■ 海外組の増加今回のロンドン五輪の日本代表には、DF吉田、DF酒井宏、DF酒井高、MF清武、MF宇佐美、MF大津と6人も欧州クラブに所属する選手が入っている。18人の中で6人なので、ちょうど、1/3となる。南アフリカW杯のときは、MF長谷部、MF松井、MF本田圭、FW森本の4人だけだったので、この2年間で、大きく変わったと言える。
そして、おそらく、次の2014年のリオデジャネイロ五輪のときは、もっと、海外組が占めるパーセンテージが高まると予想される。ロンドン五輪は、幸いにして、守備的なポジションの選手は、ほとんどが国内組だったので、チームを作っていく上で、土台を大きく変える必要はなかったが、リオ世代は、守備的なポジションの選手の海外移籍も進むだろう。
リオ五輪の予選は、北京五輪やロンドン五輪の予選のようなホーム&アウェー方式ではなくて、U-22アジア選手権の上位チームに出場権が与えられる見込みで、選手の招集に関しては、少しは楽になるかもしれないが、メンバーの半分以上が海外組になっても、不思議はない。優秀な選手が揃っているので、能力的な不安は少ないが、チーム作りは、難しくなると予想される。よって、早い時期から準備をしておく必要があるだろう。
■ 本気度に違和感海外組だけに限った話ではないが、どうしても、五輪代表の場合は、A代表やクラブとの選手の取り合いになって、ベストメンバーを揃えられないことが多い。今予選でも、MF清武やMF原口がフル代表に招集されて、五輪予選に出られないこともあったし、また、5月のトゥーロン国際大会も、各クラブの事情を考慮して、主力の半数程度が招集できなかった。
もちろん、アジア予選でも、トゥーロン国際大会でも、本大会でも、ベストメンバーを揃えることが出来たら、チーム力は上がると思うが、いろいろな事情があるので、「ベストメンバーではないから。」といった理由で、苦言を呈することは、果たして適切なのか。よく使われる「本気度」というフレーズには、かなりの違和感を感じる。
確かに、代表チームにしか興味が無い人にとっては、「なぜ?」となるだろうが、ベストメンバーを揃えるためには、クラブ側に全面的に譲歩してもらう必要がある。そして、「クラブと代表」や「選手と代表」は、主従関係ではないので、常に、代表側の都合を聞いてもらえるわけではない。
「メンバーが中途半端過ぎる。」という声も聞こえてくるが、それ以外の全てのことを犠牲にして、五輪代表に全力を注ぐことがベストなのか。現状で出来ることは、ある部分ではクラブに配慮し、ある部分では選手に配慮し、いろいろな制約がある中で、できる限り、ベストを尽くすことなので、そういった発言は、思慮に欠けているように思える。
■ 何を優先するのか?ただ、何を優先するのか、どこを犠牲にするのか、その時々で、適切な判断を下して、実行に移すのは、大変なことである。例えば、MF清武とDF酒井宏とMF宇佐美は、今回、移籍直後にも関わらず、クラブの活動よりも、五輪代表の活動を優先しているが、果たして、適切だったのか。本人の意思、所属クラブの判断、サッカー協会の意向など、様々な事情が絡んでくるので、難しいところである。
以前は、「日本代表は絶対」という考えが根強くて、根性論もまかり通っていた。実際に、MF香川などは、クラブ・U-19・U-23・フル代表と4つのチームに参加したことがあったが、無理をさせて、つぶれてしまった選手は、何人もいる。選手に意見を聞くと、「全部出たい。」と言うはずなので、本人ではなくて、誰かが、ブレーキをかけてあげる必要があるが、簡単なことではない。
もちろん、「目の前のことに全力を尽くすこと。」は、決して悪いことではないと思う。キリンカップでも、親善試合でも、ステージの大きさに関わらず、全力を尽くしてきたことが、今の日本サッカーの繁栄の礎になったところもあるので、そういった姿勢を全否定することはできないが、今後は、目先のことだけにとらわれず、優先順位を決めて、最大限の力を発揮できるように、整理することも必要になる。
先のとおり、判断が難しくて、ケース・バイ・ケースがほとんどなので、最終判断を下す人は、いろいろな事情に精通しておく必要がある。また、「正解」というのは無いので、理不尽な批判を浴びることもあるだろうが、日本サッカーがさらに上を目指すためには、重要な要素で、バランス感覚に優れたリーダーの出現を期待したい。
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