■ オーバーエイジ枠アトランタ五輪から導入されたオーバーエイジ枠については、毎度、使うべきか、否かが、激しく議論されてきた。過去を振り返ってみると、アトランタと北京ではOAを使用せず、シドニーとアテネではOAを使用したが、北京のときも、MF遠藤とFW大久保を招集しようと試みているので、今回も、使ってくる可能性は高いだろう。
言うまでもなく、戦力アップする可能性があるのであれば、OAを使った方がいい。そして、過去の4大会とは、日本側の事情も異なる。今回は、OAを使ったら、DF長友、MF本田圭といったCLで決勝トーナメントに進むようなチームで、主力級の活躍をしている選手を召集することも可能となる。彼らが、今の選手よりも、はるかに格上の選手であることは明らかで、戦力アップは確実である。
よって、選手側の事情やクラブ側の事情は様々なので、思い通りに招集することは不可能にしても、今の時点で、OAを使わないという判断をすることは考えにくい。もちろん、「予選突破の功労者を中心に戦いたい。」という気持ちは、選手やスタッフにもあるだろうが、実力の世界なので、こればっかりは仕方がない。
もちろん、これまで築いてきたベースをなくしてしまうのは、意味の無いことである。本大会まで、あと4ヵ月しかないが、リーグ戦は続いていくので、フルメンバーが集まって強化できるのは、本番直前を除くと、ほとんどない。トゥーロンにも、どこまで主力を呼べるかは分からないので、ぶっつけ本番になる可能性も否定できず、大幅な入れ替えを行って、土台が崩れてしまうことだけは避けなければならない。
■ 招集できそうな海外組は?出場するからには、いいメンバーを集めて、少しでも上を目指すのは当然のことであるが、現実的には、すでに欧州のビッグクラブやメガクラブで活躍している選手が、五輪に出場するメリットは少ない。五輪も大きな舞台であるが、CLとなると、それ以上に注目の集まるステージなので、毎年のように、CLに出場するMF本田圭、DF長友にとっては、クラブでの活動を差し置いてまで、五輪に出場するメリットは少ない。
OAではないが、MF香川も同様である。MF本田圭、DF長友、MF香川に関しては、すでに北京五輪に出場しており、フル代表の活動もあることを考えると、クラブや本人を説得するのは、容易ではない。彼らが加わると、戦力アップするのは間違いないが、欧州組からOAを選ぶとしたら、より現実的なのは、地元のロンドンでオリンピックが開かれるイングランドでプレーする選手か、選手を売ることで利益を得たいスモールクラブに所属する選手である。
そう考えると、FW李忠成、FWハーフナー・マイク、DF吉田などが候補に挙がってくる。ただ、彼らにしても、今夏にクラブを移るようだと、五輪に参加している暇はなくなる。ブラジルは、OAの候補を何人も発表しているが、最初から3名だけに絞ってチームに組み込んでいくのか、たくさんの選手を呼んで、そこから絞っていくのか、選考の方法も難しい。
■ OAが必要なポジションは?(1)一方で、関塚監督も、戦力アップが期待できるOAは魅力的に感じるだろう。交渉するのは大変だが、監督にとっては、使える駒が増えることは有り難いことで、ロンドン五輪の現状を考えると、左SB、CB、ボランチ、FWで、OAを使ってくる可能がある。
シドニー(=GK楢崎)、アテネ(=GK曽ヶ端)では、GKでOAを使ってきたが、今回は、GK権田がいるので、GKにOAを使うメリットはあまり感じない。経験と実績で、GK権田よりも明らかに上といえるのは、GK楢崎か、GK川島となるが、次代を担うGK権田に世界大会の経験を積ませることも重要で、せっかくのチャンスを奪ってしまうことは、今後のことを考えても、好ましいとはいえない。
もっとも可能性が高いのは、センターバックのポジションである。DF鈴木とDF濱田は予選を通して活躍を見せたが、バックアッパーはおらず、非常に層の薄いポジションである。OA候補となるのは、VVVのDF吉田や、G大阪のDF今野であるが、DF吉田の場合は、ロンドン世代とは年齢も近いので、有力候補の一人である。
ただ、フル代表で活躍している選手は、W杯予選も始まるのでスケジュールはタイトである。そうなると、日本代表から漏れているDF闘莉王の名前も挙がってくるが、DF闘莉王の場合、かなりの劇薬で、年齢を考えても、2014年や2018年のW杯を見据えた選考とはならない。そのため、DF闘莉王の可能性は低いと思うが、高さのあるチームと戦うことになったら、これほど頼りになる選手もいない。
■ OAが必要なポジションは?(2)ボランチで、OAを使ってくる可能性もある。MF扇原とMF山口螢がレギュラーに定着したが、MF山村やMF山本康は十分なアピールができておらず、計算できるバックアッパーは見つかっていない。ただ、ここで、OAを使うとすると、MF遠藤か、MF長谷部となるが、ともに、あまりコンディションが良くないので、リスクは高い。
また、フル代表は、この二人のバックアッパーが見つかっていない状態であるが、その候補となるMF扇原とMF山口螢のチャンスを奪うことも、あまり効果的とは思えない。MF遠藤は、北京五輪のときに体調不良で出場できなかった経緯があるので、今回も五輪出場に意欲を見せているが、ここ数年、満身創痍の中で戦っていることを考えても、MF遠藤を使うのは有効ではないと感じる。
センターバックの次に、OAを使ってくる可能性が高いのは、フォワードだろう。FW大迫とFW永井が1トップで起用されてきたが、十分なパフォーマンスではなかった。したがって、FW前田、FWハーフナー・マイク、FW李忠成といった選手をOAで招集することは、十分に考えられる。
その中では、ボールがおさまる選手が必要とされているので、FW前田は魅力的だが、30歳という年齢なので、ロンドン世代とは、かなりの差がある。また、北京五輪のときのFW大久保と同様に、磐田がFW前田の招集を簡単に認めるとも思えないので、仮に、関塚監督が招集を望んだとしても、難しいかもしれない。
■ しっかりとした準備を・・・また、言うまでもなく、欧州組がどこまで召集できるかで、OAの人選も変わってくる。例えば、MF香川が招集できるのならば、攻撃的MFにOAを使う意味はなくなるし、DF酒井高を招集できるのであれば、左SBにOAを使う必要性もなくなる。したがって、海外クラブに所属するロンドン世代の選手を招集できるか、否かで事情は変わってくる。
さらに、今後もリーグ戦が続いていくので、故障で離脱する選手も出てくるだろう。前述のように、GKのポジションにOAを使う必要性は感じないが、もし、正GKのGK権田にアクシデントがあって、本大会に出場できなくなったら、まず間違いなく、GKにOAを使ってくるだろう。このあたりは、流動的である。
欧州組はもちろん、国内組の選手にも拘束力は無いので、クラブから拒否されると、日本サッカー協会としては、どうすることもできない。そのため、交渉は難航することが予想されるが、できるだけ、いいメンバーを集めて欲しいところである。
他国の事情は分からないので、メダルの可能性がどこまであるのか、グループリーグ突破の可能性がどこまであるのかは、何ともいえないところで、日本がベストを尽くしたとしても、グループリーグ敗退に終わることも十分に考えられる。北京五輪メンバーのその後を見ても分かる通り、五輪代表の活動の成果は、予選と本大会の結果だけで判断できるものではなくて、長い目で見る必要があるが、勝ち進むことで得られるものは多い。しっかりとした準備をしてほしいところである。
関連エントリー 2011/06/10
「こんな選手をU-22日本代表に選んでみたら面白いのでは?」と思う選手を挙げてみました 2011/12/02
五輪代表の選考は難しい・・・ 2012/02/06
なぜ、ボランチMF山村にこだわるのか??? 2012/02/07
U-23日本代表 2列目トリオのベストチョイスは??? 2012/03/16
ロンドン五輪代表戦士 個人別雑感 (上) → J6+(メルマ) 2012/03/17
ロンドン五輪代表戦士 個人別雑感 (下) → J7+(メルマ)
- 関連記事
-