• 更新日 : 2025年1月7日

個人事業主は労働基準法が適用される?労働時間のルールや判断基準を解説

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2025年(令和7年)提出 確定申告まとめ

▽提出期限

2025年2月17日(月)~ 2025年3月17日(月)

※上記は2024年/令和6年分の申告を行う期間です(参考記事はこちら

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労働基準法は、労働者を守る法律です。原則として、個人事業主には労働基準法が適用されませんが、例外として適用されることもあります。個人事業主に労働基準法が適用される場合の判断基準や適用される場合の個人事業主の権利、個人事業主を保護する法律について解説します。

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労働基準法とは

労働基準法は、労働者の生活を担保するために定められた最低限の労働条件の基準に関する法律です。労働基準法に定める労働条件よりも低下しないように、事業者は労働条件の向上に努めることが求められます。

労働基準法には、以下のような内容が定められています。

  • 労働契約の締結において労働条件を明示すること
  • 労働者には原則として30日前までに解雇予告をすること
  • 賃金は労働者に直接通貨により全額を支払うこと
  • 賃金の最低基準は最低賃金法の定めに従うこと
  • 1週間あたり40時間を超える労働などには割増賃金を支払うこと
  • 原則として週1回の休日を与えること
  • 雇用日から起算して6カ月継続勤務した労働者には年次有給休暇を与えること など

労働基準法の対象

労働基準法が適用されるのは、日本国内で働く労働者です。労働者とは、事業者と雇用契約などを締結して労働している人のことです。正社員のほか、非正規で働く派遣社員やパートタイマー、アルバイトなどが該当します。

事業に従事している個人でも、事業主に雇用されていない会社の役員などは対象外です。請負契約などで従事している人や個人事業主の専従者(個人事業主と生計を一にしており、事業に従事している配偶者や親族)も労働者には該当しません。

労働基準法における労働時間の上限

労働時間については、労働基準法において、1日8時間かつ1週間あたり40時間までと原則的な定めが設けられています。休日も、少なくとも1週間あたり1回は与えなければなりません。これらの基準を超えて労働者に労働させる場合は、36協定の締結と届出が必要です。36協定(労働基準法第36条に基づく労使協定)により、時間外労働や休日出勤が認められます。

なお、36協定を締結しても、無制限に時間外労働が認められるわけではありません。臨時的な特別な事情を除き、原則として月45時間かつ年360時間の制限があります。臨時的な特別な事情がある場合でも、時間外労働や休日出勤には制限があります。

労働基準法に違反した場合の罰則

労働基準法では、第117条~第121条において罰則が設けられています。

中でも重い罰則となっているのが第117条に定める第5条の違反です。脅迫や拘束などにより強制労働を行った場合には、1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金が規定されています。

第119条は、多くの規定の違反に対応した罰則です。例えば、36協定の上限違反や賃金未払いなどで適用される可能性があり、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が定められています。

労働基準法についての詳細は、以下の記事を参照ください。

労働基準法とは?実務で気をつけたいポイントをわかりやすく紹介

個人事業主は労働基準法が原則適用されない

労働者とは、事業者と雇用契約を結んだ人のことです。個人事業主は雇用契約以外の契約で仕事を受注することから、原則として労働者には該当しません。つまり、個人事業主に労働基準法は適用されないことになります。

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個人事業主に労働基準法が適用されるケース

個人事業主には、原則として労働基準法は適用されません。しかし、例外的に労働基準法が適用されるケースもあります。雇用契約を締結していない場合でも、実質的に労働関係があると認められる場合です。個人事業主に労働関係が認められるかどうか、労働基準法適用の判断ポイントは以下で詳しく紹介します。

個人事業主に労働基準法が適用されるか判断するポイント

個人事業主に労働基準法が適用されるかどうかは、契約の形式のみで判断されるものではありません。個別の事案ごとに、指揮監督下の労働であるか、報酬の労働対償性があるかなどの総合的な判断に委ねられます。主な判断の基準となるのが、以下の6つです。

  • 仕事の依頼に対する諾否の自由の有無
  • 業務遂行上の指揮監督の有無
  • 勤務場所・勤務時間の拘束性の有無
  • 報酬の労務対償性の有無
  • 事業者性の有無
  • 専属性の程度

仕事の依頼に対する諾否の自由の有無

個人事業主と労働者の違いのひとつは、業務依頼や指示に対する諾否の自由です。個人事業主が仕事の依頼を断れる自由があったり、業務指示を断れる自由があったりする場合には、個人事業主と事業者に指揮監督関係はないといえます。一方、仕事の依頼や業務指示について個人事業主が自由に受けるかどうか決められない場合は、指揮監督関係が認められる可能性があります。

業務遂行上の指揮監督の有無

個人事業主は、発注者から細かな指揮命令は受けません。委託された業務の範囲内で、ある程度自由に業務を遂行することが認められるためです。そのため、受注者から業務内容や仕事の進め方などについて具体的な指示があると、指揮監督を受けているとされ、指揮監督関係が認められる可能性があります。重要なのは指揮監督の程度です。発注者による一般的な範囲内での指示は、労働関係上の指揮監督には該当しません。

勤務場所・勤務時間の拘束性の有無

勤務場所や勤務時間が指定されているかどうかも、指揮監督関係があるかどうかの判断基準になります。一般的に、労働場所や時間を個人事業主が自由に決められないということは、発注者が労働を強いているとみることもできるためです。ただし、工事現場など特定の場所での作業が必要な業種もあるため、業務の性質に応じて判断されることになります。

ここまで紹介した、仕事の依頼や業務依頼の諾否の自由、具体的な指揮監督、勤務場所や時間の拘束性は、指揮監督下の労働を判断する基準です。自由度がないまたは低い場合、個人事業主でも労働関係がある労働者と認められる可能性があります。

報酬の労務対償性の有無

報酬の労務対償性とは、報酬がどのように支払われているかを示す基準です。労働者であるかどうかを判断する材料として使われます。

例えば、作業時間に応じて報酬が計算され、欠勤分の控除や残業代の支払いがある場合には、労働者に近いと判断できます。一方、仕事の成果物に対して報酬が支払われる場合には、労働者とは異なる可能性があると判断できるでしょう。

事業者性の有無

事業者性の有無とは、事業者としての要素が強いかどうかを判断するための基準です。例えば、本人が事業に必要な機材を用意しているか、同じ業務に従事する発注者の従業員と比較して報酬が高額か、業務の損害に対する責任を負っているか、などが判断基準になります。該当する要素が多い場合、事業者の要素が強く、労働者としての要素は弱いと判断できます。

専属性の程度

専属性の程度は、労働者としての要素が強いか判断するための基準です。発注者の正規社員と同程度の稼働時間が必要でほかの仕事を受注する時間的余裕がない場合や、契約により他社との業務が制約される場合は、労働者性が強いといえます。

なお、上記のほかにも労働者性や事業者性を判断する要素として、福利厚生の有無や労働保険の適用の有無、選考過程などが個人事業主の労働者としての判定でみられることがあります。

個人事業主に労働基準法が適用されるとどうなる?

労働基準法が適用されるケースでは、個人事業主であっても、事業者は労働者と同様に扱わなければなりません。

例えば、労働基準法が適用されることで、労働者並みの賃金が保証されるようになります。原則として労働者には労働時間に対応する最低賃金が保証され、最低賃金を下回る賃金は無効とされます。成果物に対して報酬が支払われる場合で、労働時間に置き換えると報酬額が最低賃金を下回る場合、個人事業主は不足分の支払いについて請求できる可能性があるでしょう。

労働時間に関連して、勤務時間や残業を指示された場合は、個人事業主は残業代や割増賃金を請求できる権利も得ることができます。

個人事業主を守る労働基準法以外の法律

個人事業主を保護する法律として、独占禁止法、下請法、フリーランス保護法について解説します。

独占禁止法

独占禁止法は、公正で自由な競争を促し、事業者が自由に活動できるように、市場を正しく機能させるための法律です。正式名称を「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」といいます。

独占禁止法では、不当な手段による競争相手の市場からの排除や新規参入者の妨害を禁止しています。事前に受注者や金額を決める「入札談合」や事業者同士が商品価格や販売数などを事前に取り決める「カルテル」なども独占禁止法で規制されている行為です。

発注者と個人事業主の関係では、発注者の優位的な地位の乱用による一方的な要求などは法に触れる可能性があります。

下請法

下請法は、独占禁止法を補完する目的で制定された法律です。親事業者(発注者)と下請事業者(受注者)との間の公正な取引と下請事業者の保護を目的とした法律です。正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」といいます。

下請法において禁止されているのは、親事業者による支払遅延、下請代金の減額、買いたたき、購入や利用の強制、報復措置、一方的な取引条件の変更などです。親事業者の優位的な立場を利用した不当な取引を規制しています。

保護 下請法

フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス保護法)は、令和6年11月に新たに施行された法律です。フリーランス(個人事業主)と発注者の取引の適正化や就業環境の整備を目的として制定されました。正式名称を「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といいます。

フリーランス保護法では、下請法と同様に、フリーランスに対する報酬の減額や買いたたき、不当な支払条件の変更、受領拒否などを禁止しています。

フリーランス保護法と下請法の違いは、保護の対象者です。下請法は、資本金要件1,000万円以下の下請事業者の委託取引を保護する法律です。フリーランス保護法は、従業員を雇用しない個人事業主(フリーランス)を保護するための法律で、下請法を補完しています。

個人事業主に労働基準法が適用されるケースもある

原則として、個人事業主に労働基準法は適用されません。個人事業主は、労働基準法の保護対象である労働者ではないためです。しかし、個人事業主であっても、発注者との関係がほとんど労働者と変わらないと認められる場合は労働基準法が適用され、労働者として保護の対象になることがあります。個人事業主として働く場合は、関連する法律について確認しておきましょう。

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