2016年7月1日
Paul Craig Roberts
過去記事から:
軍国主義のたわごと 2014年5月19日
皆様は、戦争死傷者の85から90パーセントが非戦闘員民間人であることをご存じだろうか? これは、アメリカン・ジャーナル・オブ・パブリック・ヘルス、2014年6月号に掲載された、9人の研究チームによる結論だ。戦争で戦う兵士の死亡は、人的・経済的損失のわずかな部分なのだ。明らかに、戦争は民間人の命を守りはしない。兵士達が我々の為に亡くなるという考え方は間違えだ。非戦闘員こそが、戦争の主な犠牲者だ。
六週間後にやってくる7月4日に向けて、この事実をお忘れなく。
7月4日は、イギリスからのアメリカ独立を祝う、アメリカで最も重要な国の祝日だ。1776年7月4日、アメリカ建国の始祖達が、13の植民地は、もはや植民地ではなく、「イギリス人の権利」が、ジョージ3世の行政官達のみならず、あらゆる国民に適用される独立国家だと宣言した。(実際、第二次アメリカ大陸議会は、7月2日に独立決議案を可決しており、歴史学者達は、独立宣言が、7月4日、8月2日のどちらに署名されたのか論争している。)
このアメリカの自決の主張において、大英帝国国民は投票を認められていなかった。従って、クリミアと東ウクライナ、つまりドネツクとルハンスクという元ロシア領における住民投票に対する、アメリカ政府の立場からすると、アメリカの独立宣言は“非正統的で、違法”だったことになる。
7月4日には、アメリカ全土で、国の為に命を捧げた兵士達に関する愛国主義演説がおこなわれるだろう。物の良くわかった人々にとって、こうした演説は奇異だ。我が国の兵士が、御国の為に命を捧げた例を思いつくのに、私は四苦八苦している。アメリカ海兵隊のスメドリー・バトラー将軍も同じ問題で悩んでいた。部下の海兵隊員達は、ユナイテッド・フルーツ社による中米支配の為に、命を捧げたと彼は言ったのだ。“戦争はペテンだ”で、バトラー将軍は、アメリカの第一次世界大戦参戦で、21,000人の新たなアメリカ人百万長者や億万長者が生まれたことを指摘していた。
し
バトラー将軍が“戦争はペテンだ”と言った際、戦争は、何百万人もの死者を踏み台にして金持ちになる、ごく少数の人の為のペテンだと彼は言っていたのだ。アメリカン・ジャーナル・オブ・パブリック・ヘルスの論文によると、二十世紀中、1億9000万人が、戦争に直接、間接関連して亡くなったという。
1億9000万人と言えば、私が生まれた年のアメリカ総人口より6000万人も多い。
アメリカの領土で行われた唯一の戦争は、南部11州の分離に対する戦争だった。この戦争では、移民船から下船したばかりのアイルランド人移民がアメリカ帝国の為にその命を捧げた。南部を征服するやいなや、合衆国軍は平原インディアンに対して解き放たれ、インディアンをも滅ぼした。
命より帝国。それが常にアメリカ政府の指針だ。
アメリカの戦争は、キューバ、ハイチ、メキシコ、フィリピン、日本、ドイツ、朝鮮、ベトナム、パナマ、アフガニスタン、イラク、リビア、シリアやソマリア等々、常に外国での戦いだった。アメリカ政府は、アメリカが戦争状態にない国々のパキスタンやイエメン等さえ攻撃し、代理戦争をしている。上記で引用した論文はこう報じている。“第二次世界大戦の終わりから、2001年迄の間に、アメリカ合州国は、201件の外国での軍事作戦を行い、そしてそれ以来、アフガニスタンとイラクを含む他の戦争をしている”
こうした戦争や軍事作戦のどれ一つとして、外国の脅威からアメリカ国民を守ることとは何の関係もなかった。
日本やドイツさえ、アメリカにとっては脅威ではなかった。どちらの国もアメリカを侵略する可能性もなく、どちらの国にも、そのような戦争計画は無かった。
日本が、中国、ビルマとインドネシアを征服したと仮定しよう。それ程広大な領土を支配すれば、日本は、アメリカを侵略する為、一師団とて割くことは不可能で、もちろん、いかなる攻撃艦隊も決して太平洋を渡ることはできなかったろう。ミッドウェーにおける日本艦隊の運命同様、攻撃艦隊はアメリカ海軍にとって格好の標的だったろう。
ドイツが、ヨーロッパのイギリス、ロシアから、北アフリカまで、征服を拡張していたと仮定しよう。ドイツは、それほど広大な領土をうまく占領することは不可能で、アメリカを侵略するための一兵卒すら割くことはできなかったろう。超大国アメリカでさえ、相対的に、領土も狭く、人口の少ない国々である、イラクとアフガニスタンを上手く占領することはできなかった。
南軍、平原インディアン、ハイチ、スペイン、パナマ、グレナダとメキシコに対する戦争を除いて、アメリカは戦争に決して勝てていない。南部連邦軍は、たいてい人数で上回り、合衆国軍の将軍達を打ち破ることが多かった。日本は軍事資源の欠如のせいで敗北した。ドイツはソ連に打ち破られた。連合軍のノルマンディー侵攻は、19446年月6日まで行われなかったが、その頃までに、赤軍がドイツ国防軍を粉砕していた。
連合軍がノルマンディーに上陸した時には、ドイツ軍の四分の三はロシア戦線にいた。連合軍の侵攻は、ドイツが動員した部隊の燃料不足によって大いに助けられた。もしもヒトラーが、傲慢さゆえのソ連侵略に至っていなければ、そしてその代わりに、ヨーロッパ征服だけで満足していたなら、連合軍による侵攻は不可能だったろう。今日、ドイツは、イギリスを含め、全ヨーロッパを支配していただろう。アメリカは、ロシア、中国や、中東を脅かす、ヨーロッパ帝国をもててはいなかっただろう。
日本に勝利を収めたダグラス・マッカーサー将軍が、1950年代に、朝鮮で第三世界の中国と戦って行き詰まりになった。ベトナムでは、アメリカの技術的優位性が第三世界の軍隊に破れた。アメリカは1980年代に、強大なグレナダを攻め立てたが、ニカラグアのサンディニスタに対する代理戦争に破れた。
グレナダやサンディニスタが、アメリカ合州国に対する脅威だった、あるいは北朝鮮や北ベトナムが、アメリカ合州国に対する脅威だったと考える程、愚かな人などいるだろうか? ところが朝鮮戦争とベトナム戦争は、あたかもアメリカ合州国の命運がそれにかかっているかの様に扱われていた。こうした戦争のおかげで、膨大な数の極端や予測や戦略についての議論が行われた。共産主義者の脅威がヒトラーの脅威に置き換わった。アメリカ帝国は第三世界の人々による危険にさらされている。ドミノが至る所で倒れかねないというのだった。
現在、アメリカ政府は、冷戦を終結させたというレーガン大統領の業績を覆す作業中だ。アメリカ政府が画策したクーデターが、選挙で選ばれたウクライナ政府を打倒し、傀儡政権を据えた。アメリカ政府の傀儡連中が、ロシアと、ウクライナ国内のロシア語を話す国民に対して脅迫をし始めた。こうした脅威のおかげで、元々ロシアの一部だったウクライナの一部が、独立を宣言するに至った。アメリカ政府は、自身ではなく、ロシアのせいにして、事を荒立て、ロシアを悪魔化し、バルト諸国や東ヨーロッパへ軍隊を配備し、冷戦を再現しているのだ。アメリカ政府が毎年軍安保複合体に与え、その一部が政治運動用寄附として政治家の懐に戻ってくる何千億ドルもの金を正当化するため、アメリカ政府は、冷戦を再現させる必要があるのだ。ウクライナでの出来事に関するアメリカ政府プロパガンダと対照的な率直な見方は、ここで見られる。http://www.claritypress.com/LendmanIII.html
アメリカ合州国では、愛国心と軍国主義は同義語になっている。7月4日には、勇気を振り絞って、独立記念日は、アメリカ帝国ではなく、独立宣言を祝うのだということを、軍国主義者に思い起こさせて頂きたい。独立宣言は、イギリスのジョージ3世からの独立宣言に留まらず、責任を負わない非道な政府からの独立宣言でもあった。就任宣誓で、アメリカの公職者は、 ”外国と、国内の”敵に対して、アメリカ憲法を守ることを誓うのだ。
21世紀において、アメリカ人最悪の敵は、アルカイダやイラン、ロシアや中国ではない。アメリカ最悪の敵は、連中が画策した“対テロ戦争”のおかげで、自分達には、アメリカ憲法によって全ての国民に保障された市民的自由を無視する権利が与えられていると繰り返し宣言する我々自身の大統領なのだ。アメリカ国民から市民的自由を剥奪しながら、行政府の諸機関は今や膨大な量の弾薬を備蓄しており、農務省は短機関銃を発注した。国土安全保障省は、2,717輌の耐地雷装甲兵員輸送車を入手した。議会もマスコミも一体なぜ、行政府がアメリカ国民に対して、それほど重武装しているのかには無関心だ。
21世紀中ずっと、実際、二十世紀末のクリントン政権以来、大統領府は、法律(国内法と国際法の両方)憲法、議会、そして司法の支配を受けないことを宣言した。大統領府は、共和党のフェデラリスト・ソサエティーの助力を得て、たとえ他の国や他の国々に対して行われる戦争でなく、対シリアで、アメリカが現在同盟しているアルカイダのような曖昧な国も持たない敵に対する、曖昧な未定義の、あるいは明確に定義されない戦争であっても、大統領府が戦争状態を宣言している限り、大統領府を、国内法であれ、国際法であれ、法律に責任を負わない、専制政治にしてしまったのだ。
アルカイダは今や二役をこなしている。アルカイダは、選挙で選ばれたシリアのアサド政権打倒の為の、アメリカ政府の手先であると同時に、アルカイダは、その打倒の為には、アメリカの市民的自由も犠牲にしければならない邪悪な勢力でもある。
大統領府が主張する、正当性のない権限は、あらゆるアメリカ人のみならず、地球上のあらゆる生物にとっても脅威なのだ。先に引用した論文はこう報じている。“約17,300発の核兵器が、現在少なくとも9ヶ国に配備されており、その内の多くのものが、45分内に、発射され、標的に到達しうる。”
阿呆が一人でもいれば、そしてアメリカ政府には、阿呆は何千人といるのだが、地球上のあらゆる生命を45分で絶滅するのに十分だ。アメリカ合州国は、地球を支配すべく歴史によって選ばれた、例外的で必要欠くべからざる国だというネオコンの信念は、傲慢さと思い上がりに満ちた、戦争をもたらす信念だ。
7月4日、軍楽隊と行進を見て、軍国主義のたわ言を聞かれる際には、ご自分に起こりうる運命をお忘れなきよう。
なぜ戦争が不可避なのか 2014年5月25日
Paul Craig Roberts
戦没将兵記念日とは、アメリカ人戦没者を追悼する日だ。7月4日同様、戦没将兵記念日は、戦争の慶賀へと変えられてしまった。
戦争で家族や親しい友人を失った人々は、死が無駄だったことは望まない。結果的に、戦争は、真実、正義、そして、アメリカ的生活様式の為に戦った高貴な兵士達が行った輝かしい偉業となる。愛国的演説は、アメリカ人が自由でいられるよう、彼等の命を捧げたこの戦没者達に、我々がどれほど恩義があるかを語る。
演説は善意だろうが、演説は、更なる戦争を支持する偽りの現実を生み出してしまう。アメリカの戦争は一つとして、アメリカの自由を維持することと無関係だ。逆に、戦争は我々の市民的自由を押し流し、我々を不自由にしてしまうのだ。
リンカーン大統領は、北部新聞記者、編集者達を逮捕投獄する為の大統領命令を出した。彼は北部の新聞社300社を閉鎖させ、14,000人の政治囚を投獄した。リンカーンは、戦争を批判する、オハイオ州選出アメリカ下院議員クレメント・ヴァランディガムを逮捕し、南部連合国に追放した。ウッドロー・ウィルソン大統領は、第一次世界大戦を、言論の自由を抑圧するのに利用し、フランクリン・D・ルーズベルト大統領は、人種的に容疑者となるという理由で、120,000人の日系アメリカ国民を抑留するのに第二次世界大戦を利用した。サミュエル・ウォーカー教授は、ジョージ・W・ブッシュ大統領が、アメリカ人の市民的自由を全面的攻撃するのに“対テロ戦争”を利用し、ブッシュ政権を、アメリカの自由がこれまで直面した最大の脅威と化したと結論している。
リンカーンは、国家の権利を永久に破壊したが、アメリカの三大戦争と同時に行われた人身保護令状と、言論の自由の停止は、戦争終結時に解除された。ところが、ジョージ・W・ブッシュ大統領の憲法廃棄は、オバマ大統領によって拡大され、議会によって、大統領命令は法律に成文化されてしまった。アメリカ国民の自由を守るどころか、“対テロ戦争”で亡くなったアメリカ兵士は、適法手続きをへずに、大統領がアメリカ国民を無期限に拘留したり、法律や憲法にいかなる説明責任もなしに、アメリカ国民を容疑だけで殺害したり出来るようにする為に亡くなったのだ。
アメリカの戦争は、アメリカ人の自由を保護しておらず、それどころか、自由を破壊しているという結論は避けがたい。アレクサンドル・ソルジェニーツィンが言った通り、“戦争状態は、国内の専制政治の口実として役立つだけだ。”
南部の連邦脱退は、アメリカ帝国にとっての脅威ではあっても、アメリカ人にとっての脅威ではなかった。第一次世界大戦時のドイツも、第二次世界大戦ドイツと日本も、アメリカにとっての脅威ではなかった。歴史家達が完全に明らかにしている通り、ドイツが第一次世界大戦を始めたわけではなく、領土拡張を目指して戦争をしたわけでもない。日本の野望はアジアにあった。ヒトラーは、イギリスとフランスとの戦争を望んでいたわけではない。ヒトラーの領土的野望は、主にウィルソン大統領の保証に違反して、第一次世界大戦の戦利品としてドイツから奪われたドイツ諸州を取り戻すことだった。ドイツの他の野望は、東方向だった。ドイツも日本も、アメリカを侵略する計画はなかった。日本は、アジアでの活動に対する障害物を排除することを期待して、真珠湾のアメリカ艦隊を攻撃したのであり、アメリカ侵略の前触れとして攻撃したわけではない。
確かに、21世紀にブッシュとオバマによって荒廃させられた国々、イラク、アフガニスタン、リビア、ソマリア、シリア、パキスタンとイエメンは、アメリカに対する軍事的脅威ではなかった。実際、こうした戦争は、専制的な行政府によって、今アメリカに存在している秘密警察国家の基盤を確立するために利用されたのだ。
真実は耐え難いが、真実は明らかだ。アメリカの戦争は、アメリカ政府の権力、銀行家や兵器産業の利益、アメリカ企業の富を増す為に行われてきたのだ。海兵隊の大将スメドリー・バトラーは言った。“少尉から少将に至るあらゆる階級で服務した。服務期間中、ほとんどの時間、大企業、ウオール街と銀行家の高級用心棒として過ごした。要するに、私は資本主義の為のゆすり屋だった。”
戦没者を賛美せずに追悼するのは、ほとんど不可能で、彼等が戦った戦争を賛美せずに、彼等を賛美することも不可能だ。
21世紀中ずっと、アメリカは戦争を続けてきた。結集した軍隊やアメリカの自由に対する脅威に対する戦争ではなく、一般市民、女性、子供や村の長老に対する戦争を、アメリカ国民自身の自由に対する戦争を。これらの戦争に既得権益を持つエリート連中が、戦争は “テロリストの脅威”を打ち破るには更に20年から30年続けざるを得ないとのたまっている。
これはもちろん、たわごとだ。アメリカ政府が嘘で正当化して、イスラム教の人々を軍事攻撃して、テロリストを生み出し始めるまで、テロリストの脅威など存在しなかった。
アメリカ政府が、戦争の嘘に成功する余り、アメリカ政府の傍若無人さと傲慢さは、アメリカ政府が判断できる範疇を越えてしまったのだ。
民主的に選出されたウクライナ政権を打倒することで、アメリカ政府は、ロシアと対決することとなった。この対決は、おそらくアメリカ政府にとって、そして、おそらく全世界にとって、まずい結果となりかねない。
カダフィとアサドが、アメリカ政府に従おうとしなかったのに、一体なぜアメリカ政府は、ロシアが従うと思っているのだろう? ロシアは、リビアやシリアとは違うのだ。アメリカ政府は、幼稚園の子供達を散々なぐりつけ、今や、大学フットボールのラインバッカーに挑戦できると思い込んでいるいじめっ子同然だ。
ブッシュとオバマの政権が絶え間のない嘘と、他の国民に対する暴力で、アメリカの評判を破壊した。世界はアメリカ政府を最大の脅威と見なしているのだ。
全世界の世論調査は常に、世界中の人々が、アメリカとイスラエルを,世界の平和に対する最大の脅威となる二ヶ国と見なしていることを示している。http://www.ibtimes.com/gallup-poll-biggest-threat-world-peace-america-1525008 および
http://www.jewishfederations.org/european-poll-israel-biggest-threat-to-world-peace.aspx
イランや北朝鮮等の、アメリカ政府プロパガンダが、“ならず者国家”や“悪の枢軸”と称する国々は、世界中の人々に質問すれば、リストのはるか下位でしかない。世界がアメリカ政府の虫のいいプロパガンダなど信じていないことはこれ以上明らかにしようがあるまい。世界はアメリカとイスラエルをこそ、ならず者国家と見なしているのだ。
アメリカとイスラエルは、イデオロギーに支配されている、世界でたった二つの国だ。アメリカは、アメリカは歴史によって、全世界に覇権を行使するべく選ばれた“例外的な必要欠くべからざる国”だと主張するネオコン・イデオロギーに支配されている。このイデオロギーは、アメリカ外交政策の基盤であるブレジンスキーとウォルフォウィッツのドクトリンによって強化されている。
イスラエル政府は、ナイル川からユーフラテス川に至る“大イスラエル”を宣言するシオニスト・イデオロギーに支配されている。多くのイスラエル人自身は、このイデオロギーを受け入れてはいないが、これが“入植者”とイスラエル政府を支配している連中のイデオロギーだ。
イデオロギーは重要な戦争の原因だ。ドイツ人の優越というヒトラー・イデオロギーが、アメリカの優越というネオコン・イデオロギーに反映しているのと同様に、労働者階級は資本家階級より優れているという共産主義イデオロギーは、イスラエル人はパレスチナ人より優れているというシオニスト・イデオロギーに反映しているの。シオニストは、占拠者の権利について全く聞いたことが無く、最近のパレスチナ入植ユダヤ人、実際は侵略者だが、には、他の人々が何千年も占拠していた土地を所有する権利があると主張している。
他者よりも自分達が優れているというアメリカ政府とイスラエルのドクトリンは、”他の人々”には決してしっくりこない。オバマが演説でアメリカ人は例外的な国民だと主張すると、ロシアのプーチン大統領はこう応じた。“神は我々全員を平等につくられた。”
イスラエル国民にとって不利益なことに、イスラエル政府は永遠の敵を作っている。イスラエルは世界の中で自ら孤立化している。イスラエルの存続は、もっぱらアメリカ政府のイスラエルを保護する意思と能力にかかっている。これはつまり、イスラエルの権力は、アメリカ政府権力の派生物ということだ。
アメリカ政府の権力は、また別の話だ。第二次世界大戦後に、唯一生き残った経済として、アメリカ・ドルが世界通貨となった。このドルの役割によって、アメリカ政府は世界に対する金融覇権を獲得し、これがアメリカ政府権力の主要源泉だ。他の国々が勃興すれば、アメリカ政府の覇権は危機に曝される。
他の国々の勃興を防ぐため、アメリカは、ブレジンスキーと、ウォルフォウィッツ・ドクトリンを援用している。要約すれは、ブレジンスキー・ドクトリンとは、唯一の超大国であり続ける為には、アメリカはユーラシア陸塊を支配せねばならないというものだ。ブレジンスキーは、ロシア政府をアメリカ帝国に買収することで、これを平和裡に進めたがっている。”ゆるく連帯したロシア ... 非中央集権化したロシアは、帝国主義的動員を受けにくくなる。” 言い換えれば、ロシアを、各国の政治家がアメリカ政府の金で買収できる様な、準自治国家の連合体に分割してしまうのだ。
ブレジンスキーは“ユーラシアの為の地政学戦略”を提案しており、ブレジンスキー戦略では、中国と“連合ロシア”は世界唯一の超大国としてのアメリカの役割を永続化させるため、アメリカ政府が管理する“大陸横断安全保障体制”の一環だ。
同僚だったブレジンスキーに、もし全員が我々と同盟を組んだら、我々は一体何に対して団結していることになるのかと尋ねたことがある? 私の質問に彼は驚いた。ソ連崩壊後でさえも、ブレジンスキーは、冷戦戦略に捕らわれたままだった為だろうと思う。冷戦思考は、優位に立つことが重要で、さもなくば主な関与者の立場から抹殺されてしまうおそれがあるとする。優勢であることの重要性は、極めて強烈なものとなり、しかも、この激烈な衝動は、ソ連崩壊も生き続けたのだ。他の国々に対して優勢となることこそ、アメリカ政府が知っている唯一の外交政策だ。
アメリカが優勢でなければならないという考え方が、ネオコンと、アメリカ政府が民主的に選出されたウクライナ政権を打倒し、アメリカ政府が直接ロシアと対立することになった危機がもたらされた、ネオコンによる21世紀の戦争の準備を整えたのだ。
アメリカ政府の為に働いている複数の戦略研究所を私は知っている。私は、ウイリアム・E・サイモン講座の政治経済学教授の職にあった。長年、戦略国際問題研究所CSISでも働いた。ウクライナで、アメリカ政府は、ロシアより優勢でなければならず、さもなくばアメリカ政府は、面子と超大国としての立場を失うことになるという考え方が広く行き渡っている。
一方の大国が自分が優勢だと感じれば、優勢であるという思想は常に戦争に至る。
戦争への道は、ウォルフォウィッツ・ドクトリンによって強化されている。アメリカの軍・外交政策ドクトリンを編み出したネオコン知識人、ポール・ウォルフォウィッツは、多くの似たような文章を書いている。
“我々の第一目標は、旧ソ連地域であれ、他の場所であれ、かつてソ連が引き起こしていた規模の脅威をもたらす新たなライバルの再登場を防ぐことだ。これは新たな地域防衛戦略の根底にある主要な考え方であり、統合的に管理すればグローバル・パワーを生み出すに十分な資源がある地域を、いかなる敵対的勢力にも支配させないよう、我々は尽力しなければならない。”
ウォルフォウィッツ・ドクトリンでは、相互利益の為、その国がアメリカとうまくやっていきたがっているかどうかと無関係に、ほかのどの強国も、アメリカへの脅威で、敵対的勢力だと定義される。
ブレジンスキーとネオコンとの違いは、ブレジンスキーは、外交的な理由だけであるにせよ、両国の意見にも耳を傾ける重要な要素として帝国に取り込み、ロシアと中国を買収することを期待している。一方ネオコンは、軍事力と、アメリカが資金を与えているNGOやテロリスト組織さえ使って画策する相手国内での転覆活動を併用する用意があるのだ。
アメリカもイスラエルも、両国は世界最大の脅威だという世界的評判を恥ずかしく思っていない。実際、両国は、最大の脅威と見なされるのを誇りに思っているのだ。両国の対外政策にはいかなる外交も無い。アメリカとイスラエルの外交政策は、ひたすら暴力が頼りだ。アメリカ政府は、諸国にアメリカ政府のいう通りにしろ、さもなくば“爆撃で石器時代にしてやる”と語っている。イスラエルは、全てのパレスチナ人、女性子供さえもが“テロリスト”だと宣言し、イスラエルは、テロリストに対し、自衛しているだけだと主張して、街頭で彼等を撃ち殺し続けている。イスラエルは、国家としてのパレスチナの存在を認めず、自らの犯罪を、パレスチナ人は、イスラエルの存在を認めようとしないという主張で糊塗している。
“我々には不愉快な外交など不要だ。我々には力がある。”
これはかならず戦争を招く態度であり、アメリカは世界をその方向に動かしている。イギリス首相、ドイツ首相とフランス大統領は、アメリカ政府を黙認する連中だ。彼等はアメリカ政府に対し援護をしているのだ。戦争犯罪ではなく、従おうとしない国々に“民主主義と女性の権利”をもたらす、アメリカ政府“有志連合”と軍事侵略というわけだ。
中国もほとんど同様の扱いを受けている。アメリカ人口の四倍の国民がいながら、監獄の囚人の数がアメリカより少ない国中国がアメリカ政府によって常時“専制国家”として非難されている。中国は人権侵害で非難される一方、アメリカの警官はアメリカ国民に残忍な仕打ちをしている。
人類にとっての問題は、ロシアと中国がリビアとイラクでないことだ。この両国は戦略核兵器を保有している。両国の大陸塊は、アメリカを遥かに凌ぐ。バグダッドやアフガニスタンを見事に征服できなかったアメリカが、通常戦争でロシアや中国に勝てる見込みは皆無だ。アメリカ政府は核のボタンを押すことになろう。道徳心が欠如している政府に、他に何が期待できよう?
世界は、アメリカ政府とイスラエルに匹敵する、ならずもの国家をかつて経験していない。両国政府は誰でも全員でも殺す覚悟がある。アメリカ政府がウクライナ国内に作り出した危機と、以後の危険状態をご覧願いたい。2014年5月23日、ロシア大統領プーチンが、62ヶ国からの代表団と欧米大企業146社のCEOが集う三日間の催し、サンクトペテルブルク国際経済フォーラムで演説した。
プーチンは締結されつつある何十億ドルもの貿易協定については語らなかった。その代わりに、プーチンは、アメリカ政府がロシアにもたらした危機について語り、ヨーロッパが、アメリカ政府の対ロシア・プロパガンダや、きわめて重要なロシア権益へのアメリカ政府による干渉を支持して、アメリカ政府の家臣となっていることを批判した。
プーチンの言葉づかいはそつがなかったが、アメリカとヨーロッパの強力な経済利益集団が受け止めたメッセージは、もしアメリカ政府とヨーロッパ政府が、ロシアの懸念を無視し続け、ロシアがあたかも存在していないかのごとく、ロシアのきわめて重要な権益に干渉し続けられる様に振る舞うことを続ければ、結局は面倒なことになるというものだ。
こうした大企業トップ達は、このメッセージをアメリカ政府やヨーロッパの首都に持ち帰るだろう。プーチンは、ロシアとの対話の欠如により、欧米はウクライナをNATOに加盟させ、ロシア・ウクライナ国境にミサイル基地を設置するという間違えをおかしかねないと明言した。プーチンは、ロシアが欧米の善意には頼れないことを学び、プーチンは、脅迫こそしなかったものの、ウクライナ内の欧米軍事基地は受け入れられないと明言した。
アメリカ政府は、ロシアを無視し続けよう。しかしながら、ヨーロッパ資本は、アメリカ政府が、彼等をヨーロッパ権益に反するロシアとの対立に押しやっているのかどうか判断することを強いられよう。かくして、プーチンは、ヨーロッパには、和解するのに十分な知性と独立があるのかどうか決めるよう、ヨーロッパの政治家達を吟味しているのだ。
もしアメリカ政府が、横柄な傲岸と不遜さで、プーチンに欧米を見限るよう強いれば、両国を軍事基地で包囲するというアメリカ政府の敵対的な政策に対抗すべく形成されつつあるロシア/中国戦略的同盟は、不可避の戦争に対する準備へと強化されよう。
もし誰か生き残れた人々がいるとすれば、地球上の生命を破壊してくれたことで、ネオコン、ウォルフォウィッツ・ドクトリンと、ブレジンスキー戦略に感謝できるだろう。
アメリカ国民の中には、自分達が全てを知っていると思い違いをした人々が多数いる。こうした人々は、イスラム教を、政治イデオロギーと同一視する、アメリカとイスラエルのプロパガンダで洗脳されている。彼等は、イスラム教という宗教は、軍国主義ドクトリンのようなもので、あたかも欧米文明にまだ何か残っているかのごとく、欧米文明の打倒を呼びかけていると信じ込んでいる。
彼等が欧米の迫害者や占領者を憎む以上に、スンナ派とシーア派が互いにひどく憎悪しあっているという完璧な証拠を前にしても、このプロパガンダを信じている人々が多い。アメリカはイラクを去ったが、現在の殺戮は、アメリカ侵略と占領時代と同程度か、それ以上だ。スンナ派/シーア派武力衝突による日々の死亡者数は膨大だ。これほど分裂した宗教は、イスラム原理主義者自身以外の誰にとっても脅威ではない。アメリカ政府はまんまとイスラム原理主義者の分裂につけこんで、カダフィを打倒し、現在、イスラム原理主義者の分裂を、シリア政権打倒の企てに活用している。イスラム原理主義者は、欧米の侵略に対して自らを守る為に、団結することさえできない。欧米を打倒する為に、イスラム原理主義者が団結する見込みは皆無だ。
たとえイスラム教徒が団結できたとしても、イスラム教徒にとって、欧米を打倒しても、無意味だろう。欧米は自ら転覆してしまったのだ。アメリカでは、ブッシュ政権とオバマ政権によって、憲法は破壊されてしまった。もはや何も残っていない。憲法同様、アメリカには、かつてのアメリカ合州国などもはや存在していない。別の実体が置き換わってしまったのだ。
ヨーロッパは、全加盟国主権の終焉を必要とした欧州連合で死んでしまった。ブリュッセルにいる一握りの無責任な官僚達が、フランス、ドイツ、イギリス、イタリア、オランダ、スペイン、ギリシャや、ポルトガル国民の意思を凌駕するようになってしまった。
欧米文明は、もぬけの骸骨だ。いまだに辛うじて立ってはいるが、そこにはもはや生命はない。自由の血は失われてしまった。欧米の国民が自国政府を見ても、見えるのは敵ばかりだ。一体なぜアメリカ政府は地方警察部隊の軍備を整え、まるで占領軍であるかの様に武装させているのだろう? 一体なぜ、国土安全保障省、農務省や郵政公社や社会保障庁すらもが、十億発もの弾薬や軽機関銃を注文したのだろう? 納税者の金で支払った兵器保有は、アメリカ国民を弾圧する為でないとしたら、一体何の為だろう?
著名な時代傾向予想者ジェラルド・セレンテが、最新のトレンド・ジャーナル誌で書いている通り“反乱は世界の隅々にまで広がった”。ヨーロッパ中で、怒れる自暴自棄の憤慨した人々が、人々を疲れ果てさせているEU金融政策に反対して行進している。NGOと言う名で知られる資金潤沢な第五列を駆使しての、アメリカ政府によるロシア・中国の不安定化工作の為のあらゆる取り組みにもかかわらず、ロシア・中国両国政府は、アメリカやヨーロッパ政府よりも多くの国民から支持を受けている。
二十世紀に、ロシアと中国は専制政治とは何かを学び、両国はそれを拒絶した。
アメリカでは、従順で自分の意見がなく大勢に従う国民を脅し、市民的自由を放棄させるのに利用された“対テロ戦争”というでっち上げに名を借りて、専制政治が忍び込み、アメリカ政府を法律に対する責任から解放し、アメリカ政府が軍国主義的警察国家を樹立することを可能にした。第二次世界大戦以来終始、アメリカ政府は、金融覇権と、今や“ロシアの脅威”に変わった“ソ連の脅威”をヨーロッパをアメリカ帝国政府に取り込む為に利用してきたのだ。
プーチンは、ヨーロッパ諸国の利益が、アメリカ政府への従属に勝利するのを期待しているのだ。これが現在のプーチンの賭けだ。これが、プーチンが、ウクライナにおけるアメリカ政府の挑発に、引きこまれずにいる理由だ。
もしヨーロッパがしくじれば、ロシアのプーチンと中国は、アメリカ政府の覇権への欲求が不可避にしている戦争に備えることとなろう。
記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2016/07/01/refuse-to-celebrate-july-4th-militarism/
----------
両方とも、かつて翻訳した記事。こういう宗主国の侵略戦争で、いいように使われるために、日本人兵士が出てゆくことを画策しているのが、与党二党と、野党モドキの、新党改革、おおさか維新、日本のこころを大切にする党、日本を元気にする会。そして民進党内の自民党別動隊。
『泥沼ニッポンの再生』伊藤真 植草秀一著を拝読中。
第9章 教育とメディアリテラシー
伊藤真氏のドイツ人友人との話が印象に残る。
「子どもにはニュースは見せないよ。アニメやドタバタは見せるけれども、ニュースは絶対に見せない。」
小さなこどもでも、マンガとかアニメは作り物だとわかる。ところが、ニュースはそうはいかず、これは真実だと思い込んでしまう。だから、ニュースを見たときに、それを疑ってみる、批判的なものの見方が子どものなかにできるまでは、見せないわけである。
ごもっとも。自民党のおさななじみに読ませたいが、彼、・彼女たち読まないだろう。
最近のコメント