- 更新日 : 2024年11月21日
個人の税務調査はいくらから?どこまで調べる?追徴課税の平均や流れについて解説
税務調査が入るかどうか、不安を感じている個人事業主の方は多いのではないでしょうか。法人に比べると頻度は少ないですが、個人事業主にも税務調査は入ります。
そのため会計ソフトなどを使った、適切な対策が必要です。本記事では税務調査の概要や、税務調査に入られないための正しい対策を紹介します。
目次
個人事業主に税務調査はくる?
個人事業主の場合でも、税務調査は入ります。法人に比べると事業規模が小さいことの多い個人事業主に、税務調査が入るかどうか気になっている方も多いでしょう。
頻度は法人に比べると多くはありませんが、事業規模の大小は関係ありません。
「個人の税務調査は10年以上来ない」って本当?
個人事業主が税務署に入られる頻度は、100年に1回と言われています。実際に国税庁が発表している資料を見てみましょう。
「令和4年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」によると、個人事業主の消費税の申告件数は105万5000件です。これに対し「令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」によると、税務調査の件数は2万6000件とされています。
【消費税を申告している個人事業主が税務調査に入られる可能性】
2万6000件÷105万5000件×100=2.5%
約2.5%の個人事業主に税務調査が入っていることになり、100年に1回とまではいかなくても10年以上は税務調査は来ない場合が多いでしょう。
ただし、これはあくまで税務調査の割合を計算したものであり、申告に不審な点があれば税務調査はいつ入ってもおかしくないことは認識しておきましょう。
参考:国税庁 令和4年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について (報道発表資料)
参考:国税庁 令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況
個人事業主の税務調査はいくらから来る?
個人事業主の場合は、課税所得が1,000万円を超えると税務調査の対象になりやすいと言われています。税務調査は、売上の計上もれや経費の過大申告などを確認するために行われます。
売上の規模が大きくなればなるほどミスもでやすくなるため、事業規模の大きい個人事業主ほど税務調査は入りやすいでしょう。所得が1,000万円を超える規模であれば対象になりやすいといわれていますが、税務署が公式に発表しているわけではありません。
税務調査が来やすい個人事業主の特徴
税務調査が来やすい個人事業主には、以下のような特徴があります。
- 確定申告をしていない
- 申告漏れが多いビジネスをしている
- 売上が伸びている
- 売上が1,000万円を少し下回っている
- 多額の経費を計上している
- 現金商売を行っている
- 税理士がついていない
それぞれの特徴について見ていきましょう。
確定申告をしていない
申告義務があるにもかかわらず、そもそも確定申告を行っていない人は税務調査の対象になりやすいです。個人事業を行っていても所得が発生しなければ、申告する必要はありません。そのため所得が上がっていたとしても、申告しなければ税務署にばれないと考える人もいるかもしれません。
しかし取引先からの支払調書などで、おおよその売上などは税務署でわかります。申告すべき所得があるにもかかわらず申告をしていなければ、税務署は調査に入る可能性が高いでしょう。
申告漏れが多いビジネスをしている
申告漏れの多いビジネスをしていると、税務調査の対象になりやすい傾向にあります。国税庁では、1件あたりの申告漏れ所得の金額の大きさを公表しています。
順位 | 業種 | 1件あたりの申告漏れ所得金額 | 1件あたりの追徴課税額 |
---|---|---|---|
1 | 経営コンサルタント | 33,670,000円 | 6,760,000円 |
2 | くず金卸売業 | 24,830,000円 | 9,520,000円 |
3 | ブリーダー | 20,750,000円 | 4,540,000円 |
4 | 焼肉 | 16,110,000円 | 3,190,000円 |
5 | タイル工事 | 15,980,000円 | 2,660,000円 |
上記のような業種は申告漏れが多いため、個人事業で行っている場合は税務調査の対象となりやすいでしょう。
売上が伸びている
売上が伸びており、事業規模が拡大している個人事業主も税務調査の対象になりやすいでしょう。事業規模が大きくなるほど、経費の過大計上などの申告漏れも発生しやすくなります。税務署も限られた人員のなかで効率よく調査をする必要があり、規模の大きい事業を調査するほうが効率はよいです。前年に比べて大幅に売上が増加している場合などは、対象になりやすので注意しましょう。
売上が1,000万円を少し下回る
売上が1,000万円をぎりぎり下回っていると、税務調査の対象になりやすいです。インボイス登録をしている場合を除くと、売上が1,000万円を超えると、その2年後から消費税の課税業者となり消費税を納税しなければいけません。そのため、毎期売上が1,000万円を少し下回っていると、消費税逃れを疑われる可能性があります。毎年900万円台の売上を計上している個人事業主は、注意しましょう。
多額の経費を計上している
同じ業種や規模の企業と比べて、経費が多すぎる場合なども税務調査の対象になりやすいでしょう。所得が少なければ少ないほど税金は安くなるため、経費を多く計上するほうが税金はおさえられます。
そのため、事業とは関係ないプライべ―トな支出を経費に計上するなどして、不当に経費を大きくしているケースも少なくありません。あまりにも経費が多いと脱税を疑われ、税務署に目をつけられやすくなります。
現金商売を行っている
小売業など現金商売を行っている場合も、税務調査の対象となりやすいでしょう。現金取引は振込と比べると記録が残らないため、売上の過少申告など改ざんがしやすいです。そのため、税務署から疑われる可能性があります。美容院や飲食店など現金が中心の商売では、日々帳簿を作成するなどの徹底が必要です。
税理士がついていない
税理士が代理申告していない場合は、申告書の信頼性が低く税務署から疑われやすくなります。個人事業主の確定申告は税理士に頼むことが多いですが、自分で申告することも可能です。
しかし税理士が作成した申告書に比べると、自分で行う申告はミスが起きやすいでしょう。また経費の過大計上など故意の虚偽申告も行いやすいです。このように自分で行う申告は、税務署からは疑われやすいでしょう。
個人事業主の税務調査における追徴課税の平均は?
個人事業主に税務調査が入った場合、追徴課税はどれくらいになるでしょうか。所得税と消費税、それぞれの平均額を紹介します。
所得税の追徴課税の平均は274万円
国税庁の「令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」によると、所得税の追徴課税の平均額などは下記の通りです。
金額 | 前年比 | ||
---|---|---|---|
追徴課税の合計額 | 本税 | 81,800,000,000円 | 125.8% |
加算税 | 16,200,000,000円 | 127.6% | |
合計 | 98,000,000,000円 | 126.1% | |
1件あたりの追徴課税の平均額 | 本税 | 2,290,000円 | 84.8% |
加算税 | 450,000円 | 84.9% | |
合計 | 2,740,000円 | 84.8% |
※一般調査による追徴課税のみ
令和4年度に行われた所得税の税務調査では、追徴課税の合計額は980億円で前年比126.1%と大きく増えています。一方で1件あたりの追徴課税は274万円で、前年比84.8%と少なくなっていることがわかります。
消費税の追徴課税の平均は156万円
続いて消費税の平均も見ていきましょう。「令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」によると、消費税の追徴課税は下記の通りです。
金額 | 前年比 | ||
---|---|---|---|
追徴課税の合計額 | 本税 | 26,400,000,000円 | 138.9% |
加算税 | 5,800,000,000円 | 152.6% | |
合計 | 32,200,000,000円 | 141.2% | |
1件あたりの追徴課税の平均額 | 本税 | 1,280,000円 | 91.4% |
加算税 | 280,000円 | 100.0% | |
合計 | 15,600,000円 | 92.9% |
※一般調査による追徴課税のみ
令和4年度に行われた消費税の税務調査では、追徴課税の合計額が322億で前年比141.2%と大きく増えています。1件当たりの平均で見ると156万円で92.9%と、前年に比べるとやや下がっています。
個人事業主に税務調査が来た際の流れ
個人事業主に税務調査が来る際の基本的な流れは、以下のとおりです。
- 税務署からの事前通知
- 事前準備を行う
- 実地調査が行われる
- 結果に基づいて修正申告・納税する
それぞれの流れを詳しく説明していきます。
税務署からの事前通知
税務調査が入る場合、通常は税務署から電話で事前通知があります。調査官から訪問日の打診がありますが、都合が悪いようであれば別の日に調整することも可能です。また通知の際には調査にかかる期間や、必要な書類の提出期限も明示されるでしょう。
また、顧問税理士がいる場合で「税務代理権限証書」の「調査の通知に関する同意」欄にチェックが入っているときには、顧問税理士にも通知が入ります。同意にチェックされているかどうかは確定申告で確認することが可能です。
事前準備を行う
事前通知から実地調査までの期間に、事前準備を行います。事前準備では帳簿や領収書、請求書や口座の取引明細など多くの書類を準備しなければなりません。
書類の準備ができたら、税理士とミーティングを行い課題や確認事項などを話しておくようにしましょう。
実地調査が行われる
実地調査では調査官が会社や店舗を訪れ、調査が行われます。調査期間は2~3日程度が一般的ですが、脱税が疑われる場合はさらに長くなります。一般的なスケジュールは、以下のとおりです。
- 1日目午前・・・経営者へのヒアリングや会社概要の確認
- 1日目午後・・・帳簿などの確認
- 2日目午前・・・疑問点などを確認しながら精査
- 2日目夕方・・・税務調査結果の講評
最終的な結果がでるまでには、おおむね2~3ヶ月程度かかる場合が多いです。
結果に基づいて修正申告・納税する
一般的には、調査結果を簡単にまとめたメモのようなものが提示されます。
メモには発見された問題点や誤り、追加の課税金額などが記載されています。調査の結果に不満がある場合は、異議申し立ての権利を行使することも可能です。
個人事業主が税務調査に入られないための対策
個人事業主が税務調査に入られないようにするためには、次のような対策があります。
- 会計ソフトで正しく「記帳」する
- 会計ソフトで正しく「申告」する
- 税理士に相談する
それぞれの対策について、詳しく見ていきましょう。
会計ソフトで正しく「記帳」する
不用意に税務調査に入られないための対策の1つが、正しい記帳です。売上の計上基準や経費の計上に含める範囲などを明確にしておき、取引ごとに正しく判定しておく必要があります。また取引の都度正確に記録を残して、後でだれが見てもわかるようにしておくとよいでしょう。
できるだけ正しく記帳するためには、会計ソフトの連携機能を活用するとよいでしょう。会計ソフトのなかにはクレジットカードの取引や銀行口座との連携に対応しており、ミスなく簡単に記帳できるものがあります。うまく活用すれば、正しい記帳が簡単に行えます。
会計ソフトで正しく「申告」する
正しく申告を行うことも、税務調査に入られないための対策です。売上を過少申告したり、前年の所得をそのままコピーしたりすることは避けましょう。税務署から問い合わせの電話や手紙が来る可能性が高くなります。
会計ソフトを利用し、できるだけ丁寧に詳しく記入するようにしましょう。詳細まで丁寧に記載することで、「ミスが少ないだろう」という印象を与えられます。
税理士に相談する
税理士を通して申告することも、税務調査の対策になります。自分で行う確定申告はミスも起きやすく、信頼性にかけるでしょう。費用はかかりますが、税理士を通して申告することで申告書の信頼性を高められます。
個人事業主でも税務調査への対策は必要
個人事業主のなかには、税務調査が入るかどうか気にしている方も多いでしょう。法人に比べると頻度は低いですが個人事業主にも毎年税務調査は入っており、追徴課税も発生しています。過去に追徴課税の多い業種を営んでいる場合や売上規模が多い場合は、注意が必要でしょう。
不用意に税務調査に入られないためには、個人事業主であっても対策が必要です。確定申告を税理士に依頼するのもよいですし、日々の記帳などを正確に行うことも重要です。会計ソフトを活用して正しい申告書を作成することで、申告書の信頼性を高められるでしょう。
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