■ FIFAランキング34位のコスタリカブラジルW杯の開幕まであと10日となった。5月27日(火)に埼玉スタジアムでキプロスと壮行試合を行って、その後、アメリカ入りしてキャンプを行ってきた日本代表はタンパでW杯出場国の1つであるコスタリカと対戦した。コスタリカのFIFAランキングは34位なので、47位の日本よりも上に位置する。コスタリカは「死のグループ」と言われるグループDに組みこまれている。
日本は「4-2-3-1」。GK川島。DF内田、森重、吉田、今野。MF青山敏、山口蛍、大久保、本田圭、香川。FW大迫。キプロス戦で負傷交代となったDF長友はベンチスタートで、CBのレギュラー候補であるDF今野が左SBでスタメンとなった。1トップはFW大迫で、右サイドハーフはMF大久保で、FW柿谷はベンチスタートで、MF長谷部とDF酒井高は怪我のためスタンド観戦となった。
対するコスタリカは「5-2-2-1」。GKナバス。DFガンボア、ウマニャ、ゴンサレス、ミラー、ディアス。MFボルヘス、テヘダ、ブライアン・ルイス、ボラニョス。FWキャンベル。1トップでプレーするFWキャンベルはギリシャのオリンピアコスでプレーしており、シャドーの位置に入るMFブライアン・ルイスはオランダのPSVでプレーしている。母国の英雄のFWワンチョペは2007年にFC東京でプレーした。
■ 後半に3ゴールを挙げて逆転勝ち!!!試合は立ち上がりから「両チームがゴール前でチャンスを作り合う。」という落ち着かない展開となる。日本は個人能力の高いコスタリカの1トップのFWキャンベルとシャドーの位置のMFブライアン・ルイスのドリブルに手を焼くが、前半15分あたりを過ぎると日本がボールを保持する時間が長くなって、日本が試合のリズムを掴んで惜しいシーンを作るようになる。
日本ペースになって先制ゴールが生まれそうな時間帯になったが、前半31分にちょっとしたアクシデントがきっかけで右SBのDF内田の裏を突かれてサイドの奥深くからフリーで鋭いクロスを入れられる。DF今野のマークを振り払ってファーサイドに入ってきたMFブライアン・ルイスが難なく合わせてコスタリカが先制に成功。前半は1対0とコスタリカがリードして折り返す。
1点ビハインドの日本は後半開始からMF遠藤とMF岡崎を投入。すると、後半15分にカウンターから数的優位のチャンスを作ると、最後は右サイドでボールを受けたMF本田圭の丁寧なラストパスから中に入ってきたMF遠藤が決めて1対1の同点に追い付く。さらに後半35分には途中出場のFW柿谷のリターンパスを受けたMF香川が右足で決めて2対1と逆転に成功する。
後半47分にはMF香川の浮き球のパスから途中出場のMF岡崎が裏に抜け出してつぶれたところをフォローしたFW柿谷が落ち着いて決めてダメ押しの3点目を挙げる。結局、後半に3ゴールを奪った日本が3対1で逆転で勝利して、2014年に入ってからは3連勝。2013年11月のベルギー戦を含めると4連勝となった。次は6月7日にザンビアと対戦して、その次がW杯のGL初戦となる。
■ 序列が変わった可能性があるボランチとCBシュート数は日本が16本で、コスタリカが8本だったが、決定機の数は日本の方がはるかに多かった。コスタリカも4・5回は大チャンスを作ったが、日本はその倍ほどの大チャンスがあった。前半に訪れた決定機でFW大迫やMF大久保やMF本田圭らが決められなかったことは反省材料で、「決定力」を欠いたのは否めないが、W杯に向けて弾みの付く逆転勝利となった。
この時期の試合というのは、選手のコンディションが最優先されるので、前半だけで交代となった選手の出来が悪かったとは言えないし、交代させられずに長い時間プレーした選手の出来が良かったとも言い切れないが、MF山口蛍とDF森重についてはキプロス戦に続いて2試合連続フル出場となった。ボランチやCBの序列が大きく変わったことを示しているのではないかと思われる。
ボランチのMF山口蛍はMOM級の働きを見せた。つなぎのパスや相手のキーマンを潰す仕事だけでなく、持ち味である飛び出しも何度か披露した。日本代表で試合を重ねるごとにできる範囲が広がっており、スタンド観戦となったMF長谷部の状態が万全でないこと、ならびに、MF遠藤の年齢を考えると「MF山口蛍がボランチの軸になった。」と考えるべきなのかもしれない。
DF森重はこの日も安定していた。怪我のDF長友は長時間プレーするのが難しい状態だったので、DF今野が左SBに回ったこともスタメンの理由の1つだったとは思うが、90分を通して集中してプレーしており、数年前までは課題とされてきた凡ミスの多さというのも無くなった。こちらも序列が変わって、DF吉田とDF森重のコンビがファーストオプションになったと言えるかもしれない。
■ W杯での活躍を予感させる香川真司攻撃的なポジションは左サイドハーフのMF香川が3つのゴール全てに絡む活躍を見せた。先日のキプロス戦のプレーに関しては、「全然駄目だ。」、「スタメンから外した方がいい。」と評価した人もいたが、個人的にはかなりいい状態に見えた。キプロス戦ではW杯での活躍を予感させるプレーを見せたが、この日は「W杯で大活躍するのは間違いない。」と思わせるプレーを見せた。
MF香川はC大阪の頃からかなりの自信家であるが、ちょっとしたことで自信を失ってしまうタイプでもある。周りの評価が気になるタイプで、ドツボにハマりやすいタイプと言えるが、今は非常にいい精神状態のように見える。どちらかというとノリやすいタイプで、いい精神状態でプレーできれば最上級のプレーが期待できる。彼の活躍が一番の収穫と言えるかもしれない。
ザックジャパンでは2度目のスタメンとなったMF大久保は悪くはなかった。特に立ち上がりは積極的に攻撃に絡むなど存在感があったが、時間が経つにつれてミスが多くなって、パフォーマンスが落ちてしまった。ただ、MF岡崎よりもボールはおさまるので、ザックジャパンが得意とするパターンとは逆で、「右サイドで作って、左サイドで仕留める。」ということも可能になる。
MF大久保の得点力の高さを最大限に生かそうとするならば1トップがベストであるが、そのポジションにはFW大迫やFW柿谷もいる。サイドハーフもMF清武とMF齋藤学が控えているが、MF大久保がサイドに入ったときにどういう化学反応が起きるのか、このタイミングでテストできたのは良かった。素晴らしい出来とは言えないが、サイドハーフでも合格点と言えるのではないか。
■ 日本代表の2人のエース大黒柱のMF本田圭はまずまずだった。不用意なミスはあるので、本調子とは言えないが、これくらいできれば十分である。前半のMF青山敏の落としから大チャンスを迎えたシーンでの逸機は残念だったが、MF遠藤の同点ゴールをアシストして、ある程度はボールもおさまっていた。全くいいプレーができなかった壮行試合のキプロス戦と比べるとはるかに良かったと言える。
ザックジャパンになってからMF岡崎が最多のゴールを記録しているので、「MF岡崎が日本代表のエースではないか。」と主張する人もいる。もちろん、たくさんの重要なゴールを決めてきたので、MF岡崎のことを「エースストライカー」と呼ぶのはありかもしれないが、エースと呼ぶのは違和感がある。やはり、ザックジャパンのエースと言えるのは、MF本田圭であり、MF香川である。
実力的には、他のフォワードの選手や2列目の選手と大差はないだろう。コンディションであったり、試合勘であったり、最近の調子などを考慮すると、MF本田圭やMF香川よりもいいプレーができる選手がいるかもしれないが、この2人については、ピッチにいるだけで相手チームのプレッシャーになるし、大きな期待を背負ってプレーしている。やはり特別な存在である。
キプロス戦でいいプレーができなかったので、「MF本田圭をレギュラーから外すべき。」と意見する人も多くなっているが、それはあまりにも短絡的である。今、MF本田圭に集まっているマークが他の選手のところに行くことになるので、よほどのことがない限り、うまくいかないだろう。不調のときでも、名前で相手をビビらすことができるのは日本ではMF本田圭とMF香川の2人だけである。
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