が導入された背景には、2020年分から給与所得控除の上限が引き下げられた税制改正があります。給与所得控除の上限額や公的年金所得の控除が引き下げられたことで、実質的に増税となる結果になってしまったためです。
救済措置として創設されたのが所得金額調整控除であり、負担を調整する目的があります。
所得金額調整控除の対象者
所得金額調整控除を申請できるのは、次のいずれかに該当する場合です。
- 子ども・特別障害者等がいる
- 給与所得と年金所得の両方がある
それぞれの適用条件について、詳しくみていきましょう。
子ども・特別障害者等がいる人の適用条件
子ども・特別障害者等を有する場合に適用対象となるのは、次の適用条件のいずれかに該当する場合です。
- 給与所得者自身が特別障害者に該当する
- 23歳未満の扶養親族がいる
- 同一生計配偶者または扶養親族のいずれか一人が特別障害者である
年間の収入が850万円を超える給与所得者であり、これらの適用条件に該当すれば、所得金額調整控除が受けられます。
給与所得と年金所得の両方がある人の適用条件
給与と年金の所得がある人の適用条件は、会社からの給与所得とともに雑所得となる公的年金の収入があり、その合計額が10万円を超える場合です。
条件とされるのは対象者自身の収入のみとなります。高齢化が進む日本では年金を受け取りながら働き続ける人も多く、収入の合計が10万円を超えていれば、一律に所得金額調整控除を受けられます。
所得金額調整控除の計算方法
所得金額調整控除は、2つの適用条件のいずれの場合でも、控除の上限が決められています。
ここでは、適用条件ごとに控除額の計算方法を解説します。
年収850万円超の給与所得がある場合
給与所得が年間の収入が850万円を超え、子ども・特別障害者等を有する場合、控除額の計算式は次のとおりです。
所得金額調整控除の額=(給与等の収入金額(1,000万円超の場合は1,000万円)-850万円)×10%
たとえば、収入が950万円の場合、控除額は「(950万円-850万円)×10%=10万円」となります。
なお、収入の上限は1,000万円であるため、控除額は最大15万円です。
給与所得と年金所得の両方がある場合
給与と年金双方の所得がある場合、計算式は次のとおりです。
所得金額調整控除の額=(給与所得控除後の給与等の金額(10万円超の場合は10万円)+公的年金等に関わる雑所得の金額(10万円超の場合は10万円))-10万円
給与所得控除後の給与金額、および公的年金にかかる雑所得の所得のいずれも、10万円が上限となっています。
例えば、給与300万円、公的年金100万円を受け取っている65歳未満の会社員の場合、給与所得控除の金額は98万円であるため、給与所得控除後の給与等の金額は202万円です。
また、公的年金等控除額は60万円になり、公的年金等に関わる雑所得の金額は40万円になります。
しかし、上限はいずれも10万円のため、控除の計算式は「10万円+10万円-10万円となり、控除額は10万円です。
所得金額調整控除を申告する方法
所得金額調整控除は、申告をしないと適用されません。申告方法は年末調整または確定申告で、年末調整で申告できるのは、子ども・特別障害者等を有する場合のみです。年金を受給しながら給与を得ている場合、および年収が2,000万円超の会社員の手続きは確定申告のみとなるため、注意してください。
ここでは、それぞれの申告方法を解説します。
年末調整で申告する場合
年末調整で申告する場合、勤務先に提出する「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」に、その旨を記載します。
書類の一番下に記載するところがあるため、必要事項を記載してください。該当する要件にチェックを入れる部分があり、要件ごとに記入する内容が異なるため、正しく書き入れましょう。
確定申告で行う場合
給与所得と年金所得が両方ある場合は、もしくは年収2,000万円を超える場合は年末調整では受けることができず、確定申告を行います。850万円超の給与等を受け取っている給与所得者は、確定申告でも手続きが可能です。
確定申告書には、「収入金額等」の「給与」欄に、給与所得控除と所得金額調整控除を差し引いた金額を記入します。
年金所得がある場合は書くべき項目が多いため、国税庁のWebサイトにある「公的年金等の雑所得がある方の記載例」を参考に記入するとよいでしょう。
所得金額調整控除の注意点、ポイント
所得金額調整控除を申請する際は、控除の条件に該当するか、わかりにくいケースがあります。
ここでは、所得金額調整控除で注意したい点を解説します。
年間の給与収入が850万円を超えるかわからない場合
子ども・特別障害者等を有するという適用条件に該当する場合、年末調整の時期になっても年間の給与収入が850万円を超えるかわからないケースもあります。そのような場合でも、申告書は提出しておいてください。
不明な点は記載せず、必要事項だけを埋めて提出します。給与額が確定して適用できると判明した場合は、不足部分を記入して処理するという流れになります。
共働きでお互い850万円超の給与収入を得ている場合
所得金額調整控除の適用条件に該当し、共働きで夫婦ともに年間収入が850万円を超える場合、それぞれが控除を申請できます。
扶養控除の場合はどちらか一方しか申告できませんが、所得金額調整控除は2人とも申告できるため、控除される範囲が広くなっています。扶養控除と混同して、一方の手続きを忘れるということのないようにしましょう。
複数の会社から給与をもらっている場合
1社での給与収入が850万円未満の場合でも、複数の会社で給与をもらっていて収入が850万円を超える場合、適用条件に該当します。ただし、年末調整の申告はできないため注意してください。
自分で確定申告の手続きを行い、すべての収入を申告することで所得金額調整控除の適用を受けることができます。
なお、2つの適用要件を満たす場合は、併用が可能です。最初に「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」を給与に適用させ、その後に「給与所得と年金所得の両方ある人」の控除額を差し引いてください。
1円未満は切り上げて計算すること
所得金額調整控除の計算で端数が出た場合、1円未満は切り上げて計算しましょう。確定申告ソフトなどを使って申告をする場合は自動計算されますが、手計算で作成する場合は、端数処理を間違えないようにしてください。
あとから間違いに気づくと修正などの手続きが大変になるため、十分に注意して作成するようにしましょう。
所得金額調整控除を忘れずに申告しよう
所得金額調整控除は比較的新しい制度のため、よく知らないという方が多いかもしれません。適用条件に該当する場合は税負担を軽くできるため、忘れずに申告するようにしましょう。共働きでお互いが要件を満たす場合、扶養控除と異なり、それぞれが申告できます。
年収の要件を満たすかわからないときも、あとから必要項目を追記できるため、年末調整の書類は提出しておくようにしましょう。
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