■ ロンドン五輪予選2012年7月27日から8月12日までイギリスのロンドンで開催されるロンドン五輪のアジア予選が目前に迫ってきた。アトランタ、シドニー、アテネ、北京に続いて、5大会連続の五輪出場を狙うU-22日本代表は、二次予選から登場。
クウェートと対戦することになっている。二次予選は、H&Aの一発勝負で、6月19日にホームゲーム、23日にアウェーゲームが行われる予定で、その次にアジア最終予選が待っている
過去の大会は、他の国と比べると、五輪に対する意識が高く、毎回、お金や時間をかけて強化をしてきたが、関塚監督率いるロンドン五輪代表チームは、思うような強化ができておらず、ここまでベストメンバーが揃ったこともなく、十分な準備はできていない。チームを作りながら、ロンドン行きの切符を勝ち取る必要があるが、この試合が、二次予選前の最後の試合となる。
3月末のウズベキスタン遠征以来の国際試合となる関塚ジャパンは<4-2-3-1>。GK権田。DF酒井宏、濱田、村松、比嘉。MF山村、山口蛍、清武、東、原口。FW永井。FW大迫、MF山崎、MF山本康らはベンチスタート。FW宮市、MF香川といった海外組は招集されていない。フル代表に呼ばれた経験のあるDF酒井高は怪我のため欠場。大学生のDF比嘉が左サイドバックに入る。
■ 日本が3対1で逆転勝利試合は前半3分に相手DFのコントロールミスをFW永井が奪ってゴールに突進。決定的なチャンスを作るが、シュートは打てずに、上がってきたMF山村に横パスを送るが、相手DFにブロックされてゴールならず。すると、その直後の自分たちのCKからカウンターを許し失点。早々に1点ビハインドとなる。その後も、前半は、オーストラリアがペースを握り、次々とピンチを招いてしまう。
劣勢となった日本だったが、前半終了間際に中盤でMF山村が相手からボールを奪ってカウンター。ドリブルで持ち込んで右サイドにスルーパスを送ると、これをFW永井が落ち着いてコントロールしてからシュート。1対1の同点に追いついく。
後半は日本ペースとなる。MF清武、MF原口らが次々にチャンスを作っていくと、後半19分に相手GKへのバックパスをカットしたFW永井が、うまくゴールに流しこんで2対1と逆転に成功する。FW永井は2ゴール目。日本は、後半32分にMF東に代えてFW大迫を投入。<4-2-3-1>はそのままで、FW永井を右サイドに回すと、後半39分に、右サイドからFW永井のクロスを途中出場のFW大迫がボレーで決めてダメ押しの3点目を挙げる。
結局、後半はオーストラリアを圧倒した日本が、FW永井の2ゴール1アシストの活躍もあって3対1で勝利。クウェート戦に向けて弾みの付く白星を奪った。
■ 魅せた2列目のアタッカー陣①前半は動きが悪くて、オーストラリアに何度もチャンスを作られたが、後半は一転して日本ペースとなった。どちらが本当の五輪代表の姿なのか、まだよく分からないところがあるが、前半のようなサッカーでは、アジア予選突破も苦しくなる。一方で、後半のようなサッカーが安定してできるようだと、ロンドン五輪の本戦でも上位進出も期待できる。このチームの持つ「脆さ」と「ポテンシャルの高さ」の両方を感じさせる試合となった。
よかったのはアタッカー陣で、MF原口、MF東、MF清武の3人がスタメンで起用されて、後半18分からは、磐田のMF山崎も登場したが、4人ともに前に仕掛ける意識が高くて、及第点以上の出来だった。一番、よかったのはC大阪のMF清武で、FW永井やMF東との連携もよくて、いいテンポでボールを受けて・さばいて、攻撃の流れを作った。左サイドに入ったMF原口もまずまずで、周囲とのコンビネーションという意味ではもう一つだったが、単独でのドリブル突破はやはり威力がある。
■ 魅せた2列目のアタッカー陣②この世代は、アタッカー陣だけは、フル代表にも見劣りしないだけの選手を揃えているが、昨年11月のアジア大会を経験したMF山崎、MF東が自信をつけたこともあって、一段とパワーアップし、より強力になった。MF清武、MF原口、MF山崎、MF東の4人はJ1のリーグ戦でも好調で、MF山崎とMF原口が3ゴール、MF東とMF清武が2ゴールを挙げており、いずれも、所属クラブでレギュラーポジションをつかんでいる。
本番となるクウェート戦では、左サイドのスタメンが、MF山崎になるか、MF原口になるかは、コンディション次第になりそうだが、いずれにしても、この4人中の3人がスタメンで起用されるのは間違いないところである。今のところは、五輪代表への招集も噂されるMF宇佐美やFW宮市といったタレントが入り込む隙は見当たらない。彼らが、呼ばれていないのも納得である。
■ エースFW永井が爆発エースのFW永井は、2ゴール1アシストとしっかりと結果を残した。2ゴールともにFW永井のスピードが生きた「らしいゴール」だったが、最後のシュートの場面でも、落ち着いているのが魅力で、2つとも簡単なシュートではなかったが、冷静にゴールに流し込んだ。
結果を残している2列目のアタッカー陣とは対照的に、FW永井はリーグでは苦しんでおり、7試合に出場してノーゴール。最近は疲れもあるのか、精彩を欠いており、スタメンから外れることも出てきたが、この日は「いつものFW永井」だった。このチームでは、いつもいいところでゴールを奪ってくれる「本当に頼りになるストライカー」である。
FW永井への依存度が高すぎることは、心配といえば心配であるが、現状では仕方がないところであり、FW永井に怪我などのアクシデントがないことを祈りたいところである。
■ FW大迫がダメ押しゴール後半32分からFW大迫が入ってきて2トップになるかと思われたが、そのままのシステムで1トップを継続。2トップも練習していたようなので、2トップの形も見てみたかったが、右サイドに移ったFW永井のアシストから大迫がゴール。これも、今後を考えると、非常に意味のあるゴールといえる。
今のチームでは、実質的に、フォワードは、FW永井か、FW大迫かのどちらかとなる。現状は、総合力ではFW永井が上回っており、FW永井がスタメン、FW大迫がサブになっているが、FW大迫も重要な選手で、予選では、得点が欲しいときにピッチに立つ可能性は高い。FW大迫という選手を投入して、「ゴール」という結果が生まれて、いいイメージが生まれたのは、大きなことである。
■ カウンターへの対応が課題課題は、カウンターへの対応の甘さである。このチームは、自分たちのCKからボールを失って相手にカウンターを許すというシーンが多く、この試合も同じような形でゴールを許した。まず、最初に相手に対応していたのがDF比嘉で、ここで、もう少しきっちりと対応できていれば問題なかったが、ちょっとした隙で入れ替られて、スピードに乗られてしまった。
DF濱田、DF酒井宏が加わったことで、高さのある選手が増えてきてえ、セットプレーも武器になりそうなのは、予選に向けてポジティブな話であるが、自分たちのチャンスから失点を喫するというのは、もったいない。ボランチのMF山口、MF山村はスピードのある選手ではないので、チーム全体の意識を高める必要がある。
■ ダブルボランチの守備MF米本が長期離脱しているため、ボランチはMF山村とMF山口というアジア大会のコンビとなったが、守備の甘さが目立ってしまった。ボランチの二人だけの責任ではないが、つぶすところでつぶせておらず、後ろに負担がかかってシュートまで持ち込まれるシーンが多かった。攻撃では、ともに、タイミングよく飛び出していて、悪くはなかったが、肝心の守備で破たんするようだと、この組み合わせを、考え直す必要が出てくる。
このチームは、基本的には、あまりポジションを崩さないサッカーであるが、ダブルボランチだけは積極的に上がっていくので、攻撃でもキーになっている。ゴール前まで出ていく意識を持ちながら、バランスを取るのは簡単ではないが、アジア大会のときはうまくできていたので、そのときの感覚を取り戻してもらいたいところである。
■ DF酒井宏樹がデビュー柏レイソルのDF酒井宏は五輪代表のデビュー戦。DF比嘉のいる左サイドを破られるシーンはあったが、DF酒井宏のいる右サイドを破られたシーンはほとんどなく、クロスの精度がやや低かったことを除くと、文句のつけようのない出来であり、レギュラー奪取に大きく近づいたといえる。
アジア大会では、サイドバックは攻撃参加を自重しており、サイドから崩すシーンは少なかったが、DF酒井宏、DF酒井高の両サイドになると、事情は異なってくる。そうなると、より一層、ボランチの守備が大事になるが、サイドバックにいい選手を揃えていることが、この世代のストロングポイントなので、生かしたいところ。DF酒井宏に目途が立ったのは、総合力を高める上で、非常に大きなことである。
■ クウェート戦に向けて次は二次予選のクウェート戦となる。先のホームゲームで、次がアウェーゲームとなるが、まずは、ホームゲームでしっかりと勝利をつかまないといけない。理想を言うと、2点差以上を付けて勝ちたいところであるが、無失点で乗り切るというのも、大事である。
スタメンは、この日の11人が基本となる。代わるとしたら、MF山崎とDF酒井高が入るくらいで、ほぼメンバーも固まってきた。ラストゲームをいい形で締めくくることができたので、この勢いを持って最終予選に進んでもらいたいところである。
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