- 更新日 : 2024年12月20日
消費税の課税事業者・免税事業者とは?個人事業主向けにわかりやすく解説
個人事業主は、消費税の納税義務の有無によって「課税事業者」「免税事業者」の2つに分けられます。課税事業者に該当する場合、確定申告を行った上で消費税を納付する必要があります。
個人事業主の方の中には、自分が課税業者・免税事業者のどちらに当てはまるのか、気になる方もいるでしょう。
本記事では課税事業者・免税事業者の定義や、両者に該当する条件などについて詳しく紹介します。
目次
消費税の課税事業者と免税事業者の違い
自身が「課税事業者」「免税事業者」のどちらに該当するかによって、消費税を納付するべきかどうかが変わります。ここからは、消費税の課税事業者と免税事業者の違いについて解説します。
消費税の課税事業者とは
消費税が課される個人事業主は、課税事業者と呼ばれます。課税事業者は所得税の確定申告とは別に、消費税の確定申告を行わなければいけません。また、前年度の消費税額によっては、確定申告と別に消費税の中間申告も必要です。
個人事業主に関しては、前々年の1月1日~12月31日の期間内で課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者に該当します。ただし状況によっては、1,000万円以下であったとしても課税事業者に当てはまる可能性があります。
消費税の免税事業者とは
消費税が課されない個人事業主は、免税事業者と呼ばれます。課税事業者とは正反対の概念であり、消費税の確定申告や納付は不要です。
個人事業主が免税事業者になるには「前々年の1月1日~12月31日の期間内で課税売上高が1,000万円以下」など、いくつかの条件を満たす必要があります。
個人事業主が消費税の課税事業者となる条件
消費税の課税事業者になった場合は、消費税の確定申告・納付を行う必要があります。ここからは、個人事業主が消費税の課税事業者となる条件を一つずつ紹介します。
基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合
個人事業主における基準期間は、ある年の前々年の1月1日~12月31日の期間を指します。また、課税売上高とは消費税が課される売上高のことです。国内で事業として行われ、対価を得る取引には基本的に消費税が課されます。
基準期間の課税売上高については1,000万円を超えていると課税事業者になるため、売上高に対する消費税を計算し、納付しなければなりません。
特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合
特定期間とは、ある年の前年の1月1日~6月30日の期間です。基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合でも、特定期間の中での課税売上高が1,000万円を超えていれば課税事業者に該当します。
なお、1,000万円を超えているかの判定について、特定期間の課税売上高ではなく当該期間に支払った給与等の額を用いることも可能です。従業員を雇用して事業を運営している場合、仮に特定期間の中で課税売上高が1,000万円を超えていたとしても、給与等の額が1,000万円を超えなければ課税事業者にならない選択もできます。
適格請求書発行事業者に登録している場合
適格請求書発行事業者とは、税務署の審査を受けて、適格請求書(インボイス)を発行できると認められた事業者です。適格請求書は売手が買手に対して発行するもので、商品の消費税額などが記されている書類です。適格請求書を発行された買手は、記載されている消費税額を仕入税額として扱い、確定申告の際に納付する消費税額から控除できます。
適格請求書発行事業者に登録している場合、基準期間の課税売上高の額に関わらず課税事業者に該当します。また、課税事業者選択届出書を提出している場合も同様です。
個人事業主が消費税の免税事業者となる条件
ここからは個人事業主が消費税の免税事業者となる条件を紹介するので、課税事業者になる条件とあわせて確認してください。
基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合
課税事業者に該当する場合とは反対に、基準期間の中での課税売上高が1,000万円以下ならば免税事業者に該当します。しかし、特定期間の課税売上高の額によっては例外もあります。
特定期間の課税売上高が1,000万円以下の場合
特定期間における課税売上高も、免税事業者となる条件は1,000万円以下です。基準期間・特定期間の両方において課税売上高が1,000万円以下であるならば、消費税の申告・納付は不要です。
また、特定期間内における課税売上高が1,000万円を超えたとしても、当該期間に従業員に支払った給与等が1,000万円以下であれば免税事業者になれます。
適格請求書発行事業者に登録していない場合
基準期間や特定期間において課税売上高が1,000万円以下の場合でも、適格請求書発行事業者に登録している場合は消費税の納付義務が発生します。適格請求書発行事業者に登録しておらず、基準期間・特定期間の課税売上高の基準も満たしていなければ免税事業者に該当します。
個人事業主が開業して2年以内の場合
個人事業主が開業してから2年経っていない場合、基準期間においては事業を行っていないため課税売上高がありません。そのため、免税事業者として扱われます。
開業して2年以内の場合でも適格請求書発行事業者に登録していれば、課税事業者に該当します。
1,000万円を超えたり超えなかったりする場合の判定は?
基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合は課税事業者、1,000万円以下であれば免税事業者に該当します(特定期間の課税売上高・適格請求書発行事業者の登録状況などによって例外もあります)。
この課税売上高の算出方法は、基準期間において課税事業者・免税事業者のどちらであったかによって厳密には異なります。基準期間において課税事業者であった場合は「税抜売上高」、免税事業者であった場合は「税込売上高」を用いるという規定があるためです。つまり、数年にわたって売上高が1,000万円を超えたり超えなかったりしている場合は、課税売上高の計算を間違えやすくなるので注意が必要です。
一例として、令和2年~令和5年の税込売上高が下記のような場合、令和6年において課税事業者に該当するかどうかを考えてみましょう。
- 令和2年:900万円
- 令和3年:1,000万円
- 令和4年:1,050万円
- 令和5年:900万円
令和6年において課税事業者に該当するかどうかを判断する場合、基準期間になるのは令和4年です。また、令和2年の売上高が1,000万円以下であることから、令和4年は免税事業者であったことがわかります。この場合、令和6年における基準期間の課税売上高は令和4年の税込売上高である1,050万円になり、1,000万円を超えるので令和6年は課税事業者になります。
では、令和2年~令和5年の税込売上高が下記の場合はどうでしょう。
- 令和2年:1,200万円
- 令和3年:1,000万円
- 令和4年:1,050万円
- 令和5年:900万円
先の例と異なるのは令和2年の税込売上高です。令和2年の売上高が1,000万円を超えているので、令和4年、つまり令和6年における基準期間は課税事業者であったことになります。この場合、課税売上高は「税抜売上高」を参照するのです。令和4年の税抜売上高を計算してみましょう。
以上の通り、税抜売上高がおよそ954万円なので、課税売上高が1,000万円以下になります。よって、令和6年は免税事業者になるのです。
このように、基準期間の売上高が同じであったとしても、基準期間に課税事業者であったかどうかによって消費税の納付義務の有無が変わる可能性があります。数年にわたって売上高が1,000万円を超えたり超えなかったりしている場合は、基準期間が課税事業者に該当していたかをよく確認しましょう。
インボイス制度で2年間の納税免除期間はなくなる?
インボイス制度が施行された後でも、個人事業主が開業してから2年間の納税免除期間に関する規定はなくなっていません。適格請求書発行事業者にならなければ、消費税の申告・納付は不要です。
しかし、適格請求書発行事業者にならないことで個人事業主にデメリットが生じる可能性はあります。デメリットが生じるケースとして挙げられるのが、個人事業主の取引先が課税事業者である場合です。取引先は消費税を申告・納付しなければなりませんが、仕入れ・経費に関わる消費税額を控除すれば納付額を安くできます。しかし、この控除を行えるのは適格請求書発行事業者との取引に限ります。節税に繋げるため、取引先としては適格請求書発行事業者である個人事業主との関わりを優先する可能性があるのです。
インボイス制度で2年間の納税免除期間がなくなるわけではありませんが、適格請求書発行事業者にならないことで取引先から敬遠されてしまう可能性はあります。取引先との仕事を失うリスクを極力抑えるなら、開業したての頃から適格請求書発行事業者に登録し、消費税を納付するのも選択肢の一つです。
個人事業主が課税事業者になるための必要書類
個人事業主が課税事業者になるための必要書類として「適格請求書発行事業者の登録申請書」があります。どのような書類なのかを紹介します。
適格請求書発行事業者の登録申請書
個人事業主は適格請求書発行事業者に登録することで課税事業者に該当します。適格請求書発行事業者に登録するには「適格請求書発行事業者の登録申請書」の提出が必要です。
「適格請求書発行事業者の登録申請書」は2枚の用紙があります。一枚目には「住所または居所」「納税地」「氏名」など主に申請者の情報を記載し、二枚目には登録要件の確認事項などについて記入します。書類は国税庁のホームページからPDFファイルをダウンロードするか、最寄りの税務署で入手可能です。
個人事業主が課税事業者になったら確定申告と消費税申告が必要
個人事業主が課税事業者になる場合、毎年3月15日までに提出する所得税の確定申告とは別に、消費税申告も必要になります。消費税申告については、毎年3月31日までに提出が必要です。期限を過ぎてしまうと、延滞税をはじめペナルティとなる税金が課される可能性があります。早めに準備を始め、余裕を持った申告を行うことが必要です。
消費税の計算方法は大きく分けて「原則課税方式」「簡易課税方式」の2種類があり、売上高や事業区分に応じて節税につながる計算方法が異なります。また、適格請求書発行事業者に登録した方については「2割特例」という制度もあり、前述した2つの計算方法より消費税額を抑えられる可能性があります。どの方法で消費税を計算するかによって必要な書類も異なるため、余裕を持って申告するには各制度の概要を事前に調べておくことが重要です。
また、個人事業主によっては、毎年3月31日までに行う消費税申告とは別に「中間申告」を行う必要があります。中間申告は多額の消費税を分割し、1年の中で数回に分けて納付するための制度で、前年度の消費税額が48万円を超える事業主が対象です。前年度の消費税額に応じて、中間申告を行う回数が異なります。
個人事業主の場合、前年の消費税額に応じた中間申告の回数・申告期限は下記の通りです。
前年の確定消費税額 | 中間申告回数 | 申告期限 |
---|---|---|
48万円超~400万円以下 | 年1回 | 各中間申告の対象となる課税期間の末日の翌日から2ヶ月以内 |
400万円超~4,800万円以下 | 年3回 | |
4,800万円超 | 年11回 |
→ 5月末日
→ 中間申告対象期間の末日の翌日から2ヶ月以内 |
中間申告についても、申告が遅れると延滞税を課される場合があるので注意です。中間申告が必要な方は、期限までの申告・納付を忘れないようにしましょう。
個人事業主が課税事業者に該当する条件は複数存在する
個人事業主が課税事業者となる条件は、以下の3つが挙げられます。
- 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えている
- 特定期間の課税売上高が1,000万円を超えている
- 適格請求書発行事業者に登録している
課税売上高については前々年や前年の期間の売上高を参照するのであって、その年の売上高を用いるわけではないので注意してください。また、課税売上高だけでなく適格請求書発行事業者の登録状況も、課税事業者に該当するか否かを分ける重要なポイントです。
課税事業者に該当する場合、毎年3月31日までに消費税の確定申告が必要です。個人事業主の方は、自分が課税事業者・免税事業者のどちらに該当するかを確認しておきましょう。
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