■ いくつかの不安要素アメリカのタンパでコスタリカと対戦した日本は後半に3ゴールを奪って逆転で勝利した。MF遠藤、MF香川、FW柿谷の3人がゴールを決めたが、今シーズン、なかなかチームでゴールを決めることができずに苦しんでいたMF香川とFW柿谷にゴールが生まれたことは収穫の1つで、MF大久保の右サイドハーフ、DF今野の左SBというオプションを試すことができたのも収穫と言えるだろう。
もちろん、不安材料はいくつもある。怪我上がりのDF内田など他の選手と比べてコンディション調整が遅れ気味の選手がいて、MF長谷部とDF酒井高は怪我のためベンチに入ることもできなかった。そして、MF本田圭はコンディションが上がってきたが、まだまだ不安はある。MF齋藤学やGK西川やGK権田といった出場機会が得られていない選手の状態も気になるところである。
また、守備のとき、ドリブルで仕掛けてくる選手への対応は不安いっぱいである。コスタリカの1トップのFWキャンベルとシャドーのMFブライアン・ルイスの個人技に前半はかなりやられて、日本の選手が2人以上で囲んだときもうまく倒れて日本のファールになったり、プレスを掻い潜られるシーンがあった。南米やアフリカのチームに多いが、ドリブル主体で来られると脆さが出てくる。
■ いい試合だったコスタリカ戦コンディションに関しては、「仕上がりのペースがワンテンポ早すぎるのではないか?」という心配もある。壮行試合のキプロス戦から中5日で、かつ、長時間の移動があったにもかかわらず、コンディションがかなり良くなった選手が多かった。いい話とは言えばいい話であるが、初戦のコートジボワール戦まで10日以上ある。調整は大丈夫なのか?という心配が出てくる。
ただ、コンディションに関しては日本代表のスタッフを信じるしかない。現場の人は入念に目標日(GLの初戦のコートジボワール戦)から逆算してトレ―ニングを行ったり、親善試合におけるプレイングタイムを調整していると思う。何度も五輪やW杯を経験しているので、プロの集団がこの点でミスをすることは考えにくい。良過ぎる場合も、悪過ぎる場合も、同じように不安になるものである。
なので、心配な点はたくさんあるが、それでもコスタリカ戦がエキサイティングで、いい試合だったことは間違いない。なかなか1点目を獲ることができなくて、前半31分に相手に先制ゴールを奪われて0対1でハーフタイムに突入したが、前半の内容も良かった。後半の方が出来が良かったのは間違いないが、前半の出来に関しても悲観する必要はない。質の高いプレーができていた。
先日のキプロス戦は走れない選手が多かったので、大チャンスに拡大することはほとんどなかったが、キプロス戦も選手たちの距離感は非常が良くて、縦パスを狙う意識も高かった。全体のコンディションが上がってきて、運動量の問題が小さくなったコスタリカ戦でたくさんチャンスを作ることができたのは必然と言えるが、それにしても、いい崩しから決定機を作る場面が多かった。
象徴的なのは2点目のMF香川のゴールシーンである。自陣でボールを奪ってダイレクトで4本・5本とパスが回って、完全にフリーの状態でMF香川がボールを持つと、最後はFW柿谷とのワンツーから逆転ゴールが生まれた。後半の終盤に相手のコスタリカの運動量が落ちてきたが、前半からあれだけボールを回されると最後までスタミナは持たない。こちらも必然の流れだったと言える。
■ 結果にプラスにして内容も・・・対戦相手のコスタリカはD組に入ってイタリアとウルグアイとイングランドという大国と同居する。コスタリカに注目して日本戦を観ていた人も多かったと思うが、W杯の本大会になると試合を観る人の数は億単位となる。こういう全世界が注目する中でコスタリカ戦で見せたパスワークを主体とした攻撃的なサッカーができたら、日本サッカーに対するイメージは相当に良くなるだろう。
もちろん、W杯というのは真剣勝負の舞台である。勝つことを最優先すべきであり、つまらないサッカーでもベスト8やベスト4に進出できれば大成功である。何をしてでも勝たなければならない舞台であるが、「日本代表はいいサッカーをしている。」、「日本代表のサッカーは面白い。」、「日本代表にはいい選手がたくさんいる。」と世界のサッカーファンに思ってほしいという思いもある。
「勝敗は二の次だ。」、「内容では勝っていた。」となるのは困るが、過去の4大会で日本代表が面白いサッカーができたかというとNOである。時々の事情があるので、岡田ジャパンやトルシエジャパンやジーコジャパンの選択を否定するつもりはないが、ザックジャパンがこれまでの日本代表チームよりも日本サッカーの良さをアピールできる可能性を持ったチームであることは確かである。
今大会に関してはGL突破がノルマと言えるが、その上でプラスアルファとして魅力的なサッカーをしてくれるということなしである。例えば、前回大会のチリは決勝トーナメントの1回戦でブラジルに0対3で敗れたが、いいサッカーをしたので、多くの人の記憶に残っている。結果はもちろん大事であるが、古今東西、サッカーファンの間で語られるのは魅力的なサッカーを見せたチームのことである。ブラジルW杯でザックジャパンがそうなることを密かに期待したいところである。
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