- 更新日 : 2025年1月7日
個人事業主の車は経費で落とせる?いくらまで?条件や減価償却を解説
個人事業主の車関連の費用は、正しく処理すれば経費で落とせます。ただし、プライベートでの使用分は按分する必要があるなど、いくつか注意点があるのも事実です。
本記事では、個人事業主の車の経費計上における条件や減価償却の方法、高級車の取り扱いまで、個人事業主が知っておくべきポイントを解説します。
目次
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個人事業主の車は経費で落とせる?
個人事業主が仕事で使用する車は、事業利用分に限り経費計上できます。配送など業務そのものに車を使用する場合はもちろん、取引先への訪問など、事業に関連する移動であれば経費計上が可能です。
ただし、車が事業専用ではなくプライベートでも使用している場合は、走行距離や使用時間などの合理的な基準で按分しなければなりません。
リースやローンでも経費計上可能
現金一括購入に限らず、リースやローンで車を取得した場合でも経費計上は可能です。
リース契約では、毎月支払うリース料を全額経費として計上できます。カーリースは車を購入して所有するのではなく借りる形態であるため、固定資産にはならず減価償却の計算が不要になる点が大きな特徴です。
一方、ローンで車を購入した場合は、車両本体の代金は減価償却によって分割計上し、利息部分は支払利息として別途経費計上します。
個人事業主が車を経費にする際に気をつけること
個人事業主が車を経費計上する際には、名義や使用状況などいくつか注意すべきポイントがあります。
以下で、詳しく見ていきましょう。
車は本人の名義、または同一生計の人でなければならない
個人事業主が車を経費として計上するには、原則として車の名義が本人でなければなりません。ただし、生計を一にする家族(配偶者や親族)の名義の場合、例外的に認められる場合があります。
名義が異なる場合、税務署から使用実態や経費計上の妥当性について説明を求められる可能性があります。そのため、特段の理由がなければ事業に使用する車は個人事業主本人の名義で購入したほうがよいでしょう。
また、事業専用ではなくプライベートでも使用する場合は、後述する家事按分が必要です。
仕事とプライベートの場合は「家事按分」で計上する
個人事業主が車を事業とプライベートの両方で使用する場合、家事按分を行い、事業利用分のみを経費計上します。家事按分とは、業務と私用の割合を合理的な基準で分ける方法です。
たとえば、年間走行距離が1,000kmで、そのうち700kmが業務利用だった場合、車両関連費用の70%を経費として計上できます。この際、走行記録や使用日数など、按分の根拠となるデータを保存しておくことが重要です。
合理的な基準がないと、税務調査で否認されるリスクが否定できません。また、按分比率は固定ではなく、実態に応じて設定する必要があります。
30万円未満の車は一括で経費として計上可能
取得価額が30万円未満の車については、「少額減価償却資産の特例」を利用すると、通常の減価償却ではなく、購入した年度に全額を経費として計上可能です。この特例を利用するには、以下の条件を満たす必要があります。
- 青色申告者であること
- 年間の取得価額の合計額が300万円以内であること
- 2026年3月31日までに取得・事業使用を開始すること
特例の適用にあたっては、確定申告書に必要事項を記載し税務署へ申告するとともに、青色決算書の減価償却費計算欄には措法28の2第1項の規定を適用している旨の記載が必要です。また、少額減価償却資産の取得価額に関する明細書も添付しなければなりません。
消費税の取り扱いについては、税抜経理の場合は税抜30万円未満、税込経理の場合は税込30万円未満が対象となり、分割払いで購入した場合でも取得価額が基準を満たせば特例の対象になります。
参考:国税庁 No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
複数の車を経費として計上する際は注意が必要
個人事業主が事業用の車を複数台所有する際の経理処理については、明確な定めがありません。複数台の車を経費計上する際には、配送用と営業用などそれぞれの車両が業務に必要であり、使用実態を証明できることが求められます。
また、事業規模や収益に見合わない台数など、問題視される点があれば税務署から説明を求められることもあるため、根拠を基に説明できるように準備をしておくとよいでしょう。不安があれば、税理士などの専門家への相談をおすすめします。
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個人事業主の車はいくらまで経費で落とせるか
個人事業主が経費計上できる車両の金額に、明確な上限は設定されていません。原則として事業に関連するものであれば経費計上は可能です。
ただし、経費が売上に対して極端に大きな金額であるなど、不自然な点があれば税務調査の対象になることもあるため、常識的な金額に収めるべきといえるでしょう。
高級車でも良いか
経費計上できる車の種類や金額に、法的ルールはありません。そのため一般的に高級車といわれるモデル(レクサスやメルセデス・ベンツなど)も、業務上の必要性が説明でき、常識の範囲内であれば経費計上が可能です。
ただし本格的なスポーツカーなど趣味性の強い車は、業務との関連性や必要性の説明が難しく、経費としては否認されるリスクが高いため、注意しましょう。
個人事業主が車関連の費用で経費にできるもの
以下に、個人事業主が経費として計上可能な車関連の費用と、適応する勘定科目をまとめました。
費用項目 | 勘定科目 |
---|---|
ガソリン代 | 車両費/燃料費/旅費交通費 |
自動車税・重量税 | 租税公課 |
自賠責保険料 | 保険料/車両費 |
任意保険料 | 保険料/車両費 |
車検費用 | 修繕費/支払手数料/租税公課/保険料 |
修理代 | 修繕費/車両費 |
月極駐車場代 | 地代家賃 |
一時駐車場代 | 旅費交通費/車両費 |
ETC料金 | 旅費交通費/車両費 |
洗車代(洗車機) | 車両費 |
このほか、自身で洗車する際に使用するバケツやカーシャンプー、ウィンドウの曇り止めなども「消耗品費」として経費計上が可能です。
車関連の費用で経費にできないもの
車の購入時に支払う諸費用に含まれているリサイクル預託金は、経費にできません。リサイクル預託金はその車を廃車にする際の処理費用として前払いしているものであり、購入時は預託金(資産)として計上し、廃車時に費用処理する必要があります。
また、交通違反による罰金や反則金も経費として認められません。
個人事業主が行う車の経費処理の方法
個人事業主が事業用の車両を経費計上する場合、適切な減価償却処理が必要です。取得価額が30万円以上の車両は固定資産であるため、法定耐用年数に基づいて費用化していきます。
以下で、詳しく見ていきましょう。
車は固定資産として減価償却する
一般的に車両は長期にわたって使用する資産であるため、購入時に全額を一括で経費計上はできません。取得価額が30万円以上の車両は固定資産として登録し、法定耐用年数に応じて減価償却を行う必要があります。
新車を購入した場合、法定耐用年数の6年をかけて費用化していきます。ただし、取得価額が30万円未満の場合は、先述の特例措置によって購入年度に全額を経費計上が可能です。
減価償却の計算方法には定額法と定率法がある
減価償却の方法には、定額法と定率法の2種類がありますが、個人事業主の場合は原則として定額法を使用します。
定額法は取得価額に定額法の償却率を掛けて計算し、毎年同じ金額を償却していく方法です。1月に取得した300万円の車両を6年で償却する場合、毎年50万円ずつ費用化することになり、計算が簡単で経理処理が円滑に進むメリットがあります。
一方、定率法は未償却残高に定率法の償却率を掛けて計算する方法で、初年度の償却額が最も大きく、その後徐々に減っていきます。初年度の節税効果が大きいものの、計算が複雑になりがちです。
なお、個人事業主でも定率法を選択することも可能ではありますが、その場合はあらかじめ「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を税務署に提出しておく必要があります。
どちらの方法を選択しても、一度選んだ償却方法は継続して適用しなければなりません。途中で変更することはできないため、事業の状況や将来の収支計画を考慮して慎重に選択することが重要です。
新車と中古車では償却年数が異なる
法定耐用年数は、新車と中古車で異なります。新車の普通自動車は6年、軽自動車は4年が基本的な耐用年数です。
一方、中古車の耐用年数は新車登録からの経過年数で変わります。経過年数が法定耐用年数よりも短い場合は、以下の計算式で耐用年数を算出します。
この計算式で求めた耐用年数が2年以下の場合は、2年とされます。また、1年以下の数値は切り捨てになる点にも注意しましょう。
経過年数がすでに法定耐用年数を超えている場合は、法定耐用年数に0.2を掛けるため2年未満に該当し、法定耐用年数は2年と判断します。
このように中古車は新車よりも耐用年数が短くなるため、より高い節税効果が期待できます。
経費で落とすなら新車・中古車どちらが良いか
車両そのものの経費計上の観点から考えると、中古車、特に4年落ち以上の中古車は高い節税効果が期待できます。
ただし、新車は購入時の費用は高額になるものの、保証制度が充実しており、修理費用や維持費を抑えられるメリットがあります。一方で中古車は初期投資を抑えられ、早期の減価償却が可能ですが、新車と比較すると摩耗しているためメンテナンスの頻度が高くなりがちであったり、予期せぬ故障修理費用が発生したりするリスクが高い点は無視できません。
事業規模や収益とのバランスも考慮し、自身の事業状況に応じた検討が必要といえるでしょう。
カーリースという選択肢もある
個人事業主が事業に使用する車を、購入ではなくカーリースで手配するという方法もあります。リースした車は所有しているわけでなく借りている状態であるため、固定資産として計上する必要がなく、毎月の支払額を全額「リース料」として経費にすることが可能です。
また、多くの場合リース料金には自動車税や保険料、メンテナンス費用なども含まれているため、仕訳の手間がかからず経理処理が簡単な点もメリットです。
ただし走行距離の制限がある、原則として中途解約はできないなどのカーリースならではの注意点もあります。また、リースの種類などによっては全額経費にはできないケースもあるため、専門家とも相談しながらどの車の取得方法がよいかを検討することをおすすめします。
正しい経費処理方法を理解しておくことが大切
個人事業主にとって、車の経費計上は大きな節税効果が期待できる一方で、適切な処理を怠ると税務調査で指定を受けるリスクもあります。事業利用とプライベート利用の区分は慎重に行い、合理的に家事按分するなど正しい経理処理方法をしっかりと理解しておきましょう。
どこまで経費にできるのかなどの判断に迷ったら、必要に応じて専門家に相談することも大切です。
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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
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