- 更新日 : 2022年12月19日
土地は減価償却できない?その他の経費や特例による節税方法も解説!
減価償却とは、固定資産の耐用年数に応じて、その固定資産の取得価額のうち価値が減少した部分の金額を減額することです。
固定資産には、有形固定資産や無形固定資産があります。中でも土地や建物などの不動産は金額的にも大きく、事業を支える収益確保の基盤とも言えます。この記事ではこの減価償却の考え方と固定資産の中でも「土地」を取り上げて説明します。
目次
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土地は減価償却できる?
現代の会計において、発生主義と現金主義の考え方がありますが、基本的に発生主義で考えます。
発生主義とは、その会計期間に発生した費用については、「その会計期間の費用」として計上するということです。減価償却のしくみは、この発生主義の考え方を端的に表すものの一つです。ここでは、減価償却について深掘りをしてみましょう。
そもそも減価償却とは?
減価償却は、固定資産の取得原価をその耐用年数にわたって、一定の方法で費用として配分する方法です。費用の配分を行うことによって、会計期間ごとの損益計算を適正に行うことができるからです。
正しい損益計算により、会社の業績の実態を正しく捉えるために行われます。また、貸借対照表に計上された固定資産は、その費用配分された金額だけ減少させていきます。
例えば、耐用年数が5年で取得価額400の固定資産があったとします。そして、この固定資産は向こう5年にわたって、事業に収益をもたらすものとします。
減価償却せずに取得価額400をそのまま費用とすると、下の図のように初年度だけの費用となり、この固定資産を使用することによって得られた収益(売上)と費用の対応関係がなくなってしまいます。
したがって、減価償却とは、固定資産が耐用年数にわたって事業活動に使用され、その使用により固定資産の価値が減るとともに、費用化されるという考え方に基づいて行われます。このような考え方を「費用収益対応の原則」と言います。
耐用年数とは?
固定資産の耐用年数とは、通常のメンテナンスをしながら、その固定資産のもともとの用途、用法により通常に予定される効果を上げられる年数を言います。
固定資産の耐用年数については、減価償却資産の耐用年数等に関する省令により定められています。したがって、減価償却の際には耐用年数を調べる必要があります。
減価償却の計算方法は?
減価償却の計算方法として代表的なものに定額法と定率法とがあります。定額法とは減価償却において、その費用配分を耐用年数より均等に配分する方法です。これに対して定率法は固定資産の帳簿価額に一定の率を乗じて減価償却費を計算する方法です。
定額法による計算方法
定額法とは、原則として減価償却費が毎年同額となるように次のように計算します。
平成19年度の改正により、平成19年4月1日以降に取得された減価償却資産の定額法の償却率は、下記のサイトの別表第八により確認できます。
参考:減価償却資産の耐用年数等に関する省令 | e-Gov法令検索
なお、平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産に関しては改正前の計算方法を適用し続けることとし、改正前の償却の方法は「旧定額法」と呼ばれます。旧定額法の計算方法は、原則として次のとおりです。
定率法による計算方法
定率法は、固定資産取得当初に大きな節税効果を発揮し、年数が経過するにつれて減価償却費が減少していく償却方法で、計算方法は次のとおりです。
但し、上記金額が償却保証額以下となった年分以後は次の式による。
未償却残高とは、固定資産の取得価額から前年度までの償却費合計額を差し引いた金額を言います。
平成19年度の改正により、定率法において固定資産を最終的に簿価1円まで償却するための方法として、「償却保証額」という考えが取り入れられました。その固定資産の耐用年数に応じて「保証率」が与えられました。償却保証額は、その固定資産の取得価額に保証率を乗じて計算した金額です。
平成19年4月1日以降に取得した固定資産の定率法の改定償却率および保証率は、下記のサイトの別表第九および別表十にて確認できます。
参考:減価償却資産の耐用年数等に関する省令 | e-Gov法令検索
また、定額法と同様、定率法も平成19年度の改正により償却率が改正されていますので、平成19年3月31日以前に取得した固定資産で、定率法によるものは次の計算方法となります。
土地は価値が下がらないため減価償却できない!
実は固定資産には減価償却できないものがあります。固定資産の中で減価償却できるものを「減価償却資産」と呼び、減価償却できないものを「非減価償却資産」と呼びます。したがって、上記の耐用年数、定額法や定率法はすべて「減価償却資産」が対象となります。
非減価償却資産は、時間の経過や使用によってもその固定資産の価値が減少しないため、減価償却の対象とならない固定資産であり、その代表的なものが土地です。
土地は時間が経過しても、上物としてどんな建物を建てたとしても、土地そのものの価値は「使用」によって変化するものではありません。また、土地は耐用年数が無限大であり、償却率を計算することができません。
よって時間の経過やその利用・使用により価値が変わらない土地などの非減価償却資産は、減価償却の考え方にはあてはまりません。非減価償却資産は土地だけではありませんが、先述の「費用収益対応の原則」に合わない固定資産もあることを認識しておきましょう。
なお、減価償却・耐用年数の詳細については、以下の記事もご確認ください。
土地以外で減価償却できない資産とは?
減価償却できない固定資産である非減価償却資産について少し解説をしておきます。ここでは不動産関連とそれ以外に分けて説明し、一例として不動産売却時の考え方を見ていきましょう。
不動産関連の非減価償却資産
不動産関連の非減価償却資産には、土地以外に、借地権、地上権、地役権などの「土地の上に存する権利」があります。
例えば、借地権とは、建物を所有するために他人から土地を借りる権利のことを言います。
借地権には、「定期借地権」といってその権利期間が契約により決まっているものがあります。しかしながら、やはり時の経過によって価値が減少しない「非減価償却資産」とされます。
その他の非減価償却資産
建築中の建物などについて、建設のために費やした材料費などの支出について「建設仮勘定」として資産計上することがあります。
建設仮勘定も貸借対照表において固定資産の部に表示されますが、まだ、未完成のため事業の用に供することはできません。このようなものは、非減価償却資産となります。
また、美術品や古文書、出土品、遺物、工芸品などについて、一点が100万円以上のものについては原則として減価償却しません。これらも時間経過とともに価値の減少する資産ではないからです。これには例外があり、1点100万円以上の美術品等でも、「時の経過により価値の減少が明らかなもの」は減価償却してもよいとされます。
建物を売却するときの減価償却の考え方
個人が不動産を売却する場合などは、通常はその土地と建物をセットで売却することとなります。売却額は通常、土地と建物を分けずに1本で表示されますが、土地と建物は非減価償却資産と減価償却資産の組み合わせとなっています。
個人が自己所有の不動産を売却した場合には譲渡所得税がかかりますが、この計算時の取得費(不動産の取得原価)は、非減価償却資産と減価償却資産を合算して計算します。つまり、「土地の取得価額+(建物の取得価額 - 建物の減価償却費の合計)」となります。
土地に関する費用で経費に計上できるものは?
土地は、非減価償却資産であることを説明してきましたが、土地の購入にあたっては付随費用が発生します。土地を取得するために要した費用の取扱いについて解説します。
土地の取得費
購入した固定資産の取得価額は、原則、「固定資産の購入代価+その資産を事業で利用するために直接要した費用」となります。
この費用には、引き取り運賃、運送の時の保険料、購入に係る手数料なども含まれます。
したがって、土地を取得するために支払った費用は、原則としてその土地の取得価額に算入されます。
ただし、次のような費用は、減価償却資産の取得のために支出した費用でも取得価額に算入せず、経費にすることができます。
不動産取得税、自動車取得税、事業所税、登録免許税など | |
調査、測量、設計等でその建設計画変更により不要となったものの費用 | |
減価償却資産の購入契約を解除し、他の資産を取得するとした場合の違約金 | |
使用を開始までの減価償却資産のための借入金の利子 |
参考:No.5400 減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用|国税庁
したがって、埋立て、地盛りその他の土地の造成などのための費用は、その土地の取得価額に算入するのが原則です。しかしながら、その構造等の点で土地と区分し、構築物とすることが適当と認められた費用については、その構築物の取得価額として、減価償却の対象とすることができます。
土地活用の経費
土地を活用するために、例えば駐車場の設備などを構築した場合には、その経費は「構築物」として減価償却資産として計上することができます。さらには、構築物ではなく、「建物」を建設することにより減価償却資産とすることもできます。
そして、原則として構築物や建物を完成させるために要した手数料等もそれぞれの取得価額に算入します。これら構築物や建物は減価償却資産ですので、減価償却によって時の経過とともに経費として計上することができます。
土地に関する特例で節税メリットを受けられる
取得した土地を事業のために使用する場合には、先述のとおり、その土地に係る租税公課等を経費とすることで、節税につながります。さらにいくつかの税の軽減措置があります。
固定資産税と都市計画税の軽減措置
固定資産税とは、その名のとおり「固定資産」の所有者に課税される地方税です。土地、家屋、償却資産に分けて課税され、その固定資産の所在する市町村に対し納税します。土地の場合には、登記簿や土地補充課税台帳に所有者登録されている人が課税対象者となります。
また、都市計画税とは、都市計画や土地区画整理などの財源となる地方税で、市町村の自主判断に基づき固定資産税とあわせて徴収されます。固定資産税と異なる点として対象となる土地や家屋は、原則として「市街化区域」に存在するものとなる点です。
令和4年度に限り固定資産税・都市計画税については、商業地等に係る課税標準額の上昇幅は、評価額の2.5%となります。これは、コロナ感染による経済活動、国民生活の状況が大きく変化したことを受けての措置です。
なお、最新の情報については各市区町村のHPなどでご確認をお願いします。
不動産取得税の特例
土地や住宅などを取得した場合には、その取得した人に不動産取得税が課税されます。不動産取得税についても良質な住宅の建設、流通促進のため令和6年3月までは、本税の税率4%を3%に軽減することになりました。
土地は減価償却以外の方法で税金対策しましょう
土地は非減価償却資産として減価償却することができませんが、逆に価値が減らない資産として認められているわけです。
しかしながら、減価償却ではないものの、土地の簿価を下げられることもあります。所有している土地が災害により著しく損傷し、以前の用途に利用できない場合などには、税務においても土地の評価損を認めるケースがあります。土地への被害が大きな場合には専門家に相談しましょう。
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土地は減価償却できますか?
時間の経過やその利用・使用により価値が変わらない土地などの非減価償却資産については、減価償却はできません。詳しくはこちらをご覧ください。
非減価償却資産にはどんなものがありますか?
不動産関連の非減価償却資産として、地権、地上権、地役権などの「土地の上に存する権利」があります。その他には、まだ事業の用に供していない建設仮勘定や100万円以上の美術品や工芸品も原則として非減価償却資産です。詳しくはこちらをご覧ください。
土地に関する支出で経費に計上できるものは?
不動産取得税、登録免許税などの租税公課、調査、測量、設計等でその建設計画変更により不要となったものの費用などは経費にできます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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