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「欧米により『テロリスト』が『自由の戦士』へと塗り替えられるなか、トルコ・米国・イスラエルによるシリア分割が進行」―ぺぺ・エスコバル

<記事原文 寺島先生推薦>
Death of a nation: Black Flags, massacres, land grabs as vultures feed on the carcass of Syria
筆者:ぺぺ・エスコバル(Pepe Escobar)
出典:Strategic Culture Foundation 2024年12月11日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年12月21日


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「黒旗」*がシリアのキリスト教徒を粛清しに来たとき、西側諸国は団結してシリアに残されたキリスト教徒を守るために立ち上がるだろうか?
*黒旗・・・ISISを指している。ISISの創設の裏に米国大統領が関与していたことを論じた、2015年のジョビー・ワーリック著ピューリッツァー賞受賞書籍の題名から。

覇権国米国のいつもの手口は、「分割して統治せよ」だ。多元的(斜字体は筆者)現実の容赦ない台頭に追い詰められた覇権国は、帝国主義の再起の好機を見出し、チェイニー副大統領時代にも構想されていた「大中東」の確立にすべてを賭けたのだ。

シュトラウス*派ネオコン、シオコン、旧約聖書を盲信する精神異常者からなる「鉄の枢軸」は、「抵抗の枢軸」を破壊することに執着し、血に飢えた殺人者の国際網を使って西アジア全域に混乱と宗派間の内戦を拡大している。「鉄の枢軸」は、この理想的な展開を通じて、「抵抗の枢軸」の蛇の頭であるイランを殴りつけ、致命傷を負わせることを夢見ている。
*シュトラウス・・・20世紀に活躍したドイツ出身の米国人哲学者。ネオコンに大きな影響を与えた。

使い勝手のいい、責任目くらまし係を演じるスルタン(イスラム教国における君主)のエルドアンは次のように宣言した。

シリアにとって「明るい時代」が始まった、と。

まさにそのとおり。シリアの死骸を糧とする「黒旗」の首切り屋やテルアビブの爆撃犯、土地強奪者にとっては輝かしい時代が始まったのだ。

旧約聖書を盲信する精神病理的殺人者たちは、350回以上の攻撃により、旧シリア・アラブ軍(SAA)の軍事基盤施設のすべてを徹底的に破壊した。具体的には、武器工場や弾薬庫、基地、戦闘機(ダマスカスのメッゼ空軍基地を含む)、ロシアの対艦システム、船舶そのもの(ロシア海軍基地に近いラタキア)、防空陣地などである。

一言で言えば、これはNATO・イスラエル組が旧シリア統治勢力を非武装化している、ということだ。ダマスカスを占拠した「黒旗」の殺人者を始め、アラブ世界やイスラム教の地の誰からも何の音沙汰もない。

これに、イスラエルの十八番である土地侵略/強奪が加わり、イスラエル当局はゴラン高原の完全併合を公式に宣言した。ゴラン高原は法的にはシリア領であり、1967年の戦争後、国連が返還を要求してきたものだ。

旧約聖書信奉勢力による心理電撃戦

同時に、トルコ軍は極北東部のカミシュリーにある旧ロシア・シリア基地を爆撃した。その口実は、米国が支援するクルド人やさまざまなアラブ部族に武器が奪われるのを防ぐためだった。ロシアにとってこれは大したことではなかったかもしれない。ユーフラテス川東岸から貴重な軍事資産を避難させるには十分な時間があったからだ。

ロシアは、恐るべき、そして絶対に腐敗しないスヘイル・アル・ハッサンの亡命を認めた。彼は今日の世界で最高の軍事戦術家および戦略家になる有力候補である。ロシア人は2015年に早くも彼に賭け、彼の個人的な警護を提供した。シリアでは彼以外誰も、ロシアからの身辺警護を受けていなかった。アサド大統領でさえも、だ。スヘイル・アル・ハッサンはシリア陥落の10日間で事実上の戦闘に勝利した唯一の司令官だったと言える。

「絶望と破壊*」の嵐が渦巻く中、稲妻のように速くNATO/イスラエルが死する国家の屍を食い荒らし始めた。役に立つ愚者や操り人形たち。つまり、似非ウォーク派のサラフィー主義聖戦主義者や、米国に感化されたクルド人たちが、だ。明らかに、これらの集団のIQは室温よりも低く、暴徒たちは自分たちが同じ宗主国のために戦っていることに気付いていない。
*絶望と破壊・・・doom and gloom、ローリング・ストーンズの楽曲の題名

テルアビブの悪党たちはダマスカス郊外に電撃戦を展開し、首都の南15キロにまで迫っている可能性がある。これは彼らの植民地計画の一環である典型的な生存圏戦略であり、レバノンの側面で最大限の影響力を得ることと相まっておこなわれている。

これは極めて重大なことであり、「抵抗の枢軸」にとって極めて憂慮すべきことだ。現在、レバノン南部全域がイスラエル占領軍による大規模な攻撃にさらされている。ベッカー渓谷のチュトゥーラとアアンジャルの間の肥沃な平原は貴重な天然資源を蓄えているだけでなく、ベイルートへの直通道路も提供しているからだ。

蠍(サソリ)たちが互いに攻撃し合う

同時に、「黒旗」がダマスカスを占拠した。あらゆる範囲で虐殺がおこなわれている。宗教指導者や科学者も含まれるが、ほとんどは元軍関係者やシリアのスパイ対策活動員、さらには元軍人だと非難された民間人までもが虐殺されている。

由緒あるウマイヤド・モスクの元イマーム(導師)であった有名なシェイク・ムハンマド・サイード・ラマダン・アル・ブーティ師の息子であるシェイク・タウフィク・アル・ブーティ猊下(げいか)が、ダマスカスのマドラサ(神学校)で暗殺された。

蠍たちは予想どおり互いに攻撃し合っており、ハヤト・タハリール・アル・シャーム(HTS)に対抗するテロ組織はジャウラーニー配下のこの悪組織に対し、イドリブ県内で投獄されている組織員の解放を要求し、現在HTSを攻撃すると脅迫している。

マンビジでは、トルコの支援を受けたテロリストが病院でアメリカ系クルド人を公然と殺害している。シリア北部と北東部は完全な無政府状態に陥っている。

米国系クルド人とその共産主義的世俗国家構想の受け入れを拒否し、トルコが支援するサラフィー主義のジハード主義テロ組織への参加も拒否する部族は、現在「ISIS」であるとの烙印を押され、米軍戦闘機による爆撃を受けている。一部は確かに今もISISであるかもしれない。2017年秋以前はそうだったし、隠れISISの残党が砂漠を徘徊しているからだ。

ロシア軍はタルトゥース海軍基地から8キロ離れた場所に艦船を配置しているが、ドローンや大砲、小型船が到達できるため、完全な安全は確保されていない。

フメイミムの航空部隊にとって、状況はさらに複雑だ。ロシア側はすでに明確な伝言を発している。基地が侵害されれば、反撃は壊滅的になるだろう、と。一方、HTSはラタキア占領に主眼を置いている。

ロシアの基地がこの先どうなるかは謎のままだが、それはプーチン大統領とエルドアン大統領の間の困難な直接交渉にかかっている。

事実上のアル・シャムの新カリフ(宗教上の最高指導者)であるジャウラーニーは、この初期段階では指導者にはならないだろう。なぜなら、彼はほとんどのシリア人に死の恐怖を味あわせているからだ。彼自身は、大声で「ダマスカスへの道」と叫び、改心したことを宣伝してはいるのだが。

彼は自らを「軍司令官」に任命するつもりだ。任命された傀儡であるモハメド・アル・バシルが、2025年3月まで「政権移行」をおこなう。アル・バシルがほぼすべての派閥から嫌われることはほぼ確実だ。それは、悔悟した首切り屋ジャウラーニーが軍事政変を起こし、無制限の権力を握る道をつけることにつながるだろう。

イエスの弟子たちがギリシャ語の「クリスチアーノス」ということばをもとに「クリスチャン(キリスト教徒)」と呼ばれたのが、ローマ帝国の最も強力な都市の一つ、シリアにあったアンティオキアだ。しかしいま、アンティオキアはアンタキヤという名の小さな町に成り下がり、トルコ領となっている。そしてエルドアンはアレッポもトルコの一部にすることを夢見ている。

ローマ帝国時代、この地域ではギリシャ語が使われていた。ラテン語は占領者、つまり軍人と管理者だけが使用していた。

アンティオキアの総主教が率いていたキリスト教会は、ユーフラテス川に至るまでシリア全土に広がっていた。

「黒旗」がシリアのキリスト教徒を粛清しに来たとき、西側諸国は総じてシリアの残りのキリスト教徒を守るために立ち上がるだろうか。もちろんそうはならないだろう。「黒旗」と旧約聖書を信奉するハゲタカどもが国家の亡骸の上で吸血鬼の舞踏会を催す間、西側諸国は総じて「独裁者」の終焉を喜び続けている。
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