ネタニヤフに対するICCの逮捕状は、実際は、西側への訴追
<記事原文 寺島先生推薦>
The ICC arrest warrant for Netanyahu is really an indictment of the West
この動きはあまりにも小さく遅すぎるが、それでも「ルールに基づく秩序」の明白な偽善性を暴露している。
筆者:タリク・シリル・アマール(Tarik Cyril Amar)
Tarik Cyril Amar (ドイツ出身の歴史学者、イスタンブールのコチ大学でロシア、ウクライナ、東欧、第二次世界大戦の歴史、文化的冷戦、記憶の政治について研究)
出典:RT2024年11月25日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年12月5日
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相。© Justin Sullivan/Getty Images
「ならず者政権」とは何か。この言葉の最初の米国の宣伝者の一人であり、1993-97年にビル・クリントン前大統領の国家安全保障顧問を務めたアンソニー・レイクによると、それは礼儀正しい国際社会の外に身を置き、「基本的価値を攻撃する」ことを選んだ「無法者」政府である。
もちろん、この用語は字義どおり適用されることなど一度もなかった。最初から、キューバ、イラク、リビアなど、実際には米国とその顧客たち、つまり西側集団を構成している国々の意思に屈しないという唯一の共通点を持つ国に対する西側複合戦争の道具として兵器化されるように設計されていた。西側の政治屋とその傘下にある主流メディアの出世第一主義の速記者が「ならず者政権」と声を上げ始めたら、侵略、クーデター、仕掛けられた経済戦争により飢餓でにっちもさっちもいかなくなるほど状況をかわす準備をしなければならなくなるし、さらにはこれらすべてが一緒になったときには、卑劣な公開拷問や暗殺を含む血なまぐさい政権交代を払いのける準備をしなければならない。
しかし、この原始的なプロパガンダ用語をしばらく額面どおりに受け取ってみよう。根底にある理論 (理論という言葉が適切だとしたら、だが) は、非常に単純なものだ。ルールを守るいい子ぶった国家 (そのほとんどがたまたまグローバルノースにある) と、そのルールに唾を吐く悪童国家に分かれる。また、どのようなルールがあるのか、誰がルールを作って、誰がそのルールを適用しているのかを尋ねることもしない。その質問は、私たちを「ルールに基づく国際秩序」というたわごとのうんざりする道徳的、知的な泥沼に導くだろうからだ。つまりこの言葉の本質は、「私たちは国際法(例の曖昧で勝手にこねくり回せる「ルール」とは真逆のもの) を超越しており、国連に唾を吐き、さらに、私たちは他の人々を命令し、従わない場合には個人的にも集団的にも殺すことができる唯一の特権を持っている」という欧米の本音を婉曲的に表すことばである。
いや、イデオロギー的な無意味さはしばし脇において、第一段階として、真にオーウェル的な「ならず者政権」という用語が、実際には知的で偏見のない観察者が真剣に受け止めることができる意味を持っているというふり(本当にふりだけだが)をしてみよう。続いて第二段階:その論理では、何がならず者政権よりもさらに悪いのかを尋ねてみよう。答えは簡単:法的および倫理的規則を公然と無視する政権よりも悪いのは、それらの規則を代表するふりをし、所有しているふりをして、それらを歪曲するだけの政権である。なぜなら、そのような政権は単に規則に従わないだけでなく、根本的に法的および倫理的規則を弱体化させるからだ。法と道徳を破る人はただの犯罪者なのだが、彼らはそんなことは屁とも思わないだろう。しかし、真の悪人、真の悪の力は、法と道徳規範を簒奪し、汚し、一般的な尊重を奪い、それによってその有効性と、究極的には存在さえも脅かす。
だからこそ、国際刑事裁判所(ICC)が最終的にイスラエルのジェノサイドの指導者であるベンジャミン・ネタニヤフ首相とヨアブ・ガラント元国防相の2人に逮捕状を発行したことによって、西側全体が最も大きな責めを負うことになる。なぜなら、悪役を演じているジェノサイド国家イスラエルはほかでもない西側の事実上の植民地だからだ。
関連記事:Why Iran is willing to pay any price for resisting Israel
誤解しないでほしいのは、戦争犯罪や人道に対する罪で個人を裁くことができる唯一の国際裁判所であるICCが行なってきたことには、非常に残念ながら限界があるということだ。少なくとも今のところ、攻撃の対象となっているのはイスラエル当局者 (しかもあまりにも少数) と、すでに死亡しているとイスラエルが主張しているハマス指導者だけで、西側の共犯者は標的にしていない。その狭い意味では、明らかに、ジェノサイドを含む戦争犯罪と人道に対する罪を犯して常に新しい記録を更新している国家であるイスラエルが最も直接的な影響を受けるだろう。もしそうだとしても、繰り返しになるが、十分とは口が裂けても言えない。ICCの動きはあまりにも小さく遅すぎるからだ。実際、1998年のローマ規程第6条の下で可能であるのに、ネタニヤフとガラントをジェノサイドの罪で起訴さえしていない。そうすべきであったことははっきりしている。その代わり、ICCは彼らを戦争犯罪と人道に対する罪で「のみ」起訴した。さらに、ICCには独自の逮捕状を執行する能力がない。そのためには、ローマ規程に署名した国と、その下での義務を守る意思に頼らなければならないのだ。
しかし、ICCは司法機関であるが、逮捕状の真の意義はもちろん政治的なものである。エコノミスト誌が認めるように、それは「外交的大惨事」であり、エコノミスト誌は何とか避けて通ろうとしているが、ネタニヤフにとってだけでなく、イスラエルにとってもそうだ。しかし、これは通常の惨事ではなく、特に破壊的なものである。なぜなら、イスラエルにとっては、国際的な嫌がらせ、汚職、ロビー活動、スパイと恐喝のネットワーク、そしてあらゆる目的の破壊行為が、イスラエルの免責を死に至らしめていることを示す新たな兆候だからである。イスラエルとその共犯者たちが、まさにこの結果を防ぐためにICCに大きな圧力をかけてきたことを、私たちは知っている。しかし、彼らは失敗した。イスラエルの力と範囲はあまりにも大きすぎるが、無限ではなく、衰退している。
しかし、イスラエルは非常に特殊な国家である。事実上すべての国家が、法律を曲げたり破ったりし、エリートたちが考える自分たちの利益のために、少なくとも一部の道徳的規範を従属させるが、イスラエルはその核心が犯罪的であるという点で異なっている。これは修辞的な指摘ではなく、分析的な指摘である。たいていの国家は、法律や通常の道徳を侵害することが否定的な結果をもたらしても、存続することができる。別の言い方をすれば、ほとんどの国家にとって、免罪は良いことではあるが、不可欠なことではない。しかしイスラエルにとって、免罪は不可欠な要素である。なぜなら、イスラエルという国は犯罪の上に成り立っており、これ以上犯罪から逃れられなくなれば、必然的に、そして当然のことながら、自国の利益だけでなくその存続すら危うくするからだ。だからこそ、イスラエルの政治家やメディアは結束を固め、問題はイスラエル全体にあるのであって、一部の精神病質的な指導者たちにあるのではないことを改めて示し、明日をも知れぬかのように反ユダヤ主義というおかしな非難を投げつけ、再びヒステリックに騒ぎ立てようとしているのだ。
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そしてある意味でイスラエルに、たぶん、明日はない。少なくとも、道徳的な背骨と半分の頭脳を持つ人間が真剣に受け止めている例の告発について明日はない。皮肉なことに、その点でもイスラエルに感謝するしかない。正確に言えば、イスラエルがアパルトヘイト、民族浄化、大量虐殺といったイスラエル自身の犯罪から目をそらすために、パレスチナ人、アラブ人全般、ペルシア人、イスラム教徒に対して、ヨーロッパとキリスト教の反ユダヤ主義の暗い歴史(その最悪の結果であるホロコーストを含む)を武器にするという、イスラエルのうんざりするようなやり方である(主なものを挙げればきりがない)。
人類の利益のためには、反ユダヤ主義とホロコーストの両方を真剣に受け止めるべきであるが、それらの話の重みと信頼性を奪うために最悪のことをしたのはイスラエルである。組織的に人種差別的暴力主義者を騙ったイスラエルのフーリガンたちが大量虐殺のシュプレヒコールを叫び、アンネ・フランクのような「被害者」としてオランダ市民を激しく攻撃した恥知らずでばかげたアムステルダムの偽の「ポグロム」の話は、この忌まわしい現象の最近の例であった。
イスラエルが、絶え間ない犯罪と嘘によってその存続を左右されている国家であることは、まさに事実である。それゆえ、ICCのような機関に真実の断片が伝わっただけでも、違いが生じる。結局のところ、この恐ろしい政権とその忌まわしい犯罪を終わらせるには、それ以上のことが必要なのだ。だが、どんな些細なことでも助けになる。
それでも、イスラエルへの影響とその非常に危うい未来は別として―繰り返しになるが、イスラエル人は自分を責めるしかない―、西側諸国全体は、イスラエルの2人の主要な虐殺者に対するICCの逮捕状によって、さらに深刻な打撃を受けることになる。その主な理由は3つある。
第一に、少数の例外を除いて、西側の政治・メディア・エリートたちは、パレスチナ人とその近隣諸国、特にレバノン、シリア、イランに対するイスラエルの犯罪に大きく加担してきた。例えば、米国、英国、ドイツなどの国々は、資金、武器、直接的な軍事参加、外交的援護、そして最後に(とは言ってもその重要性は減じないが)、イスラエルによる犠牲者との連帯に対する残忍な抑圧によって、イスラエルのジェノサイドと戦争犯罪を執拗に支援してきた。彼らの司法制度、警察、主流メディアは、この共犯の道具となっている。そして、イスラエルに熱狂的に関わっているわけではなく、しばしばイスラエルの犯罪にさえ反対している一般大衆を前にして、これらのことはすべて行なわれている。
関連記事:Will its new defense minister save Israel?
ジェノサイドにおける彼らの卑劣な協力を隠蔽するために、西側のエリートたちは、イスラエルが想定する「生存権」(国際法の下では実際には存在しない権利)、イスラエルが主張する「自衛権」(占領者が被占領者に対して実際には持っておらず、いずれにせよジェノサイドを正当化することはできない権利)、そして最後に(とは言ってもその重要性は減じないが)、パレスチナ・レジスタンスが実際には犯していない犯罪 (赤ん坊の大量殺人と大量強姦) について延々と語ってきた。そして、イスラエル自身がハンニバル指令の下で、不明ではあるが確実にかなりの数の自国民を虐殺したという事実については頬かむりをしている。
言い換えれば、欧米のエリートたちは、大量虐殺を行なうイスラエルに隷従することで、自分たちに残っていた信用を単に傷つけただけでなく、ガザやベイルートの住宅ビルや難民テントのキャンプを米・イスラエルのバンカーバスター爆弾が消し去るように、信用を粉々にしてしまったのだ。
二番目に、信頼性の問題とは別に、優先順位の問題がある。パニックに陥った米国の戦争屋のリンゼイ・グラハム上院議員は、すでにXに深い不安を投稿している:ICCがネタニヤフとガラントを追うことができれば、「次は米国だ」と彼は恐れている。何たる発想! アメリカ政府の犯罪者でさえ、実際には他の人と同じ法律に従わなければならないかもしれない世界を発想している。グレアムは、長い間、冗談のような、それも非常に味気ない冗談のような人間だった。しかし、米国のエリートの多くは犯罪者であり、同様に訴追されなければならない、という彼の意図せぬ告白は、直感的に完全に正しい。
そしてそれは、アメリカの枠を超えている。例えば、ドイツのまだかろうじて首相であるオラフ・ショルツはどうだろう。彼は、あらゆる証拠に反してイスラエルの犯罪性を繰り返し否定し、つい最近、自国政府が大量虐殺を行うアパルトヘイト国家に武器を提供し続けていることを自慢したばかりだ。彼だけではない: ドイツでは、アナレーナ・バーボック外相とロベルト・ハーベック経済相がすぐに思い浮かぶ。イギリスでは、キーア・スターマー首相とデイヴィッド・ラミー外相が間違いなく心配しているはずだ。カナダには、ジャスティン・トルドー、メラニー・ジョリー、クリスティア・フリーランドがいる。
挙げればきりがない。いくつかの例外を除いて、西側の現在の支配者たちは、イスラエルに味方し、イスラエルが産んだ犠牲者に対して復讐心を燃やしている。彼らにも、彼らに従順に仕えてきた多くの官僚たちにも、誰も説明していないように見えるのは、1948年の基本的な国連ジェノサイド条約の下では、(第三条e)も明確に犯罪としてリストされているということだ。彼らが今、ネタニヤフとガラントを逮捕する法的義務を (行動ではなく言葉で) 認めようと認めまいと、彼らが今までに言ったこと、したこと、しなかったことに何の違いももたらさない。
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イスラエル政府の2人の犯罪者に対するICCの逮捕状が、イスラエルよりも西側にとってさらに大きなダメージを与える、第三の、そしておそらく最も根本的な理由は、西側のエリートたちが、本来パレスチナである場所を乗っ取った怪物国家との共生関係の中で生きることを選んだからである。イスラエルが取ってきた政治形態が概して犯罪的であったため、イスラエルは、イスラエルの指導者たちが逃げ切れる範囲内で常に国際法と基本的な道徳規範をひどく傷つけてきた。その規模は非常に大きい。
しかし、まさに西側集団こそが、イスラエルによる大量殺人をはじめ、考えつく限りのあらゆる犯罪や倒錯、そしてまともな人々が思いもつかないような多くの犯罪を野放しにしてきたのだ:故意に、組織的にジャーナリストを殺害し、犯罪のニュースを封じ込めたり、第一発見者を殺害することで最初に生き残った犠牲者が助けを見つけられないようにしたって? そんなことはイスラエルならできる。まず犠牲者を飢えさせ、それから少しずつ援助物資を入れ、それを手に入れようとするその犠牲者を罠にかけて虐殺したって? それもお安い御用だ。医者をレイプして殺したって? こんな悪行はイスラエルの独創性に任せておけば可能だ。
そしてこれらすべての悪行の後ろ盾になってきたのが、ほかでもない西側集団だ。傲慢にも人種差別丸出しに、西側外の世界は「ジャングル」であり、西側は「価値観」の「庭」を象徴する、と主張してはばからないそんな西側集団が、だ。アンソニー・レイクの言葉を借りれば、単に国際社会(それが何であろうと)だけでなく、人類の最も基本的な価値観を、あらゆる場所で攻撃してきたのが西側諸国とイスラエルなのだ。その一方で、自分たちの非人間的で忌まわしい野蛮さを、「ルール」と「秩序」の金字塔のように見せかけようとしている。西側諸国が衰退しつつあるのは、エリートたちの無能、腐敗、不誠実といった多くの理由がある。しかし、そのエリートたちがイスラエルと結んでいる倒錯した自殺協定は、それだけで西欧を崩壊させるのに十分だろう。
The ICC arrest warrant for Netanyahu is really an indictment of the West
この動きはあまりにも小さく遅すぎるが、それでも「ルールに基づく秩序」の明白な偽善性を暴露している。
筆者:タリク・シリル・アマール(Tarik Cyril Amar)
Tarik Cyril Amar (ドイツ出身の歴史学者、イスタンブールのコチ大学でロシア、ウクライナ、東欧、第二次世界大戦の歴史、文化的冷戦、記憶の政治について研究)
出典:RT2024年11月25日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年12月5日
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相。© Justin Sullivan/Getty Images
「ならず者政権」とは何か。この言葉の最初の米国の宣伝者の一人であり、1993-97年にビル・クリントン前大統領の国家安全保障顧問を務めたアンソニー・レイクによると、それは礼儀正しい国際社会の外に身を置き、「基本的価値を攻撃する」ことを選んだ「無法者」政府である。
もちろん、この用語は字義どおり適用されることなど一度もなかった。最初から、キューバ、イラク、リビアなど、実際には米国とその顧客たち、つまり西側集団を構成している国々の意思に屈しないという唯一の共通点を持つ国に対する西側複合戦争の道具として兵器化されるように設計されていた。西側の政治屋とその傘下にある主流メディアの出世第一主義の速記者が「ならず者政権」と声を上げ始めたら、侵略、クーデター、仕掛けられた経済戦争により飢餓でにっちもさっちもいかなくなるほど状況をかわす準備をしなければならなくなるし、さらにはこれらすべてが一緒になったときには、卑劣な公開拷問や暗殺を含む血なまぐさい政権交代を払いのける準備をしなければならない。
しかし、この原始的なプロパガンダ用語をしばらく額面どおりに受け取ってみよう。根底にある理論 (理論という言葉が適切だとしたら、だが) は、非常に単純なものだ。ルールを守るいい子ぶった国家 (そのほとんどがたまたまグローバルノースにある) と、そのルールに唾を吐く悪童国家に分かれる。また、どのようなルールがあるのか、誰がルールを作って、誰がそのルールを適用しているのかを尋ねることもしない。その質問は、私たちを「ルールに基づく国際秩序」というたわごとのうんざりする道徳的、知的な泥沼に導くだろうからだ。つまりこの言葉の本質は、「私たちは国際法(例の曖昧で勝手にこねくり回せる「ルール」とは真逆のもの) を超越しており、国連に唾を吐き、さらに、私たちは他の人々を命令し、従わない場合には個人的にも集団的にも殺すことができる唯一の特権を持っている」という欧米の本音を婉曲的に表すことばである。
いや、イデオロギー的な無意味さはしばし脇において、第一段階として、真にオーウェル的な「ならず者政権」という用語が、実際には知的で偏見のない観察者が真剣に受け止めることができる意味を持っているというふり(本当にふりだけだが)をしてみよう。続いて第二段階:その論理では、何がならず者政権よりもさらに悪いのかを尋ねてみよう。答えは簡単:法的および倫理的規則を公然と無視する政権よりも悪いのは、それらの規則を代表するふりをし、所有しているふりをして、それらを歪曲するだけの政権である。なぜなら、そのような政権は単に規則に従わないだけでなく、根本的に法的および倫理的規則を弱体化させるからだ。法と道徳を破る人はただの犯罪者なのだが、彼らはそんなことは屁とも思わないだろう。しかし、真の悪人、真の悪の力は、法と道徳規範を簒奪し、汚し、一般的な尊重を奪い、それによってその有効性と、究極的には存在さえも脅かす。
だからこそ、国際刑事裁判所(ICC)が最終的にイスラエルのジェノサイドの指導者であるベンジャミン・ネタニヤフ首相とヨアブ・ガラント元国防相の2人に逮捕状を発行したことによって、西側全体が最も大きな責めを負うことになる。なぜなら、悪役を演じているジェノサイド国家イスラエルはほかでもない西側の事実上の植民地だからだ。
関連記事:Why Iran is willing to pay any price for resisting Israel
誤解しないでほしいのは、戦争犯罪や人道に対する罪で個人を裁くことができる唯一の国際裁判所であるICCが行なってきたことには、非常に残念ながら限界があるということだ。少なくとも今のところ、攻撃の対象となっているのはイスラエル当局者 (しかもあまりにも少数) と、すでに死亡しているとイスラエルが主張しているハマス指導者だけで、西側の共犯者は標的にしていない。その狭い意味では、明らかに、ジェノサイドを含む戦争犯罪と人道に対する罪を犯して常に新しい記録を更新している国家であるイスラエルが最も直接的な影響を受けるだろう。もしそうだとしても、繰り返しになるが、十分とは口が裂けても言えない。ICCの動きはあまりにも小さく遅すぎるからだ。実際、1998年のローマ規程第6条の下で可能であるのに、ネタニヤフとガラントをジェノサイドの罪で起訴さえしていない。そうすべきであったことははっきりしている。その代わり、ICCは彼らを戦争犯罪と人道に対する罪で「のみ」起訴した。さらに、ICCには独自の逮捕状を執行する能力がない。そのためには、ローマ規程に署名した国と、その下での義務を守る意思に頼らなければならないのだ。
しかし、ICCは司法機関であるが、逮捕状の真の意義はもちろん政治的なものである。エコノミスト誌が認めるように、それは「外交的大惨事」であり、エコノミスト誌は何とか避けて通ろうとしているが、ネタニヤフにとってだけでなく、イスラエルにとってもそうだ。しかし、これは通常の惨事ではなく、特に破壊的なものである。なぜなら、イスラエルにとっては、国際的な嫌がらせ、汚職、ロビー活動、スパイと恐喝のネットワーク、そしてあらゆる目的の破壊行為が、イスラエルの免責を死に至らしめていることを示す新たな兆候だからである。イスラエルとその共犯者たちが、まさにこの結果を防ぐためにICCに大きな圧力をかけてきたことを、私たちは知っている。しかし、彼らは失敗した。イスラエルの力と範囲はあまりにも大きすぎるが、無限ではなく、衰退している。
しかし、イスラエルは非常に特殊な国家である。事実上すべての国家が、法律を曲げたり破ったりし、エリートたちが考える自分たちの利益のために、少なくとも一部の道徳的規範を従属させるが、イスラエルはその核心が犯罪的であるという点で異なっている。これは修辞的な指摘ではなく、分析的な指摘である。たいていの国家は、法律や通常の道徳を侵害することが否定的な結果をもたらしても、存続することができる。別の言い方をすれば、ほとんどの国家にとって、免罪は良いことではあるが、不可欠なことではない。しかしイスラエルにとって、免罪は不可欠な要素である。なぜなら、イスラエルという国は犯罪の上に成り立っており、これ以上犯罪から逃れられなくなれば、必然的に、そして当然のことながら、自国の利益だけでなくその存続すら危うくするからだ。だからこそ、イスラエルの政治家やメディアは結束を固め、問題はイスラエル全体にあるのであって、一部の精神病質的な指導者たちにあるのではないことを改めて示し、明日をも知れぬかのように反ユダヤ主義というおかしな非難を投げつけ、再びヒステリックに騒ぎ立てようとしているのだ。
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そしてある意味でイスラエルに、たぶん、明日はない。少なくとも、道徳的な背骨と半分の頭脳を持つ人間が真剣に受け止めている例の告発について明日はない。皮肉なことに、その点でもイスラエルに感謝するしかない。正確に言えば、イスラエルがアパルトヘイト、民族浄化、大量虐殺といったイスラエル自身の犯罪から目をそらすために、パレスチナ人、アラブ人全般、ペルシア人、イスラム教徒に対して、ヨーロッパとキリスト教の反ユダヤ主義の暗い歴史(その最悪の結果であるホロコーストを含む)を武器にするという、イスラエルのうんざりするようなやり方である(主なものを挙げればきりがない)。
人類の利益のためには、反ユダヤ主義とホロコーストの両方を真剣に受け止めるべきであるが、それらの話の重みと信頼性を奪うために最悪のことをしたのはイスラエルである。組織的に人種差別的暴力主義者を騙ったイスラエルのフーリガンたちが大量虐殺のシュプレヒコールを叫び、アンネ・フランクのような「被害者」としてオランダ市民を激しく攻撃した恥知らずでばかげたアムステルダムの偽の「ポグロム」の話は、この忌まわしい現象の最近の例であった。
イスラエルが、絶え間ない犯罪と嘘によってその存続を左右されている国家であることは、まさに事実である。それゆえ、ICCのような機関に真実の断片が伝わっただけでも、違いが生じる。結局のところ、この恐ろしい政権とその忌まわしい犯罪を終わらせるには、それ以上のことが必要なのだ。だが、どんな些細なことでも助けになる。
それでも、イスラエルへの影響とその非常に危うい未来は別として―繰り返しになるが、イスラエル人は自分を責めるしかない―、西側諸国全体は、イスラエルの2人の主要な虐殺者に対するICCの逮捕状によって、さらに深刻な打撃を受けることになる。その主な理由は3つある。
第一に、少数の例外を除いて、西側の政治・メディア・エリートたちは、パレスチナ人とその近隣諸国、特にレバノン、シリア、イランに対するイスラエルの犯罪に大きく加担してきた。例えば、米国、英国、ドイツなどの国々は、資金、武器、直接的な軍事参加、外交的援護、そして最後に(とは言ってもその重要性は減じないが)、イスラエルによる犠牲者との連帯に対する残忍な抑圧によって、イスラエルのジェノサイドと戦争犯罪を執拗に支援してきた。彼らの司法制度、警察、主流メディアは、この共犯の道具となっている。そして、イスラエルに熱狂的に関わっているわけではなく、しばしばイスラエルの犯罪にさえ反対している一般大衆を前にして、これらのことはすべて行なわれている。
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ジェノサイドにおける彼らの卑劣な協力を隠蔽するために、西側のエリートたちは、イスラエルが想定する「生存権」(国際法の下では実際には存在しない権利)、イスラエルが主張する「自衛権」(占領者が被占領者に対して実際には持っておらず、いずれにせよジェノサイドを正当化することはできない権利)、そして最後に(とは言ってもその重要性は減じないが)、パレスチナ・レジスタンスが実際には犯していない犯罪 (赤ん坊の大量殺人と大量強姦) について延々と語ってきた。そして、イスラエル自身がハンニバル指令の下で、不明ではあるが確実にかなりの数の自国民を虐殺したという事実については頬かむりをしている。
言い換えれば、欧米のエリートたちは、大量虐殺を行なうイスラエルに隷従することで、自分たちに残っていた信用を単に傷つけただけでなく、ガザやベイルートの住宅ビルや難民テントのキャンプを米・イスラエルのバンカーバスター爆弾が消し去るように、信用を粉々にしてしまったのだ。
二番目に、信頼性の問題とは別に、優先順位の問題がある。パニックに陥った米国の戦争屋のリンゼイ・グラハム上院議員は、すでにXに深い不安を投稿している:ICCがネタニヤフとガラントを追うことができれば、「次は米国だ」と彼は恐れている。何たる発想! アメリカ政府の犯罪者でさえ、実際には他の人と同じ法律に従わなければならないかもしれない世界を発想している。グレアムは、長い間、冗談のような、それも非常に味気ない冗談のような人間だった。しかし、米国のエリートの多くは犯罪者であり、同様に訴追されなければならない、という彼の意図せぬ告白は、直感的に完全に正しい。
そしてそれは、アメリカの枠を超えている。例えば、ドイツのまだかろうじて首相であるオラフ・ショルツはどうだろう。彼は、あらゆる証拠に反してイスラエルの犯罪性を繰り返し否定し、つい最近、自国政府が大量虐殺を行うアパルトヘイト国家に武器を提供し続けていることを自慢したばかりだ。彼だけではない: ドイツでは、アナレーナ・バーボック外相とロベルト・ハーベック経済相がすぐに思い浮かぶ。イギリスでは、キーア・スターマー首相とデイヴィッド・ラミー外相が間違いなく心配しているはずだ。カナダには、ジャスティン・トルドー、メラニー・ジョリー、クリスティア・フリーランドがいる。
挙げればきりがない。いくつかの例外を除いて、西側の現在の支配者たちは、イスラエルに味方し、イスラエルが産んだ犠牲者に対して復讐心を燃やしている。彼らにも、彼らに従順に仕えてきた多くの官僚たちにも、誰も説明していないように見えるのは、1948年の基本的な国連ジェノサイド条約の下では、(第三条e)も明確に犯罪としてリストされているということだ。彼らが今、ネタニヤフとガラントを逮捕する法的義務を (行動ではなく言葉で) 認めようと認めまいと、彼らが今までに言ったこと、したこと、しなかったことに何の違いももたらさない。
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イスラエル政府の2人の犯罪者に対するICCの逮捕状が、イスラエルよりも西側にとってさらに大きなダメージを与える、第三の、そしておそらく最も根本的な理由は、西側のエリートたちが、本来パレスチナである場所を乗っ取った怪物国家との共生関係の中で生きることを選んだからである。イスラエルが取ってきた政治形態が概して犯罪的であったため、イスラエルは、イスラエルの指導者たちが逃げ切れる範囲内で常に国際法と基本的な道徳規範をひどく傷つけてきた。その規模は非常に大きい。
しかし、まさに西側集団こそが、イスラエルによる大量殺人をはじめ、考えつく限りのあらゆる犯罪や倒錯、そしてまともな人々が思いもつかないような多くの犯罪を野放しにしてきたのだ:故意に、組織的にジャーナリストを殺害し、犯罪のニュースを封じ込めたり、第一発見者を殺害することで最初に生き残った犠牲者が助けを見つけられないようにしたって? そんなことはイスラエルならできる。まず犠牲者を飢えさせ、それから少しずつ援助物資を入れ、それを手に入れようとするその犠牲者を罠にかけて虐殺したって? それもお安い御用だ。医者をレイプして殺したって? こんな悪行はイスラエルの独創性に任せておけば可能だ。
そしてこれらすべての悪行の後ろ盾になってきたのが、ほかでもない西側集団だ。傲慢にも人種差別丸出しに、西側外の世界は「ジャングル」であり、西側は「価値観」の「庭」を象徴する、と主張してはばからないそんな西側集団が、だ。アンソニー・レイクの言葉を借りれば、単に国際社会(それが何であろうと)だけでなく、人類の最も基本的な価値観を、あらゆる場所で攻撃してきたのが西側諸国とイスラエルなのだ。その一方で、自分たちの非人間的で忌まわしい野蛮さを、「ルール」と「秩序」の金字塔のように見せかけようとしている。西側諸国が衰退しつつあるのは、エリートたちの無能、腐敗、不誠実といった多くの理由がある。しかし、そのエリートたちがイスラエルと結んでいる倒錯した自殺協定は、それだけで西欧を崩壊させるのに十分だろう。
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