• 更新日 : 2025年1月7日

個人事業主が使える経費テクニックは?経費にできるものや目安も解説

個人事業主が経費テクニックをうまく活用できると、確定申告時の税負担の軽減が可能です。ただし、適切な処理でなければ税務調査で指摘を受けるリスクもあるため、正しい経費処理の知識が求められます。

本記事では、個人事業主が活用できる経費テクニックや注意点について、詳しく解説します。

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個人事業主の経費とは?

個人事業主の経費とは、事業活動を行うために必要不可欠な支出を指します。仕入代や交通費通信費など、業務上必要とされる費用が経費です。

なお、経費として認められるためには「事業との関連性」が重要な判断基準になります。プライベートの支出と明確に区別し、事業運営に直接関係する費用であることを説明できなければなりません。

経費計上が節税になる理由

個人事業主の課税所得額は「収入-経費-所得控除」という計算式に基づいて算出されます。経費を適切に計上すると課税所得額が減少し、結果として納める税金を抑えられるため、経費計上が節税につながる仕組みです。

そのため、事業を行うにあたって使用した費用は、もれなく経費計上する必要があります。

経費にできるもの

個人事業主が経費として使用できる主な項目とその勘定科目を、以下の表にまとめました。

勘定科目経費
租税公課事業税、固定資産税、印紙税、事業用自動車の自動車税など
水道光熱費事務所の水道代、電気代、ガス代など
通信費電話代、インターネット料金、切手代、はがき代など
広告宣伝費Webサイト制作費、チラシ・ポスター印刷費、広告掲載料など
旅費交通費業務上の出張費、宿泊費、交通費、駐車場代など
消耗品費文具、事務用品、10万円未満のパソコンなど
地代家賃事務所・店舗の賃料、駐車場使用料など
外注費デザイン依頼、ウェブサイト構築費用など

これらの経費を計上する際の重要なポイントとして、事業との関連性を明確にする点が挙げられます。また、10万円以上のパソコンや機材については、減価償却資産として扱い、毎年分割して経費計上しなければなりません。

経費として認められるかの判断基準

経費として認められるためには、「事業との関連性」「必要性」「金額の妥当性」という3つの基準を満たす必要があります。

事業との関連性については、その支出が事業の遂行に直接的に必要かどうかを判断します。たとえば、完全在宅で仕事をしているイラストレーターの場合、デザインソフトの月額利用料は経費として認められますが、「通勤用の車」という名目での支出は経費と認められません。

必要性の判断においてはその支出が事業の維持・発展に本当に必要なものか、金額の妥当性については、支出額が事業規模や業界の一般的な水準から見て適切かどうかを判断します。

さらに、こうした基準を満たしていることを証明するため、取引の記録や領収書などの証憑書類を適切に保管することが大切です。特に飲食費などの交際費については、取引先との関係性や商談の目的など、業務上の必要性を明確に説明できることが求められます。

経費率の目安

経費率の適正水準は事業規模や業種などによって変動するため、一律の基準はありません。重要なのは、事業実態に即した正しい経費計上を行うことです。

一般的に、消費税簡易課税制度で定められるみなし仕入率が目安といわれています。業種別のみなし仕入率は、以下のとおりです。

  • 第1種事業(卸売業):90%
  • 第2種事業(小売業、飲食料品の譲渡に係る林業・農業・漁業):80%
  • 第3種事業(第2種事業を除く林業・農業・漁業や製造業、建築業など):70%
  • 第4種事業(飲食業など):60%
  • 第5種事業(サービス業・金融・保険業など):50%
  • 第6種事業(不動産業):40%

なお、個人事業主やフリーランスのWebデザイナー・エンジニアなどは、経費率が60%を超えると税務調査の対象となる可能性が高くなるといわれています。

参考:国税庁 No.6509 簡易課税制度の事業区分

個人事業主が使える経費テクニック

個人事業主が活用できる経費計上のテクニックとしては、以下の4つの方法が挙げられます。

  • 家事按分で事業分を経費にする
  • 短期前払費用の特例を活用する
  • 少額減価償却資産の特例を活用する
  • 少額の消耗品費や通信費も経費にする

詳しく見ていきましょう。

家事按分で事業分を経費にする

家事按分とは、事業とプライベートを兼ねた支出について、事業分だけを経費計上するために適切な割合で分ける計算方法です。特に自宅を事務所として使用している個人事業主にとって、重要な経費テクニックといえます。

家賃のほか、光熱費や電話代、インターネット料金なども按分したうえで経費にすることが可能です。車を事業とプライベートで兼用している場合も同様で、車の取得費用のほか、ガソリン代や車検費用などの維持費も経費にできます。

ただし、使用時間や使用面積、走行距離(車の場合)など、合理的な基準に基づいて按分しなければ税務署に否認されるリスクがあるため注意しましょう。業務使用時間や面積の記録を適切に保管し、按分の根拠を示せるようにしておくことが大切です。

短期前払費用の特例を活用する

短期前払費用の特例とは、支払い後1年以内に提供されるサービスや商品の前払い費用を、支払い時に一括で経費計上できる制度です。通常、前払費用は資産として計上し、役務の提供を受けた分だけ経費化する必要はありますが、この特例を活用することで節税効果を得られます。

この特例を利用するためには、青色申告者であることが条件です。さらに、以下の条件を満たす必要があります。

  • 支払った日から1年以内に役務の提供を受けること
  • その役務は継続して提供を受けること
  • 実際に費用を事業年度末までに支払っていること
  • 継続して同じ経理処理を行うこと

資産の譲渡に関しては特例対象外となるため注意が必要です。適用できる例としては保険料や家賃・駐車場代、電子新聞や書籍(機関誌など)の購読料などが挙げられます。

参考:国税庁 No.5380 短期前払費用として損金算入ができる場合

少額減価償却資産の特例を活用する

少額減価償却資産の特例とは、30万円未満の事業用資産を購入した際に、その全額を即時に経費として計上できる制度です。通常は複数年に分けて経費計上する必要がある固定資産でも、この特例を利用することで購入時に一括で経費化できます。

個人事業主がこの特例を利用するには、青色申告を行っていることが条件になります。対象となる資産は、取得価額が30万円未満の減価償却資産で、年間の取得価額の合計額は300万円が上限です。

パソコンやソフトウェア、事務用機器などが対象となりますが、2022年4月以降は貸付用の資産は対象外です。この特例は2026年3月31日までの期間限定制度となっているため、設備投資を検討している場合はこの期間内での活用を検討するといいでしょう。

参考:国税庁 No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

少額の消耗品費や通信費も経費にする

少額の消耗品費や通信費も適切に経費計上することで、節税効果を高められます。文房具や切手代など、一つひとつは小さな金額の経費であっても、積み重なると大きな金額になります。

少額の出費であっても、事業関連性を明確にできるのであればもれなく経費として計上しましょう。

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個人事業主が経費として計上できる税金

個人事業主が経費(租税公課)として計上できる主な税金は、以下のとおりです。

  • 個人事業税
  • 固定資産税(事業用資産分)
  • 都市計画税(事業用資産分)
  • 自動車税・自動車重量税(業務使用分)
  • 印紙税

所得税や住民税、相続税、贈与税など個人に係る税金は、事業との関連性がないため経費として認められません。また、交通違反の反則金や延滞税、加算税などのペナルティ的な支払いについても同様です。これらは本来発生する必要のない支出であり、事業の遂行に必要な費用とは認められないためです。

消費税については、税込経理方式を採用している場合のみ租税公課として経費計上が可能です。税抜経理方式の場合は、別途仮払消費税等として処理する必要があります。

個人事業主だから経費に計上できないものは?

法人では経費計上できる項目でも、個人事業主の場合は認められないケースもあります。

まず、事業主本人の給与や賞与は経費として認められません。これは個人事業主には「給与」の概念がなく、売上から経費を差し引いた残りが所得となるためです。また、事業主本人や家族従業員への福利厚生費も、経費として認められません。健康診断費用、人間ドック費用、スポーツジムの会費などが該当します。

社会保険関連では、事業主本人の国民年金保険料、国民健康保険料、生命保険料なども経費として計上できません。ただし社会保険関連は、確定申告時に所得控除の対象となります。なお、こうした費用は事業主本人に関するものは経費として認められませんが、従業員に対する支出は経費計上できます。

個人事業主が過度に経費計上するリスク

個人事業主が過度に経費計上を行うと、税務調査の対象となる可能性が高まります。

税務調査で不適切な経費計上が発覚した場合、追加の税金支払いが必要となります。過少申告加算税として不足分の10〜15%が課され、悪質な場合は重加算税として本税の35〜40%が追加で課税される可能性があります。

また、過度な経費計上により利益が少なく見える場合、銀行からの融資を受けにくくなるリスクを否定できません。このようなリスクを回避するためには、経費の内容や金額について合理的な説明ができるように、領収書などの証憑書類を適切に保管し、事業との関連性を明確にしておくことが重要です。

経費テクニックは正しく理解して使うことが求められる

家事按分や少額減価償却資産の特例などの経費テクニックは、適切に使用すれば高い節税効果が期待できる可能性もあります。

ただし、経費の過度な計上は税務調査や追徴課税のリスクを伴います。重要なのは、事業実態に即した適切な経費計上を行うことです。正しい方法で経費テクニックを活用し、リスクを回避しながら節税することを心がけましょう。

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