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アメリカ億万長者達の不安と焦り

<記事原文> 寺島先生推薦
‘War on Wall Street’? Billionaires declare themselves a persecuted minority

RT Op-ed   2019年11月15日 

(翻訳:寺島メソッド翻訳グループo.n. 2019年12月16日)

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億万長者達は、前例のない格差の時代に漂っているポピュリストの怒りの亡霊を追い払おうと慌てふためいている。 その亡霊はある時は富裕税として、ある時は規制の強化として出現する。
おそらく、彼らはこうなる結果を40年前に考えるべきだったのだ。

2020年の選挙は「ウォール街と富との戦争」を引き起こす可能性があると、「大規模すぎて潰せない
銀行」のシティ銀行が、今週、ブルームバーグが引用した手紙でその顧客達に警告している
シティ銀行は、最近の富裕層は単に「低・中所得者のさらなる税控除を含む再分配政策」の「絞り出せば金が出る乳牛」と見られていると嘆いている。
トランプ政権2017年の税削減の第一の受益者はシティ銀行の手紙を受け取った金持ちであり、彼らが所有する企業だったことは気にするな、とも。 
ただ、大衆の怒りが出てきており、シティ銀行は顧客に対してそれへの心構えを求めている。

シティ銀行の手紙は、「われわれは迫害された階級だ!」と宣言する億万長者の、そこだけが突出した事柄では決してない。
民主党の大統領候補であるバーニー・サンダースとエリザベス・ウォーレンが提案している、国のボロボロの社会的セーフティーネットの必要な強化のための富裕税は、明らかに超富裕層の心に恐怖を吹き込んだ。
それは、ポピュリスト的言説が広まっているのと、世界の他の地域では新自由主義的資本主義が、いわれているような評判どおりのよいものではない、という認識が徐々に広まっている状況下でのことだ。


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この手紙を公表した唯一のテレビ局であるブルームバーグの局名は、ニューヨーク市の元市長マイケル・ブルームバーグにちなんで名付けられた。
マイケル・ブルームバーグは、富裕税と規制の強化に反対し、先月大統領選挙に急遽出馬した。 
しかし、すでに多数の立候補者があり、有権者は、彼のような70代の男性白人の金持ちがもう一人出馬することに特別な期待は何も持たなかった。
市長時代、彼はニューヨークを超富裕層のための遊び場、そして貧しい人々のための警察国家に変えた。 
こんな実績を良しとする人間は少数だ。もちろん、彼の仲間の億万長者は別だが。


「億万長者を中傷しても私には何の意味もない」とヘッジファンドの億万長者レオン・クーパーマンは、先週全米放送のCNBCで語り、仮にウォーレンが大統領になっても、自分の財産は守ると、涙目で言った。
そして、自分と同じ億万長者達(ブルームバーグを含む)は世界を「よりよい場所」にした、と主張した。
クーパーマンは、富裕税を「破産概念」と呼び、ウォーレンが選出されると株式市場が暴落することを警告した。
これは予言だが、警告というよりはヘッジファンドの創立者である彼からの脅しにも聞こえる。
彼が死んだ時は、「すべてのお金を寄付するつもりだ!」とお涙頂戴のような言い方をしたが、死んでからの慈善活動を口にしても政治家の心は動かないことにショックを受けた様子だった。

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ピッチフォ-ク(鉄製熊手)を振るう怒り狂った大衆への恐怖は別に目新しくも何ともないが、格差があまりにも固着しているため、億万長者の税率が労働者階級のそれより低いのが現実だ。 
ちょっとした是正でも、それは怪物のように肥大化した富裕層への処罰感情につながる。
おそらくこれが、予想される階級闘争を避けようとする人間が少ないことの理由だ。 
この階級闘争は次のような構想を支持することによって労働者階級にプラスの結果をもたらすかもしれない:
    
    ①富裕層がその資産を海外、あるいは「慈善」基金に隠匿することを許す税の抜け穴を塞ぐこと
    ②ウォールストリートの株取引に課税すること
    ③大規模資産へ課税すること

いずれもサンダースやウォーレンがやろうとしていることだ。 これに対して億万長者達は前スターバックスCEOのハワード・シュルツの言説に従っている。民主党からはただ一人の富裕層立候者だが、彼に対する反対デモが起きている。
彼は自分の属するグループを「億万長者」ではなく「資産家」と呼ぶように主張している。 
「億万長者」は響きが悪いというのだ。

ウォーレンが、富裕税に対する数人の億万長者の、信じ難い反応をつなぎ合わせたコマーシャルをリリースした後、そのうち数人から反撃があった。
  ゴールドマンサックスのCEOであるロイド・ブランクファインは、億万長者への中傷は差別、つまり「人間を一括りにして批判すること」である、と示唆した。 
  さらに彼は、マサチューセッツ州上院議員であるウォーレンの「『ネイティブアメリカン』起源」問題をあてこすった。
  クーパーマンは、もっと意地悪く、「クソッタレが!ウォーレンは誰にツィートしているかわかってないんだ!」と罵った。 
  彼女が「インサイダー取引の嫌疑あり」の文を彼の顔の上に重ね合わせた選択をしたことに反応してのものだった。

「アメリカ人は裕福な人がきらいではありません。みんな裕福になりたいと思っています」とヘッジファンドのクーパーマンは言い張り、度外れに巨大化した富を守ろうと涙ながらに言葉を続けた。

 しかし、かつては「チャンスの国」と言われたアメリカで金持ちの階級に入るのは以前ほど簡単ではない。
 ハーバードのエコノミストRaj Chettyによると、アメリカにおける社会的流動性はこの半世紀で70%下落している。 
  2016年までに、30歳の約半分が同じ年齢だった両親より所得が少ないというのだ。 
  収入面で見た労働者の下半分に、1970年代以降、所得の実質的な伸びは見られなかった。 
  ただし、Chettyの指摘では、1980年が「変曲点」で、以降の格差の開きは爆発的だという。
  かつては安定していたアメリカの中産階級は、企業の海外移転と組合の解体により破壊されてきた。 
  一方格差の蔓延を引き起こした「トリクルダウン」経済政策は、労働者階級の貯蓄を裕福な人々へと仕込む「トリクルアップ」に変質した。
  そして、ほとんどのアメリカ人(5人中4人)は何らかの借金に苦しんでいる。
   人々が「アメリカン・ドリーム」の夢から目覚め始めていることは驚くに当たらない。
 
 しかし、それはクーパーマンが彼なりに抱いたひとつの不満であり、億万長者達を一様に襲っているパニックだ。
 「裕福な人々を中傷しながら、その意図は別にある。彼らの訴えは大衆に向けられているのだ!」と彼は叫んだ。 
 その様子は、まるでどんな政治家でも、彼らの活動資金を賄ってくれるのは紛れもなく寄付者であるのに、語りかけが有権者に向かってことに愕然としている風だ。 
 民主党の大口寄付者達は、ウォーレンがもし大統領候補としてノミネートされたら民主党への支持を撤回する、という脅しまでかけている。
 (「億万長者はいらない」という、今はバンパーステッカーにもなっている標語を挑戦の手袋として投げつけ有名になったサンダースについても同様)ている。

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実際のところ、ポピュリズム政治家たちが(支配層にとって)過去に問題になったことはない。 
民主党員として前回大統領を務めたバラク・オバマは、選挙戦で国民のために戦うと約束したにもかかわらず、シティ銀行幹部の指揮の下で主要人事を決めた。
彼が政権に就こうとしている間、彼の前任者のブッシュ(子)は、略奪的な住宅ローンの貸付で米国経済を破壊したシティ銀行や他の銀行を公的資金で救済し、2008年だけでほぼ100万家族を路頭に迷わせた
 そして、(億万長者所有の)メディアの最善の努力にもかかわらず、根強いポピュリズムの流れがアメリカの政治に浸透している。 主要メディアはと言えば、機会あるごとに「ポピュリズムファシズム」を発信している。 
 が、若いアメリカ人達はますます社会主義を好意的に見るようになっている。
  こういった傾向はどちらも、超富裕層の楽観的な未来を予測するものではない。

  もちろん、次期大統領がたとえ軍事に固執し、資金面では億万長者に照準を合わせても、その政策がうまく行くことは保証されない。
  シティ銀行が手紙で示唆しているのはこのことであり、改革志向の大統領が誰になっても、ウォール街に忠実な議会を通して立法を推進するのは並大抵ではないことを投資家達に想起させたのだ。
  ついでながら、金持ち達は、アメリカ政府が戦いを宣言した他のすべてのこと(貧困、麻薬、テロリズム)が全く撲滅されていない事実に胸をなで下ろすことができる、とも。

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