イーロン、あなたはマスクか、それとも仮面か?
ロレンツォ・マリア・パチーニ
2024年11月29日
Strategic Culture Foundation
一体誰が想像しただろう。ドナルド・トランプがイーロン・マスクを新内閣閣僚に選んだのだ。これほどアメリカ的なことはない。
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この男は一体どこから来たのか?
「可能性の国」アメリカで、良く語られる小さな物語がある。普通の町の普通の家の普通の白いガレージで普通の若者が良い考えを思いつき、幸運にもその考えが成功して、億万長者になるという話だ。以上、終わり。
マスクも、市場が何を求めているかを予想する能力のおかげで、全てを自分のものにした起業家の一人だ。彼はペイパルが当たると予想し、テスラが当たると予想し、スペースXで大当たりし、ツイッターと出会い、数回クリックするだけで特価で購入し、ヒューマノイド・ロボットが彼にコーヒーを出し、今や選挙に立候補もせずに、アメリカ政府に入閣までしたのだ。最高だ。彼にとって、何一つうまくいかないことはない。
皆、反省しよう。
最近ジェンナーロ・スカーラがこう書いている。「未来的デザインの素晴らしいテスラが、安い版でもたったの4万ドル、買いたいと思わない人がいるだろうか。SpaceXについて言えば、人生で一度は宇宙旅行を計画したことがない人がいるだろうか。それどころか、スターリンクを遣って、世界中の農家が自宅にいながら放牧されている家畜の群れを監視するのだ。だが、我々が知っている通り、この衛星ネットワークは、ウクライナでは違う機能も演じている。これら全てが、まともなものだと我々は言えるだろうか?」
マスクは金融資本の仮面を被って、メディアで成功した本物のビジネスマンだ。彼は新形は以前のものより優れており、より革新的だと説得して、家から家へと未来を売り込む人物だ。彼は国家のために働く人間だが、国家は今や完全に民営化されている。それが国家の実態だ。マスクは通信、宇宙研究、ソーシャルメディア、輸送、ロボット工学、人工知能、金融の分野に参入した。最初から最後まで、全て資本お気に入りの製品だ。アメリカでは、戦略部門は例外なく全て次々私企業のなすがままにされ、その結果、面倒な民主主義問題なしに、恣意的に企業を運営できるようになった。全てを民営化すれば、最高の民間人購入者が、あなた、つまりMr.国家である限り、依然支配できる。
そこで、この南アフリカ、プレトリアの青年は、このような「幸運」に恵まれた可能性はあるのだろうか? あるいは、もっと言えば「単に運が良かっただけ」だった可能性はあるのだろうか?
テスラと電気自動車革命
マスクが設立したテスラは、自動車業界と世界のエネルギー政策に大きな影響を与えてきた。2012年のモデルS導入は、バッテリー電気自動車の採用に向けた急進的転換の始まりで、各国政府に持続可能なエネルギー転換政策の推進を促した。世界中の政治家は、テスラの経済的可能性に惹かれ、自国に同社の工場を設立しようとしてきた。近年マスクが交流した指導者の中には、フランスのエマニュエル・マクロン大統領やトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領やインドのナレンドラ・モディ首相がいる。
テスラの成長において中国も重要な役割を果たしてきた。2018年、テスラが中国子会社の完全な支配権を保持する初の外国自動車メーカーとなることを中国の習近平国家主席が許可した。2019年に上海に工場を建設したことで、テスラは中国での地位を固め、現在では中国はテスラにとって二番目に重要な市場となっている。しかし、BYDなどの地元メーカーの台頭により、テスラの中国での市場シェアはBYDの35%から6%に低下した。
この二国間関係は微妙な力学を浮き彫りにしている。中国は今やテスラなしでも電気自動車市場を独占できるが、マスクは自社の将来に対する中国の経済的影響力を無視することはできない。
マスクの事業のほんの一部に過ぎない自動車に焦点を当てるのではなく、市場部門の飽和によっても支持されている技術研究に焦点を絞ろう。ウクライナのSMOでも、紛争地帯で使用されているテスラの戦車やサイバートラックの写真や動画が流出し、チェチェン指導者ラムザン・カディロフさえ、テスラ本社から遠隔操作で無効化されたと思われる独自のサイバートラックを所有しているなどの例が見られる。豊かな集団想像力の装いを通じて再定義される戦略的幾何学がある。最も貴重で繊細なものが隠されていることが時々ある…誰もが見えるように公開されているが、誰も気づかないのだ。
政治的人物としてのトランスヒューマニズム
マスクのトランスヒューマニズムの目標は秘密でもなければ新しいものでもない。彼は、頭脳チップや人間と機械の接続やヒューマノイド・ロボットなどを「流行」させた人物だ。以前はこれら話題は少数の関係者や愛好家向けだったが、マスクの場合、それらは消費されるメディア商品になったのだ。
2024年1月30日、マスクは人間への初のニューラリンク脳インプラントを発表した。その後、このアメリカ人億万長者は別投稿を追加し、以下のように書いている。「ニューラリンクの最初の製品はTELEPATIAという。これを使えば、考えるだけで携帯電話やコンピューターや、それらを介して、ほぼあらゆる機器を制御できるようになる。最初のユーザーは手足が不自由な人々だ。スティーブン・ホーキングがタイピストより速くコミュニケーションできたらどうなるか想像してほしい。それが目標だ」。次の段階は、これらのチップを人工知能と通信させることだ。そして今我々はトランスヒューマニズム時代を迎えているのだ。
スティーブン・ホーキング博士が書いた通り「人工知能は独自の意志を持つようになるだろう。そして、その目的を実現するのが非常にうまくなるだろう。それが人間の目的と一致しなければ我々は困ったことになる。あなたは悪意からアリを踏みつけるようなアリ嫌いではないだろうが、もしあなたが水力発電プロジェクト責任者で、その地域にアリ塚があり、水を流さなければならないとしたら、アリにとって悲惨な結果になるだろう。人類をアリの立場に置かないようにしよう。AIは人類にとって起きる最高のものになるかもしれないし、最悪のものになるかもしれない。」
AIを全面的に悪者にするのではなく、この種研究の幅広い範囲や、政治的、戦略的影響を理解するのは興味深いことだ。このようなプロジェクトは、民主主義の基準、自由意志による政治参加の基準、人間であるかどうかの定義を完全に再定義する。
マスクのような人物が閣僚に就任したのは全くの偶然ではない。トランプが行った、いわば「プロライフ」選挙宣言の他に、プロライフ人物が新アメリカ大統領の側近の中で何をしているのか疑問に思わざるを得ない。生命倫理と生命法に関する数々の戦いに直面してきた、特に東海岸のカトリック界の「右翼」有権者は、それを乗り越えられるだろうか、乗り越えられないだろうか。性別や中絶や安楽死の問題だけでなく、マスクが熱心な慈善家である実験医学研究に関しても。彼の研究所で行われている研究は、何らかの抗議に直面しても中止されないだろうと、おそらく考えられる。ミシェル・フーコーの『臨床医学の誕生』が思い浮かぶが、パリ時代に、生体に対する完全な制御の導入は必ずしも強制に行われるわけではなく、市民による段階的承認という巧妙な策略を通じて行われ、市民は気づかないうちに「科学」の名の下に、あらゆる倫理違反を正当化し、正当化することさえするようになるだろうと彼は予測していた。
最高の戦略的投資
正直に言えば、事業に関し、トランプはうまくやっている。
選挙勝利の波にマスクを乗せたのは、まさにビジネスマンらしい動きだった。トランプは、おそらく事前に合意していただろう一挙手一投足で、急速な発展段階にある戦略的部門のかなりの部分を掌握した。特にサイバースペースと宇宙領域に関しては、マスクは文句なしのリーダーだ。そのため、2023年9月にはスターリンク管理の一部を国防総省に移譲したが、この動きは、SMO中にドンバスでウクライナがした攻撃の一部を成功させる上で決定的なものとなった。その数か月前、2023年初頭には、この紛争の調停役を申し出て、キーウに寄贈した衛星インターネット端末の費用を国防総省に負担するよう要請したマスクと同じ人物だ。
マスクは、ソーシャル ネットワークを、より洗練されたハイブリッド戦争レベルにまで引き上げ、手法と数でマークザッカーバーグを上回った人物だ。ツイッターを450億ドルという巨額で買収し、Xと改名した。Xはいわゆる「無料」ソーシャルネットワークとなり、コミュニティのルールを変え、内容の検閲を減らした。この側面では勝利を収めた。Xは、優先される政治的なやりとりの場として選ばれ、情報を共有したり見つけたりするための共通広場となるだけでなく、政治的変異の社会学的分析の実験室にもなっている。
たった一つのマスクのツイートがドル相場に変化をもたらし、影響力ある人々や企業や政治家の成功や失敗を左右する可能性があると言えば十分だろう。メディア兵器の使用レベルは次段階に達した。情報戦が、避けられないほど重要な位置を占めるようになった。
そこで全てが変わる。なぜなら重要なのはもはや現実政治でなく仮想政治だからだ。
貿易と金融の面で、中国市場の戦略的重要性から、マスクに対し、北京はある程度の影響力を持っている。ワシントンとの貿易摩擦も考慮して、習近平主席は、マスクをアメリカとの仲介役として見なす可能性がある。例えば、トランプ政権は中国製品への関税を引き上げており、この政策はトランプの二期目でも継続される可能性がある。
重要なのは「イーロン・マスクは一体何者か」ではなく、今日は彼が指揮し、明日は別の人物が指揮するかもしれない権力構造だ。この新たなグローバル・テクノファシズムの力は、比較的強力な国民国家が、グローバル・テクノファシストだというだけの理由で単なる外国人個人と戦うという世界規模のドラマ化により、上手く表現できる。今年8月31日、ブラジル最高裁判所がネットワークXを停止した時が、まさにその例だった。フェイクニュースを拡散し、基本的な民主主義の価値を深刻に侵害し、大勢の人々に対する憎悪や暴力や、更に、殺人を扇動するネットワーク・アカウントの削除をネットワークXの所有者が、拒否したためだ。10年前、たった一人の個人、しかも外国人が主権国家に反対できるなどと人は想像できただろうか。
この文脈で、この大物実業家は習近平主席や李強首相を含む中国高官らと何度か会談しており、潜在的な調停者となる立場にある。更に、いくつかの情報筋によると、北京の利益を優先するために台湾でのスターリンク衛星サービスを制限するようロシアのプーチン大統領がマスクに要請したと伝えられている。テクノロジーの枠をはるかに超えた問題に、マスクがしばしば巻き込まれていることを、このエピソードは反映している。
スペースXは、マスクの世界的影響力のもう一つの柱だ。再利用可能なファルコン9ロケットとスターシップ計画により、マスクは宇宙旅行に革命を起こして、大幅に費用を削減した。スペースXは、アメリカの国家安全保障における同社の役割を強化する国防総省やNASAと数十億ドル規模の契約を結んだことで有名だ。
一方、スペースXが運営する衛星インターネットサービス「スターリンク」は遠隔地や近寄れない地域にも接続を提供するグローバルネットワークだ。マスクがこのインフラを個人的に管理していることが、ウクライナでの使用例のように懸念を引き起こしている。
スターリンクの政治的利用の可能性は、台湾の状況でも明らかだ。台湾と中国の紛争で、マスクが親中姿勢を表明したことを受けて、中国が自国領だと主張する台湾は、マスクへの依存を減らすために独自衛星システムの開発を開始した。
人工知能分野では、マスクはOpenAIやGoogleなどの巨大企業に対抗することを目的とした取り組みのxAIを立ち上げた。xAIの言語モデル「Grok」は政治プロパガンダや危険な活動の指示など、物議を醸す内容を生成する能力に関し懸念を引き起こしている。批判にもかかわらず、マスクはAIに多額の投資を続けて、メンフィスにある世界最速のスーパーコンピューターなど、未曾有の技術インフラを構築しつつある。
人工知能は、イタリアのジョルジャ・メローニ首相やイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相など、マスクと世界的指導者との会談でも繰り返し話題に上る。これはマスクがAI技術を自らの地政学的、産業的取り組みに統合しようとしていることを示している。
テスラやスペースXなど彼の企業の多くが、アメリカで数十億ドル規模の政府契約に依存する一方、国外では習近平やウラジミール・プーチンに近いことから、彼は潜在的な危険にさらされている。マスクの権力は金融だけでなく、戦略的インフラや機密情報を支配する能力にも由来している。彼の行動は予測不可能で、利己的動機によることが多く、これほどの権力を一人の人間に委ねることが果たして適切かどうかという懸念を引き起こしている。
従って、我々は自分自身に、いや自分の性格に問いかけなければならない。今日、あなたはどちらの仮面をかぶるのか? マスクはこの二重性を認識しているようだ。そして、おそらく、それこそトランプが望んでいることだろう。マール・ア・ラーゴでのトランプ側近パーティーからDOGE(政府効率化局)まで彼のキャリアはまだ始まったばかりだ。
記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2024/11/29/elon-are-you-musk-or-mask/
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デモクラシータイムス
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