田中正造

2021年10月20日 (水)

MGMが北米でMinamataを「葬ろうとしている」と非難する著名カメラマンのステファン・デュポン

リチャード・フィリップス
2021年9月24日
wsws.org

 監督、プロデューサー、アーティストのアンドリュー・レヴィタスによる最新映画Minamataはオーストラリア、ニュージーランド、イギリス、アイルランド、ロシアや、最近数ヶ月いくつかのヨーロッパ映画祭で成功裏に上映した後、今週日本で公開された。

 レヴィタスの115分の映画は、数十年にわたるチッソ株式会社による日本の水俣地域の産業公害と、写真エッセイスト、W・ユージーン・スミスと妻のアイリーン・美緒子・スミスによる、1971年から1973年までの、この犯罪をあばく戦いの正式な機微なドラマ化だ。撮影はブノワ・ドゥローム、音楽は坂本龍一で、映画プロデューサーの一人、ジョニー・デップは、主にイギリス人と日本人キャストの素晴らしい演技に支援されて、スミスとして真に迫っている。

 
Minamataの美波とジョニー・デップ[写真:ラリー・D・ホリックス]

 これまでのところ何万という人々がMinamataを見て、評価は圧倒的に肯定的だったが、MGMは北米では、この映画を、まだ公開していない。

 7月、MGMが「映画関係者[デップ]の個人的問題が否定的影響を及ぼしかねない可能性を懸念し」「映画を葬る」と決めていたことを明らかにする公開書簡をアンドリュー・レヴィタスが公表した。マードック・メディアや、他の場所で悪意ある#MeTooの主張の対象となった人気俳優は、最近彼を「ボイコットした」とハリウッド・スタジオを非難した。

 AP通信によれば、9月22日、スペイン、サンセバスチャン国際映画祭での記者会見で、デップは「キャンセル・カルチャー」を非難し「本質的に大気汚染にも等しいものに基づく即断」と表現した。フェスティバルで高名なドノスティア賞を受賞したこの俳優は、状況が「誰も安全ではないと私が保障できるほど制御不能になっています。誰かが何か言うのをいとわないかぎり、皆さんの誰でも。」と警告した

 MGMは、人口ほぼ6億人のアメリカ、カナダ、メキシコを含む北米、中米とカリブ海の大半でのMinamata配給権を所有している。映画会社による、この検閲的行動に、ソーシャル・メディア・キャンペーンや請願やMGM所属事務所への何百という反対の手紙がきている。ユージーン・スミス(1918-1978)に鼓舞されたフォトジャーナリストやドキュメンタリーカメラマンたちも、MGMの行動に関して率直な意見を述べている。

 下記は、MGMが北米でMinamataを公開しそこねているのを、あからさまに非難するオーストラリア人カメラマンで映画製作者ステファン・デュポンのインタビューだ。

 デュポンの作品は、ニューヨーカー、アパチャー、ニューズウィーク、タイム、GQ、エスクワイア、ジオ、フィガロ、リベラシオン、サンデー・タイムス、インデペンデント、ガーディアン、ニューヨーク・タイムズ・マガジン、スターン、オーストラリアのファイナンシャル・タイムズ紙、バニティー・フェアに掲載され、パリ、ロンドン、ニューヨークや他の大都市で展示会が開催されている。現在彼はオーストラリアの最近の森林火災や気候変動の長期的衝撃で「Are We Dead Yet」展示会をキャンベラで開催している。


ステファン・デュポン

 デュポンは30年間、戦争カメラマンで、2001年のアメリカ率いる侵略、侵略中以前に、1990年代、アフガニスタンから報じていた。2005年、カンダハル外でアメリカ海兵隊員に同行し、タリバン兵士の遺体を燃やす部隊の写真を撮影し発表した。この戦争犯罪のおぞましい写真は、アフガニスタン内でも、国際的にも、アメリカ率いる進行中の占領に対する大衆の怒りに拍車をかけた。

 デュポンの印象的な写真は、ここで列記するには余りに多い多数の国際賞を受けている。だが彼にとって最も大切な賞は、2007年のユージン・スミス賞だ。

 
ゴンバド村の負傷したアフガンの子供、2005年[著作権ステファン・デュポン]

 我々はMinamataの印象と、彼の仕事に対するスミスの影響力を論じて会話を始めた。

 ステファン・デュポン:映画館で見たMinamataが本当に好きで、非常に強力で、悲しいと思いました。2007年、信じ難い名誉のW・ユージーン・スミス賞を受賞していたので、それは私にとって非常に個人的なものでした。これは私が常に受賞を夢見ていた賞で、アフガニスタンでの私の仕事に対するものでした。

 それは私の娘が生まれた時に発表され、審査員の一人デイビッド・フレンドからの電話を今でも覚えています。彼はバニティー・フェアのクリエイティブ・ディレクターで、写真撮影界の重鎮でした。それは信じ難い感じと大きな名誉でした。

 ジーン・スミスは、私が彼の作品を見て成長した人で、10代後期、20代初期での他の誰よりも、私をカメラマンになるよう奮い立たせてくれました。私がMinamataを見た際には、私とスミスとのその関係が続いていました。

 私は映画化ついて余り批判的になりたくありません」ドキュメンタリーではありませんが、ジョニー・デップは実に良くスミスの性格を捉えていると感じました。動き方、写真への取り組み、暗室作業。私はスミスの性格のそうした暗い、沈鬱な、時々横柄なことを想像できますが、デップは真に迫って、説得力がありました。

 私はMinamataと、何が起きたかについて、実に多く学びましたが、結局それがスミスを殺したことは知りませんでした。私はこれら意外な事実の一部に非常に衝撃を受けました。映画は率直な描写でした。

 リチャード・フィリップス:あなたはスミスが精神的トラウマのストレスに立ち向かう場面についてお話し頂けますか?

SD:これは実に説得力があり、個人的に請け合えます。彼がそうしたのとほとんど同様に、私は写真を撮影し、経験したことでのPSTD、トラウマに自身対処し、苦闘しました。映画のこの部分では対峙を余儀なくされ、説得力があります。ニューヨークでのスミスの本質をとらえた『ジャズ・ロフト』ドキュメンタリーについても考えました。あれは、彼の混乱した無秩序な暮らし方を大変うまく表現しています。

 スミスは彼が見た、誰もが知っているか、知るべき、「入浴する智子と母」の水銀汚染された水俣の少女智子と母親の象徴的場面と、その心理的ブローバックのトラウマに対処していました。ジーン・スミスは、大いにこの仕事と生涯の仕事と、大いに苦闘していました。彼は第二次世界大戦と、更に「ライフ」誌による扱われ方で、大いにPSTDを受けました。これが映画で描かれていて、必ずしも多くの視聴者には理解されないかも知れませんが、カメラマンには分かります。彼は本当に「ライフ誌」が一種の扇情的なタブロイド判新聞風の雑誌になって、彼の姿勢や、彼がしていた種類の仕事を十分真面目に受け取らないことを怒っていたのです。


ニューヨークのロフトでのW.ユージーン・スミス[出典:International Centre for Photography]

 とは言え、彼自身の飲酒と薬による自己破壊の問題がありました。彼は明らかに複雑な人物でしたが、自分の状況を他の全員のせいにし始めるほどトラウマが酷いにせよ、彼は自分で治療していたのです。彼は生涯衝撃を抱え込み、そこから脱出する方法は見えませんでした。これまで地球に足を踏み入れた最も重要なドキュメンタリーカメラマンにとって非常に悲しい終わりでした。[“W. Eugene Smith’s Warning to the World”「世界へのW・ユージーン・スミスの警告」を参照]

 何世代ものカメラマンにとって、彼の衝撃と影響力は疑いようがないと思いますし、それは今も続いています。若者も年寄りも、実に多くのカメラマンが彼の理念と哲学に触発されています。彼は写真エッセイ、ドキュメンタリーの白黒写真の巨匠でした。非常に多くの偉大な素晴らしいことで、スミスは写真界に貢献しています。

 RP:Minamataのある時点で、スミス(デップ)が言います。「[チッソ株式会社による]隠蔽は、それ自体、話題として、同じぐらい重要だ。」ここに、いささか類似点があります。いわゆるジョニー・デップの世評問題ゆえに、MGMが北米で「映画を葬る」と決めた状態にあります。これに対するあなたの答えは何でしょう?

 SD:それは全くつまらないことで、アメリカでの映画公開を止めるために使われるべきではありません。私生活でデップが何をしたとされているかにかかわらず、結婚の崩壊で起きたことに関する申し立てがあるだけで、彼は一人の俳優に過ぎません。ここでの全体像は、映画、その話題と水銀中毒の犠牲者です。MGMはこの境界を越えるべきではありません。お門違いな非難をするなと私は言いたいのです。

 MGMの対応は、我々が今暮らしている世界を反映していて、私の考えでは、#MeTooのようものを使って、あらゆる種類の主張を大げさに騒ぎ立てるのです。人々の生活のどんな否定的なことも最大限利用されるのです。

 MGMはデップだけでなく、他の俳優、監督、撮影スタッフ、脚本家を含む他の全員を罰しているのです。

 たとえ主張が本当だったにせよ、私は意見を変えません。我々がデップについて話をしているのは結婚生活の崩壊で、世界中で多くの人々が経験していますが、唯一の相違は人々は名士でないことです。余りにも批判的な世界での悲しい検閲状態で、そんなことがあってはいけませんが、もし人が何かまずい形で言ったり、したり、失敗したりすると、あらゆる方法でとがめ立てられるのです。 広い視野で物事を見ましょう。

 RP:映画は、水俣が決して一回限りのことでなかったことを明らかにし、観客への語られない挑戦で終わります。ハッピー・エンドではありません。

 SD:大企業は常にこの類のことを逃げ切り、止められない限り、やり続けるでしょう。この映画が、再び、これを際立って明らかにしたのは重要です。それは観客と共鳴し、彼らにこう言うように強いるのです。「我々は再びこれを起こさせてはならない、我々は立ち上がり、抗議し、我々の意見を聞いてもらえるようにしなければならない」良いことです。


水俣の漁村の写真を撮影するW.ユージーン・スミス1973[出典:石川武志 Copyright 2019]

 大企業は、産業破壊や共同体の抹殺を罰せられずに逃げ切っており、アマゾン、パプアニューギニアや、世界中いたる所で、金採掘現場や川の汚染を起こしているのを、我々は阻止する必要がある。それは恥ずべき犯罪だ。またしても、世界を支配しているように思われる、通常連中が犯す残虐行為に責任を負わない1パーセントの権力者連中だ。

 写真撮影以上に遙かに大きな大問題を扱っているので、カメラマンだけでなく、全員がMinamataを見るべきだ。それは実に長年続き、その影響が今日も続いている地域全体の水銀中毒を強調する映画だ。全員がこれを認識し、決してこれを忘れず、類似の悲劇が再び起きるのを阻止すべく努力する必要がある。

記事原文のurl:https://www.wsws.org/en/articles/2021/09/25/dupo-s25.html

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 何としても与党による憲法破壊阻止。改正とは名ばかり。宗主国のため中国からミサイルを全列島に受けて「弁慶の立ち往生」をするため。

 今日の孫崎氏メルマガ題名

焦点は、(1)自公三分の二獲得(310)し、憲法改正へ、(2)自民党が単独過半数(233)、(3)自公が単独過半数を取れるか。自民党自身の支持率低下、野党協力で(1)なし。現状況は(2)。岸田政権支持、発足より緩やかに下降→選挙にどう影響。

 デモクラシータイムスを拝聴した。平野氏、怒っておられる。

平野貞夫×佐高信×早野透【3ジジ放談】2021年10月19日生配信

 ブログ『私の闇の奥』最新記事 ユージン・スミスの『入浴する智子と母』で、過分なお言葉とともに、この記事の元記事翻訳 Minamata:いかに日本企業が共同体を汚染し、アメリカ人カメラマンがそれを暴露しようとつとめたかをご紹介いただいた。当ブログ、出来の悪い学生が、先生に日々レポートを提出しているようなものかも知れない。

 このチッソによる産業公害、今も解決とはほど遠い。

 西日本新聞 2020/4/30 社説

公式確認64年 水俣病は終わっていない

 認定基準の厳しさや地域的ひろがりの未解明は大きな問題だ。もちろん差別も。社説の一部引用させていただこう。

最終解決を阻む壁がいくつか挙げられる。過度と言える認定基準の厳しさ、差別を恐れて進む被害の潜在化などに加え、被害者の地域的広がりが解明されていない点も大きい。

 こうした国の対応は、東京電力福島第一原発事故被害者対策と直結している。コロナ無策も根底でつながっている。企業側にたって、被害者を踏みにじる姿勢の原点は、もちろん田中正造が戦った古河鉱業足尾鉱毒事件。原発事故のひどい対策の原点が「足尾鉱毒事件」だったことは遅ればせながら、2012年の下記講演で学んだ。

【アースデイ田中正造】9月30日 『国を豊かにするという思想のもと、企業を保護し住民は切り捨てる構図が一貫している』小出裕章講演(東京新聞/毎日新聞/下野新聞)

 今年、久しぶりに田中正造の直訴状原本が展示されている。

 朝日新聞DIGITAL

35カ所に訂正印、田中正造の直訴状7年ぶり公開 足尾銅山鉱毒問題

 そして、つける薬のない、とんでもない新政権。

 毎日新聞

岸田政権、中枢に原発推進派 歓迎する電力業界

2021年9月17日 (金)

Minamata:いかに日本企業が共同体を汚染し、アメリカ人カメラマンがそれを暴露しようとつとめたか

ジェイソン・クイル、リチャード・フィリップス
2021年8月4日
wsws

 Minamataは、画家・映画プロデューサーのアンドリュー・レビタス(ジョージタウン)が監督した化学製品企業チッソによる日本漁村の産業汚染と、1971年から始まった有名な写真家・エッセイストW・ユージーン・スミスによる、この企業犯罪による人間に対する悲惨な影響を暴露する戦いを描いている。

 1951年から1968年まで、チッソは南西日本の水俣湾に極めて有毒なメチル水銀を含む化学処理されていない何千トンもの廃水を捨て、地域の魚や他の海洋生物を汚染した。

 常に水俣湾の魚を食べている地元住民は、1950年代、猫の奇妙な行動と病気に気付いたが、1956年、最初の人間の症例が現れた。

 以降の年月、この企業が健康被害に対するいかなる責任も否定する中、子供を含め何千人もの住民が、酷い水銀中毒による筋力低下や、身体障害、精神障害、昏睡や死で苦しんだ。

 現在、2,283人の人々が公式に患者として認知され、75,000人以上の人々が水俣水銀中毒を起こしたことが広く認められている。1,700件以上の訴訟が、まだ進行中だ。


 Minamata[出典:メタルワーク・ピクチャーズ]のアイリーン美緒子(バージュ美波)とW・ユージーン・スミス(ジョニー・デップ)

 Minamataは、その操業や被害者の苦難のいかなる暴露も防ごうとするチッソの冷酷な試みの強力な吟味だ。W・ユージーン・スミスとアイリーン美緒子による本『Minamata』(写真集 水俣)に基づく115分の映画は、この監督を、この映画の北アメリカ配給業者MGMと対立状態に追い込んだ。

 レビタスの映画は2019年末に完成し、2020年早々ベルリン映画祭で初上映され、2021年2月に、アメリカとイギリスで公開されるはずだった。そうはならなかった。

 MGM、今年、ごくわずかな国際上映を行ったが、映画の主演男優ジョニー・デップの「個人的問題」とされるもののため、北アメリカでの公開日発表を拒否し、映画を「隠蔽した」。我々は後で、MGMの法外な検閲の話題に戻る。

 Minamataは、後に彼の称賛される写真となった、伝統的な日本の風呂で、水俣病で苦しめられ、ひどく変形した裸の娘を抱く母親の写真「入浴する智子と母」をスミス(デップ)が撮影する場面で始まる。

 並外れて感動的な白黒写真は、「ライフ」誌に発表された他のMinamataシリーズの作品とともに、後に多くの人々にスミスの最大業績の一つと見なされ、アメリカや世界中の読者にチッソ水銀中毒の恐怖を伝えた。

 
W・ユージーン・スミス「入浴する智子と母」1972年[出典:ウィキペディア]

 映画は、それから一年前にさかのぼる。マンハッタン屋根裏で半ば隠とん生活をするスミスは創造上の行き詰まりにあった。前妻と子供たちから疎外され、高く評価されているカメラマンは、まだ第二次世界大戦での重い傷と悲惨な経験による心的外傷後ストレスで苦しみ、大酒を飲み、出版社にいらだっていた。(Sara Fishkoの2015年のドキュメンタリー、The Jazz Loft According to W. Eugene Smithは、レビタスの映画にとって貴重な関連作品だ[この映画のWSWSレビューと監督インタビューを参照。])

 彼の社会的意識の高い写真作品に気付いて、アイリーン美緒子(バージュ美波)は、スミスにMinamataの状況を暴露するのを支援するよう話をもちかける。「現地では反対運動があるが、我々には世界的注目が必要だ」と彼女が言う。

 最初は気乗りしなかったが、スミスは最終的に、長年の協力者で、ライフ誌編集者ロバート・ヘイズ(ビル・ナイ)に話をし、内幕をばらすため、自分を日本に送るよう強く主張する。

 到着して、スミスは、チッソと何年もの戦いで、村人が疲れ切って、脅かされていることに気がつく。村人が見つけられる限りの多くのカメラと間に合わせの暗室を用意して、スミスは村人の信頼を勝ちとり、企業に不利な証拠を集め始める。

 スミス、アイリーンと活動家のキヨシ(加瀬亮)は変装して、チッソ社付属病院を訪問し、最悪の病気を経験している人々を写真に撮る。彼らは河川の水が15年以上の間本当に有毒だったことも証明し、この企業が個人研究の調査結果を隠蔽したことを示す書類を暴露する。

 チッソ幹部のノジマ・ジュンイチ(國村隼)は共同体へのスミスの到着に気付き、賄賂や肉体的暴力を含め、このカメラマンの仕事を思いとどまらせたり阻止したりするさまざま策略を試みる。

 スミスの取り組みと平行して活動するのは、依然企業と戦う決意が固い少数の被害者の代理を務めるもう一つの集団だ。一部は企業に異議を申し立てるのを恐れているが、この集団の指導者ヤマザキ・ミツオ(真田広之)は、感動的な場面で「これはこの町だけのものではない」と宣言して、彼らに呼び掛ける。「大企業は世界中で小さな町を侵略し、彼らの暮らしを汚染する。そういことは起きてきたし、また起きるだろう!」

 スミスは最終的に上村智子の母親の信用を勝ち取り、最終的に、やがて有名になる写真撮影を許される。この写真や、Lifeが出版した他の傑出したMinamata写真は、1978年、スミス生前の最後の写真エッセイとなった。

 Minamataは南西日本の漁業社会で起きた大惨事が一回限りの出来事ではなかったことを明らかにする。この映画は、Minamata大惨事から数十年後の似たような悲劇の長いリストを結論にしている。インドネシアでの水銀汚染、チェルノブイリや福島の放射能、アフリカや中南米での有毒鉱山廃棄物による中毒、ミシガン州のフリント飲料水鉛汚染や多数の他の事件。

 Minamataの批評は、大半が好意的だが、Indiewireや、イギリスを本拠とするIndependentとTelegraphの批評家による評価は厳しかった。彼らの批評の底流にあるのは、誰も、この惨事について余りに感情的になるべきではなく、まして、熱烈にMinamata被害者の苦境を見せようとするなど、とんでもないという主張だ。この骨組みを超える冒険をする映画製作者は、常軌を逸している。


[出典:メタルワーク・ピクチャーズ]水俣病患者と一緒のアイリーン美緒子(バージュ美波)とW・ユージーン・スミス(ジョニー・デップ)

 例えば、Indiewireの評論家エリック・コーンは「ジョニー・デップのとっぴな演技は、やりすぎ伝記映画を救えない。」という題の記事で、映画を「ふさぎ込むドラマ」と非難している。

 「時折の感動的な見方も、全ての心の琴線を自由に引きこもうとする映画を救うことはできない」とコーンは宣言し「芝居がかった身振りが基本だ」と映画を非難している。

 Independentのジェフリー・マクナブは、この映画は「方向が矛盾している」ので二つ星にすると言う。「社会改革ドラマなのか、問題を抱えた芸術家の贖罪物語なのかわからない。結果は、期待されていた形で観客を引き込むことも感動もさせない映画だ。」

 Telegraphは、Minamataは「自慢する」伝記映画で「顔をしかめたくなるような贖罪話で、スミスを喜ばせるような物語にした」とレビタスを非難している。

 これらの傲慢で、自己満足的な主張とは対照的に、Minamataは、熱のこもった徹底的に客観的な作品で、チッソの犯罪と、この企業の被害者を暴露しようというスミスの決意が、どのように彼の創造精神を回復させたかを示している。

 全てのスミス作品の深さや重要性を、ここで批判的に検討することはできないが(International Center for Photographyの写真オンライン・コレクションを参照)強力なジャーナリズム・ツールと芸術的手段としての写真に対する彼の貢献は深い人間性に支えられている。

 戦後のスミスの写真エッセイ、スペインの村(1951)、助産婦 Nurse Midwife(1951年)、Country Doctor(1954)や他の作品は、現代写真ジャーナリズムに新たなパラダイムを確立した。

 何より、スミスは、真実を暴露する努力は、他の人々を勇気づけ、社会を良い方向に変えられるという熱烈な信念につきうごかされていた。彼は、かつてこう語っている。「写真は小さな声にすぎない。しかしときたま、ほんのときたま、一枚の写真、あるいは何枚かの写真が我々の意識を呼び覚ますことができる。思考の触媒だ。」

 これらの感情がMinamataを支えてはいるが、現在レビタスは、こうした関心事と対立して、この映画を「葬り」、作品に関係する全ての人々を罰するため、デップに対し、#MeToo-スタイルのキャンペーンを進めているメディア企業と対決している。

 2018年、デップの前妻アンバー・ハードは、ワシントン・ポストに家庭内暴力の被害者だったと主張する論説を書いた。これはポスト記事では名指されていなかったデップに対し、いつものメディアの職業生活破壊ヒステリーを引き起こした。ハードが主張する事件のいずれも、告訴は言うまでもなく、今までどんな犯罪捜査の主題にもなったことがない。

 デップは予定されていた次の「パイレーツ・オブ・カリビアン」制作から外され、去年『ファンタスティック・ビースト』の三作目で、ゲラート・グリンデルワルト役を「降りる」ように依頼された。デップの排除は、マードックが所有するイギリスを本拠とする、彼を「妻虐待者」と非難する扇情的な内容を出版したタブロイド紙Sunに対する名誉毀損訴訟で敗訴した後におきた。

 先週、レビタスは、この巨大映画会社を非難するMGMに送った手紙を公開した。「[2020年早々]MGMは、世界がこれまで経験した中でも最悪な産業公害事件の一つによる何千人もの被害者の苦しみを明らかにする熱意を持っていた。

 「長年無視されてきたこの共同体は、彼らの物語を共有し、彼らの痛みを再度曝すことで、歴史を闇から引き上げ、他の無辜の人々が、決して彼らのように苦しまないようにすることだけを願っているが、MGMとの提携で、数十年にわたる願望が、とうとう実現する時が来たように思われました」と手紙は述べている。

 「今MGMは、この映画に出演している一人の俳優の個人的問題が同社に否定的影響を及ぼしかねず、MGMの視点からは、これに比較し、被害者や家族は、さほど重要でなく、世界公開が既に成功したもかかわらず、MGMは「映画を葬る」ことに(買い付け部門トップ、サム・ウォルマン氏の言葉)今週決めたのを知った時の彼らの衝撃を想像下さい。」


アンドリュー・レビタス[出典:メタルワーク・ピクチャーズ]

 「巨大な顔がない企業が、人類や品位や正義に対する彼らの道義的責任に応えなかったため」、レビタスは、彼の娘が「人生全ての日々、苦しんだ」上村氏と話をしたのを思い出した。彼の手紙は、MGM経営者に、上村氏や他の水俣被害者と話し「なぜ一人の俳優の私生活が、彼らの亡くなった子供や兄弟や親や、産業公害と企業の不正行為のあらゆる被害者より一層重要と思うのか説明する」よう要求していた。

 手紙は「全世界の人々は、彼らを尊重せず、彼らを本物と考えない企業によって被害を与えられている」ことを指摘し、MGMに「Minamataの配給とプロモーションを積極的に阻止する」決定を覆すよう促した。それは、自分の経験について語る被害者の一人、シノブ・サカモトのYouTubeビデオで終わる。

 MGMは、軽蔑的な味気ない声明で答えた。「この映画は、MGMの一部門で、映画の同時発売を担当するアメリカン・インターナショナル・ピクチャーズ経由で購入した。Minamataは、アメリカン・インターナショナル・ピクチャーズの将来公開作品の一つで、現在、この映画のアメリカ公開日はTBA[未定]だ。」現在アマゾンによる吸収合併過程にあるMGMによる、いかなる決定も、確実に経済計算の影響を受ける。

記事原文のurl:https://www.wsws.org/en/articles/2021/08/04/mina-a04.html

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 近代日本における最初の産業公害は、田中正造が戦った古河足尾鉱毒事件。

 日頃、テレビや新聞を大本営広報部洗脳機関と呼んでいる。これが事実であることが日々示されるのは、ケイトリン・ジョンストンさんの主張同様、正しい主張の証明とはいえ、悲しい現実。本営広報部洗脳機関という主張、妄想であって欲しいと夢想している。

 有象無象の茶番劇で、子供の頃、漫画で?見たのを思い出している。やあやあ、遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ。肥だめの中の嵐。日本の現実そのものを描写する『水戸黄門』を見ながら思う。総裁選を話題にするのではなく、この現状で、コロナ対策を論じる国会開催を否定している与党を批判する大本営広報部洗脳機関は皆無。もちろん、それが連中のお仕事。

 植草一秀の『知られざる真実』

米国支配勢力が演出する政治劇

 ブロードウェイ再開の記事を読んで、昔現地でみたミュージカル『コーラスライン』を思い出した。出張時、後輩と見た記憶があるのだが、さだかではない。当時、たまたまよった書店で、フレデリック・ポールの『チェルノブイリ』ペーパーバックを買った記憶のほうは、はっきりしている。購入後、まもなく読み終えた。フレデリック・ポールの『チェルノブイリ』については2011年4月の下記記事で触れている。同じ時に、ニューヨークの安売り店で、あのパソコンを買ったのだった。

全ての原子力発電所が脆弱なのだろうか?-大惨事は、いつも想定外

 週刊金曜日最新号 9/17 1345号に、つなぶち ようじ氏の石川武志氏インタビュー 映画『MINAMATA-ミナマタ』から消された人物が語るユージン・スミス が掲載されている。引き込まれる記事。映画は、23日公開。

 東京新聞、9/16朝刊にも、スミス夫人役女性の話題が載っている。

  ところで、ここに表示されている有名な「入浴する智子と母」の写真、スミスのオンライン展覧会にも掲載されていない。小生の世代にとって、ユージン・スミスと水俣というと、瞬間的に連想するのはこの写真なのだが。

 写真を公開しないことにした経緯を説明する元スミス夫人による文章がある。

「入浴する智子と母」について

 LITERA

八代弁護士らの共産党攻撃の根拠「公安調査庁」が“失笑”の報告書! 暴力活動の記載なく「コロナ政策提言で存在感」とまるで共産党PR

 犯罪人が犯罪取り締まりの頂点にたつというのは、北朝鮮もびっくりの属国。

 

 日刊IWJガイド

「本日午後6時半から岩上安身による青木正美医師、前田佳子医師インタビューを生配信します!」2021.9.17号~No.3291号

 前回も拝聴した。脱線につぐ脱線の実に興味深いマラソン鼎談だった。今回はどうなるだろう?

 

2019年11月19日 (火)

ボリビア・クーデター:五つの教訓

 アルゼンチンの社会学者アティリオ・ボロンが、ボリビア・クーデターについての重要な考えを示している。

2019年11月13日
アティリオ・ボロン

Peoplesdispatch

 エボ・モラレスは軍事クーデターで、大統領を強制的に辞任させられた。

 ボリビアの悲劇は、我々の人々や社会勢力や政治勢力が学んで、我々の良心に永久に記録しなければならない様々な教訓を与えている。これは、将来のより詳細な分析の序章としてメモした、短いリストだ。

一番目: 成長、再配分、投資の流れとマクロの改良とミクロ経済指標を保証したエボ政権の模範的な経済行政にもかかわらず、右翼と帝国主義勢力は、決してその権益に奉仕しない政府を受け入れないのだ。

二番目:攻撃の警報を認識するためには、アメリカの多様な機関や、学者やジャーナリストを装ったその広報担当者が出版するマニュアルを勉強することが必要だ。

 これらのテキストは、専門的俗語で彼らが「誹謗中傷」と呼ぶもので、人気が高いリーダーを泥棒、腐敗している、独裁者、無知とレッテルを貼り、評判を破壊する必要性を必ず強調している。

 これは彼らによるメディアのほとんど独占的支配を好むソーシャル・コミュニケーター、自称「独立ジャーナリスト」に託される仕事で、我々が扱う事例では、一般に先住民や貧しい人々に向けた憎悪のメッセージと一緒に、この名誉棄損を国民の心にたたき込むのだ。

三番目: 上記が完了するや否や、恥ずべきヴァルガス・リョサが数日前「権力を恒久化したがっている扇動家」と書いたエボの「独裁」を終わらせる「変化」を、政治指導者や経済エリートが要求する時が来る。

 ファシスト群れが略奪し、火をつけ、柱にジャーナリストを鎖で縛りつけ、女性市長の頭を剃り、彼女を赤く塗り、ドン・マリオの命令を遂行して、邪悪な扇動家からボリビアを自由にするために、最近の選挙の投票用紙を破壊する画像を見た時、彼はマドリッドでシャンペンを乾杯して、飲んでいたに違いないと私は思う。

 国民のリーダーを張り付けにし、民主主義を破壊し、自由でありたいとを望む、あつかましさを持った威厳ある人々を罰するために雇われたヒットマン集団が率いる恐怖政治を確率するための、この下劣な攻撃の、この無限の重罪の不道徳な旗手だからな、私は彼を例として言及しているのだ。

四番目:「治安部隊」が現場に入る。この場合、アメリカ合州国政府の軍なり民間なりの多数の政府機関に支配された組織について我々は話をしている。

 彼らは治安部隊を訓練し、彼らを武装させ、共同演習し、政治的に教育する。私はエボに招待されて、三軍の士官に対し「反帝国主義」の授業を開始した時、これを目撃する機会を得た。

 この機会に、冷戦時代から受け継がれている最も反動的な北米のスローガンの浸透度と、先住民が国の大統領だという事実によって起こされる露骨ないらだちに、私は驚いた。

 これら「保安部隊」がしたことは現場から彼ら自身撤退し、ウクライナで、リビアで、イラクで、シリアで、帝国を煩わすリーダーを打倒し、最後の例では、打倒しようとして行動したように、ファシストの群れに、無制限な行動をやり放題にさせて、国民や、好戦的な部門や、政府の人物を脅迫することだった。

 だから、それは新しい社会政治的概念だ:右翼がリクルートし、資金供給した反動主義集団が、彼らの法律を押しつけるのを可能にする「不作為による」軍事クーデターだ。恐怖が支配してしまえば、政府は無防備状態なので、結果は予想できた。

五番目:ボリビアでは帝国主義に植民地化され現地右翼の召し使いたる警察や軍のような組織に、治安や社会的秩序は決して託されるべきではなかったのだ。

 エボに対して攻撃が開始された時、彼はゆう和政策を選び、ファシストの挑発に反撃しないことにした。

 これが彼らを大胆にし、彼らが方策を強化するのを可能にするのに役立った。最初は、二回目の決選投票要求だ。次に不正行為と新選挙。すぐ後に(ルーラなしでのブラジルでと同様)エボ抜きでの選挙。

 それから彼らはエボ辞任を要求した。最終的に、彼が恫喝を受け入れるのいやがったので、エボに辞任を強いるため、連中は警察と軍共謀で恐怖感を植えつけたのだ。全てマニュアルそのままだ。これらの教訓から我々は学べるのだろうか?

記事原文のurl:https://peoplesdispatch.org/2019/11/13/the-coup-in-bolivia-five-lessons/

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 東京新聞11月18日朝刊に、渡良瀬川鉱毒根絶太田期成同盟会による銅山跡調査について書かれている。「こちら特報部」足尾鉱毒事件 銅山調査今もなお

 紅葉の季節になると、みどり市の草木ダムが紹介される。草木ダム本来の目的は、豪雨や地震などで渡良瀬川の鉱滓下流流出防止だとは大本営広報部決して報じない。ダムの案内板にも一番の狙い書かれていない。中才浄水場は通洞坑内からわき出る水を濾過池で石灰で中和処理し、上澄みを放水する施設。車道沿いに杉の巨木が並んでいて、道路から浄水場は良く見えない。施設の目的を説明する掲示板も見当たらない。「見ざる言わざる聞かざる。」田中正造が戦った鉱害、終わったどころではない。今も延々続いている。

 「見ざる言わざる聞かざる。」の典型が日本の大本営広報部記者クラブ(正確には速記者クラブ)。お上の言い分垂れ流し。痛い質問は決してしない。総理大臣官邸報道室は、実態、総理大臣官邸報道妨害室。「質問をしてください」としつこく繰り返す妨害室長。「あなたに答える場ではない。」と平然と言い放つ官房長官。その実態を、官邸記者クラブのメンバー、真摯に報じているだろうか。速記者というより共犯者たち。ウソと思われるなら森監督の新作映画『i 新聞記者ドキュメント』をご覧願いたい。東京新聞の望月記者の取材する様子を追ったドキュメンタリー。最近見て感動した韓国映画『共犯者たち』を思い出した。『共犯者たち』で、自分を首にした放送局のトップに、至る所で質問をつきつけた記者、今その放送局の社長になっている。ソウル市民デモの様子、国会前警察の違法過剰警備で身動きできないデモと大違い。韓国と日本の差は大きい。飼い馴らされると、それがわからなくなる。九州場所が満員札止めなのは結構だが、『i 新聞記者ドキュメント』こそ満員札止めになって欲しいもの。

 合成麻薬にまつわる女優逮捕、サクラ連中を見る会や前夜祭の違法性や日米貿易不平等協定から目をそらすためのスピンに決まっているのに、サクラ連中は「もうやめましょう」やら「都市伝説」と強弁する。こうしたサクラ連中が出た瞬間テレビは消すが、地方に元気を与えてくれる会と擁護する市長まで登場。元秘書というから、お里が知れる。

 自分の支持者だけ税金で供応する連中がいれば、貧困者を招く宗教者もいる。

日刊IWJガイド「来日するローマ法王フランシスコが貧困者1500人をバチカンに招き、昼食を共に! 一方安倍総理は『桜を見る会』に後援会支援者800人を招き、税金で饗応!?」2019.11.19日号~No.2623号~

2019年11月11日 (月)

ボルソナーロのブラジルで、ダムはカチカチいう時限爆弾

Tchenna Maso
2019年11月5日
New Internationalist

 4年前の今日、ブラジルは最悪の環境災害の一つを経験した。人権活動家Tchenna Masoが、鉱滓ダムによる人的損失と、それ以来変化したことを考察する。

 今日はブラジル南東部ミナスジェライス州の町マリアナのフンダン鉱滓ダム大惨事4周年だ。フンダン鉱滓ダムと、これの大本のサマルコと呼ばれる鉄鉱石鉱山は、イギリス-オーストラリア企業BHPとブラジル採掘大手ヴァーレが所有する同名の採掘企業に運営されている。

 2015年11月5日、鉱山の有毒廃棄物を堆積していたダムの倒壊で、4870万立方メートルの有毒ヘドロ放出で、19人が死亡し、長さ850キロのリオ・ドセの全流路に壊滅的打撃を与え、ダムから595キロ以上離れた大西洋地域に影響を与えた。

 広くブラジル最悪の環境災害と呼ばれたサマルコ大惨事は、川沿いの村に暮らしていた約140万人の人々を強制退去させた。4年後も衝撃的影響はまだ感じられるが、サマルコは、一軒たりとも再建していない。

 今年一月、もう一つの鉱滓ダムが、ブルマジーニョ町の近くで決壊した。それもミナスジェライス州のフンダン鉱滓ダム崩壊から、わずか120キロだ。今回、コレゴ・ド・フェイジャオン鉄鉱石鉱山とダムはヴァーレの単独所有だった。主に崩壊が起きた時に、ダム上流の社員易食堂にいた労働者約270人が死亡した。

 サマルコとブルマジーニョの両方で起きたことは悲劇ではなく、凶暴な採掘、共通の生態学的公益を搾取する植民地的、破壊的なやり方の結果だった。二つの事件で被害に会った共同体は深刻な痛手を受けた。彼らは公正、説明責任と賠償金を求めている。

 事業に開放

 10月、国連の拘束力ある協定に関する交渉のため、私はジュネーブに出かけた。この提案は、国際的な人権法の下で、各国政府に、多国籍企業の、世界中での暴走に対し、法的拘束力がある法規を制定させることを求めるものだ。

 ジュネーブの後、マリアナでのダム決壊から四年後、コミュニティーで起きていることを明らかにするため、ロンドンでのBHP年次総会に私は出席した。だが、この場所では、あらゆることが暴力的で、私が発言したような、被害を受けた人々が賠償金交渉過程や、決壊の環境影響に関する研究に完全に参加するなどの共同体の要求に異議を唱える準備を役員会は既にしていたのだ。

 ブラジルのヤイル・ボルソナーロ大統領は、企業自身が問題を解決すると信じており、修復の取り組みを監督する役割の政府大臣を置かず、代わりに、本当の影響力や権力のない人々を任命した。彼の政府は、あらゆる権力を企業に任せており、ブラジルでは、国はこのような事業に対して監督しないのだ。

 ブラジル・ダム崩壊:責任がある巨大民間企業ヴァーレは規則軽視の実績がある

 採掘主義モデル

 ブラジルは、山林伐採、農業関連産業や巨大ダムを含め、今別の形の採掘を推進している。農業関連産業と採鉱の猛烈な拡大に対して「アマゾンを開放する」ボルソナーロの目的は、山林伐採を招き、メガプロジェクトにエネルギーを供給するためにせき止められつつあるアマゾンの川に大きな悪影響を与えている。アマゾンで起きていることは、火災と生態系の破壊で、地域への大企業権力の到着に完全に結びついている。アマゾン資源の支配や他の形での横領ができるように、ボルソナーロ政権は現地で暮らす先住民の共同体を追放しようとしている。

 多数の異なる鉱物がブラジルで発見され、鉄鉱床や他の鉱物を利用するために新技術が開発された。それで企業は、鉱山を更に深く掘り、それは、より多くの有毒廃棄物をもたらし、鉱物を洗浄するための更に大量の水と採掘のための更なる肉体労働者が必要になる。採掘し、鉱滓をダムに堆積する、このモデルは、これまで何年もの間ブラジルで行われてきたが、もう多くの国では行われていない技術だ。それは大量のエネルギーと水消費に基づいており、社会指標の低い地域で行われている。

 皆にとってより安全にするには、地理的に、どこに鉱滓ダムの場を見つけるべきかを採掘企業は十分評価しないことが多い。その代わり、彼らは、より容易で、より安いダムを建設する。だがこうした選択肢は、ダムが決壊した場合、企業は地域の地震制御の研究を行わなっていないので安くない。サマルコは、不十分な排水設備と、鉱滓を堆積させたまま放置した失敗が、ダムを非常に不安定化し、わずか三つの小規模地震衝撃が崩壊を起こしたのだ。

 時限爆弾

 ボルソナーロ政権は、景気を刺激し国家規模を縮小するため環境法規を一層柔軟にした。この自由は、企業がいっそう容易に土地と労働者を利用し、彼らの利益率を引き上げることを可能にした。

 ブラジルでは、既に九つ以上の鉱滓ダムが崩壊した。2002年から、2年ごとに鉱滓ダムが崩壊している。それにもかかわらず、これら決壊を防ぐため危険管理を実行する当局者が僅かしかおらず、担当者がいても、公共の安全を増すことができる持続可能な技術に対する投資はほとんどない。これら汚染が大きい鉱滓ダムの全てが、危険なことに、人口の多い町の上にあるのだ。

 これらの犯罪により被害を受けている共同体にとって最も重要な要求は、司法制度の利用だ。企業と共同体の間には、権力の大きな非対称が存在している。二つ目は、国際的枠組み、あるいは人権の国際基準と一致する賠償金だ。

 私が働いている組織、ダム被害を受ける人々の運動(MAB)は、被害を受けた人々のため、立法の枠組みを変え、共同体の社会的発展や、権利行使のためのニーズを認識させるためのロビー運動をしている。こうした点は、巨大プロジェクト建設の前に認識される必要があるのだ。

 
(ヴァーレ社とBHPビリトン社が所有する)ダム決壊後、泥流で覆われたベント・ロドリゲス地方の町立学校校長エリエネ・アルメイダ。強制退去させられた村人を収容するブラジル、マリアナのホテルで子供を抱いている所を撮影。2015年11月9日。

 女性たちが取り組みを率いている

 我々MABは大いに女性と働いており、これらの場合、主な戦いは、人々が被害を受けていることを認知される必要があることで、女性たちの場合、彼女らの多くが非公式の仕事をしており、家父長制の支配下にいるために、それがいっそう難しいのだ。

 採掘企業と常に、家族の長、通常男性に賠償金を支払い、女性の財政的自立を制限している。同時に、女性は金銭賠償を越えた補償政策を見ている。彼女らは健康や汚染された水などの他の被害や、被害を受けた人々全員の福祉を保証するため、共同体がこれらの問題にどのように対処できるかを考えている。

 一般に、ブラジル社会は、女性のリーダーには反対だ。近年、最も攻撃を受けたMABの擁護者は女性だった。ダム惨事は、しばしば立ち退きや、生計手段の喪失や、土地収奪や、生態学的衝撃の後に、アルコール中毒や、薬物乱用や、家庭内暴力のより高い率を含め、社会的脆弱性を増すのだ。

 今年3月22日、世界水の日に、同志のディルマ・フェレイラ・シルバが、警察によれば、違法伐採に関与していた大土地所有者に殺された。彼女は何年も前に巨大ダムによる被害を受け、32,000人のブラジル人が強制退去させられたパラ州トゥクルイの地方の孤立した入植地に住んでいた。ディルマは彼女のコミュニティーの公共サービス利用を改善しようと戦っていた。

 我々は、人権と土地所有権擁護者を守り、世界中で繰り返され、最近では、10月19日、シベリアで金山の廃滓ダムが崩壊したが、サマルコやブルマジーニョ大惨事が決して再び起きるのを許さない拘束力がある法律を制定させなくてはならない。

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 Tchenna Masoは共同体弁護士で、先住民共同体、アフリカ系ブラジル人共同体や農業労働者を含め、被害を受けた共同体で構成される、草の根のダム被害を受けた人々の運動(MAB)調整メンバー。

記事原文のurl:https://newint.org/features/2019/11/05/bolsanaro-brazil-dams-are-ticking-time-bombs

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 この話題、決して我々と無関係ではない。2011年3月11日の震災時、足尾の鉱滓堆積場の土砂が流出していた。下記は田中正造大学にあるスクラップ記事。田中正造が戦った鉱害、決して終わってはおらず、今も続いている。

 2011年3月11日の震災により再び源五郎沢堆積場の土砂が流出

 それ以前の大規模決壊に触れている『八ッ場あしたの会』の2017年11月12日記事、渡良瀬川鉱毒根絶同盟会、足尾銅山の「山元調査」の一部を引用させていただこう。今年も足尾銅山「山元調査」は行われているはずだ。「鉱滓ダムが、危険なことに、人口の多い町の上にある」画像も下記リンクでご覧いただける。

わが国の公害運動の原点となった足尾鉱毒の問題は終わっていません。
 1958年(昭和33)には足尾銅山の鉱滓堆積場が決壊して、群馬県毛里田村(現・太田市)を中心に大規模な鉱毒被害が発生しました。3年前にお亡くなりになった板橋明治さんを筆頭代理人とした被害農民達(太田市毛里田地区鉱毒根絶期成同盟会)971名は1972年、(株)古河鉱業(現・古河機械金属株式会社)を相手とし、総理府中央公害審査委員会に提訴。2年後の1974年、調停を成立させ、100年公害と言われたこの事件の加害責任を認めさせました。しかし、鉱滓堆積場の問題は今も続いています。
 板橋さんの遺志を受け継いだ渡良瀬川鉱毒根絶太田期成同盟会は、足尾の実地調査と古河機械金属への働きかけを続けています。

中略

鉱滓ダム「簀子橋堆積場」の写真や動画をこちらのページでご覧いただけます。
https://matome.naver.jp/odai/2139622934544934701
https://www.youtube.com/watch?v=xaCb9fLJseU

2019年9月 2日 (月)

ダニエル・ライアンが暗殺されるまでに、どれぐらいかかるのだろう?

2019年8月29日
Paul Craig Roberts

 ダニエル・ライアンはアイルランド人ジャーナリストだ。淫売ジャーナリストではなく、本物だ。彼女は欧米世界のどこであれ、今やジャーナリストが発言するのを許されないことを語っている。例えば、欧米ジャーナリズムは、もはや事実報道には関係ない。巨大な政治力を有するひと握りの集団が欲する人物を誰であれ、捕まえられるようにするために使われているのだ。

ダニエルは、もし人が事実や真実や客観性を尊重すれば、現在ジャーナリストでいることは不可能だと指摘している。それらは人が解雇される要素だ。彼女はそれについて、とても優しい。

 「ジャーナリズムが全く誤りがない職業だとは誰も合理的に期待することはできないが、明らかに偽りの記事がメディア生態系を通して浸透してゆく比率は憂慮すべきで、誤りが多ければ多いほど、それだけ報酬も大きいように見える。彼女が、どれほど虚偽の、いかれた話を助長しても、レイチェル・マドーはお仲間から、ほとんど英雄扱いされている。」

 「イラクからアフガニスタン、リビアやシリアに至るまで、ジャーナリズムは嘘と誤報で成長した。例えば、イラク戦争の最大応援団だった評論家やコラムニストの多くに、いまだに始終、新たな軍の冒険のため、連中の賢明な助言や洞察や予想をするようお呼びがかかる。」https://www.rt.com/usa/467566-msnbc-odonnell-media-accountability/

 アメリカ人とヨーロッパ人の愚かさは異常だと私は思う。IQ80以上の能力がある人が、一体どうして、MSNBCやCNNやBBCのようなTVメディアの前に座ったり、特にニューヨークタイムズやワシントンポストのような新聞を読んだり、NPRに耳をかたむけることができるのだろう? 精神的、感情的に弱くて、青い錠剤に救いを求める人々だけだ。現実を直視できない人々が、欧米売女マスコミ・ニュースの消費者だ。

 本当に、アメリカ人とヨーロッパ人は、一体なぜマスコミで時間を浪費するのだろう? マスコミが言うことは分かりきっている。鉄壁の決まり文句はこれだ。「トランプは間違っているし、無頓着な白人キリスト教徒のばか者が、イスラエルのため、中東で戦い、軍安保複合体の財政的利益のため、ロシアと中国とイランと朝鮮民主主義人民共和国を悪者にしていない限り、白人アメリカ人もそうなのだ。」

 欧米の売女マスコミには、どのような別の記事も決して見つけられるまい。

 Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

 ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/

記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2019/08/29/how-long-before-danielle-ryan-is-assassinated/

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 賃金や勤労統計を常習的に改竄する常習ウソつき連中、今度は言葉狩り。「非正規」という言葉を使うなと。言葉は消しても、実態は消えない。恐るべき下劣支配者。

 『米軍が最も恐れた男 カメジロー 不屈の生涯』を見た。
 『米軍が最も恐れた男 その名はカメジロー』の続編。

 ロバーツ氏が繰り返し批判される通り、マスコミの堕落は酷いが、カメジロー映画、二本ともTBSテレビ、佐古忠彦氏による監督作品であることに驚く。佐古氏『「米軍が恐れた不屈の男」瀬長亀次郎の生涯』という一作目を元にした素晴らしい本も書いておられる。

 彼が那覇市長に当選した後、米軍は、兵糧攻めで那覇市の預金を封鎖する。さらに水攻めとして、給水権を米軍が支配していたため、市民は断水で苦しめられたというのを見て、今や本土が昔の沖縄状態に落ち込みつつあるのだと納得。やがて水道私営化により、大衆は巨大資本に生活手段を直接支配される。それを言えば、種子法もそうだが。共犯者大本営広報部は、そういう迫りくる危険には決して触れない。那覇市民は、預金封鎖の兵糧攻めに対抗して、何と納税運動を起こしたのだ。

 『タクシー運転手」や『共犯者たち』や、今の『反アベ』集会などで、韓国の大衆運動の強さに驚くが、同じようなことが沖縄では起きていたのだ(今も継続)と納得。大衆運動で政府方針を撤回させる成功体験、日本にはないと、あきらめかけたが、昔は極めてまれな大衆運動の成功体験があったのだ。現地の方々にしか知られていないのが残念。

徴兵拒否・納税拒否を掲げて故郷を守った人々〜加須市でシンポジウム

 記事の一部を引用させて頂こう。

田中正造が「利島・川辺の運動見事」と絶賛した、埼玉県・利島村と河辺村(現加須市)住民の、抵抗と勝利。8月25日、その勝利の理由を解き明かすシンポジウムが開かれた。(主催・渡良瀬川研究会)

会場の埼玉県加須市北川辺、ここがまさに抵抗の舞台であり、勝利の舞台だ。地元の人々による朗読劇『北川辺を救った正造さん』、地元の郷土史研究家を含むシンポジウムは、充実した内容だった。講演では「田中正造さんの部屋」を持ち、田中正造の墓を校庭に持つ「北川辺西小学校の取り組み」を元校長が解説してくれたのも印象的だった。

利島・川辺は、廃村・遊水池化計画の白紙撤回を勝ち取り、緑なす故郷を今日に残している。一方、谷中村は買収によって、または日本初の土地収用法による強制執行によって村は破壊され、住民は追い出されて、戦後は渡良瀬遊水池となって水底に沈んだ。

 どうやら背景として下記事情があったようだ。素人の理解、とんでもない誤解の可能性がある。ご専門の方に正解をご教示頂ければ有り難い。

 利島、川辺では、

  • 廃村・遊水池化計画公表前に、それを嗅ぎつけて、果敢な活動を開始・継続した。
  • 大地主から農民まで、全員一丸となって、反対運動でまとまっていた。
  • 堤防を守る作業などで青年会の極めて積極的な活動の蓄積があった。毎日のようにオルグ集会。
  • 若い女性から老婆まで女性が集団で東京に反対請願行動にでかけ、宿舎まで借りて戦った。
  • 国が堤防を直さず、廃村・遊水池化計画を進めるなら、村民は、兵役、納税の義務に応じないと反撃した。

 一方、谷中村では、

  • 公式に、県議会で、廃村・遊水池化計画が論じられた。
  • 大地主の多くが廃村・遊水池化計画に賛成し進んで土地売却をした。
  • 残った少数の農民は非武装抵抗を続けたが、土地収用法による強制執行により家は破壊され、追い出された。

 利島、川辺の人々は、谷中村廃村・遊水池化計画にも強力に反対した。共感からだけではない。合理的に、谷中村廃村・遊水池化の悪影響が、利島、川辺にも及ぶことを危惧していたのだ。その危惧は、50年後のカスリーン台風で実証された。お上より、庶民の方が正しい好例。

 日本では伝統的に、戦争も、原発も、高速増殖炉も、六ヶ所村も、諫早湾水門も、八ッ場ダムも、辺野古も、当局が決定すると、全くの間違いでも、政府が潰れるまで決して改めない実績がある。横浜カジノ、現代の「利島、川辺の運動見事」となるのか、谷中村となるのか?日本人の降伏ではなく幸福のため、是非とも前者であって欲しいもの。沖縄のカメジローや、利島・川辺・谷中村の田中正造のような指導者、既におられるのだろうか?

 昨日は関東大震災96周年。

日刊IWJガイド「本日午後7時より、『<IWJ追跡検証レポート>「九月、東京の路上で」~関東大震災・ジェノサイドの跡地を加藤直樹氏と歩く 第二夜』をフルオープンで再配信!」2019.9.2日号~No.2545号~(2019.9. 2 8時00分)

 横網町公園、右翼は朝鮮人犠牲者追悼式典の30メートル前で妨害集会を開いたという。

2019年2月15日 (金)

ベネズエラの白人優越主義がトランプ・クーデターの鍵

2019年2月8日
グレッグ・パラスト
Truthoutのために

 1月23日、ドナルド・トランプからの電話のすぐ後、前ベネズエラ国民議会議長フアン・グアイドが、自ら大統領だと宣言した。投票なしで。ドナルドから公式に承認される時、誰が選挙を必要とするだろう?

 はぁ?

 ベネズエラで何が起こっているか、私は3枚の写真で説明することができる。

 一枚目、ニューヨーク・タイムズに堂々と掲載された、妻と子供と一緒のベネズエラの自称(そしてトランプも宣言した)大統領フアン・グアイドの写真がある。

 二枚目、国民議会、グアイドの党の集合写真、雪のように白い議員たち

 特に、彼らと政治的に反対の、当選したニコラス・マドゥロ大統領を支援する議員たちの3枚目と比較すれば。マドゥロ支援者、ほぼ全員、肌の色がもっと濃い。

これがニューヨーク・タイムズ記事が、アメリカの他の体制派マスコミも語らない、ベネズエラの黒と白の物語だ。今年のいわゆる大衆反乱には、その核心に、貧しい(混血の)より多数派のメスティーソが、彼らに置き換わっていることに対する、より白い(そしてより裕福な)ベネズエラ人の激怒の反発があるのだ。

 自分の祖先はヨーロッパ人だと考える人々による4世紀にわたるベネズエラの白人優越主義は、過半数のメスティーソによる圧倒的支持で勝ったウゴ・チャベスの1998年の当選で終わった。白人優越主義からのこの転換は選挙で選ばれたチャベス後継者マドゥロの下で続いている。

 2002年に始まったBBCのチャベスと私のインタビューで、彼が堂々と誇らしげに身につけているレッテルである見るからに「ニグロでインディオ」の肌色が濃い人間に追い出されるのを目にした白人支配階級の激怒についてユーモアたっぷりに語った。

 貧しい人々はなぜチャベスを愛したのだろう? (愛は余り強い言葉ではないが。)驚くほど誠実なアメリカCIAのワールド・ファクトブックさえこう述べている。

「チャベス政権時代のベネズエラに対する社会的投資が、1999年のほぼ50%から、2011年の約27%まで貧困を減らし、就学率を高め、幼児、子供の死亡率を大きく減少し、社会的投資を通して、飲料に適した水の利用と公衆衛生を改善した。」

 加えるべきは、アメリカより、更に人種と貧困が結びついていることだ。

 だが2013年に、マドゥロが大統領に就任すると、石油価格は崩壊を始め、石油で支払っていた膨大な社会福祉プログラムは、借金と札の印刷で支払わなければならず、途方もないインフレーションを起こしている。経済的衰退は、今ベネズエラのための国連報告者が「中世の包囲攻撃」になぞらえたものにより、もっと極端に悪くされる。トランプ政権は、ベネズエラを、最大顧客アメリカからの石油輸出収益から切り離した

 皆が経済的に傷ついているが、特権階級の銀行預金口座はほぼ無価値になった。混血の人々の大多数は、彼らの偉大な白人の希望グアイドを選ばないことを知っている腹を立てた白人の金持ちは街頭に繰り出した - しばしば武装して。(そう双方が武装している。)

 私はこの映画を前に見ている。ベネズエラ左翼政府のいわゆる「独裁」に反対する大規模デモの現在のニュース報道を見ると、BBCテレビ用報道で、私が初めてカラカスに入った2002年に酷似している。

 当時、ニューヨーク・タイムズやNPRやアメリカの他の主流マスコミが、何万というベネズエラ人がチャベス辞任を要求しているのを見せ、チャベス政府に反対する行進と報じた。だが私がBBC写真班を引き連れて、これら抗議参加者と一緒に行進した際、彼らは明らかに色白の少数人種だった。彼らは裕福な人たちでもあり、彼らは人がそれを知るよう望んでいた。女性の多くがハイヒールで行進し、男性は彼らの特権階級のユニフォーム、ビジネススーツを誇らしげに見せびらかしていた。

 チャベス支持者は愛国的な黄、青、そして赤のTシャツ、スニーカー、ジーンズを身につけていた。

 人種は政治哲学と同じぐらい極めて重要だ。私が反政府デモ参加者と一緒に行進した時、彼らは「チャベス、猿!」やら、もっと酷いことを叫んでいた。

 2002年、BBCのために、チャベス支持派デモを撮影するパラスト。

 アメリカ報道機関は自身の人種的偏見を認めないので、ベネズエラでのこの人種戦争(戦争はそういうものだ)の物語をアメリカ人の多くは一度も聞いたことがない。2002年も、今日と同様、白人ベネズエラ人の大規模デモが、チャベスが非常に人気がない証拠として報じられた。それぞれの反チャベス行進の翌日、アメリカのマスコミでは、わずか、あるいは、ほとんど報道されない、圧倒的に貧しいメスティーソの大群、約50万の行進参加者でカラカスを溢れさせたチャベス支持デモを私は目撃し、撮影していた

 

 この偏見は継続している。ニューヨーク・タイムズは、これまでの一週間、マドゥロ支持派デモの写真を掲載しなかった。だが見つけにくい写真や現地の同僚からの報道では、チャベス主義派のデモはより大きく、カラカスの高級住宅地だけでなく、いくつかの都市でも多数が参加している。

いくつの欧米報道機関が今日アメリカが支援するクーデターに抗議するベネズエラでの大規模行進を報じただろう- # HandsOffVenezuela pic.twitter.com/YBQpqbdEfl

      2019年2月2日、アビー・マーティン(@AbbyMartin)

 なぜ貧しい人々はマドゥロ支持行進をするのだろう? 混血の過半数が現在苦しんでいるが彼らは事実上のアパルトヘイト、チャベス以前の日々に後戻りすることはあるまい。

 我々は、これがアメリカ政府がベネズエラで選出された政府を打倒しようとした初めてのことではないことを想起しなくてはならない。

 2002年、ジョージ・W・ブッシュの国務省はクーデター応援団になった。計画者はチャベスを誘拐し、人質として抑留した。クーデターは、石油産業指導者で商工会議所会長で、ベネズエラのホワイトハウスを掌握したペドロ・カルモナに率いられており、彼は今日のグアイドのように自身を大統領と宣言していた。ベネズエラ・エリートに開催され、ブッシュの大使が出席した、おしゃれな就任舞踏会について、カルモナは誇らしげに私に語った。

 だが肌の色がより濃いベネズエラ人の百万人が首都を満たし、人気がないことにされている彼らの英雄チャベスを、ミラフロレス大統領官邸に戻すよう計画者に強いて、ブッシュ/カルモナ・クーデターは失敗した。カルモナ「大統領」は逃亡した。

 現在グアイド支持者は、カルモナ支持者同様、新たに権利を与えられた混血の過半数の圧倒的な事実という条件のもとでは、自分たちが選挙で勝つことができないのを知っている。それでグアイドは、大統領選出馬を、ベネズエラ国民からは得られないトランプと同盟者による「承認」で置き換え、選挙という考えを完全に省略したのだ。

 今反チャベス・デモ参加者の画像を見て、ヒュプレヒコールを聞くと、昨年11月、ジョージア州マコンでのトランプ集会で見たものを思い出す。大統領は国境を「侵略して」いる人々から国を取り戻す必要があると、白人優越主義者が圧倒的に多い聴衆に語るため、大統領専用機から抜け出した。トランプは、彼女が「ジョージアをベネズエラに変える」だろうと語り、黒人知事候補ステイシー・エイブラムスを恐れるように言ったのだ。

 チャベスがベネズエラにしたように、国民皆保険制度をジョージアにもたらそうとしているエイブラムスのプログラムについて、トランプが話をしたとは思われない。

 アメリカ報道機関はトランプ集会で示される人種間憎悪を直ぐさま非難する。だが我々がベネズエラからの3枚の写真で見られるものを、アメリカの報道機関で、私はまだ聞いたり読んだりしていない。「彼らの国を取り戻す」ことを望んでいる白人蜂起を。

 留意願いたい。裕福な国際的に結びついている少数派によるベネズエラ反乱は、返り咲いたネオコン、トランプの国家安全保障担当補佐官ジョン・ボルトンに立案された政権転覆計画にそって運営されている。さらに注目を願いたい。ボルトンがあからさまに誇らしげに公言しているように、ベネズエラとその石油を支配する計画なのだ。

 そう石油。常に石油だ。ベネズエラには差し押さえるべきものが多いにある。世界最大の石油埋蔵

 第2部でそれを語ろう。

 注:グレッグ・パラストは、チャベス大統領の任期中、BBCテレビNewsnightとガーディアンのためにベネズエラを報道した。パラストの調査財団に寄付するか、無料で、パラストのBBC報告、ウゴ・チャベス暗殺の映画をダウンロードされたい。本記事は、ウィリアム・カマカロによるカラカスに追加報道を取り入れている。

記事原文のurl:https://www.gregpalast.com/in-venezuela-white-supremacy-is-a-key-to-trump-coup/

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 数日前「プレミアムカフェ 世界で一番標高の高い街~ボリビア・エルアルト~」を見た。番組の中か後か、日本人のことをどう思っているのか俳優の大高洋夫氏が識者に訪ねた際の「国を征服した白人を一番尊敬しています。」という趣旨の答えが何とも印象的だった。現在のボリビア大統領は、ボリビア史上初の先住民出身者エボ・モラレス。

 紀伊国屋サザンシアターで『正造の石』を見た。脚本家お二人のうち一人はテレビ・ドラマ「足尾から来た女」の作者。田中正造ではなく、田中正造に紹介されて、女性人権活動先駆者福田英子の家事手伝いになった谷中村出身女性を主人公に設定した思いもよらない視点。そういう史実は聞いたことがない。谷中を出る時、正造から石ころをもらい、いつも持っている。彼女は、兄にいわれて、当初、警察のスパイとして、福田英子の家に訪れる幸徳秋水や石川三四郎ら社会主義者やアナキストの会話内容を報告させられる。福田英子の著書や伝記、昔は書店でみかけたが、今では高い古書しかないようだ。終幕、福田英子は警察の弾圧・スパイには慣れていると語る。クリス・ヘッジズのAmerica: The Farewell Tourの中のWorkという章に社会主義者Eugene Debsの話が出てくるのを連想した。彼も幸徳秋水同様反戦だ。それをかどに投獄されてしまう。家が博物館になっているDebsの家をヘッジズは訪れるが、訪問者は年間約700人だとある。人数の少なさに驚いて、思わず読み直した。学生団体はめったに来ない。と109ページにある。マッカーシズムによる徹底弾圧で息の根を止められているのだろう。前回選挙で登場した女性議員の中に社会主義に言及する人があらわれてはいる。ところで田中正造旧宅はいまもあり見学できる。博物館ではないが田中正造記念館が館林にある。それぞれ年間訪問者数はどうなのだろう。

 今晩は下記再配信を拝聴しよう。

 日刊IWJガイド「『別人の身長を比較して、身長が伸びたと言っている』と明石順平氏が指摘する1月22日野党合同ヒアリングの模様を本日午後6時より再配信します!」 2019.2.15日号~No.2346号~(2019.2.15 8時00分)

2015年11月28日 (土)

SU-24の失速速度

Paul Craig Roberts
2015年11月26日

私が下記の記事で引用した、Zero Hedgeが報じた、243mphというSU-24の失速速度に異議を唱えている読者がおられる。http://www.paulcraigroberts.org/2015/11/25/turkey-is-lying-paul-craig-roberts/

私の記事は、SU-24の失速速度に何ら依存していないことを、まず申しあげたい。要点は、トルコが国籍不明航空機だと主張するものを撃墜する許可をパイロットが得るのに、17秒は十分な時間でないことだ。事前に承認を得た事前に仕組まれた出来事だったということなのだ。

さて、失速速度だ。Zero Hedgeは、243 mphが失速速度だという。他の筆者は、失速速度は、150だと言う。この飛行機の失速速度に関するオンライン情報は見つけられなかった。説明でわかったのは、多くの人々は、失速速度を、水平飛行の場合で考えているが、失速速度は、角度と操縦によって異なるのだ。言い換えれば、直線失速速度は、翼が十分揚力が得られないような位置では、もっと小さくなり得る、という風に私は説明を理解した。150 mphという直線失速速度が正しい数値だとすれば、243より、93mph少ないだけなので、243 mphは、翼角度と操縦次第では失速速度の範囲になり得よう。

SU-24に関するオンライン情報によれば、243 mphが、この飛行機の通常動作範囲を遥かに下回っていることは確実だ。超音速航空機は、そのような低速での飛行を意図していない。Zero Hedgeの要点は、パイロットが、飛行機の操縦問題が起きるような失速速度で飛行したり、その速度に近づいたりするとは考えにくいということだと私は思う。パイロットたちは、その飛行機が意図された速度の範囲で、飛行機を操縦するよう訓練されていると語っている。

Paul Craig  Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the WestHOW AMERICA WAS LOSTThe Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/

記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2015/11/26/stall-speed-of-su-24/
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当ブログの翻訳記事を、ご自分のブログや、掲示板に転載する方々がおられる。
掲示板に転載された記事の揚げ足をとる奇特な方がいる。まさにこの失速速度が間違っているから、Paul Craig Roberts氏の記事が間違っているかのごとく読める書きこみを読んだ。

あきれていたところに、Paul Craig Roberts氏ご本人の追加があったので翻訳した。
念のために、その掲示板を見たところ、揚げ足とりの書き込みに対し、この記事と同趣旨の鋭い指摘をする書き込みをしている方がおられた。

重箱の隅をつついても意味はないだろうが、それを指摘する方に感心。ところで、

事前に承認を得た事前に仕組まれた出来事だったということなのだ。

という点では、秘密法案も、TPPも、戦争法案も、皆ことごとくそうだろう。
報道管制をしておいて、成立させ、そのあとは提灯記事。提灯記事になるよう、始めから手配済み。

TPP、 農業だけでなく、日本経済、社会、文化すべて丸ごと破壊し、宗主国・属国大企業に差し上げる仕組みであるのに、全く報道させない。でっち上げ合意のあと、国政選挙を乗り切るための農民取り込みばら蒔き対策やら何やら、全てが入念に仕組まれていたのだ。

TPPの厳しい交渉に、全力で、国益(連中が言う国益とは何か、そもそもわからないが)を守るべく頑張ったかのごとき、読んでいて顔から火がでそうなヨイショ記事や電気洗脳箱の虚報の波。大本営広報部のTPP呆導、極力読まないようにしている。頭が悪くなるばかり。

東演による『明治の柩』が紀伊国屋ホールで上演されている。何とも残念ながら、100年前の話ではすまない。今日、現在そのまま。

    • 古河足尾銅山の鉱害垂れ流しは、東京電力福島第一原発事故後の放射能垂れ流し
    • 日露戦争出征は、戦争法案による、帝国主義侵略戦争への経済的徴兵
    • 農民押し出しへの弾圧は、辺野古基地建設反対運動への機動隊・海猿の弾圧
  • 持続可能な農業・農村の破壊は、TPPによる大規模農業、遺伝子組み換え食物推進

パンフレットにあった文章を、そのまま転載させていただこう。

「明治の柩」の中は、田中正造か今の我々か

赤上剛

 田中正造は、明治という時代の枠にとらわれた古い人間なのか、あるいはそこから突き抜けていた人物なのか。
 今、「文化の日」が「明治の日」に変えられようとしている。十一月三日は明治期の「天長節」、戦前の「明治節」、明治天皇の誕生日だ。平和憲法「発布日」のこの日を「憲法記念日」として再出発しようと国会で運動したのが作家山本有三たち。保守派の反対で「文化の日』とされた。なぜか。「憲法記念日」にすると明治天皇祝日に戻せなくなる。「憲法記念日」は「公布(施行)日」の五月三日にすり替えられた。それが動き出した。すでに「建国記念日」(神話の神武天皇即位日)は復活している。
 私は田中正造記念日としたい!十一月三日は田中正造の誕生日。(旧暦。天皇は新暦)最大の公害は「戦争」と「原発」だという。「戦争」について、正造は日清戦争に賛成したが日露戦争には反対した。また、「原発」につながる近代公害第一号が足尾銅山鉱毒事件。正造は被害民とともに真正面から戦った。その鉱毒事件・谷中村事件とは何であったのか。
 足尾銅山の鉱毒(煙害と毒水)によって渡良瀬川流域三十万人が苦しんだ。日清・日露戦争を勝ち抜き西洋列強に追いつかんとした明治政府は、鉱毒被害をほぼ無視し銅山を温存した。生命の危機まで追い詰められた被害民は、政府への請願「足尾銅山操業停止」運動(大押出し)を何度も行った。政府は、多数のリーダーを兇徒など刑事犯として監獄へぶち込んだ。正造は明治天皇へ直訴する。盛り上がった世論に政府がとった措置は、被害民運動をつぶすこと。鉱毒は洪水とともに押し寄せる。「渡良瀬川の改修工事と最下流の谷中村を遊水池にする」政府方針を出す。運動は分裂し谷中村は孤立した。日露戦争のさなか正造は谷中村へ移住し反対運動に専念。栃木県会は「臨時土木費」名目で谷中村買収を決議し土地買収で村民を追い出す。谷中村民の意思は無視され廃村、藤岡町に強制合併された。「土地収用法」を適用しても応じない村民の家屋を強制破壊。残留民十六戸は仮小屋を作り踏みとどまる。政府と県は早くから谷中村の堤防破損個所を修理せず放置して谷中村を水没させた。毒水攻め、食料攻めだ。些細な仮小屋工事も、死者の谷中村墓への埋葬も「河川法違反」。正造死後、正造の祠(ほこら)を庭に建てても違反。すべて、「法律」「勅令」等による措置だと。
 ことし、集団的自衛権が閣議決定変更で容認され、安保関連法が強行採決された。いずれも憲法学者こぞって立憲制の否定・憲法違反だと断じている。
 東電福島原発事故から四年、いまだ十一万人の避難者がありながら原因究明もなく、誰一人責任をとらず、原発再稼働と海外輸出に政府・業界はまっしぐらだ。
 なぜこうなったのか。政・官・業・学(現在は、司法・労組・マスコミまで拡大)の癒着による①原因究明の不作為・遅延②被害の矮小化・未調査③被害者切り捨て・棄民化④加害責任の否認・加害企業温存⑤経済あっての国家という構図である。根底には『戦争体認』がある。
 正造の戦いの武器は、大日本帝国憲法。亡くなる年の最後の演説会でも憲法発布勅語(前文)を大きく張り出した。「朕(天皇)は、臣民の権利及び財産の安全を貴重し及び之を保護し…」。
近代憲法である限り「人民の権利保障」が前提にある。
 憲法を無視し法律を矢玉に人民を的にした「亡国」の圧制は許せない。「日本を見んとせば谷中村を見よ』と正造はいう。谷中村を守ることは憲法をまもること。だが、人民は谷中村事件から何も学ばなかった。逆に政・官・業・学は悪政の指針を身につけた。今も解決に至らない「チッソ水俣病」等の公害地域や、「沖縄辺野古」への政府の棄民・分断政策が足尾銅山鉱毒事件・谷中村事件と見事に重なり合う。
 戦争は銅増産優先、鉱毒被害無視、被害民運動を弾圧する。戦争は弱者を切り捨てる。世界共通だ。この鉱害闘争の現場から正造は戦争反対、軍備全廃論にたどり着いた。軍備費を青年の留学費に変え外交によって戦争をなくせと。
 晩年の正造は明治国家と帝国憲法の限界に気づき、「今の憲法、法律、教育のすべてを全廃して、天神を基とする〝広き憲法〟を設けるべし」と主張した。私たちが手にした「平和憲法」がまさにそれだろう。
 だが、谷中村事件から学ばず、戦争責任も原発事故責任も未だあいまいなままに過ごしてきた我々。
 田中正造は明治時代の「古い戦い」をしたから『明治の枢』に入れられたのか。だが、平和憲法がありながら明治精神・戦争体制へ復帰せんとする勢力に押し負けている我々こそ「明治の枢」へ片足を突っ込んでいるのかもしれない。
 劇団東演の『明治の枢』を見て、誰が「正造を叱る言葉」をかけられるか。
 戦後最大の危機を百年前に見通していた正造はいう。
〝人民は、人民の経験を信じて一歩譲るべからず〟

(田中正造研究家)

赤上剛氏の著書に、『田中正造とその周辺』がある。

2015年8月29日 (土)

アメリカ先住民と、継続するアメリカ焦土作戦

Finian CUNNINGHAM
2015年8月28日| 00:00
Strategic Culture Foundation

ナバホとアパッチは、19世紀末に征服された最後の偉大なアメリカ先住民ネイションだ。ワシントン指揮下のアメリカ軍の焦土作戦によって諸部族が虐殺された。定住地や放牧用地の破壊は、諸部族の立ち退きに、そして彼らの最終的服従に、大いに貢献した。

キット・カーソン大佐は、残っていた反抗的なインディアン・ネイションに対する“白人”絶滅戦争の先駆者の一人だった。ナバホとアパッチは、北米大陸南西部で何千年も平然と暮らし続け、そこは新たに作られた“アメリカ合州国”で、今のアリゾナ、コロラド州、ニュー・メキシコ州とユタ州となった。

現在、ナバホと親類のアパッチは、またしても危機にひんしている。今回は、銃や作物の焼き払いによってではなく、工業的採鉱で引き起こされた鉱害によってだが。

今月始めの8月5日、コロラド州の廃坑になった金鉱から膨大な量の有毒廃水が漏洩し、いくつかの主要河川に流れ出て、世界中で見出し記事になった。汚染された河川が、ナバホ族の人々が、生活上、それに依存しているフォー・コーナーズ地域の灌漑と飲料水に極めて重要であることは、ほとんど報道されない。

約1100万リットルの有毒な水が、どっとアニマス川に流れ込み、それが更にサンフアン川と、コロラド川へと流れ込んだ。流出の結果、長さ150キロ以上の川の水が、鮮やかなオレンジ色の汚泥と化した。主な危害は、ヒ素、カドミウムや鉛等、有毒金属の危険な水準だ。これらの金属は、現在は廃坑のゴールド・キング鉱山で、かつて工業用浸出剤として使用されていた。流出下流の農民は、作物の破壊や、家畜の群れの中毒を避けるため、用水路の閉鎖を強いられた。だが、灌漑を止められた彼らの作物は、結局、夏の焦げるような暑さでしおれ、だめになりつつある。

重金属が最終的には、飲料水の地下水源に染み込んで、人間への汚染の計り知れないリスクとなることも懸念されている。

汚染された地域は、アリゾナ州、コロラド州、ニュー・メキシコ州とユタ州の州境に接するフォー・コーナーズ地域だ。最も危険にさらされている地域共同体は、そこに住み、川に依存しているナバホ族だ。

連邦環境保護庁(EPA)は、鉱害問題は弱まり、河川水の有毒金属濃度は、今や安全レベルにまで低減したと主張している。それでもなお、影響を受けた地域社会では、こうした金属による危険が、将来、洪水時期に河床堆積物がかき立てられて再発するのではないかという懸念がある。彼らの土地が、今後、何十年も汚染されたままになるのではないかという恐れだ。結局、1100万リットルの有毒金属が、跡形もなく消え去るわけがないのだ。

連邦当局は、アニマス川毒物流出を、隠された目的の為に利用しているのではあるまいかという疑問がある。つまり、ナバホ族を、彼等古来の土地から立ち退かせるのに。

隠された狙いが推し進められていると信じるに足りる、いくつか不穏な理由がある。そもそも、EPAは、調査班の一つが、コロラド州、シルバートン近くのゴールド・キング廃坑で作業していた際、流出を引き起こしたことを認めている。どうやら、鉱山の毒物ため池は、かなりの期間、漏れていた様子で、EPAが調査班を派遣したのだ。調査作業の結果、ため池が土手を突き破り、恐ろしい毒性物質を大量放流してしまったのだ。

二つ目に、現地情報筋によれば、EPAは、 最初の漏洩報告に途方もなく怠慢で、緊急警報を少なくとも一日遅らせた。EPAは惨事に対する責任を隠そうとしていたのだろうか?

疑惑の三つ目の原因は、連邦当局がその後、流出点下流で影響を受けた地域社会に、将来の賠償請求に対する権利放棄文書に署名させるべく素早く動いたことだ。EPAは、明らかな総力を挙げた取り組みで、各家庭から権利放棄証書を得るべく、戸別訪問をしたと報じられている。

ナバホ・ネイション議長ラッセル・ビゲイや他の長老達は、もし予期しない損害が将来生じた場合、地域社会は、連邦政府からの更なる補償を要求するあらゆる権利を喪失することになるので、EPAの法的文書には署名しないよう、各家庭に促している。そして、もし人々が、長期的、潜在的影響で、汚染された土地や地下水の所有者ということになって終われば、使用不能な農地の所有権を放棄する以外、ほとんど選択肢はなくなるだろう。

しかも、この話で極めて重要なのは、巨大採掘企業の権益だ。こうした企業は、アメリカ議会において最も卓越したロビー集団だ。昨年、巧妙なごまかしで、世間一般に気付かれぬ様にして、採掘企業が、フォー・コーナーズ地域の区域で採掘を開始する採掘権を、ワシントンの議会は投票で通過させていたのだ。1950年代以来、地域は、アイゼンハワー政権によって、アメリカ先住民保留地として分類されている為、採鉱事業を免れてきた。

天然鉱物が豊富なフォー・コーナーズ地域を、鉱業ロビーは、何十年間も、いやらしい目つきで見詰めてきた。利益の多い、銅やウランや、他の有価金属の埋蔵量が、地下堆積物中に蓄えられていると見なされている。特に重要なのは、いくつかのナバホ部族居住地であるアリゾナ州オーク・フラットだ。議会の土地交換には、多国籍鉱山企業リオ・ティントが関与している。リオ・ティントは、上院軍事委員会委員長をつとめる、有力なジョン・マケイン・アリゾナ選出共和党上院議員の政治資金主要資金供与者の一社でもある。上院軍事委員会は、兵器産業の軍産複合体や、ウオール街、大手石油会社や鉱業企業と提携している。マケインは、リオ・ティントに、フォー・コーナーズ地域での採掘権を認めた議会投票上の主な大立て者と考えられている。

ナバホの地域社会は、将来の採鉱計画について、確かに決してじっとしてはいなかった。彼らの土地所有権は、大企業に対する頑強な闘いの主題となり、現地の地域社会は、マケインに“インディアン殺害者”で、採鉱企業にとって現代の“偵察”というレッテルを貼っている。

オーク・フラットやフォー・コーナーズ地域にある他の父祖伝来の土地を守るキャンペーンで、ナバホ族は、他のアメリカ先住民ネーションや、アメリカ中の環境保護団体の支援を活性化している。土地収用に対する彼等の抵抗は、採鉱業ロビーや、ジョン・マケインの様な推進派政治家にとって、悩みの種となっている。

そこで、コロラド州とアニマス川における最近の破滅的な毒物流出の話へと戻ることになる。この出来事の全体的な影響が明らかになるのは、これからのことだ。だがフォー・コーナーズ地域下流の汚染は、最終的に、農業と飲料水の水源に影響を与える有毒な物質ゆえに、流域のあらゆる地域社会まるごと自分達の土地を追われる結果となりかねない。

現地活動家やナバホ指導者の中には、既に、EPAの毒物“事故”を現代の焦土作戦にたとえた人々がいる。鉱業の基本的な強烈な動機と、議員連中に対する彼らの報奨が、人々から彼らの土地を奪い、それにまつわる環境保護論者によるキャンペーンを終わらせるという暗黙の目的での、意図的な行為、あるいは少なくとも好都合な対応を示唆するのだ。連邦環境保護庁が、この策謀とされるものに関わっているのは辛辣な皮肉だ。

歴史的前例も極悪な狙いを強く示唆している。ワシントンによる、アメリカ先住民ネーション対策の歴史は、ワシントンに居すわる、大企業に支配された政治家連中が画策する資本主義的搾取のための裏切り、ごまかし、虐殺だ。ワシントンが立案した条約や保留地は、インディアンの土地が資源豊富であることが発見されるやいなや、再三再四、破棄された。

鉄道、牧場や鉱山に道を譲る為に、インディアンが、キット・カーソン大佐と、彼の兵士達によって土地を焼き払われた昔の時代の間違いようがない余韻が感じられる。

現在我々は、もう一つの、そうした相次ぐ北アメリカ先住民追い立てを、今回、南西部諸州の鉱物資源豊富な土地において、目撃しているのかも知れない。これは、先住民に対し、ワシントンが遂行した焦土作戦戦争の継続を示唆している。悲劇的な皮肉は、最新の“闘い”の場が、最後の先住民達が、19世紀末のアパッチ戦争によって隷属させられた、ませにその地域であることだ。

ここでは、より大規模な地球規模というのが適切だ。ワシントンの帝国主義戦争挑発は、その歴史上ずっと、そして世界中あらゆる場所で、生来の営利目的の大企業権益を推進する為、土地に対する戦争と、人々に対する戦争を、常に行ってきたのだ。

1960年代-70年代、枯れ葉剤エージェント・オレンジで、ベトナムを汚染したことは、今後炭化水素を水圧破砕で採掘する権益を、ワシントンが有するウクライナ東部ドンバス地域で、アメリカ傀儡のキエフ政権が、現在クラスター爆弾を使用していることと一致する。これは、このアラブの国で、抵抗を示す人々を追い立てる為に、アメリカが支援し、サウジアラビアが率いる主導する爆撃連合によって継続中のイエメン給水設備破壊とも、一致する。

このアメリカ先住民地域社会が、またしても焦土作戦にさらされているのは、それゆえ決して驚くべきことではない。今回唯一異なるのは、現在は、先住アメリカ人に対する本格的戦争という状況で遂行されているわけでないことだけだ。

だが、その意図と究極的効果は、ワシントン焦土作戦継続における単なるもう一つの出来事として一貫している。

記事原文のurl:http://www.strategic-culture.org/news/2015/08/28/native-americans-and-us-scorched-earth-continuum.html
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最初に事故関連記事「資本主義の社会的費用」を読んだ時は、ナバホの公害被害、正確には、鉱害被害、思いつかなかった。

宗主国支配層の悪辣さ、並の人間の想像を遥かに超える。国の歴史を振り返れば、決して驚くべきことではない。
アメリカン・ドリームという悪夢 建国神話の偽善と二つの原罪

話題の有力議員、「イスラム国」ともパイプを持ち、人質殺害事件の直前、イスラエルで首相と会っていた。

人形峠ウラン鉱害裁判―核のゴミのあと始末を求めて』土井淑平、小出裕章著
放射性廃棄物のアポリア―フクシマ・人形峠・チェルノブイリ』土井淑平
アメリカ新大陸の略奪と近代資本主義の誕生―イラク戦争批判序説―』土井淑平
等を書いておられる土井淑平氏の、2013年3月11日記事の一部を貼り付けておこう。

3 ウソにウソを重ねた動燃=核燃=原子力機構
 まったくの無責任体質の動燃=核燃=原子力機構(日本原子力研究開発機構)は、2004年10月に最高裁から3000立方メートル撤去命令が出た方面地区のウラン残土の自己処理もできず、その一部290立方メートルをアメリカの先住民の土地にある製錬所に〝鉱害輸出〟する有様であった。これは放射性廃棄物処理の自己責任を放棄し、他国に尻拭いを頼む込む破廉恥な行為以外の何物でもない。
 アメリカのウラン鉱山の大半はインディアンと呼ばれてきた先住民の土地や聖地にある。そのアメリカの先住民であるホピ族やナヴァホ族は1991年1月、「国際ウランフォーラム・倉吉」に参加し、わたしたちの案内で方面地区の ウラン残土堆積場を視察して、「われわれの所も放ったらかされた状況は同じだ」と話していた。

放射性物質を含んだ土が日本からユタの沙漠にむかって送り出された

インターナショナル・ウラニウム・コーポレーションがあるユタ州ホワイトメサ地域は、米国先住民が55%を超える土地だ。

土井淑平氏報告、「米帝の核開発と先住民とウラン被曝」

1979年7月 ― というと、あのスリーマイル原発事故から4カ月後のことですが ―ニューメキシコ州のチャーチロックでダムが決壊して1100トンのウラン鉱滓が流出し、コロラド川の支流のプエブロ川に流れ込んで、この川を水源としている1700人のナヴァホ族が被害を受け、汚染された水や草を飲んだり食べたりした何千頭もの羊などの家畜が重度に汚染されました。

停止した採鉱事業に起因する鉱害、宗主国でだけ起きるわけではない。

下野新聞 2013年7月2日記事 永遠に続く公害対策

 東日本大震災では、休止中の「源五郎沢堆積場」の表土が滑り落ち、渡良瀬川から環境基準を超える鉛が検出された。この堆積場を巡っては、55年前に決壊し、下流に鉱毒被害を出した経緯があった。

そして、下野新聞 2015年8月26日 朝刊
正造も激賞 不屈の谷中村民・神原勘之丞に脚光 研究者で高まる注目

 神原勘之丞らの功績に光を当てる第42回鉱害シンポジウム「正造と野木の人びと」が8月30日、野木町友沼のエニスホールで開かれる。
シンポは田中正造や足尾鉱毒事件の研究団体などが主催し、毎年夏に渡良瀬川下
流域で開かれている。町での開催は18年ぶり。
 旧谷中村の強制廃村後、約70戸が隣接していた当時の野木村に移り、抵抗運動の拠点となった雷電神社も移築された経緯がある。
 当日は真瀬宏子町長、渡良瀬川研究会代表の菅井益郎国学院大教授ら6人が登壇。正造や自由民権運動と町の関係のほか、神原、野木村議菅谷丑蔵の功績に光を当てる。
 予約不要。午前10時~午後4時半。資料代千円。

2015年8月22日 (土)

ロシアのカフカスに目を付ける「イスラム国」

Dmitry NEFEDOV

2015年8月19日 | 00:00

エジプトの主要イスラム教当局、エジプト・ファトワ庁による最新報告によると、「イスラム国」(IS)集団は、カフカス、中央アジアと、インドネシアを新兵採用の為の場所としてみている。

この地域には、イスラム教を進行する人々が多数いる。彼等は知識が乏しく、アラブの説教師が言うことを何でも信じがちだ。集団は、中東における新たな領土獲得という主要な任務を遂行する新兵採用を狙っている。ISは、ソーシャル・ネットワークで、プロパガンダを広める為、ロシア語部隊を設置した。ISは最近、ロシア連邦内の北カフカスに、行政区画(ウィラーヤ)の設置をしたと宣言する挑発的な声明を出した。プロパガンダ部隊は、ロシアや近隣諸国から、イラクやシリアに入り込んでいる過激派のビデオを発表した。「イスラム国」イデオロギーには、社会ネットワークで、人々に語りかけ、神学教育を強化することで対抗しなければならない。これは極めて重要な任務だ。北カフカスのイスラム教宗教的権威は、まさにそれを行っている。彼等は、ファトワを出し、人々を教育し、過激派と戦うためにできる限りのことをしている。

その点で“ソフト・パワー”だけでは不十分だ。地下のテロリスト指導者や活動家に対する特殊作戦が地域で行われていると報じられている。最近、ダゲスタンのウンツクルスキー地方で、そうした作戦の一つが行われた。結果的に、隊員達は、ロシアではテロ組織として禁じられているカフカース首長国の指導者、マゴメド・スレイマノフを殺害した。ムハンマド・ハジ・アブドゥルガフロフや、サイド・アファンディ・アル-チルカウイ等の宗教指導者、現地の過激派指導者、カミル・サイドフと、一味の二人を殺害したかどで彼は告訴されていた。スレイマノフの前にカフカース首長国を率いていた元指導者アリアスハブ・ケベコフは、ブイナクスクで、ロシア連邦保安庁の特殊作戦部隊に殺害された。

ロシア南部の過激派集団は、特別な戦術を駆使している。全く同じ連中が“首長国”や“戦線”をとっかえひっかえして、活動しているのだ。彼らの主な任務は、ある地域を不安定化することだ。それは、シリア国内の過激派が用いる手法や、それほどではないにせよ、アフガニスタンやイラクで活動している過激派の手法と似ている。現在、テロ活動は、ロシアを経済的に押さえつけようとする取り組みを含め、ロシア封じ込めの手段として、ますます頻繁に利用されている。これを行う方法の一つは、北カフカスの共和国諸国に投資し、欧米に代わる、パワー・センターとして活動しようとしている潜在的な貿易、経済パートナーに圧力をかけることだ。

中東の軍事紛争は悪化している。ロシアを出て、シリアやイラクに行った連中の一部が戻りつつある。これは、ロシアを国境沿いの紛争で包囲し、カフカスで、弱点を発見するという戦略に従って活動する連中の権益に役立つ。その為に、連中は、大衆扇動や、ロシアが、対「イスラム国」闘争に、十分真摯に取り組んでいないと非難するという手段に出ている。例えば、アメリカ国務省は、そう語っている。

アメリカが率いる反「イスラム国」連合は、むしろ奇妙な戦争をしている。予期しないことが次々と続く。一方で、アメリカの無人機が、シリアを攻撃し、一方、公式には、この集団は、アメリカ合州国が戦争をしているとされる敵であるにもかかわらず、アメリカ軍とテロ集団の戦士達には緊密なつながりがあると報じられている。例えば、“アメリカのヘリコプターが、西イラクのISテロ集団支配下にある地域に着陸し、何人かのIS司令官達を乗せて、不明の方向に向けて飛び去った”。全く同じ情報源が、サラーフッディーン県の「イスラム国」支配下にある山岳地帯に“アメリカ・ヘリコプターが着陸した”と報じている。アメリカのヘリコプターは「イスラム国」に支配されている地域にしばしば着陸している。今年、アメリカのヘリコプターが、ISテロリストの司令官達を地域から連れ出す為、キルクーク南西にある「イスラム国」が支配する地域ハビジャに飛行した。地域はアメリカの航空保安施設によって、しっかり監視されている。この事実は、インターネットで得られるよう定期的に公開されている画像で確認された。

民間調査会社ストラトフォー情報幹部でCEOのジョージ・フリードマンは、注目に値することを語っている。彼によれば、「イスラム国」は、アメリカ合州国にとって、死活的重要性がある問題ではない。実際、特に、アメリカ特殊部隊が、国際テロを育成する為、実に長年行ってきた取り組みを考えれば、問題などありえない(例えば、著者が、中東、旧ユーゴスラビア、北アフリカや他の場所におけるアメリカ特殊部隊の秘密工作について書いているマイケル・スプリングマンの新刊書も参考になる)。

「イスラム国」の出現は予想を上回っている。元アメリカ国防情報局長官のマイケル・T・フリンは、かつて、ホワイト・ハウスが、シリアで活動している聖戦戦士を支援するという意図的な決定をしたことを明らかにした。

2012年8月、「イスラム国」が脚光を浴びる一年前、サラフィー・ジハード主義者、ムスリム同胞団や、地域におけるアルカイダ支部を含む寄せ集め過激派集団の中で、アメリカが支援するシリア武装反抗勢力が支配的であることは、はっきり分かっていた。中東で、様々な武装反抗勢力 (より正確にはテロ集団)を用いてアメリカが作り出した戦術同盟は、地域におけるアメリカの敵国、シリアやイラン等の国々を弱体化させるのが主目的なのだ。

現在、この不安定化戦術は、ロシアのカフカスにまで広がっている。あれやこれやのテロ集団(カフカース首長国、アルカイダやら、「イスラム国」)に対して、どのようなレッテルが使われるかは重要ではない。彼等は全て、各宗派間で署名した和平協定に違反し、伝統的な宗教の権威を損ない、武力挑発を行う為の、地域で波風を立てることを狙って画策された活動に参画するよう利用されているのだ。元フランス外務大臣ローラン・デュマが証言した様に、恐らく、アラブの春が始まる二年前に、シリアに関して、既に決定が行われていたのと全く同じような決定がなされていたのだ。

記事原文のurl:http://www.strategic-culture.org/news/2015/08/19/islamic-state-eyes-russian-caucasus.html

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「日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました。」という言葉が談話にあったとは知らなかった。読む気力全く起きないので。

ロシアに、わざわざ喧嘩を売る異常な精神構造。宗主国の指示通りというのならわかる。

鉱害と戦った田中正造と大違い。

日清戦争当時は戦争支持派だった田中正造、日露戦争時には、反戦思想を鮮明にしている。軍事予算は、学生の留学に振り向けろともいっている。原発災害がおさまらない中、宗主国侵略戦争に肉弾を提供する愚行。
田中正造、鉱毒被害を放置したまま、戦争推進する愚を批判している。談話などと違い、110年たってもそのまま通じる、実の発言。

田中正造文集(二)谷中の思想 にある明治37年11月26日付け三宅雄二郎宛て書簡の一部を引用しよう。日露戦争は1904年(明治37年)2月8日から1905年(明治38年)9月5日。

戦争の罪悪は論を要せず。然れども真面目の志士が学文上の見解よりして、戦争は必要なりとする事ありとするも、我国の内政の如き、公盗横行の政府にして妄りに忠直の人民を殺すことを敢えてするものの戦争を奨励するに至りて言語道断なり。
現在の形勢、戦争の勝敗よりは寧ろ戦争に死するものよりは寧ろ内地に虐政に死するもの多からん。虐政に死するものもの即ち名誉の戦士なりと云わざるを怪しめり。彼の人為の大加害者あり。鉱毒地の惨状を代表せる谷中村問題の如き同国同胞人に捨てられる、そもそも何んの故なるをしらず。今にして政府は詐術の報告をなして国民を欺きて憚らず。且この窮民を虐待し、甚だしきは出兵者の父母妻子をも政府の毒手を以て殺すものなり。長次男は戦争場に敵に殺され、その父母は我崇敬する政府の毒手に殺さるるとせば、これ一戸中内外二様に死者を生じるなり。但し一般出兵軍人中窮困者あり。然れども未だ政府が手を下して軍人の父母妻子は殺さざるなり。殺さるるもの独り鉱毒地方の貧者のみなるか。
政府中官吏多し。中にはこれを怒る義憤の官吏もあるべきに今は陽にこれを見ず。議員中にこの義憤者あるべきにこれを見る事甚だ稀れなり。学士中この義憤者あるべきに御存じの如くこれまた甚だ稀れなり

2015年8月13日 (木)

資本主義の社会的費用

Paul Craig Roberts
2015年8月11日

事業の全費用を負担している企業は、たとえあったにせよ、ごくわずかだ。企業は費用の多くを、環境や、公共部門や、遥か遠くの第三者に押しつけている。例えば、現在、コロラド州の鉱山から、約1100万リットルの毒性廃水が流出し、二つの川を下り、ユタ州やパウエル湖に向かって流れている。これらの川に頼っている、少なくとも7都市の水道システムが停止している。廃棄物は、民間企業が放置したもので、廃棄物は、環境保護庁が誤って流したというが、これは本当かも知れないし、鉱山をかばっているのかも知れない。もしパウエル湖貯水池が汚染されてしまえば、第三者が負担する鉱山の費用は、鉱山操業時の総生産金額を越える可能性が高い。

経済学者は、こうした費用を“外部費用”あるいは“社会費用”と呼んでいる。鉱山は、汚染物質を生み出すことで、利益を得たが、汚染物質の費用は、利益の分け前を得ていない人々が負担する。

規制されている資本主義でさえ、こういう風に機能しているのだから、野放し状態の資本主義がいかに酷いものか想像できよう。その結果、我々がいまだに苦悩しており、更に問題が起きるだろう、規制されない金融制度のことを考えるだけで良い。

全く逆の膨大な証拠があるのに、政府の干渉から解放されれば、最高の製品を、最安の価格で生産して、消費者に貢献するのだという資本主義に対する連中の夢想的な概念に、リバタリアン連中は、しがみついている。

そうであればよいのだが。

進歩主義者も、リバタリアン連中のロマン主義に対応する彼等なりのものを奉じている。進歩主義者は、政府を資本家連中の強欲から国民を守る白い騎士だと見なしているのだ。

そうであればよいのだが。

誰もが、そして何より確実に、リバタリアン連中や進歩主義者達は、ジェフリー・セントクレアの著書、Born Under A Bad Sky (2008)を読むべきだ。セントクレアは、魅力的な作家で、彼の本は、多くのレベルで有益だ。もし、アメリカ西部の川でボート体験をしたり、危険な急流に挑戦したり、蚊やガラガラヘビの中でキャンプをしたりという経験がなければ、セントクレアの本で、まるで体験しているかのごとく、こうした人生の側面を体験でき、同時に、国立公園局、農務省森林局や土地管理局における腐敗によって、製材企業、採鉱企業や牛の牧場主達が、国有林や国有地を略奪することで金儲けをする結果になっているのかも学ぶことができる。

採鉱業者、製材業者や牧場経営者に与えられる公的助成金は実に法外で、公共の利益 連邦準備金制度理事会や財務省が“大き過ぎて潰せない銀行”に与える助成同様有害だ。

進歩主義者もリバタリアンも、原生林伐採や、絶滅危惧種や希少種の生息地破壊をする製材会社に助成する為、農務省森林局が、一体どの様に、前人未踏の森林に道を建設しているかに関する、セントクレアの説明を読む必要がある。公共から、民間の手へと、富を移転する為に、一体どのようにして、より価値がある国有地と、価値の低い土地が交換されているのかを、我がロマン主義者達は、学ぶ必要がある。牧場経営者達に、国有地の利用を認めていることが、生息地破壊や、川岸や、水生生物の破壊をもたらしていることを、彼等は学ぶ必要がある。連邦の監督官庁のトップそのものが、国民の為にではなく、私企業の為に働く、製材、鉱業や、牧場経営者の工作員であることを理解する必要がある。上院議員や下院議員連中は、軍安保複合体、ウオール街や、イスラエル・ロビーによって買収されているのと同時に、連中は、鉱業、製材や、牧場の権益にも買収されていることを、あらゆる信念のアメリカ国民が理解する必要がある。

この構図中に、公共の利益は皆無だ。

二大貯水池、ミード湖とパウエル湖は、満水時の39%と、52%だ。アメリカ合州国西部が依存している巨大な湖は、干上がりつつある。パウエル湖は、今や、砒素、鉛、銅、アルミニウムとカドミウムを含んだ、約1100万リットルの廃水流入に直面している。汚染された川の氾濫原にある井戸も危機にさらされている。

川をオレンジ色に変えた汚染物質は、コロラド州、アニマス川から、シルバートン デュランゴを通って、ニュー・メキシコ州、ファーミントンのサン・フアン川へと流れ、更にパウエル湖とミード湖へ流入するコロラド川へと流れ下る。

この全ての被害が、たった一社の資本主義鉱山によるものだ。

昨年11月、クリス・スチュワート下院議員(共和党 ユタ州)が、彼の法案を下院で成立させた。スチュワートは、資本主義の為に、いやな仕事をこなす人物だ。彼の法案は“資格要件を満たす、自立した科学者達が、環境保護庁(EPA)に助言するのを防ぐべく作られている。有資格の学者達は、該当する科学的専門知識を持っているか、いないかわからないが、彼らの雇い主が聞きたがっていることを、EPAに語ることで給与上の恩恵を受ける業界関係者に置き換えられるのだ。” http://www.iflscience.com/environment/epa-barred-getting-advice-scientists

スチュワート下院議員は、これは科学的事実と業界利益の釣り合いの問題だと語っている。

おわかりいただけただろう。

Paul Craig  Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the WestHOW AMERICA WAS LOSTThe Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/

記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2015/08/11/social-cost-capitalism-paul-craig-roberts/

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本の山から『原発はやっぱり割に合わない 国民から見た本当のコスト』大島堅一著を発見。104ページに、「原発の社会的コスト」がという見出しがある。

日本航空123便墜落事故から30年。
辺野古移転問題協議の当日、沖縄で、米軍ヘリ墜落。
沖縄国際大学米軍ヘリコプター墜落事件は、2004年8月13日
しかも今回は、陸自中央即応集団エリート隊員が搭乗していたという驚き。

IWJ 8/12夕方5時からの岩上安身氏による日本共産党小池晃副委員長インタビューは圧巻。大本営広報部の洗脳番組と雲泥の差。戦争法案成立に先立って、自衛隊内で、今後の方向性を研究しているという、とんでもない状況むき出し。

今日にも早速、昨日の小池議員インタビューの模様を、19時から再配信します! 見逃した方はぜひ、この再配信をご覧下さい!配信はCh1です!

【Ch1はこちら】
http://iwj.co.jp/channels/main/channel.php?CN=1

 再配信も見逃してしまった、もう一度見返したい、という方は、IWJの一般会員であれば1カ月、サポート会員であれば無限に、いつでも動画アーカイブをご覧になることができます。また最近は、動画を全て観切る時間がないという人のために、動画とともにインタビューのテキスト要旨も、記事に掲載しています。こちらも会員の方であれば、全編ご覧になれます。

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Paul Craig Roberts氏、社会的費用については、類似題名や同名記事でも触れておられる。趣旨は必然的に似ているが、内容は当然違っている。

今回のコロラド州汚染水流出、「足尾鉱毒事件」そっくり。ただし、あちらの鉱山は、Gold Kingという金鉱山。今はゴーストタウン。谷中村の人々や田中正造のような人物が活動されたかどうか全く知らない。

田中正造といえば、最近、文学座により『明治の柩』がアウルスポットで上演されたが、今度は劇団東演による『明治の柩』が、紀伊國屋ホールで上演される。11/27-12/4 切符前売り開始は9/24。

コスト高をきらった営利企業の怠慢によって、事業所周辺の環境が汚染され、田畑には毒物が浸みこんで荒廃し、広大な村落は廃村と化し、一世紀たっても森林は再生せず、禿山だけが異様に目立つ.....。これは、たんなる寓話でもないし、さりとて東フクシマ・東電事故の周辺地域の未来図でもない。いまから一世紀以上も昔、足尾・古河銅山の鉱毒によって周辺の村が廃村となったあとの、現在の風景である。68ページ

にもかかわらず監督官庁は、古河という一企業の利潤の消滅を、国家の富源の喪失にすり替え、古河の経営の継続を「公利」と言い募ったのである。96ページ

上記は新刊、筑摩選書民を殺す国・日本 足尾鉱毒事件からフクシマへからの引用。

2013年6月3日の資本主義の社会的費用の記事翻訳にも、末尾に余計なことを書いた。一部貼り付けさせていただく。

「社会的費用」という言葉、名著『自動車の社会的費用』宇沢弘文著、岩波新書を思い出す。これだけは手元にある。『環境破壊と社会的費用』(K.W.カップ著)という本を昔読んだ記憶がある。あるいは宮本憲一『環境経済学』。
年代から想像すると、著者が触れているのは、同じK.W.カップでも『私的企業と社会的費用―現代資本主義における公害の問題』あたりだろう。

  • 足尾鉱毒の社会的費用、古河銅山の利益を越えていただろうか?
  • イタイイタイ病の社会的費用、カドミウム生産の利益を越えていただろうか?
  • 水俣病社会的費用、チッソの利益を越えていただろうか?
  • アスベストの社会的費用、メーカーの利益を越えていただろうか?
  • 原発の社会的費用、原発、燃料製造元、電力会社や政治家の利益を越えること余りに明白。
  • 兵器の社会的費用、当然、軍需産業の利益を越えるだろう。

そういう膨大な社会的費用をものともしない多国籍企業に国家支配をまかせるのがTPP体制だ。膨大な社会的費用を合法化するとんでもない怪物。

中略

IWJ

2013/04/16 「事故コスト、事実上は国民負担」―原発ゼロノミクスキャンペーン・シンポジウム 原発ゼロノミクス~脱原発のコストと経済性~

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