- 更新日 : 2025年1月7日
個人事業主も復興特別所得税を支払う?納付手続きや計算方法を解説
東日本大震災からの復興を目的とした復興特別所得税は、個人事業主も納めなければなりません。会社員の場合は、源泉徴収されるため意識する機会は少ないですが、個人事業主は自ら計算して納付する必要があります。本記事では、個人事業主が知っておくべき復興特別所得税の納付方法や計算方法、そして申告漏れのリスクについて解説します。
目次
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復興特別所得税とは
復興特別所得税は、東日本大震災からの復興を目的として導入された税金です。復興特別所得税は、2011年に制定された「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」に基づき、2013年から課税が始まりました。課税期間は2037年までの25年間にわたります。
復興特別所得税の対象は、すべての所得税納税者です。所得税に加算される形で課税されるため、個人事業主は確定申告の際に、所得税と同時に申告・納付しなければなりません。また、源泉徴収義務者には、給与や報酬の支払時に所得税と併せて復興特別所得税を徴収し、国に納付する義務があります。
復興特別所得税によって得られる収入は、被災地のインフラ再建や被災者支援、産業再生などに充てられ、復興を支える重要な財源となっています。
なお、復興特別所得税の税率や計算方法、納付方法については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
個人事業主に復興特別所得税の納付義務はある?
個人事業主にも復興特別所得税の納付義務があります。復興特別所得税は、所得税を納めるすべての個人に課されるためです。所得税が源泉徴収される給与所得者とは異なり、個人事業主は確定申告を通じて納付を行う必要があります。
復興特別所得税は、「基準所得税額」に対して課されます。この基準所得税額とは、所得税額から税額控除を差し引いた額です。
【個人の基準所得税額】
- 居住者(非永住者以外):すべての所得に対する所得税額が対象となる
- 居住者(非永住者):国内源泉所得および国外源泉所得のうち国内で支払われたもの、または国内に送金されたものが対象となる
- 非居住者:国内源泉所得に対する所得税額が対象となる
- 外国税額控除が適用される場合は、控除前の所得税額が基準となる
個人事業主は、これらの計算を正確に行い、確定申告を通じて適切に納付する必要があります。
個人事業主の復興特別所得税の納付方法と納付期限
経営者は、自身の復興特別所得税の支払いについてだけでなく、従業員における復興特別所得税の源泉徴収・納付についても義務を負っているため、双方について理解しておく必要があります。ここでは、それぞれの納付方法と納付期限について解説します。
納付方法
「個人事業主自身の場合」と「従業員給与の源泉徴収の場合」それぞれの納付方法は、以下のとおりです。
【個人事業主自身の場合】
所得税および復興特別所得税は、例年2月16日〜3月15日(申告納期限が土曜日・日曜日・国民の祝日・休日の場合は、その翌日が申告納期限となる)の確定申告期間内に申告および納付を行うことが一般的です。確定申告書に記載した所得税および復興特別所得税の合計額を、申告書提出時に納税地を所轄する税務署へ納付しましょう。
納付方法は、以下の方法から選択できます。
- ダイレクト納付(口座引き落としで納付)
- インターネットバンキング
- クレジットカード納付
- スマホアプリ納付
- コンビニ納付(QRコード・バーコード)
- 窓口納付
【給与所得者の場合(源泉徴収)】
個人事業主が従業員を雇用している場合、給与から所得税と復興特別所得税を源泉徴収し、税務署に納付しなければなりません。源泉徴収額は「源泉徴収税額表」に基づいて計算し、「所得税徴収高計算書(納付書)」に記載して納付します。なお、年末調整も所得税と同様に実施します。
また、従業員が常時10人未満の場合には、「納期の特例」を利用し、半年分の源泉徴収額をまとめて納付することが可能です。この特例を適用するには、事前に税務署へ「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出し、承認を受ける必要があります。
納付期限
個人事業主の場合、例年は前述の確定申告期間内(毎年2月16日〜3月15日)に申告と納付を行うことが一般的です。
一方、従業員の給与や賞与から源泉徴収した税額は、支払い月の翌月10日までに税務署へ納付が必要です。なお、従業員が常時10人未満の場合は「納期の特例」を利用でき、半年分をまとめて7月と1月に納付することが認められています。
復興特別所得税の予定納税
復興特別所得税の予定納税は、前年の所得金額や税額をもとに計算された金額(予定納税基準額)が、15万円以上の場合に適用される制度です。この場合、所得税および復興特別所得税の一部を前払いすることになります。
予定納税基準額は、毎年5月15日現在における前年分の所得金額や税額をもとに計算されます。税務署から予定納税基準額の通知を受けた事業主は、指定された期日までに納付をしなければなりません。
予定納税基準額の3分の1を第1期分として7月1日から7月31日までに、第2期分として11月1日から11月30日までに3分の1を納付します。
予定納税で納付した金額は、翌年の確定申告で納税額から差し引かれ、過不足分が精算されます。
従業員の場合、通常は年末調整で税額が精算されるため、予定納税の対象にはなりませんが、副業収入などが一定額を超える場合には対象となることもあるため注意が必要です。
復興特別所得税の計算方法
個人事業主における復興特別所得税計算式と具体例は、以下のとおりです。
【復興特別所得税計算式】
【具体例】
個人事業主の年間売上(収入)金額が、600万円であった場合を仮定します。
<1.所得税の課税所得を計算する>
課税所得は、年間売上(収入)金額から必要経費を差し引き、さらに所得控除を引いて求めます。
- 売上金額:600万円
- 必要経費:260万円
- 各種所得控除:180万円
- 税額控除:なし
課税所得の計算式
<2. 所得税額を計算する>
課税所得に対して所得税の税率を適用します。税率は課税所得に応じた累進課税で決まります。課税所得160万円の場合の税率は5%であり、控除額はありません。
所得税額の計算式
<3. 復興特別所得税を計算する>
復興特別所得税は、基準所得税額に対して2.1%を乗じて計算します。
復興特別所得税の計算式
<4. 合計納税額を確認する>
最終的に、所得税額と復興特別所得税を合算して納税額が確定します。
合計納税額の計算式
復興特別所得税の申告漏れがあった場合のリスク
復興特別所得税の申告漏れが発生すると、過少申告加算税や延滞税が課されるリスクもあるため注意が必要です。
自主的に修正申告を行えば、過少申告加算税は免除されますが、税務署から調査通知を受けた後の修正申告では、新たな税金と加算税が発生します。また、税務署による更正が行われた場合には、高率の加算税が適用されてしまいます。
加えて、納税遅延日数に応じて延滞税も課せられるため、早期の対応が重要です。申告漏れを防ぐため、過去の確定申告書を見直し、誤りがあれば速やかに税務署に相談し修正申告を行うようにしましょう。
復興特別所得税を理解し、適切に納税しよう
復興特別所得税は、東日本大震災からの復興を支える重要な税金であり、個人事業主も納付義務があります。所得税と併せて申告・納付する必要があり、その計算方法や納付方法を正しく理解しておくことは、事業を円滑に進める上で不可欠です。万が一、申告漏れがあった場合には、加算税や延滞税が課されるリスクもあるため、日頃から適切な申告・納税を心がけることが重要です。
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