時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

解説・辺野古基地軍事的不要論(JSF氏の見解にも触れながら)

2023-09-07 19:29:26 | è»æ‹¡

 

 

 

「辺野古」工事費 底なし 埋め立て14%すでに半分近く使い切る 米軍幹部も「ドローンの時代に不要」:東京新聞 TOKYO Web

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画を巡り、軟弱地盤の対策に伴う訴訟で最高裁は4日、県の上告を退ける決定をした...

東京新聞 TOKYO Web

 

先日、東京新聞は
辺野古への基地移転の是非を問う記事を掲載した。

以下、本文を抜粋したいと思う。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

県の敗訴確定で、
難航が予想される地盤改良は動き出す可能性が出てきたが、
工事には2022年度末時点で4000億円以上が投入されている。

防衛省が当初見積もった総工費3500億円を上回りながら、
埋め立ての進捗しんちょく率は14%に過ぎない。

辺野古予算は底無しの様相を帯びてきた。(中沢誠)

 

〜中略〜

難易度が高く、かなりの費用がかかると
見込まれる軟弱地盤の工事が始まってもいない時点で、
すでに総工費の半分近くを使い切ったことになる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

記事の前半部では
工事にかかる費用が膨大であること、ならびに
遅々として進まないことが指摘されている。

 

簡潔に述べれば、基地建設は高額の予算がかかる上に
何年後に完成するかの目処も立たない状況だ。

 

中国に対する抑止力として基地を設定しても、
完成前に攻めて来ない保証はないし、
米軍も普天間基地の運用を前提に活動している。

 

 

「普天間返還」どころか「固定化」に手貸す/宜野湾市長時代 大規模改修工事を容認

 

 

ここで辺野古移設への流れをおさらいすると、
普天間飛行場という施設が街の中央部にあり、

頻繁に問題が発生することから
土地の返還と施設の移転が望まれるようになった。

その候補地として挙がったのが
キャンプ・シュワブに隣接する辺野古だった
という訳だ。

この辺野古への移転が計画されたのが2006年、
17年経過した現在まで県と中央政府との間で
舌戦が展開されている。

(普天間の返還合意は1996年)

 

政治家や官僚が明かす「辺野古」を選んだ理由

 

実のところ、移転先の候補が辺野古であるのに
軍事的な理由は存在しない。

以下、過去の発言を列挙する。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ジョセフ・ナイ元国防次官補
(2015.4.2 琉球新報インタビュー発言)

「沖縄基地は中国に距離が近すぎるため、
 対中国では地理的優位性はなく、むしろ脆弱だ。

 沖縄の人々の支持が得られないなら、
 米政府は辺野古移設を再検討すべきだ。」

 

リチャード・アーミテージ元国務副長官
(2015.4.13 時事通信・インタビュー発言)

「日本政府が別のアイデアを持ってくれば、
 私たちは間違いなく耳を傾ける。」

 

 

柳沢協二・元内閣官房副長官補
(2015.5.10 産経新聞(討論)
 『在沖海兵隊は抑止力か否か』における発言)

「沖縄は中国のミサイル射程内に
 軍事拠点が集中しており非常に脆弱だ。
 ピンポイントで沖縄でなくてはならない軍事的合理性はない。」

 

 

ウォルター・モンデール元駐日大使
(2015.11.8 琉球新報・インタビュー発言)

「我々は沖縄とは言っていない。
 日本政府が別の場所に配置すると決めれば、
 私たちの政府はそれを受け入れるだろう。」

ウィリアム・ペリー元国防長官
(2017.11.18 NHK・ETV特集
 「ペリーの告白~元米国防長官・沖縄への旅~」
  インタビュー発言)


「移転先を決めるのは日本政府。
 我々の視点から言えば、日本のどこであっても良かった。
 

 日本側は沖縄県外の移設にとても消極的だった。
 これは政治的経済的問題であり、
 主に日本人や、日本の政府にとっての問題です。」

 


久間元防衛大臣
(2018.2.8 琉球新報・インタビュー発言)

「イージス・アショアでミサイル攻撃を防ぐとか、
 あんな風になると沖縄の辺野古でも
 普天間でもそういうところに基地がいるのか。
 いらないのか。そういう議論をしなくても
 安保は昔と違ってきている。
 ・・・あんな広い飛行場もいらない。」

 


米国務長官首席補佐官
ローレンス・ウィルカーソン
(2019.5.6 沖縄タイムス 同紙取材に対する発言)

「海兵隊は、自衛隊との共同訓練もできる
 日本本土での訓練を好んでおり、
 移転先としても望んでいた。」

「日本政府はまったく耳を傾けなかった。
 配備先を決めるのは日本政府である以上、
 それが政治的現実だった。」

 


防衛省
(2020.6.18 沖縄等米軍基地問題議員懇談会
 野党議員ヒアリングにおける
 屋良朝博衆議院議員の質問に対する回答)

「防衛白書に『沖縄の地理的優位性とは
 米本国、ハワイ、グアムと比較し
 東アジアに距離が近いこと』とあるが、
 その比較なら日本列島どこでも同じでは?」

 防衛省「他県も同じ。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

まとめると、軍事的不要論の肝となるのは


①中国に近すぎる
 (ミサイルの射程圏内にある)

②海兵隊の拠点は本土のほうが適している

③県内移設は政治的事情による

 

の3点になる。

根拠①を説く場合、他の在沖軍事移設も
射程圏にあることから普天間だけでなく
沖縄の基地そのものが不要だという立場だと
理解しても良いだろう。

こうした見解は専門家からも寄せられている。
国際政治学教授にして安全保障を専攻とする
植村秀樹氏の説明を紹介しよう。


 

 

トピックス「沖縄に米軍基地は必要か? 辺野古新基地建設の合理性はない 「抑止力」の具体的な検証を」

情報労連リポート2016.11月号「トピックス」記事です。

 

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ここからは在沖海兵隊の抑止力について考えたいと思います。

 

米海兵隊は、米国東海岸、西海岸および沖縄に
三つの部隊を配置しています。

沖縄の部隊は唯一国外に配置された部隊で、
最前線の部隊というイメージがありますが、
まったくの誤りです。

沖縄の海兵隊基地には、戦車もありませんし、
兵士を運ぶ船もありません。その船は佐世保にあります。

佐世保に配置された強襲揚陸艦は、
1万8000人いるといわれている在沖海兵隊のうち
2000人しか乗せられません。

この部隊の任務も、朝鮮半島有事の際に
非戦闘員を避難させることであり、戦闘部隊ではありません。

有事の際には、沖縄の海兵隊が
まっさきに駆けつけて戦闘するというのは、
まったくの誤りなのです。


にもかかわらず、
沖縄の海兵隊が抑止力として語られるのはなぜでしょうか。


元防衛官僚の柳澤協二さんは、抑止力に関して
「一種の宗教なんかじゃないかと思うくらい、
 つまり抑止力という『ご本尊さま』に
 疑いを差し挟むことがけしからん」

「そういうことを議論すること自体が
 けしからんという雰囲気」があると吐露しています。


つまり、役に立つか、立たないかわからない
「お守り」と同じで効果の検証が行われないまま、
なんとなく使い続けている。

在沖米軍基地の約75%は海兵隊です。

海兵隊の抑止力をきちんと検証すれば、
大幅な整理縮小が可能になるでしょう。


辺野古の豊かな自然を破壊して、
1兆円規模と言われる予算を投じて、
新しい基地を建設する合理性などどこにもないのです

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

実は在沖米軍の必要性は検証されていない。

重要な指摘であるが、この点もまた
軍事的不要論の根拠になっている。

先述の東京新聞記事の後半部を抜粋する。

 

 

 

「辺野古」工事費 底なし 埋め立て14%すでに半分近く使い切る 米軍幹部も「ドローンの時代に不要」:東京新聞 TOKYO Web

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画を巡り、軟弱地盤の対策に伴う訴訟で最高裁は4日、県の上告を退ける決定をした...

東京新聞 TOKYO Web

 

 

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前泊博盛・沖縄国際大教授「事業の再点検を」

 
 「(辺野古新基地は)何のために造っているのか。
  ドローンの時代には使えない不要な基地だ」
 
今年3月、新基地建設の視察に訪れた
米軍幹部が、周囲に漏らしたという。
 

 

この「辺野古不要」発言を在沖縄米軍関係者から聞いた
前泊博盛・沖縄国際大教授(安全保障論)は、
 
軍事的合理性の観点から
「司法判断の前に、四半世紀前に計画された
 新基地建設は防衛政策上、今も有効なのか再検証は必要」
と説く。
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

論文の基本的作法を述べると、
章や節などのタイトルには「主張」を書く。

この場合、事業の再点検が節の主張であり、
読み進めていくと、これは軍事的合理性の検証である
ことがわかるようになっている。

 

主張→例(専門家の引用、住民の証言など)

これ(↑)は文章作法の基本中の基本であり、
換言すれば、このルールを念頭において文章を
読むのが、読解のコツだと言える。

 

 

 

米軍の対中戦略が激変、辺野古移設が「絶対に必要」ではなくなった軍事的理由 海兵隊は「接近阻止戦略」に転換、戦略環境の変化を認識していない日本政府 | JBpress (ジェイビープレス)

 アメリカ軍普天間飛行場の辺野古移設に反対している玉木デニー氏が沖縄県知事に再選された。日本政府は「日米同盟の抑止力の維持と普天間飛行場の危険性の除去を考え合わ...

JBpress(日本ビジネスプレス)

 

 

 

米元外交官が語った「辺野古移設は、既に好ましくない解決策」(立岩陽一郎) - エキスパート - Yahoo!ニュース

沖縄県の名護市長選で辺野古移設を黙認した現職が勝利したことで安堵している政府だが、実はアメリカ側の雲行きが怪しくなっているようだ。この問題に精通しているアメリカ...

Yahoo!ニュース

 

普天間合意から27年経過した今、
「普天間」への移設は合理的かどうか。

その是非が問われているのは
言い逃れない出来ない事実だ。

アメリカの元外交官と、同件について
話し合った立岩陽一郎氏の言葉を引用しよう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「唯一の解決策だった・・・(返還が決まった)1995年当時は。
 ã—かし今は違う。辺野古は『唯一の解決策』どころか、
 å¥½ã¾ã—くない解決策だ
」

 

私は、驚いて「好ましくない解決策?」ときき返した。
すると、彼は頷いて次の様に言った。

 

「当時と現在では中国の軍事力が全く違う。
 今の中国の軍事力をもってすると、
 米軍基地を沖縄一か所に集中させることはマイナスだ
」

 

沖縄には海兵隊の部隊、航空基地に加えて、
極東最大と言われる嘉手納空軍基地や
原子力潜水艦が寄港する軍港、そして補給基地と、
米軍のあらゆる機能が集中している。

それが逆に米軍にとって
アキレス腱になっているという認識だった。

それは普天間基地の県内移設が
決まった95年当時とは明らかに異なる
中国軍の軍事力がもたらした変化だという。

 

彼は「あくまで個人の見解だ」とした。

 

しかし、普天間基地の問題に長く携わり
現在も安全保障問題に関りを持つ「関係者」の発言だけに
単なる私見と片付けることはできない。

 

しかも、彼は
辺野古移設を推進してきたアメリカ側の人間だ。

 

実は、彼の発言は唐突なものではない。
そうした指摘は日米の専門家から出されている。

 

1つは2016年2月に日米の安全保障の専門家からなる
「日米同盟の将来に関する日米安全保障研究会」がまとめた
「The U.S.-Japan Alliance to 2030: Power and Principle(邦訳「パワーの原則:2030年までの日米同盟」)」だ。以下がその抜粋だ。

 

「長期的には、日米両国は沖縄に集中する負担を軽減し、
 日本全体で米軍を受け入れる責任を共有するという
 前向きな方向に向かうよう努力しなければならない。

 

 そこには、基地の日米の共同利用の拡大、
 米軍部隊の移設、オスプレイなどの
 沖縄配備航空機の沖縄以外の基地への
 ローテーション展開や二国間の共同訓練の増加などが
 含まれるべきである(筆者訳)。

(in the long-term, the two countries must work hard to reduce the concentrated burden on Okinawa and move towards a more positive concept of sharing responsibility for hosting U.S. forces throughout Japan; policies should include increased joint use of bases, colocation of units, rotational deployment of Okinawa-based aircraft such as MV-22s to bases outside Okinawa, and increased bilateral training opportunities)」

 

とりまとめにあたったアメリカ側の中心人物は
海兵隊出身で日米の安全保障問題に長く携わってきた
リチャード・アーミテージ元国務副長官だ。

この提言では辺野古移設に直接触れていないが、
事実上、辺野古移設を否定する内容だ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

辺野古「別の選択肢」示唆 元駐日米大使特別補佐官

 【ワシントン=問山栄恵本紙特派員】駐日米大使特別補佐官として米軍普天間飛行場の移設問題に関わり、日本と東アジア情勢に詳しい米ジョンズ・ホプキンス大高等国際問題...

琉球新報デジタル

 

 

軍事的にも辺野古に移す理由は根拠に乏しい。
これは日本全国から米軍を撤退する意味ではない。

軍事的にも沖縄以外の土地に展開したほうが
好ましいということである。

元在日米大使特別補佐官のホプキンス氏もまた
政治的理由で辺野古以外の道の選択は難しいと
しながらも

「返還合意した19年前とは
 戦力状況が少し変わっている。
 もっと弾力的に軍事力に関する立案ができるはずだ」

とコメントしている。

日本を属国扱いしているようなニュアンスも
感じられるが、少なくとも軍事的には改良の余地が
あるというのが総合的な見解である。

これは集団的自衛権の確立にむけて
安倍政権に圧力をかけたアーミテージも同様である
ことからも納得がいくだろう。

日本を仮想の戦場とおいて、どこに基地をおくべきか。
この点からも辺野古におく意味はないということだ。

 

最後に公平を期するために、
軍事的不要論に対する反対意見を紹介したい。

軍事ジャーナリストのJSF氏は
軍事的不要論について、以下のように述べている。

 

「ドローンの時代に不要」とか的外れすぎて駄目。

 ドローンが登場しようと
 古臭い塹壕が強力に機能している。

 

本記事の記述を読めばおわかりだが、
ドローンがあるから移転は不要とは

誰も言っていない。

要約すれば、25年前とは状況が違う、
中国のミサイルの射程範囲内にある、
本土に移設したほうが米軍にとって都合が良い

の3点に絞られるが、読解力のある人間なら
当然「ミサイルは迎撃可能だ」などの反論をする
だろうし、それ以外の反応はないと思う。

 

ドローンがあるから基地は不要だと
ミサイルの的になるから不要だでは大きく違う。

その後もJSF氏はドローンが登場して
何か不要になった軍事アセットの例がありますか?
無いでしょう?つまり「ドローンの時代に不要」
という主張そのものに根拠が全く無い。

という誰も発言していない主張に対して
反論している。

 

氏の論理に則れば
地雷原の中に基地を立てる計画さえ
合理的と言うことが出来るだろう。

 

重要なのはどこに建てるかであり
この点において変化した状況に応じて
検証・修正せよというのが不要論である。

よって、県外移設という鳥瞰すれば
結局、日本が捨て石になっている構図のまま
である選択肢もまた米外交官、米軍人をはじめ
不要論者は述べることもあるし、辺野古不要論が
そのまま日米同盟の否定につながるわけでもない。

また、先述した通り、中国の攻撃から防衛する
システムを構築すれば移転もまた可になる訳であり
この点から反撃すれば十分、不要論は切り捨てられる。

 

にも関わらず、この点から反論しないどころか
記事の中に書かれている軍事的根拠を知らない
ように振る舞うことから、

JSF氏が実は記事を読んでいないことが
確実に指摘することが出来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

まとめると、氏の中では
不要論の根拠はドローンで代用可という
ことになっているらしく、それは誤読だと
幾度指摘されても「ドローンの時代には使えない」
と書かれているから「言い逃れは不可能」なのらしい。

 

言うまでもなく、ナイやアーミテージは
中国にミサイルを撃たれたらどうするのだ
という話をしている訳であり、JSF氏の主張は
この点を完全に無視している。

 

また「再検証がどうのも意味不明」という箇所からも
他に適した場所があるのではないかという一連の動きに
全くもって無知であるばかりか、そう思うなら何故
最初にそれを指摘しないのだという疑問が生じる。

結局、ドローンがあるから不要だという
誰も発言していない根拠に対して激怒する一方で
現代に応じて計画を修正すべきという本来の主張には
「意味不明」の一言で対処している。

 

 

 

 

基地分散でも沖縄に拠点、なぜ必要 米軍事専門家の見方:朝日新聞デジタル

 沖縄の米軍基地について考えるとき、普天間合意があった25年前と大きく異なるのが、中国の軍事的台頭という安全保障環境の変化です。中国軍の海洋進出に詳しいトシ・ヨシ...

朝日新聞デジタル

 

 

参考までにJSF氏の一連の主張を
貼り付けたが、本来の軍事的不要論を
知らない・・・というか読んでも理解できて
いないことは一目瞭然だと思われる。

(前泊氏や立岩氏などの主張を紹介された上で
 上記のような反応を示しているので)

 

本記事で引用した
東京新聞の記事や立岩氏の文章を読んでもなお
上のような返しをするあたり、本当に理解できて
いないのだと思う。

 

私事で恐縮だが、たまに勤め先に全く
無関係の人間がクレーム電話をかけてくることがある。

その件についてはノータッチだ、
問題の企業に問い合わせてくれ
と答えても「お前たちのせいで苦しんでいるのに」
と、こちらの指摘を全く聞こうとしない。

JSFにはそれと同じ匂いがする。

こうした振る舞いは逆に軍事的不要論を
権威付けはしないだろうか。

そういう意味では、基地移転に反対のポーズを
取りながらもその実、積極的に政府を支持する
朝日新聞は実に見事である。

軍事的不要論に言及しながらも
それを「デメリット」と表現し、返す刀で
基地を置くメリットもあると力説している。

 

 

最近、特に思うのが
こちらの文章を理解しないまま
意見してくる人間が多いということである。

深く追及すると揉めそう
(というか粘着されそう)だったので
大人の対応をしたが、科学という言葉を
濫用して、実際には非科学的な言説を
押し付けているのではないかという主張に
対して、上のようなやりとりをした際には

それ、最初から
言っているんだよな

と内心、感じたものである。

Twitter(X)が短文しか書けないという
ツール的制限があるのも理由にあるだろうし、
私の文章の拙さも原因になっているだろうが、

文章というのは全体で一つにつながっており、
各文はたった一つの主張を裏付けるための
例でしかない。

科学うんぬんの例についても
ある言葉を権威に相手の意見を封じ込める
態度を非難しているという全体の主旨が理解
できれば、容易に伝わるのではないだろうか。

 

先述したように主張→例は
文章作法の基本中の基本であり、それに不慣れ
というのは、要するに読書量が圧倒的に足りないか
論理的思考力が欠けているか、その両方かである。

 

3回ぐらい読み直してから書いてくれ
というのが正直な気持ちであり、それゆえに
あまりTwitterを通じてのやり取りには意味がない
と感じている。

時代遅れであろうが、やはり重要な事を思考する際には
ブログのような長文によるメディアを主軸にするべき
ではないだろうか?

Twitterは情報収集には便利だが、
思考の武器としては役立たずだと思えてならない。


メタヒストリーについての補足説明

2023-06-09 23:24:40 | ãƒ­ã‚·ã‚¢ãƒ»ã‚¦ã‚¯ãƒ©ã‚¤ãƒŠ

 

反転攻勢とは何か①(ウクライナ言説におけるメタ・ヒストリー) - 時事解説「ディストピア」

反転攻勢とは何か①(ウクライナ言説におけるメタ・ヒストリー) - 時事解説「ディストピア」

(社説)巨大ダム決壊国際法無視は許されぬ:朝日新聞デジタル水煙を上げて渦巻く濁流、流されていく家――。目を疑う映像だ。ウクライナ南部の巨大ダムが決壊し、下流に大量...

goo blog

 

前回の記事で私はヘイドン・ホワイトの著作を念頭に置きながら
ウクライナ言説におけるメタ・ヒストリーについて語った。

その際、どうもメタ・ヒストリー概念についての説明が
雑であるように感じてしまい、改めて補足を試みようとした次第である。

 

①クロニクルとストーリー

 

ホワイトの説を理解するには、
まず彼が「クロニクル」と「ストーリー」を対置しながら
考察している点に気づく必要がある。

 

 

首相動静(6月9日):時事ドットコム

午前7時49分、公邸発。同51分、官邸着。 午前7時57分から同8時9分まで、外国人材の受け入れ・共生に関する関係閣僚会議。 午前8時15分から同27分まで、閣...

時事ドットコム

 

 

クロニクルというのは、出来事を
ただ機械的に記述したものである。

イメージとしては首相動静が最も近い。

こうした記述には起承転結がないのが特徴的で、
誰がどう書いても同じ文面になる。

もっとわかりやすく言えば、こういう文のことを言う。

 

qうぇrちゅいおp

 

これはキーボードのQからPまでを左から右に一列に打ったものだが、
時系列順に出来事を記述していくというのはこれに似たものがある。

そこに書く側の主観は介在できないが、
かわりに何かしらの意味を読み取ることは不可能である。

 

 

平家物語 - Wikipedia

 

 

では、ストーリーとは何か。それは起承転結があるものである。
平家物語は好例になるだろう。

「奢る平家が一時的な栄華をほこり、滅んでいく」
というプロットが仏教の無常観に即して琵琶法師が脚色していく。

平家が源氏と戦い、滅亡するという大まかな歴史さえ
あっていれば、あとは無常観というイデオロギーの具体例として
それぞれの法師が、その観念を説明するのに最適だと感じたエピソードを
好きに肉付けしていける。これが「物語」である。

 

分類学- Google 検索

 

ウラジーミル・プロップ - Wikipedia

 

 

②プロット、論証、イデオロギー、喩法

 

始まりがあり、結末がある。
ホワイトは人間が歴史の起点と終点を結びつける所作に
何かしらのパターンがあるのではないかと考えた。

 

いわゆるフォルマリズムという考え方である。

 

犬や馬を生物学的に分類していくように
童話や小説といった物語も分析、類型化することで
ストーリー・テリングの文法を発見していくというものなのだが、

要するに、物語はいくつかのパターンを組み合わせて
創作出来るという主義だと理解すれば良いと思う。

 

ホワイトは、クロニクルからストーリーに変わる際に
4つのプロット形式、4つの論証形式、4つの思想、4つの喩法を
組み合わせて歴史が語られると論じた。

 

このプロット、論証、思想、喩法の総体こそが
メタ・ヒストリーなのである。よって、私が前の記事で述べた
メタ・ヒストリーとは正確に言えば、メタヒストリーの一部ということになる。

 

 

「地獄どころの騒ぎじゃない」貧困のなか…橋の下に“薬物地獄”があった タリバン制圧1年のアフガンを緊急取材|TBS NEWS DIG

 

アフガニスタンを例に説明してみる。

 

ホワイトによれば、あらゆる歴史は
ロマンス劇・悲劇・喜劇・風刺劇のいずれかのプロットを取る。

 

それぞれの説明は長くなるので割愛するが、
いずれの劇も「結末が決まっている」という点では共通している。

この結末にむけて、予定調和的にエピソードが配列されるのを
念頭において、アフガン報道に目を向ければ

これはホワイトの言うところの「悲劇」を描いたものになる。

 

悪の秘密結社タリバンに正義のヨーロッパが負けた歴史として
叙述されるので、その筋書きに合わないエピソードは
はじめから挿入されないし、報道のされ方も「地獄」という
否定的な「比喩」をふんだんに使用したものになる。

 

 

 

他方、これをアメリカに反感を抱く現地民から
伝えると、これは悪の帝国アメリカから母国を守った喜劇になるので、
その映像(大きく言えば、これは「比喩」に相当する)も
喜びに満ちた人々の姿が大きく映りこむことになる。

言葉もまた「解放」「独立」といったものが選ばれ、
そこにはTBSが用いる「制圧」とは真逆の意味が与えられるわけだ。

 

 

当然、悲劇というプロットを借りた報道からは
多くのエピソードがこぼれ落ちることになり、

そこでは私達と同じ人間の心を持ったタリバンの姿は
完全に歴史上から消滅する。

代わりに在るのはフェミ団体に威嚇射撃する
悪の人権抑圧集団、獣(けだもの)と化したタリバンである。

「タリバンと一緒にお茶を」というタイトルの映像が作られることは
 決して無い。

 

(私は、しばしば須賀川TBS記者が現地のアフガン人、
 特にタリバンを人間として描こうとしないことを非難しているが、

 それはタリバン政権の否定的な部分だけを抽出して語る論法が
 結果としてタリバンの持つ人間性を無視することにつながっている
 からである。

 しかも、同記者の場合、タリバンの中で女性教育にも理解がある
 人間を穏健派と表現し、厳しく禁じようとする強硬派と対置して
 語る傾向がある。

 それは黒人奴隷を「良い黒人」と「悪い黒人」に分けて
 前者を称え後者をけなす奴隷主と何ら変わるものがない。

 エゴイズムに立脚した二元論なのである。)

 

Afghanistan, China, Pakistan urge release of overseas Afghan frozen assets

Afghanistan, China, Pakistan urge release of overseas Afghan frozen assets

No country has yet recognized the Taliban government and their rule over Afghanistan.

PressTV

 

 

アフガニスタンで貧困拡大も、国連支援は減額

アフガニスタンで貧困拡大も、国連支援は減額

世界銀行が年次報告の中で、アフガニスタンにおいて貧困が拡大しているとしました。

Pars Today

 

問題はタリバンの動物化に伴って、
市民の生きる権利すら蔑ろにされている点にある。

アメリカやEU諸国による制裁や支援打ち切りによって
アフガニスタンでは飢餓と貧困が拡大するばかりだ。

それらを正当化しているのは
タリバンによる「女性の迫害」である。

当然、飢餓や貧困の被害者の中にも女性はいるのだが、
これは須賀川記者を始めとした西洋人の目には映らない。

タリバンと同様か、それ以上に女性を迫害している
西洋人の姿は、彼ら自体が撮り手になることで、
映像から完璧にカモフラージュされている。

 

比喩とは2つ以上の対象の間に共通点を見つけ、
結びつける行為を指すが、

「人権抑圧」という言葉も大変抽象的なものであり、
 それはAとBとを結びつけるものだ。

 

これはホワイト的に言えば「提喩」に該当される。

 

本来、女性の迫害というものはどの国もやっているものだが、
人権抑圧という比喩を用いることで、その行為は
タリバンという一つの対象と強く結びつけられ、
その他の集団と切り離される。

こうした一つの結末にむけて誘導する叙述が
比喩の用い方のレベルからして存在しており、
その制約から抜けることは困難である。

ホワイトが論じていることは
概ねそういうものだと捉えておけば、
とりあえずはOKかと思われる。

(実際には、もっと深い話をしているし、
 だからこそ半世紀を経ても古典として評価されているのだが、
 深く踏み込んだ話をすると逆に混乱を招く可能性があるので
 興味がある方には翻訳書を購入し、読破することを勧めたい)

 

もちろん、こうした制約からは
いわゆる親ロシア的な人物からも抜けられることはないのだが、
先のアフガンの映像のように、西洋的視点が持つ植民地主義的側面を
暴くものも多く存在する。

制約を受けている事自体に問題があるのではなく、
何のために誰を描こうとしているのかを知ることが重要なのである。

次回、ベルゴロド州の攻防を事例に
反転攻勢なるものについて論じるつもりであるが、
もしかするとその前に「世界観」についての説明を加えるかもしれない。

メタ・ヒストリー同様、こちらの説明も不十分だったからである。

ただ、なんとなくのレベルで伝わっているような気もするので
論文でもあるまいし、省略して話を進めるかもしれない。

 

その辺はフォロワーの反応を見て考えることにする。


反転攻勢とは何か①(ウクライナ言説におけるメタ・ヒストリー)

2023-06-08 20:01:05 | ãƒ­ã‚·ã‚¢ãƒ»ã‚¦ã‚¯ãƒ©ã‚¤ãƒŠ

 

(社説)巨大ダム決壊 国際法無視は許されぬ:朝日新聞デジタル

(社説)巨大ダム決壊 国際法無視は許されぬ:朝日新聞デジタル

 水煙を上げて渦巻く濁流、流されていく家――。目を疑う映像だ。ウクライナ南部の巨大ダムが決壊し、下流に大量の水が押し寄せている。意図的な破壊行為だとすれば、重大な...

朝日新聞デジタル

 

 

6月6日、ロシア領ヘルソンに位置するカホフカ水力発電所が
攻撃を受け、一部が破壊された。

これを受けて、メディアは絶好の機会とばかりに
「ロシアの蛮行」を喧伝している。

 

以下に朝日新聞の社説を抜粋しよう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

国際条約は、ダム、堤防や原発など
「危険な力を内蔵する工作物」への攻撃を固く禁じる。

 

ウクライナとロシアは、互いに
相手が意図的にダムを破壊したとして非難の応酬に終始している。

だが一義的に真相解明の責任があるのは、
昨年来ダムを不法に占拠し続けているロシアだろう。

根拠を示さずに
ウクライナを非難する姿勢は説得力を欠く。
国際的な調査団の受け入れなどを検討するべきだ。

 

今回の決壊は、ウクライナ側が
占領された領土の奪還作戦に着手したのではないか
と見られるタイミングで起きた。

何者かが意図的に洪水を起こして
軍の行動を妨害しようとした可能性も現時点では否定できない。

 

ロシアによるウクライナ侵略では、
非戦闘員の虐殺、病院や避難所への攻撃、
住宅地への焼夷(しょうい)弾攻撃、捕虜の虐待や拷問など、
恥ずべき戦争犯罪が繰り返されてきた。

占領地からの子供たちの連れ去りでは、
国際刑事裁判所がプーチン大統領に逮捕状を出した。

 

ロシアはただちに違法な侵略をやめ、
戦争犯罪の処罰に応じるべきだ。

 

理不尽な非人道的行為に苦しむ
ウクライナの怒りは十分に理解できる。

とはいえ、国際規範を守る責任が
ウクライナ側にもあるのはいうまでもない。

すでに指摘されている対人地雷使用などの問題にも
真摯(しんし)に向き合うべきだ。

 

何より憂慮されるのが、攻防が激しくなり、
規範順守への歯止めが利かなくなることだ。

 

違法な侵略を食い止め、撃退を目指すウクライナを、
国際社会が支えるのは当然だ。

一方で熾烈(しれつ)な破壊と殺戮(さつりく)を
終わらせるための外交的な働きかけを、
関係国は一層強める必要がある。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

本文の8割以上はロシアへの非難に割かれている一方で、
ウクライナの対人地雷使用については

 

理不尽な非人道的行為に苦しむ
ウクライナの怒りは十分に理解できる。

とコメントした上で、一言の箴言で済ませている。

 

カナダ人ジャーナリスト、
エヴァ・バートレットは2022年8月の時点で
ウクライナ軍による対人地雷攻撃について言及している。

 

 

14 Year Old Is One of 87 Donbass Civilians Maimed By Petal Mines Fired By Ukraine

 

地雷をばら撒き、市民を負傷させる行為は
理不尽極まり「ある」のだろうか?

 

恥ずべき戦争犯罪ではないのか?

 

朝日の社説は、
あたかもウクライナが暴走をしていないかのような
書き方をしているが、それは事実に大きく反するし、

https://youtu.be/JlaDoo5tT9E


イギリスの「フォーブス」のように
同犯罪をロシア軍の仕業として報道した動きに
対しても、厳しく追及する義務があるだろう。

 

 

国連監視団 ウクライナでロシア人捕虜に電気ショック拷問が行われていた

国連監視団 ウクライナでロシア人捕虜に電気ショック拷問が行われていた

国連ウクライナ人権監視団のマチルダ・ボグナー代表はジュネーブでのブリーフィングで、ウクライナ治安部隊がロシア人捕虜を拷問した事実を明らかにした。

Sputnik 日本

 

 

こうした非対称の歴史叙述は全般的なものである。

例えば、朝日の言い分によれば
ロシア軍は捕虜の虐待という恥ずべき戦争犯罪を
繰り返していたそうだが、他方で朝日は国連も認めた
ウクライナ軍によるロシア人捕虜虐待には一切、語らない。

 

 

 

国連が、ウクライナ軍による戦争捕虜の拷問や処刑について報告

国連が、ウクライナ軍による戦争捕虜の拷問や処刑について報告

ウクライナにおける国連人権監視団が、同国による裁判なしの戦争捕虜の処刑について明らかにしました。

Pars Today

 

この件について、イランメディア、
ParsTodayの記事を引用し、朝日のそれと比較してみよう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ウクライナにおける国連人権監視団が、
同国による裁判なしの戦争捕虜の処刑について明らかにしました。

 

ロシア・タス通信によりますと、
ウクライナの国連人権監視団のボグナ団長は15日火曜、
スイス・ジュネーブでビデオ形式の記者会見にて、

「ウクライナ軍が
 同国の戦争に参戦しなかった人々を

 裁判にかけずに処刑したことを示す
 正確な情報を入手している」

と語りました。

 

また、ウクライナ政府軍が
この戦争の捕虜たちに虐待し、拷問を加えていることに
関する情報も入手しているとしました。

ウクライナ戦争開始から9ヶ月が経過しているものの、
この期間中、アメリカをはじめとする西側諸国や
ヨーロッパ諸国は、戦争終結に向けた措置をとることなく、
逆にロシアに対する圧力を強化し、ウクライナ側に
各種の兵器を送付することで、
これまで以上に戦争や衝突の炎を煽っています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

比較を通して指摘できるのは、2022年11月の時点で
戦争協力に応じなかった国民を裁判なしに
処刑していることが第三者によって報告されたのだが
このニュースを朝日を始め、大勢の記者は忘却している
ということである。

加えて、米英独仏加を中心とする
西ヨーロッパ陣営が戦争を煽っている認識を
ParsTodayが持つのに対して、朝日には自分達が戦争を
導いているという認識が全くもって欠けている。

 

Moscow’s local allies were told ‘Russia is here for ever’. Now they flee Ukraine

Moscow’s local allies were told ‘Russia is here for ever’. Now they flee Ukraine

Supporters in shock as Kremlin reneges on vow that helped project power into captured towns and villages

the Guardian

 

こうしたスタンスは西洋の主流メディアにも
ある程度、通じるものがある。

 

上のガーディアンの記事はロシア・ベルゴロド州にて取材した
アンドリュー・ロスによって去年9月に執筆されたものだが、

ロシア軍に対しては地元住民に暴力行為を働いた
証拠があると語り、その言及によって

ハリコフ周辺地域においてロシア当局が行った
年金支給や雇用創設を否定的に評価するよう努めているが、

他方で、ウクライナ政府が対露協力を犯罪化し、
協力者狩りを行っている件に言及しながらも、
これは一切、非難されない。

 

「占領下のウクライナに恐怖という文化を強いる一方で
 公には施しを申し出ることによって領土を統合しようとした」

とロスは説明するが、先の国連機関の報告を踏まえて考えれば
政府に非協力的な者、ロシアに協力した人間が
いかなる扱いを受けるかは想像出来るものだし、

それゆえに故郷を離れ、ロシアに逃亡したことを
当の避難民がロスに説明しているのだが、彼は気づかない。

 

Full text of the Minsk agreement

https://www.ft.com/content/21b8f98e-b2a5-11e4-b234-00144feab7de

 

 

また、年金支給が結果的に「施し」になったのは
ウクライナ当局が「占領」された地域に暮らす住民に対して
年金支給、銀行預金を始めとした経済的アクセスを遮断するから
なのだが、この件についてもロスは失念している。

彼の記事には歴史がない。

 

ウクライナ、ヘルソン州で年金と公務員の給与の支払い停止

ウクライナ、ヘルソン州で年金と公務員の給与の支払い停止

ウクライナ最高議会の元議員、アレクセイ・ジュラフコ氏は、ウクライナ当局が同国南部ヘルソン州(ロシアの管理下に置かれている)で年金や公務員の給与の支払いを停止した...

Sputnik 日本

 

 

こうした一方の悪に対しては真偽不明であろうと
思いつく限りの罵詈雑言を浴びせるのに対して、

他方の悪には、その行為を知りながらも軽く嗜める程度で
済ませてしまうのはひとえに本人の世界観が関係している。

すなわち、ロシア、中国、イランといった
西洋型の政治経済システムを採用しようとしない、
当人たちいわく、非民主主義的な悪の枢軸国が
我らを脅かしているという非歴史的な世界観である。

 

クリミアで「水不足」深刻 併合のプーチン政権に不満

クリミアで「水不足」深刻 併合のプーチン政権に不満

 【モスクワ=小野田雄一】ロシアが2014年に一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島で水不足が深刻化している。もともと淡水が少ないクリミアにはウクライナ本…

産経ニュース

 

それはエドワード・サイードの言葉を借りれば
オリエンタリズムと呼ばれるイデオロギーであろう。

 

すべての歴史は、この世界観に抵触してはならない。

 

ウクライナ当局によって運河が止められ、
クリミア半島にむけての水の供給が止まったとしても
非難の矛先は実行者であるウクライナ政府ではなく、
クリミアを「支配した」ロシア政府に向けられる。

 

理屈で言えば、ウクライナ政府にとって
クリミア半島住民は虜囚も同然である。

保護するべき自国民を水責めで苦しめる自傷行為、
それはダムや運河の破壊に等しい行為だが、

この「事実」を「世界観」にくぐらせてみれば、
そこには常に「悪党ロシア」が現れてくる。

それは確定事項と断じても過言ではない。

 

へルソン・カホフカ水力発電所の破壊 現時点での状況

へルソン・カホフカ水力発電所の破壊 現時点での状況

ヘルソン州にあるカホフカ水力発電所がウクライナ軍の砲撃を受け破壊されたものの、貯水池のダム自体は崩壊していない。現地ノーヴァヤ・カホフカ市のウラジーミル・レオン...

Sputnik 日本

 

善悪が先に決定されている。
これは鉄則であり、教義であり、信仰である。

あらゆる報道は、この世界観に反さないように
叙述しなければならない。

歴史的に見れば、ウクライナ当局が
暴力と報復で国民を沈黙させていることは瞭然だが、
それは恐怖文化とは記述できない。問題化されない。

その逆に、ありとあらゆる犯罪は
この世界観のフィルターを通じて非犯罪化される。

国際秩序は乱れないし、
力による一方的な現状変更にも当てはまらない。

 

ウクライナ戦争をブロックチェーンで記録。NFT博物館「META HISTORY: Museum of War」がオープン

ウクライナ戦争をブロックチェーンで記録。NFT博物館「META HISTORY: Museum of War」がオープン

2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻をブロックチェーン上に記録するNFT博物館「META HISTORY: Museum of War」がオープンした。すべてのNFTアート…

美術手帖

 

ウクライナ当局が去年4月から
メタ・ヒストリーと称するプロジェクトを開始したのは
歴史の皮肉としか言いようがない。

 

 

Metahistory: The Historical Imagination in Nineteenth-century Europe - Wikipedia

 


メタ・ヒストリーとは歴史家にして文学者である
ヘイドン・ホワイトが著したポストモダニズムの傑作である。

ホワイトによれば、歴史叙述とは
ある理論に沿って史実の存在を証明したものではなく、
史実の存在を証明するために理論を用いたものになる。

米田明の概説が比較的、理解しやすいと思われるので
以下に引用する。

https://www.10plus1.jp/monthly/2018/01/issue-09.php

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

結局のところ彼らは、
歴史叙述の発生する場をあらかじめ形象化し、
「実際に起きたこと」を説明するため、
類型的な理論を導入するメタレベルの領域を設定している
ことを示した。

そこで分析や批判に先立って駆使されるのが、
喩法論的な(tropological)「詩的知恵」であり、
喩法(tropic)に基づく詩的な着想が、
効果的な先行形象を歴史叙述の場に与える。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

喩法というのを
ウクライナ情勢についての語りにおいて探せば、それは

ロシアの蛮行
侵略
力による一方的な現状変更
国際秩序への挑戦
主権の侵害
核の脅し

といった決り文句による叙述が該当するだろう。

こうした「小さな歴史」乃至は「リアルヒストリー」
と呼ぶべきであろう史実群は

悪の帝国ロシアにウクライナが勝利する
という未来にまで踏み込んで言及した「大きな物語」、
「超越的歴史」、すなわち「メタ・ヒストリー」の材料に過ぎない。

結末は、すでに決定ずみなのだ。

 

米国の商業衛星、ウクライナ側攻撃3日前のベルゴロドを撮影

米国の商業衛星、ウクライナ側攻撃3日前のベルゴロドを撮影

米宇宙技術会社マクサー・テクノロジーズの商業衛星「ジオアイ(GeoEye)1」がウクライナ側ミサイル攻撃のわずか3日前のベルゴロド市を撮影した。RIAノーヴォスチ特派員が確...

Sputnik 日本

 

 

①悪の権威主義国ロシアが
 正義の民主主義国ウクライナに攻めてきた。

        ⇓

②他の平和主義国の助けを借りながら、
 果敢に応戦し、これを撃退した。

 

この筋書きを補強するようにして西側、
特に知識人や記者と呼ばれる人間は歴史を認識、叙述する。

 

予め引かれたアウトラインに沿って細部が記述されるその様(さま)は、
キャンバスに下書きをした上で画材を塗りつける行為にそっくりだ。

我々は年表的に事実を集積していく中で
自然と歴史が現出するかのように錯覚をしている。

だが、実際には抽象的な単一の「大まかな歴史」が先に在り、
そこに向けて具体的な無数の「細かな歴史」が量産されていくのである。

 

信長が倒れ、秀吉が継ぎ、家康が天下を治めたのではない。
室町幕府が崩壊し、江戸幕府が出現するという
メタヒストリーが先にあり、その記述に適当なリアルヒストリーが
後付で発見されるのである。それはリアルであり、リアルではない。
この順序逆転の指摘こそがホワイトの功績だった。

 

とするならば、このメタ・ヒストリーを破壊しかねないヒストリー、
すなわちリアルであるとは絶対に許されない
フェイク・ヒストリーにこそ、ウクライナ情勢を知る鍵がある。

次回、ベルゴロド地方における空爆を事例に
さらなる考察を行う。           ーつづくー


ベネズエラ情勢から見る安倍国葬問題2

2022-09-27 02:31:21 | ãƒªãƒ™ãƒ©ãƒ«åŽŸç†ä¸»ç¾©

 

 

ベネズエラ情勢から考える安倍国葬問題(リベラル原理主義者たちの醜悪な態度について) - 時事解説「ディストピア」

あと、数時間後には安倍晋三の国葬が始まる。巷ではメディアも含めまるで葬儀に反対することが正義であるかのように騒がれている・・・だが、正直なところ、私は何とも言え...

goo blog

 

https://blog.goo.ne.jp/
minamihikaru1853/e/02ba1
bed5f405798f9803630f6dad777

 

前記事の続き。
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ほしい。

 

 

 

複数の欧州諸国、グアイド国会議長をベネズエラの暫定大統領として承認

フランス、英国、スペイン、スウェーデン、デンマーク、オーストリアなどの欧州諸国は4日、ベネズエラの野党指導者、フアン・グアイド国会議長を同国の暫定大統領として承...

Sputnik 日本

 

 

 

日本、ベネズエラのグアイド国会議長を暫定大統領として承認

日本政府は、暫定大統領就任を宣言したベネズエラのグアイド国会議長を支持する。19日、河野外相が東京で開かれた記者会見で発表した。

Sputnik 日本

 

 

にも関わらず、2月の上旬には
EUと日本は合衆国に追従した。

1月26日には
再選挙を行わなければ
グアイド政権を承認すると英仏独西蘭が
約束していたのである。

 

 

 

社説:分裂危機のベネズエラ 米中露は対立をあおるな | 毎日新聞

 南米の産油国ベネズエラでの現職大統領と野党指導者の対立に、米国と中国、ロシアの大国が絡み、国際社会を二分しそうな異常な事態になっている。  きっかけは先月、強権...

毎日新聞

 

 

 

社説:ベネズエラ情勢 国際社会の関与で混乱収拾を

経済の破綻で数百万人が国外に逃れ、2人の大統領が正統性を争う危機的な状況である。平和的に事態を収拾するには、国際社会の協調と建設的な関与が欠かせない。 南米の産油...

読売新聞オンライン

 

 

こうした動きに対して日本のメディアは
現在のウクライナ紛争に対するような
姿勢は全く見せなかった。

内政干渉だの侵略だの
主権の尊重だのといった綺麗事は
全て2022年2月24日以降に生まれた嘘である。

 

 

ベネズエラ 明日、ロシアから300トンの人道援助物資が調達

ベネズエラのマドゥロ大統領は、明日20日、ロシアからの人道援助物資300トンが同国に届けられることを明らかにした。マドゥロ大統領は科学者との会合でこれを明らかに...

Sputnik 日本

 

 

 

中国 ベネズエラ問題で国連憲章の原則を尊重し、内政干渉の排除を呼びかけ

15日、中国外交部のゲン・シュアン公式報道官は、国連の原則を尊重し、ベネズエラの内政に干渉しない中国の立場を表明した。

Sputnik 日本

 

 

この時期、ベネズエラは制裁によって
国営企業の銀行を凍結され、深刻な経済危機が
起きていた。

 

米国の対ベネズエラ制裁により数万名が死亡したことが報告書で明らかに(経済政 策研究センター(CEPR)プレスリリース) | ベネズエラ

 

 

経済学者ジェフリー・サックス:米国の違法な経済制裁がベネズエラを荒廃させ4万人以上を死なせた | Democracy Now!

 

 

同年5月に発表された調査書は、
制裁によって4万人のベネズエラ国民が
死亡したことを指摘している。

 

 

 

(社説)ベネズエラ 人道危機を覆い隠すな:朝日新聞デジタル

 世界最大の石油埋蔵量を抱える南米の国、ベネズエラが深刻な人道危機に陥っている。 栄養失調や医薬品不足で命を落とす子どもたち。停電が慢性化した市街地。ガソリン不...

朝日新聞デジタル

 

にも関わらず、朝日新聞は
この件には一切、非難の色を見せず、
逆にマドゥロ政権を攻撃している。

 

「武力介入の可能性も否定しない
 トランプ米政権の言動は危うい。
 一方、現政権の強権を黙認する中ロも無責任である。」

 

という言葉は4万人の死を前にして
なんと虚しく響くのだろうか。

 

 

 

ベネズエラ情報機関、グアイド派2人を拘束 自宅から武器も

ベネズエラ警察筋は、国家情報機関(SEBIN)が21日午前、暫定大統領への就任を宣言したフアン・グアイド国民議会議長を支持する2人を拘束したと明らかにした。拘束された...

Sputnik 日本

 

 

マドゥロ政権が高圧的なのは
あくまでグアイド派限定である。

過激派を全国民代表であるかのように
表現し、制裁を正当化させる。

これは香港や新疆に関わる問題でも
メディアが好んで使っている手法だが、
こうした応援によって最も得をするのは
ベネズエラ人4万人を殺害した連中である
ことは疑いようがない。

 

 

米国、ベネズエラのパートナー国を制裁で脅す

米国のベネズエラ担当特使、エリオット・エイブラムス 氏は、米国はベネズエラ当局と取引を行った第三国に対して制裁を発動する可能性を排除していないと発表した。

Sputnik 日本

 

こうした愛と正義のリベラル原理主義者達の
陰ながらの支援によって、アメリカは好きなだけ
他国を脅すことが出来るようになった。

その責任は今の所、誰も取っていない。

 

「民主主義の危機」という言葉が
 バカのように連呼されるさまを見て
 静かな怒りを感じるのは
 この時の連中の態度を
 私が覚えているからである。

 

 

 

中国 ベネズエラ問題で国連憲章の原則を尊重し、内政干渉の排除を呼びかけ

15日、中国外交部のゲン・シュアン公式報道官は、国連の原則を尊重し、ベネズエラの内政に干渉しない中国の立場を表明した。

Sputnik 日本

 

 

グアイドの米軍侵攻支持、
アメリカの制裁、EU日本の異常な速さでの
反体制派支持、これらに対する責めを一言
二言で済ませ、マドゥロを諸悪の元凶とする。

 

こうしたプロセスのもと、
アメリカの文字通りのジェノサイドは
民主的に免罪された。


皮肉にもこの蛮行を非難したのは
ロシアと中国、イランといった
独裁国家と呼ばれる国々だった。

 

中国は
国連憲章順守の立場から
アメリカを毅然とした態度で非難したが、
これは日本の人道主義者と対極的なものである。

 

(なお、中国はウクライナ紛争においても
 ウクライナに人道支援を続ける一方で
 一切の武器支援をせず、制裁に抗議し、
 協議による解決を主張している)

 

 

 

米国がベネズエラに提案 ロシア産に代わる原油供給

米国政府はベネズエラに対し、同国政府の原油販売を禁止する米国の制裁を緩和することと引き換えに、ロシア産原油の供給をベネズエラ産の輸入に切り替えることを提案した。...

Sputnik 日本

 

 

 

原油不足に苦しむ米国、対ベネズエラの制裁緩和で供給増加を目指す

米国は17日、ベネズエラ国営石油会社PDVSAのエリック・マルピカ元社長に対する個人制裁を解除した。米財務省が発表した。

Sputnik 日本

 

 

 

ベネズエラ外相、「米の覇権終焉で、新たな世界が誕生中」

ベネズエラのカルロス・ラファエル外相は、「アメリカの覇権は絶対的なものではなく、ロシアがそれを終わらせるために努力したことで、新たな世界が生まれつつある」と述べ...

Pars Today

 

 

今年になって、ロシアへの制裁によって
原油不足に陥った合衆国は
ベネズエラに対して制裁緩和と引き換えに
石油を分けてくれるよう交渉した。

 

制裁というものは科した側の都合によって
どうにでもなるのである。

当然、ベネズエラは、この要請を無視、
バイデンの試みは失敗に終わった。

 

 

 

以上、ベネズエラ情勢を簡単に
振り返ってみたが、改めてこの制裁という
最凶の破壊プロセスに対して全くもって
涼しい顔で静観していた連中が

安倍晋三が死んだぐらいで
がなりたてるのは不可解にすぎる。

 

政治的意図はないと
犯人が断言しているにも関わらず、
民主主義と無理やり絡めてテロ視するのは
我田引水にすぎるだろう。

 

安倍の死が民主主義の死であるかのように
喧伝していた人々が今ごろになって、
国葬を非難するのは矛盾している。

 

ガソリンをまいてライターを
放火魔に渡した人間が、いざ火災が起きた
途端に絶叫しだすような不可解さを感じる。

 

 

 

 

 

実のところ、こういう動きは
別の問題においても見られるものである。

ウクライナ問題においても
一つの解釈を絶対視し、異論を紙面から
締め出した結果、日本の言説空間は
どの論者も同じ見解しか言わないという
ある種の異様さを呈している。

 

矛盾を指摘されても
結論を修正することが出来ない。

同じ言葉をグルグルと繰り返して、
会話が成り立たないのである。

 

 

思考を停止したゾンビのごとく
予めセットされた言動しか取れない
陳腐なヒューマニズムこそ
民主主義崩壊の予兆と知れと言いたい。

 

本来の民主主義というものは
一人ひとりの熟慮があって初めて
成り立つものである。

誰かが言い始めたことを復唱するだけで
なんとなく自分たちが
正しいことをしているような気分に
浸るのは民主主義でも何でも無い。

強く非難するが、招待状を要人に送り、
すでにキャンセル不可能となった
直前のタイミングで国葬を批判するのは
アリバイ作り以外の何物でもない。

私自身、国葬には否定的だが、
それは安倍の神格化につながるから
であり、国葬でなく自民党主催のものなら
問題ないということにはならない。

ところが、実際に見てみると
合同葬なら良いとか党葬なら良いと
いった意見も散見されるのである。

 

 

安倍晋三の美化につながるから
反対しているわけではなく、
単に金銭が惜しいから反対している
のであれば、そんな民主主義は滅べば
良いとさえ私は思う。

 

私達が目指すべきは権威主義に抗う
民主主義であるはずだ。

 

国葬それ自体は問題だが
それ以上に大問題なのは、

相手に応じて出したり引っ込めたり
することが出来てしまう
戦後民主主義の有り様なのである。


ベネズエラ情勢から考える安倍国葬問題(リベラル原理主義者たちの醜悪な態度について)

2022-09-26 22:59:53 | ãƒªãƒ™ãƒ©ãƒ«åŽŸç†ä¸»ç¾©

あと、数時間後には
安倍晋三の国葬が始まる。

 

巷ではメディアも含め
まるで葬儀に反対することが
正義であるかのように騒がれている

・・・だが、正直なところ、私は何とも言えない
虚しさと馬鹿馬鹿しさに包まれて
この記事を書いている。

 

というのも、この騒々しいキャンペーンは
耐え難い自己欺瞞に満ちているからだ。

 

我々が思い起こすべき事実は
襲撃直後の時点でメディアも知識人も
この事件を民主主義に対する挑戦として
悲劇化したことである。

 

上掲の画像は
「安倍晋三 民主主義 社説」で
検索をかけたものだが、ご覧の通り
どの新聞も全く同じ論調を取っている。

 

以下、いくつか引用したいと思う。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

暴力によって民主主義を破壊しようとする蛮行である。
参院選の街頭演説中に
安倍晋三元首相が銃撃され、死去した。

強い憤りをもって非難する。

 

事件はきのう昼前、
奈良市の近鉄大和西大寺駅周辺で起きた。

安倍氏の後ろから男が近づき、2発の銃弾を発射した。
安倍氏はドクターヘリで病院に搬送されたが、
その後に死亡が確認された。

 

41歳の元海上自衛官が現場で逮捕された。
詳しい動機や背後関係は不明で、今後解明が必要だ。

 

民主主義は主張が異なっても、
議論を戦わせ言葉によって合意を形成する営みである。

多様な意見に耳を傾けるのが基本だ。

いかなる理由があっても、
言論を暴力で封じ込めるような行為は言語道断である。

安倍氏個人だけでなく市民社会全体に対する攻撃だ。

https://mainichi.jp/articles/20220709/ddm/005/070/127000c

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

民主主義を破壊する卑劣な暴力を決して許してはならない。

安倍晋三元首相が
奈良市で参院選候補の応援演説中に銃撃され、死亡した。

言論を通じて国の将来を選択する
国政選挙中の凶行を、最大限の怒りを込めて非難する。
 
犯行の動機や背景の解明は捜査を待たねばならないが、
安倍氏の主張を封じることが狙いなら言語道断だ。
 
暴力によって言論を封殺してはならない。
 
私たちは今こそ民主主義、言論の自由、
法の支配といった社会の根幹を支える価値を再確認したい。
 
 
本紙は安倍氏の首相在任中、
他国の戦争に加わる「集団的自衛権の行使」容認や、
改憲を急ぐ姿勢を批判し、権力私物化を疑われた
森友・加計学園、桜を見る会を巡る問題も厳しく追及してきた。
 
安倍氏が
本紙の報道姿勢を公然と非難することもあった。

とはいえ、主張が違っても、
言論で対峙(たいじ)するという
民主主義の原則は共有してきた。
 

https://www.tokyo-np.co.jp/article/188517

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

民主主義国家の日本で、
絶対に許されない事件が起きた。

 

安倍晋三元首相が
参院選の遊説中に銃撃され、亡くなった。

 

選挙期間中に暴力によって
言論を封殺しようとする衝撃的な事件であり、
凶行を断固として非難する。

 

安倍氏は8日午前に
奈良市内の路上で街頭演説をしていた際に銃で撃たれた。

 

安倍氏はドクターヘリで
奈良県内の病院に緊急搬送されて
救命措置を受けたが、同日夕に死亡が確認された。

 

岸田文雄首相は同日夜、
記者団に「誠に残念であり言葉もない。
民主主義の根幹たる選挙が行われているなか
命を奪った卑劣な蛮行がおこなわれた。

断じて許せるものではなく、
最も強い言葉で非難する」と語った。

〜中略〜

 

民主主義は多様な意見を尊重し合い、
あくまで言論によって重要な物事を決めていくのが
ルールの根幹である。

どんな理由があっても、
政治家を傷つけたり威圧したりして
主張を押しつける行為は正当化できない。

https://www.nikkei.com/article/
DGXZQODK0870Q0Y2A700C2000000/

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

銃弾が打ち砕いたのは民主主義の根幹である。
全身の怒りをもって、この凶行を非難する。

同時に、亡くなった安倍元首相に対し、
心から哀悼の意を表する。

 

参院選の投開票日の直前に、
しかも街頭で遊説中に、現役の有力政治家である
安倍氏が撃たれたことはあまりにも衝撃的だ。

 

選挙は、民主国家の基礎中の基礎である。

 

そこでは思想信条の自由、言論・表現の自由、
投票の自由が、厳格に守られなければならない。

 

その選挙を暴力で破壊する。自由を封殺する。

動機が何であれ、
戦後日本の民主政治へのゆがんだ挑戦であり、
決して許すことはできない。

その罪の危険さ、深刻さを直視しなければならない。

https://www.asahi.com/articles/ASQ786RDKQ78USPT00N.html

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

このように、どの社説も
まるで判を押したように同じ文言が並ぶ。

(政府が用意したテンプレートを
 少々、いじくって載せたのではないか
 と疑いたくなるほどに酷似している)

 

安倍晋三が殺されたぐらいで
破壊されてしまうほど
民主主義とは脆弱なものなのだろうか?

 

安倍晋三という政治家について
私が思い浮かぶのは、

まずは虚偽答弁、次に利益誘導、
加えて公権力の私物化、強行採決、
公文書の改竄、メディアの癒着、
そして8年に及ぶ独裁政治の実行である。

 

むしろ民主主義の敵であって、
敵が死んだところで民主主義は容易に
瓦解はするまい。むしろ蘇るのではなかろうか?

 

 

(社説)ベネズエラ混迷 国民の手に選択委ねよ:朝日新聞デジタル

 カリブ海に面した南米のベネズエラは、美しい自然を誇る国である。国名の由来は諸説あるが、大航海時代に欧州人が「小さなベネチア」と呼んだのが始まりともいわれる。 ...

朝日新聞デジタル

 

 

その上で、
選挙活動や言論の自由に対する冒涜を
考えてみても、やはり合点がいかない。

 

彼らは
ベネズエラの選挙結果を認めず、
制裁を科したアメリカには、非難どころか
支持の姿勢を見せていたからである。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

世界一と言われる原油埋蔵量を抱え、
本来は豊かな国のはずだ。

ところが近年、失政による混迷は深まるばかりだ。
すでに国民の1割にあたる
300万人が国外に逃れたという。

 

最大の責任は、マドゥロ大統領にある。

経済政策の失敗に加え、
反政府派への弾圧を続けている。

市民の流血もおきており、
もはやこれ以上、統治を続ける資格はない。

 

平和裏に収拾するためには、
国民自身の手で公正に
大統領を選び直すことが不可欠だ。

 

マドゥロ氏は拒んでいるが、
国際社会は新たな大統領選挙の実現へ
向けて環境を整えるべきだ。

 

この国は今、「大統領」が
2人存在する事態になっている。

マドゥロ氏が正統性を唱える一方、
昨年春の大統領選の無効を訴える
グアイド国会議長が暫定大統領を名乗っている。

 

米国とカナダ、ドイツ、フランスなどは
グアイド氏を承認したが、中国やロシアなどは
マドゥロ氏を支持している。

〜中略〜

 

中国とロシアは、
マドゥロ氏の説得に動かねばならない。

中ロとも自国の権益や
対米牽制(けんせい)を考えているようだが、
ベネズエラを
自国の影響力を競う舞台に利用する態度は慎むべきだ。

 

トランプ米大統領は軍事介入をほのめかすが、
踏み切れば中南米に反米感情を広げ、
事態を悪化させるだけだ。

 

グアイド氏も、
平和的に解決する姿勢を明確にする必要がある。

https://www.asahi.com/articles/DA3S13887643.html

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

2019年、ベネズエラでは大統領選挙が
実施され、結果、現職のマドゥロが二期を
務めることになった。

 

これに対して政敵であるグアイドは
選挙の不正を主張、暫定大統領を自称した。

 

 

 

ベネズエラ反体制派指導者に対し、米大統領補佐官が支持を表明

アメリカのボルトン大統領補佐官が、またしてもベネズエラ反体制派指導者のグアイド氏支持を表明しました。

Pars Today

 

 

 

グアイド氏の暫定大統領宣言、米副大統領電話後だった=WSJ紙

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルがホワイトハウス筋の話として報じるところ、ベネズエラのフアン・グアイド国会議長が暫定大統領就任を宣誓する前日、ペンス米副大統...

Sputnik 日本

 

 

その後、NATO陣営は高速の動きで
グアイドを支持、ベネズエラに制裁を
科していくのだが、

宣言前日、ペンス副大統領がグアイドを
支持する発言をしていたことが
WSJの調べにより判明している。

選挙結果を認めず、
外国勢力の力を借りてクーデターを起こす。

これほどわかりやすい民主主義の冒涜は無い。

と私は思うのだが、
日本のメディアによれば
これは冒涜には当たらないらしい。

 

 

 

60カ国以上が、ベネズエラのマドゥロ合法政権を支持

60カ国の国連代表が、ベネズエラに対する外国の干渉を非難しました。

Pars Today

 

 

 

ベネズエラで、アメリカやコロンビアの干渉に抗議するデモ実施(動画)

ベネズエラで、アメリカ製の物資がコロンビアを通じて、ベネズエラに搬送されたことを受け、人々がアメリカやコロンビアの干渉に抗議するデモを実施しました。

Pars Today

 

 

 

ベネズエラで、マドゥロ現政権を支持する全国的なデモが実施

ベネズエラの首都カラカスを初め複数の都市で、同国のマドゥロ政権を支持し、反対派への対抗を示す国民のデモが開催されています。

Pars Today

 

 

 

ベネズエラで、マドゥロ大統領を支持する数千人規模の行進が実施

ベネズエラ・カラカス市内の街頭で、現職のマドゥロ大統領を支持する数千人規模の行進が実施されました。

Pars Today

 

 

 

ベネズエラで、マドゥロ大統領を支持するデモ

ベネズエラ・カラカスで、同国のマドゥロ大統領を支持する数千人規模のデモが実施されました。

Pars Today

 

 

 

 

ベネズエラで、マドゥロ現職大統領を支持するデモが実施

ベネズエラ・カラカス市内各地の街頭で、現職のマドゥロ大統領を支持する数千人規模のデモが実施されました。

Pars Today

 

 

 

 

G77と中国が、他国に対する米の一方的な制裁の解除を要請

G77(アジア、アフリカ、ラテンアメリカの開発途上国77か国グループ)と中国が共同で声明を発表し、米国がイランとベネズエラを含む開発途上国にの一方的に科している制裁を解...

Pars Today

 

 

 

露大統領が米大統領に、「ベネズエラの主権を決定できるのは同国民だけ」

ロシアのプーチン大統領が、アメリカのトランプ大統領との電話会談の中で、「ベネズエラの主権を決定する権利は同国民のみにある」と発言しました。

Pars Today

 

 

 

 

国連人権高等弁務官、「対イラン、対ベネズエラ制裁は解除されるべき」

ミシェル・バチェレ国連人権高等弁務官は、新型コロナウイルス蔓延の状況下、イランとベネズエラに対する制裁を解除あるいは停止するよう求めました。

Pars Today

 

 

同時期に書かれたParsTodayの記事を
読めば、国内外を問わず、少なからずの人間が
マドゥロ政権を支持していたことがわかる。

国連も例外ではない。支持者はバチェレ。
先日、ウイグル族弾圧を否定したばかりに
国連人権高等弁務官の職を追われた人物だ。

(はっきり言って、バチェレ追放の方が
 安倍晋三の死より民主主義にとっては
 危険な事件だったのだが、
 メディアは気にもしなかった)

 

 

 

ベネズエラ反体制派指導者、「アメリカにベネズエラ軍事攻撃を許可する」

ベネズエラの反体制派指導者フアン・グアイド氏が、「アメリカがベネズエラへの軍事攻撃を提案してきたら、自分はこれを承諾するだろう」と語りました。

Pars Today

 

 

当時、グアイドは米軍によるベネズエラ侵攻を
はっきりと支持していた。

どちらが民衆の敵かは一目瞭然だろう。

 

ーーー続くーーー

 

 

ベネズエラ情勢から見る安倍国葬問題2 - 時事解説「ディストピア」

ベネズエラ情勢から考える安倍国葬問題(リベラル原理主義者たちの醜悪な態度について)-時事解説「ディストピア」あと、数時間後には安倍晋三の国葬が始まる。巷ではメディ...

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↑こちらの記事へとお進みください。


ジェンダーと植民地主義(なぜ日本ではフェミニズムが受容されないのか)

2022-07-26 00:12:34 | æ¤æ°‘地主義・ジェンダー

 

上の動画は
タリバン政権下の女性の状況について
現地の学生に語ってもらったものである。

 

アフガニスタンの女性の権利というと、
私達の脳内には虐げられる女性と
虐げるタリバンとの戦いの構図が再生されがちだ。

だが、実際にはむしろ
これら女性、特に大学で女性の権利について
学んでいるアフガン女性にとっては

むしろ親米政権のほうが
悪質なものだったのである。

 

その一例として
前政権では公務員になるためには
男性との性交渉を条件にされることが
しばしばあったことが挙げられており、

結果として
女性の社会進出は事実上奪われていた
と、そう彼女たちは告白している。

 

現在、彼女たちは
タリバン政権にむけて
イスラム法に照らした形で
より高度な教育を求めている。

そして、タリバン政権下で
男性と同等の労働権を得られることを
確信していると発言しているのだが、

こうした諸発言からは
日本の知識人、特にフェミニストから
発信されるタリバンに対する憎悪とも言える
感情が微塵もない。対極的だとも言える。

 

日本のフェミニストは、しばしば
自分がアフガンの全女性の意見を代弁
しているかのように語るのだが、
実際にはズレがあるわけだ。

そのズレは両者の
イスラム教に対する信仰心の度合いの
落差を意味してもいる。

「イスラム法に照らした形での改革」は
その好例だろう。

日本ではしばしば
全職業への参画を求めているように報じるのだが、
実際には、本人達の宗教生活を妨げない
レベルでの勤労を望む女性も多いのである。

 

注目すべきは上のコメントで、

ここでは欧米や日本で跋扈する
フェミニストに対する批判がされている。

いわく、フェミニストは
家族や夫に対する敬意を持っていない、

彼女達は男性に偏見を抱いていて
私達の多くは彼女たちが
アフガンの権利を提唱してはいない
と強く思っている

・・・と語っているのだ。

この発言は
世俗化された世界に生きるフェミニストと
イスラム世界で暮らす活動家との間の
埋めがたい溝を如実に物語っている。

 

Believeは「信じる」と訳されがちだが
正確には「強く思う」という意味であり、
日常では「マジで思う」というニュアンスで
使用される。

それだけに、この人達の怒りや反感は
ダイレクトに伝わってくるだろう。

 

タリバン政権に対する信頼と
西側民主主義に対する不信。

こうしたスタンスは
前回の記事で私が言及した
近代フェミニストとは正反対だ。

彼女たちにとって
日本や西洋で女性の権利がどうのこうの
と騒ぐ連中は非難の対象なのである。

 

これは女性の権利について
彼女たちに関心が無いことを
意味するものではない。

 

インタビューでも、
大学ではイスラム世界における
女性の社会的地位について歴史的に
勉強していると答えており、

むしろ一般の女性よりも強く
関心があると言って良いだろう。

 

実際、日本のフェミニストは
アフガニスタンの女性の権利を理由に
執拗にタリバンを罵倒するわりには、

300万以上の児童を
栄養失調の危機にさらした
アメリカには申し訳程度の批判を
軽く述べる程度で済ませているので

こうした偽善性を
彼女たち学生は敏感に嗅ぎ取っている
のかもしれない。

 

ただ、それとは別に
ここで私が問いたいのは

何が差別で何が差別でないかを
決定づけるのは、どこまで行っても
本人の主観でしか無い

ということである。

 

よく日本では
ブルカやヒジャブの着用の強制を
女性差別の典型例として紹介される。

だが、先述の動画を見ればわかるように
ほとんどのアフガニスタン女性は
そもそも最初からブルカやヒジャブを
着ているのである。

 

こうした人達にとって重要なのは
「いかにイスラム教徒らしい生活を
 送れるか」であり、

本人たちにとってブルカやヒジャブは
制服であり、清く正しい生活のために
必要不可欠ですらある。

 

無論、こうしたイスラム化に対して
懐疑的な女性も存在する。

もともとアフガンの避難民であり、
米軍占領後に帰国し、現地の「民主化」
に貢献したサハラ・カリミは
その代表的女性だろう。

カリミは8月の混乱時に
真っ先に国外へ逃亡、もとい、
避難した女性の一人であり、奇しくも
ウクライナ軍の軍用機に乗り、同国で
しばらく生活を送った。

現在でも、タリバン批判の急先鋒として
活躍している。

カリミがタリバンを非難するのは
本人の勝手だろう。

 

問題は
あたかも全アフガン女性の意見を
代表しているかのように
カリミ本人やメディアが演出していることだ。

 

カリミの意見はあくまで多数ある意見の
1つであり、それ以上のものではないのに
絶対の真実として語られる。

 

そして、それはしばしば
悪のテロ集団タリバンから
女性を保護するために介入せよと言う
植民地支配の口実として利用される。

 

私が清末愛砂女史のような輩を
強く批判しているのも、

こうした演出を多用するからだ。

 

アフガンの女性を悲劇化しているのは
あくまで清末やカリミ的なアフガン人
の価値観によるものであり、

これは、どこまで行っても
西洋的価値観に従って、「これは
差別だ」と感じるものでしかない。

 

その際、辻褄を合わせるため
本記事で紹介したような女性の存在は
彼女たちの文章から抹殺される。

 

これは民主主義といえるものだろうか?

少数意見の透明化。

民主主義という思想に懐疑的な私ですら
これはデモクラシーに反するものだと
強く感じる。

 

実のところ、
ジェンダーやフェミニズムというものは
平和の対地にある戦争のために
利用されてすらいる。

 

第二次世界大戦では
女性を戦争に動員するために
強い女性あるいは優しい女性を描いた
ポスターが活用された。

同様のアクションが
今日でも行われているのは前掲の
新聞記事を見れば明らかだろう。

ここで私が確認したいのは
サハラ・カリミしかり、市原房江しかり、

リベラル原理主義的なフェミニストは
こうした動員に対して抗うどころか、

むしろ、それらを主導し、
好戦的なムードを醸し出すのに
一役を買ってきたという事実である。

つまり、ナショナリズムやレイシズム、
コロニアリズムやモダニズムを利用して
女性の社会進出を実践してきた
という負の歴史がここにある。

清末やカリミの親米政権と協力しながらの
女性の「民主化運動」はその典型例だろう。

アメリカの国民化運動の旗手に
フェミニストがいたのは偶然ではない。

 

女性を弄ぶ博物学/工作舎

 

こうしたフェミニストは
進歩的な思想を悪、保守的な思想を
善と捉える逆転現象を起こしがちだ。

 

イスラム教と共生する形の
女性の権利獲得というのは多様化する
世界において、望ましくすらあるのに
それを否定し、絶対唯一の答えを強要する。

同様に、日本では
「性差は先天的なものではない」
という見地が逆に差別的なものとして
否定されることがしばしばある。

それどころか性差が身体的なものである
という考えが理想視されることさえある。

この逆転現象について筆者は過去、
幾度かネットやリアルで語ってきたが、
次回、改めてシービンガーの研究に触れながら
その不可思議さについて説明をしたい。

 


清末愛砂氏とオリエンタリズム(植民地主義とジェンダー)

2022-06-24 22:18:36 | å›½éš›æ”¿æ²»

2021年8月15日、20年に及んだ
アメリカの支配からアフガニスタンは解放された。

そもそも
アフガンを統治していたのはタリバンなのに、
彼らを「反政府組織」と呼んでしまう。

そういう侵攻国であるアメリカを善とみなす
報道スタイルに私は辟易していたが、

日本メディアは早速、解放直後から
急に思い出したかのごとく
女性の「人権」問題について語りだした。

 



一夫多妻制の容認など、とかく
イスラム教は西洋的家族モデルと
相容れない面がある。

そのため、オリエント世界はしばしば、
ジェンダーを理由にヨーロッパ世界と差異化され、
前者を東洋(野蛮・独裁)、
後者を西洋(文明・民主)として表現されてきた。

 

その目的は植民地支配の正当化である。

 

植民地主義(コロニアリズム)というものを
端的に説明すると以下のようになる。


①植民地支配には
 良い植民地支配と悪い植民地支配がある

②現地の住民を虐げる圧政は悪い植民地支配であり、
 これは断じて受け入れることは出来ない。

③だが、独裁的な政府によって民衆が弾圧されているならば
 政権を打倒し、傀儡政権を樹立し、権利を保障すること、
 すなわち「民主化」を目的とした支配は悪ではない。

④むしろ「民主化」のための支配は「保護」であり、
 国際秩序の維持のためにも必要だ。

⑤よって、野蛮国を正しい方向へと導いていくことは、
 文明国の義務であり、使命である。

 

つまり、政治的(議会制民主主義の導入)
経済的(自由経済の導入)文化的(キリスト教的モラル)
改造を原理主義的に妄執・追求するものであり、

その主体は近代ヨーロッパ人を想定している。
(オリエントの住人はあくまで客体)


その行為を正当化させるために
ジェンダーが悪用されてきた歴史があるのだが、
問題は、その歴史が現在でも進行中であるということだ。

 

さて、先日、アフガニスタン研究および報道で
名を馳せてきた清末愛砂氏、須賀川拓氏両名は
アフガンで起きた地震災害について
悲しみを込めたようなポエムを書き綴った。

これに対して私は
「地震は天災だが、制裁は人災、もっと触れるべきことが
 あるはず」という意味を込めた引用リツイートをしたのだが
経済制裁およびアメリカの戦争犯罪に対して
両名が無反応と呼んでも良い姿勢を取っていると指摘したのが
許容できなかったらしく、Twitter上で抗議を受けた。

よって、本記事では
2022年3月はアフガン現代史にとって
どのような位置づけが出来るのかを検討しながら
この時期の両名のリアクションについて言及したいと思う。

https://www.presstv.co.uk/Detail/2022/02/11/676648/Taliban-Afghanistan-frozen-assets-US-banks

 

まず、前史を紹介すると、
去年の秋頃からすでにアフガニスタンでは
世界銀行やIMF、アメリカ等の欧米諸国により制裁を受け、
深刻な経済危機に陥っていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ガーディアン紙は昨年8月の米英軍のアフガニスタン撤退に触れ、

敵に利用可能な資源を残さない焦土作戦が、世界でもっとも貧しい国のひとつである

アフガニスタンに最大限の経済圧力を加えることを目的としてアメリカにより

立案されたと報じました。

同紙は続けて、この作戦における米政府の手段には、

米ニューヨークにあるアフガニスタン資産の凍結や

世界銀行のアフガン復興基金の支払い阻止などがあるとしています。

2020年にアフガニスタンのGDPのおよそ半分を占めていた

海外からの支援停止が悲劇的な結果をもたらすことは当時から明らかでした。

ガーディアン紙は、

アフガン国内企業は平均して従業員のおよそ6割を解雇し、

食料品価格は4割上昇しており、

国民の半数は人道支援を必要としている状況で、

貧困率は9割にのぼると記しています。

https://parstoday.com/ja/news/asia-i93018

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

この状況に対して
国内外から猛烈な批判が連日のように
展開されたのが2022年3月という時期だったのである。

筆者が知る限りでは
まず3月4日にタリバン政権は制裁緩和を要求し、

 

3月8日にはカルザイ元大統領が
アメリカの制裁を非難、
アフガン人の金を返すよう要求した。

 

3月15日には、国連が
350万人のアフガンの子供たちが
栄養支援を必要としていると表明した。

 

その声明の中には
食料がなく乳児に栄養を与えることが
出来ないと嘆く母親たちの言葉も紹介されていた。

 

 

 

 

ウイグル族への迫害の証拠が見つからなかったと述べたばかりに
辞任に追い込まれたミシェル・バチェレ国連人権高等弁務官は

3月13日の時点で
「制裁が解除されなければ、悲劇的な結末として
 多くのアフガン市民が命を落とすことになる」
と警告した。

このように3月初旬〜中旬は
タリバンだけでなく国連も巻き込んだ制裁に対する抗議と
今後も続くであろうカタストロフについて警鐘が鳴らされていたのである。

では、問題の清末氏は
この時、Twitterで何を叫んでいたのだろうか。

 

 

自分への誕生日プレゼントとして
ニジマス定食を思う存分、平らげたと報告していたのである。

350万人のアフガン児童が食料支援を必要とすると
訴えられていた丁度その時、好物を好きなだけ食べれたとご満悦。

申し訳ないが、これは台風で関東地方が大災害に遭っていた時に
赤坂で議員たちと宴会をしていた安倍晋三と同レベルの人権意識だと
言わざるを得ない。

空腹で飢えている子供たちの前で
食事をべろべろと平らげるような浅ましい行為だ。

 

他にはウクライナ内戦の拡大に対して
ロシアをバッシングする記事をリツイートしていたが、

3月15日に彼女が述べたことは
これで全てだった。

飢えた子供の中には当然、女児もいるわけで
先述の母親の訴えも考慮すれば、この件については
女性の権利を守るというイメージで名前を売っている立場上、
多少なりとも言及するべきだと感じるが、何も書かなかった。

(なお、この時期にドネツク市街で
 ウクライナ軍による砲撃があり、市民が死傷した
 事件が起きたのだが、この件についても清末氏は触れていない)

 

同時期に清末氏が強く訴えたのが
アフガニスタンの女性の権利向上だった。

 

ここで読者に考慮してほしいのが、
なぜ清末氏は、人間にとって最も重要な権利であるはずの
生きる権利が侵害されていることに対して沈黙しているのだろう
という点である。

タリバンもカルザイもバチェレも
制裁解除を求めて熱弁を振るっていたその時、
同氏は他の自称フェミニストらと共に「女性の権利!女性の権利!」
と全く別の言葉を述べていたのだ。

 

さて、約一週間後の3月21日、
露スプートニク紙はタリバンへの制裁によって
1万3000人の新生児が死亡したこと、ならびに
95%の児童が十分な食料を得ていないことを報じた。

 

この記事は3月15日のニュースに触れながら、
貧困と医療危機が乳児死亡率を高めることに言及したものだった。

アメリカの経済制裁が原因で1万3000人の新生児が死んだ。

制裁は戦後に行われる戦争行為だ。ミサイルを使わずに人を殺す。

ロシア軍の「蛮行」には過敏に反応する清末氏や須賀川記者は
当然、このジェノサイドには反応しても良さそうではあるが、
現実では、この時も両名は無言リツイートすらしなかったのである。

 

代わりに彼らが注目したのは
タリバンの女子生徒の通学停止だった。

 

この時の清末氏は
目覚めたかのように読者の感情に訴える言葉を
絶叫するように並び立て

 

怒りと涙を露わにして激昂していた。

1万3000人の新生児が制裁によって殺され、
95%の児童が満足に食べるものがないニュースには
一言も触れなかったのに対して、

女子生徒に対するタリバンの政策には烈火の如く吠え猛ったのである。

 

しかし、冷静になって考えてほしいが、
そもそも学校に行く・行かない以前に生きる・死ぬの問題にアフガンの
児童たちは直面しているのである。通学できるのは裕福な子供しかいない。

 

 

 

イギリスの映像メディア、
ファイブ・ピラーズはカブール市を散策しながら
児童労働者の状況について解説を試みた。

この子たちは本来なら通学するべき年齢に達しているが、
家計を支えるために働かざるを得ない。

靴を磨いたり車を洗ったりといった
簡単な仕事をしながら日銭を稼いでいるのである。

 

路上より学校にいるほうが好きだ

学校に行きたいけど、その余裕がない

 

こういう「男子」児童が多く存在するのである。
この児童らは清末氏の救済の対象には入っていない。何故なら女子ではないから。

 

アメリカ研究者の兼子歩氏などが思い浮かばれるが、
かなり前からジェンダー研究は男性性について注目されている。

「女は働くべからず」という理念は裏を返せば「男は働くべし」となる。

ジェンダーに留意して考えると、児童労働者が中々減らないのは、
労働によって生活を支えることで「男」として認められるからである。

家族を助けているという誇りがアイデンティティ形成につながる。


よって、20世紀のソーシャル・リフォーマーは職業教育の実践と
その間に家庭に対する補助金の給付を主張したのだが、
児童労働と非行が結び付けられる側面があったのも確かである。

いずれにせよ、通学できる権利はあっても
行使する余裕がないために、事実上、侵害されたと言っても差し支えはない。

 

だが、女性の権利にばかり関心を持っていると
その対象外である人々は透明化してしまう。

語りの中から消えてしまう。
女性、女性、女性と連呼する影で彼ら男児労働者の姿は見えなくなる。

 

こうした子どもたちを助けるには
共同体ごと支援する必要がある。

上の映像は同じくファイブ・ピラーズのものだが、
6分ほど経過したタイミングで井戸の話が出てくる。

長老らしき人物の話によると、
井戸が出来る前は水汲みをするために
子どもたちが学校へ行く余裕がなかったが、

他のイスラム教国家に住むムスリム達の支援の結果、
井戸が完成され、問題が解決されたらしい。

これはまさに故・中村哲氏が実行していたことに他ならない。
改めてペシャワール会の現実に即した活動に敬意を表する。

 

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現地で困っているのは、お金の問題。米国による資産凍結などの影響で預金の引き出しが制限されている。機材や燃料を買うにも資金が足りない。インフレも進んでいる。干ばつも続き、このままでは多くの人が食い詰め、社会不安が増大する。国際社会はそうした状態を待っているのでしょうか。

 タリバンの人権意識を批判する声があります。確かに時代錯誤の面もある。けれども外からの物差しで、西洋の近代的な世界観が全て正しいという前提で論じているように思えます。米国は20年かけて莫大(ばくだい)な資金と軍事力を投じ、米国の物差しを広めようとしたが、うまくいかなかった。

https://www.asahi.com/articles/ASPBD2VQ6PBBUPQJ11D.html
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ペシャワール会はアメリカの経済制裁にも確かに批判していた。
村上優会長は、タリバンの人権意識に対して、
確かに時代錯誤の面もある、けれども、外からの物差しで、
西洋の近代的な価値観が正しいことを前提に語ってはいないかという風に語り、
相手の論理を理解することの大切さを説いた。

こういう意識が清末氏を初めとした識者には無いのである。

 


 

4月19日、ユネスコの国際関係責任者はTwitter上で
アフガンの児童は生計のために労働するか、物乞いをせざるを得なくなり、
就学が不可能になっているという主張をした。

無論、この児童には女児も含まれるため、
本当にアフガンの人権に関心があるのならば、すぐに応えるはずである。

 

では、清末氏はこの時、何を発したかというと

 

「アフガンの女の子達に学ばせてあげて」

というタグ付きの絵のリツイートと

須賀川記者のロシアの「蛮行」を訴えるTweetへのリツイート、

 

そして洞爺湖近くのレストランで
「支援」の打ち合わせをしながら食べた夕食の紹介だった。

問題のユネスコのTweetに対する反応は無かった。

 

 

こうして1ヶ月以上に渡る同氏のインターネット上の発信を見てみると
女性の権利侵害につながりそうな部分だけを抽出して
ヒステリックに騒ぎ立てる一方で、

女性や女児にも関係があるだろう制裁に関連する人的被害には
全く反応しない態度を指摘することが出来る。

これはタリバン政権下の女性や女児に対する
ジェンダーバイアスがかかった暴力の存在を認めながらも、
それらがアメリカの制裁によって悪化していると語った
国連の専門家達とは対極的なものだ。

 

アメリカ合衆国に対する非難の言葉が一切ないのである。

 

 

清末氏と対極的な姿勢を見せるグループが
国連の他にもう1つ存在する。

日本の平和主義者たちが悪の独裁国家、人権侵害大国と酷評する中国である。

中国外務省は8月にはすでにアメリカへの非難を始めていたが、
今年の二月には資産凍結に対してアフガンの資産を「盗んだ」と強い語気でなじり

 

3月末には王殻外相も、繰り返し
「アフガンから窃取した資産・資源を返還すべきである」
と述べた上で、

「中国はアフガン暫定政権を支持する」との意思を表明した。

 

そして4月にはバイデン政権に対して
アフガン国民への謝罪を要求した。

 

これらの言葉を私は
清末・須賀川両氏から聞いたことが無い。

須賀川氏はタリバンとの対談を経験して
他の記者と比べると幾分、彼らを人間扱いしているのだが、
そこで思考はストップし、清末氏と同様、女性の人権侵害のニュースにだけ反応し、
資産凍結の件について少なくとも3〜4月の時点で語ることは無かった。

取材で多忙だったからと言えばそれまでだが、
その割には通学のニュースには反応していたわけで、
先述したとおり、制裁に関するいくつものニュースが当時流れていたにも関わらず、
全てに無反応だったというのは、常識的に考えて不自然である。

単に関心が無かったから言及しなかったと理解するのが妥当だ。

 

 

アフガニスタンのジェンダー問題と複合差別~人道危機問題に着目して | ヒューライツ大阪(一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター)

 

清末氏は筆者に講演会や原稿等で
制裁に対する発言は行ってきたと答えるのだが、
実際のレターを読んでみると、かなり微妙と言わざるを得ない。

確かに同氏は制裁による生活危機に対しては言及しているのだが、
それは上記リンクからページに飛んで読めばわかるように、この文章は
あくまで「人道危機がこれほど深刻であるときに、女性の人権問題を
強調して語るのはいかがなものか」といった批判に対するレスポンスなのである。

つまり、資産凍結に対する言及は人道危機を説明するためのものであり、
国連や中国政府のようにアメリカ政府を非難するためのものではない。

むしろ、それらよりジェンダー問題を優先する意義を説いた文であり、
ある意味では清末氏の透徹したスタンスを感じざるを得ない。

だが、文章中、アフガンで最も注目すべきはシングルマザーと子供たちと
定義する割には、彼女らが苦しむ原因となった制裁への言及は
すでに述べたように皆無と言っても過言ではなく、

学校に通う・通わない、就労する・しない、
ブルカを着る・着ないといったレベルに終始し、他の人権団体と歩調を
同じくしているようには感じない。

 

 

本当に心配しているのだろうか?

タリバンへの非難につながる話題でのみ暴れているように
筆者は感じてならないのである。

だが、全く関心がないわけではなく、
地震に対しては即座に悲しみの詩をぶちまけるわけで、
そういうアメリカの植民地支配を責めない範囲での平和主義というのは
吹けば飛ぶ塵のようだと考える。

こうしたスタンスは連続していて、須賀川氏も清末氏も
ウクライナ軍による市民への爆撃には触れない一方で、
ロシア軍の介入によって起きた「とされる」蛮行には反応を示している。

このような人道主義はアフガニスタンの資産を私的流用したり、
ウクライナ軍に武器を貸し付けることで富を得ようとする国にとって
大変、有り難い存在になるだろう。

なぜならば、他方の罪は感情的にドラマチックに語る一方で、
もう他方の罪は語らないことで存在を隠してしまうからである。

 

ウクライナ東部の親ロシア派市民や
アフガニスタンの親タリバン市民の存在を語らないことで
彼らは殺されても関心を持たないレベルにまで命の価値を下げられている。

それはレイシズム以上にレイシズムなのである。


北朝鮮の「ほほえみ外交」(メディアの造語批判)

2020-06-25 22:44:15 | åŒ—朝鮮

緊急事態宣言が解除され、非日常から日常へと生活が戻りつつある。
・・・わけでは決してなく、未だに東京では感染者が後を絶たないのだが、
都知事選を前にしてあえて日常を演出したいマスメディアは
いつものように外国に対するバッシング報道を展開し始めた。

本日、6月25日のクローズアップ現代では
金与正氏の発言を取り上げ、仮にも他国の大統領を罵倒するなど
言語道断と見栄を切った。吹き替えを担当した女性は、与正氏の声明を
あえて重く、暗いトーンで、いかにも危険人物の発言であるかのように
強調して翻訳文を読み上げた。

 

挑発する金与正氏 北朝鮮の強硬姿勢の行く末は…衝突か、新たな交渉のテーブルか

 

日本メディアのシナリオとしては
北朝鮮が韓国や米国に対して乱暴な「挑発」を行った
というものを狙っているらしい。

しかし、実際には韓国の保守派が脱北者と結託して
軍事境界線付近で挑発行為を行ったのが発端となっている。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

他の誰かなら知らないが、「脱北者」というくずの連中、
人間の出来損ないを押し立ててそんなにもよく知っている
その合意を違反するビラ散布妄動をそのまま黙認し、放置しておいた当事者らが
われわれに「違反」という言葉をそれも白昼に公然と言えるのか疑わしいだけだ。

顔が熱くならないかということだ。

板門店宣言と平壌宣言、北南合意に対しては、
北侵戦争演習を含むあらゆる敵対行為を公然と働きながら、
それを今まで系統的に違反して破棄してきた南側が
口が十あっても合意違反について問題視する資格さえないようになっている。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(http://www.kcna.kp/kcna.user.article.retrieveNewsViewInfoList.kcmsf#this)

上の文章は朝鮮中央通信の2020年6月17日付の記事
(「破廉恥の極み」というタイトル)から引用したものだが、
ここにも触れているように板門店宣言にはビラ配りの扇動も含む
一切の敵対行為の中止が明記されている。

また、大々的なものこそ自粛したものの
北朝鮮への先制攻撃を想定した韓国の軍事演習はこれまで継続されてきた。

そして北朝鮮は約束に従い、これまで一切の核開発を行っていない。
(日本のマスメディアは核「保有」を理由にこの事実を無視したがるが)

双方の歩み寄りが望まれた2018年から約2年が経過してもなお、
このように進展が望まれない状況下、強硬派の軍部をなだめるために
行ったのが今回の一連の言動ではないかと筆者はにらんでいるが、
それはともかく、いわゆる「挑発」をしたのは韓国の保守派であり、
北朝鮮の言動はそれらに対するリアクションだということを忘れてはならない。

 

対北朝鮮 日米、韓国へ結束求め 「ほほ笑み外交」警戒

 

ところで、北朝鮮と他国との間の雪解けをメディアは「ほほえみ外交」と呼んでいる。
この言葉は当初、ある種の侮蔑の意図を込めて使われていたのをご存知だろうか。

北朝鮮の「ほほ笑み外交」 日本の懸念

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ほほ笑み外交」

安倍氏もほぼ確実に同意するだろう。
五輪開始前のインタビューで河野太郎外相は筆者に対して、
韓国が北朝鮮の「ほほ笑み外交」に取り込まれてしまう懸念について話した。

そしてなんと盛大なほほ笑み外交が行われたことか。

最大の見せ場は疑いもなく、金正恩氏の実妹、
金与正(キム・ヨジョン)氏が3日間訪韓したことだ。

与正氏は魅力的な笑みを浮かべ、
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領を平壌に招待した。

これらは全て安倍晋三首相にとっては悪い知らせだ。
日本政府による、北朝鮮の核の脅威を阻止するための政策を根幹から覆す恐れがある。

米国にとって、北朝鮮が核兵器の備蓄を増やすことは
間もなく現実の脅威となるだろう。日本にとってはすでにそうだ。

昨年に北朝鮮が発射した2発の長距離ミサイルは日本の上空を飛んでいった。
ここで大きく懸念されることは、どんな種類の軍事衝突であっても、
北朝鮮が核を使うのはソウルではなく東京へ向けてではないかということだ。

「我々は広島や長崎が再び起きるのを絶対許してはいけない」
と最近、日本の退役将校は筆者に話した。

よって安倍晋三首相は非常に強硬な立場を確立した。
週末にソウルで見られた「愛の祭典」以来、全ての声明で、
文大統領に訪朝してほしくないという立場を明確にしている。

ソウルにある国民大学校のアンドレイ・ランコフ教授は、
北朝鮮の思惑に対する日本の懸念をうまく説明している。

北朝鮮情報に特化したウェブサイト「NKニュース」の記事中で、
「北朝鮮の外交手腕は卓越している。
敵の弱点と分断を利用することに精通している」とランコフ教授は書いている。

「12月中旬以来、北朝鮮の外交は大きく分けて2つの目標に向かっている。
まず北朝鮮は、米国が先に軍事攻撃に出る可能性を低くしようと懸命に取り組んでいる。
第2に、米韓の間にくさびを打ち込むことに精力を傾けている」

日本の河野外相は北朝鮮に対する経済制裁が「効き始めている」
との認識を筆者に示した。

昨年の晩夏に課された制裁措置により、
いよいよ北朝鮮経済に影響が出始めている、と。

だからこそ北朝鮮は五輪大会という
ほほ笑み外交の手段を講じ時間稼ぎをして、
息が止まりそうな状態を緩和している、と。

(英語記事 Japan's worries about North Korea's 'charm offensive')

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

原語では「charm offensive」とあるように「ほほえみ外交」とはOffensive(攻撃態勢)、
すなわち、米韓の分断を目論んだ作戦なのだという意味をこめて使われていたのである。

 

韓国五輪外交、北朝鮮を利するだけに終わった「大失策」の裏側

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「南北友好対話ムード」を演出しての
ピョンチャン・オリンピックの“主役”は、
金正恩の妹で、朝鮮労働党副部長の金与正(キム・ヨジョン)だった。

その「微笑み外交」の陰で、
韓国・文政権の「5人組」と米国との間では
ぎくしゃくした関係が目立った格好になった。
それには理由がある。(朝日新聞ソウル支局長 牧野愛博)

五輪外交の主役は金与正
ソフトなイメージ戦略実践

~中略~

北は「最高のカード」出した
「南北蜜月」は北の本音ではない

~中略~

ここまで検証してみると、北朝鮮が金与正を派遣した狙いが浮かび上がる。

「最高のカード」で韓国に恩を売り、
同時に南北関係の蜜月ぶりを日米など国際社会に印象づける思惑だが、
ただ、南北関係を蜜月にしたいというのは北朝鮮の本音ではない。

それを裏づけるように、会談でも、文大統領の訪朝を求めたものの、
南北首脳会談の具体的な日時に触れることはなかった。

会談後の昼食会で「早く平壌でお目にかかれたらうれしい」と、話した程度だ。

また北朝鮮は韓国が提案してきた
南北離散家族の再会事業や南北軍事当局者会談の開催などには依然、応じていない。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

このように、メディアは平昌五輪における南北間の歩み寄りを冷笑しつつ、
北朝鮮の行動には裏があるに違いないと決めつけていたのである。

彼らの読みが的外れだったことはわずか1か月後に証明されることになる。
その際、メディアは日本政府にだけ米朝韓の対話路線への転向を知らされていなかったことに対して
「蚊帳の外」と揶揄したが、実の所、本当に蚊帳の外だったのは彼らマスメディアだったと言える。

以下の文章は2018年2月11日に掲載された毎日新聞の社説を抜粋したものである。

 

北朝鮮が文氏に会談提案 平和攻勢に惑わされるな

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

筋の悪いくせ球だ。
独裁者のエゴを貫くために計算され尽くした甘い言葉に、惑わされてはいけない。

北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が
特使として派遣した妹の与正(ヨジョン)氏を通じて、
韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領に平壌での近日中の会談を提案した。

文氏は、会談実現へ向けた条件を整えていこうと応じたという。

核・ミサイル開発に対する経済制裁で陥った苦境を打開しようという北朝鮮の狙いは明白だ。

北朝鮮への国際的圧力は強まっている。
後ろ盾だった中国が制裁に同調するようになり、
石油精製品の輸入にはこれまでの9割減という上限が設定された。
洋上での密輸に対する監視も強化された。

金政権は貿易に頼らない経済作りを国民に呼びかけ、
厳しい制裁にも耐えられると主張する。

しかし当面はしのげたとしても、長期的な将来展望など描きようがない。

米国による軍事的圧迫も負担になっているはずだ。

朝鮮半島周辺で米軍が大規模に展開すれば、北朝鮮軍も警戒態勢を強化せざるをえない。
貴重な燃料を消費し、動員される将兵は疲弊する。
軍に不満がたまれば権力基盤にも悪影響が出かねない。

こうした閉塞(へいそく)状況を打破する突破口として、
対話に前向きな文政権に狙いをつけたのだろう。

北朝鮮は
いま平昌(ピョンチャン)冬季五輪を舞台にした平和攻勢を韓国に仕掛けている。

北朝鮮は一方で五輪開幕の前日に大規模な軍事パレードを行い、
大陸間弾道ミサイル(ICBM)も登場させた。核放棄に応じないという姿勢は明確だ。

文氏は核問題をめぐる米朝の対話を仲介しようとしている。
しかし朝鮮半島の非核化につながらない限り意味はない。
成果を急ごうとする文氏の態度には危うさを感じる。

五輪開会式前のレセプションでは
北朝鮮の金永南(キムヨンナム)最高人民会議常任委員長と
米国のペンス副大統領を同席させようとしたが、ペンス氏が席に着かなかった。
米国との調整が不足したまま準備を進めたようだ。

南北の首脳会談を必要としているのは北朝鮮である。
そこを見誤ると、核を温存したまま国際包囲網を突破しようとする
北朝鮮に手を貸すことになってしまう。

(https://mainichi.jp/articles/20180211/ddm/005/070/042000c)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ここでも「平和攻勢」という言葉で北朝鮮の軟化を非難している。
いずれの言葉にしても北朝鮮の姿勢を、
「表面的には友好的に接しているが、
その実、裏側では相手を出し抜くことを考えている」
という、したたかで嘘のあるものとして強調づけている。

強硬姿勢をとればそれはそれで口やかましく非難するのに、
協調へと舵を切ると、それはそれで気に入らない、どうせ嘘に決まっている、
裏があるのだ、話を聞くな、北朝鮮の思うつぼだ・・・などなど、
こういう態度を一貫して取ってきたわけだ。

ところが、最近になって、この「チャーム・オフェンシブ」とか
「平和攻勢」、「ほほえみ外交」という単語が意図的に別の意味に組み替えられる
現象が起きているのである。次の牧野愛博氏の記事を読んでみよう。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ã‚±ã‚½ãƒ³å—北連絡事務所爆破の“主役”、金与正氏の「本当の役割」
牧野愛博 2020/06/18 06:00

激しい言葉で韓国批判  ã€Œã»ã»ãˆã¿å¤–交」のイメージ一掃

~中略~

とりわけ金与正氏の韓国批判の激しい言葉は、これまでの人物像を一新するものだ。

与正氏は利発で礼儀正しい人物として知られる。
初めて外交舞台に登場したといえる18年2月、
平昌冬季五輪開会式に参加するために訪韓した際は、
文大統領とにこやかに談笑する姿が「ほほえみ外交」として注目された。

形式的には団長は、金永南最高人民会議常任委員長(当時)だったが、
与正氏は金氏を立てることも忘れなかった。

会談では金氏を上座に着席させようとし、慎重な金氏をドギマギさせた。

当時、金与正氏の受け入れに当たった韓国政府当局者は
「与正氏は公式日程以外の時間も、絶えず周囲に気を配っていた。
話題も豊富で、相手をしらけさせない。頭の良さを感じた」と語っていた。

父親の金正日総書記が金与正氏に愛情を注いでいたのは有名な話だ。
そして金総書記は、粗暴で反抗的な兄の正恩氏にむしろ手を焼いていたという。

2010年9月の労働党代表者会で正恩氏が公式に登場してからしばらく後、
歌唱力を認められた女性が、金正日総書記の私的な席で歌を披露したことがあった。

この席には、金総書記と事実上の婚姻関係にあった金玉氏や
正恩氏らが参加したが、金総書記は与正氏とばかり談笑し、
正恩氏は端の方でつまらなそうにしていたという。

正恩氏を巡っては、女性をめぐる醜聞や酒席などでの
「自分勝手な酒で、周囲に気を配らない」といった
悪評がたびたび漏れてきたが、金与正氏にはそうした話もない。

(https://www.msn.com/ja-jp/news/world/%E3%82%B1%E3%82%BD%E3%83%B3%E5%8D%97%E
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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

このように「オフェンシブ(敵対行為)」と呼ばれていたものが
いつの間にか文字通りの平和的協調的姿勢として定義が書き換えられているのである。

これはかつて自分たちが仕組んだバッシング、それも見当違いだった主張を
隠ぺいするものだと解釈ても差し支えなかろう。

記事では金与正の変節を印象付けるために、
この「ほほえみ外交」の言葉を使っているが正直、呆れたのは言うまでもない。

与正の人物像を良くするために兄の金正恩を暗愚な人物と対比的に説明するのも
いささか強引だし、記事の末部ではいつもの通り、北朝鮮は金正恩のせいで貧窮な生活を
強いられていて、民衆の不満がたまっているというお約束の定型文が載せられている。

牧野氏の合法詐欺師ぶりはいつもの通りだが、
他も似たり寄ったりであり、2018年6月の米朝、南北対話を経てもなお、
日本メディアの北朝鮮に対する分析力や敵意は変わらなかったと言うことであろう。

それにしても、自分たちがかつて北朝鮮の融和路線に対して
悪意あるもの、真意は別にあると主張してきたことを棚に上げ、
ここ最近の北朝鮮の言動に対して強硬姿勢はやめよと説教するのは本当に痛ましい。

ちまたでは安倍晋三の退陣がほのめかされているが、
仮に安倍政権が崩壊したとしても、メディアがこの在り様では事態は何も変わらないだろう。


アメリカ、日本をホワイト国に認定せず

2020-01-26 00:13:55 | æ¬§ç±³

この度、米財務省が発表した
対米外国投資委員会への届け出を免除する「ホワイト国」のリストが発表された。

簡単に言えば、安全保障上、信頼のおける国家に対しては煩雑な手続きを免除し、
より円滑な投資活動を約束するというもの。

今回は、ファイブ・アイズ該当国がリストに選ばれた。

 

 

ここで自然、気になるのはアメリカとの親密な関係を強調し、
日本外交の成功を吹聴していた日本政府や極右論者の反応である。

まさかとは思うが「ファイブ・アイズ該当国でないから」という理由で
リスト入りを果たせなかったことを正当化はするまい。

「100%一致」と銘打つほどの友好国であるならば、
 該当国でないからこそ、特別扱いを受けてしかるべきだからだ。

 

とはいうものの、正直、自信は無い。

 

極右論者の傾向として

①アメリカを絶対的に支持する

②アメリカを絶対的に支持する日本政府を絶対的に支持する

③アメリカの判断は正しいという断定を前提に発言する

というものがあるので、今回の除外に対しても
「問題ない」「それなのに騒ぐとは」「何と愚かな」
と冷笑するような気が何となくする。

 

慰安婦問題に対する韓国政府への報復処置として
ホワイト国除外を日本が行い、日韓外交に亀裂を生ませたこと、

転じて言えば、①政治的な理由で日韓経済を混乱させたこと、

そして、②対米従属を徹底したにも関わらず、ホワイト国に選定されなかったこと。

この2点に対して、いわゆる左翼と呼ばれる人々は問題提起しているが、
そもそも、アメリカに徹底的にコケにされていることを問題とは思わない連中を
茶化してもどうしようもない気がする。

逆に、日米関係の在り方を見直そうとする姿勢を嘲笑されて終わってしまうだろう。

 

最近、とみに思うのだが、日本の左翼はもう
極右論者を相手にしなくても良い気がする。

レイシストがどれだけ声高に叫んでも
国際社会の場では彼らは否定される存在なので無視しても良いと思う。

むしろ、注意を要するのは、彼らの排外主義を利用するようにして
権力を拡大している極右の政治家や実業家、知識人だろう。


政治と経済と情報。
この3つを握られると問題が生じた際にも修正が効かなくなるからだ。

そういう意味では、彼らが非難するべきは
政財界の差別主義者、彼らを支持するマスメディアであって、

Twitterやブログに跋扈する有象無象の極右論者は
端から対話相手としてみなさないほうが良いと思う。

火事が起きた際には、火元を消火するのが肝心であって、
玄関先を浮遊している火の粉を消したところでどうしようもない。それと同じことである。


大阪の高校は本当に無償化しているのか?

2019-08-13 22:21:36 | æ—¥æœ¬æ”¿æ²»


先日、国家公務員の月給およびボーナス支給額が
民間のそれより下回っていることが判明した。

これに対応するべく、政府は賃上げを要求。

公務員の賃上げは6年連続となったが、
上げ幅は去年よりも小さく、かつ若年層に限っての引き上げになる。






このニュースに対して
大阪維新の会に所属する佐々木りえ大阪市議会議員が
消費税増税の中、公務員の給料を上げるとはけしからんといったコメントをした。


どうも佐々木議員の頭の中では
公務員は消費税を支払わなくても良いことになっているらしい。


①公務員の報酬が民間のそれよりも低い
↓
②格差を埋めるために賃上げを要求
↓
③公務員の給料は高い!

意味が分からない。







全ての公務員は高給取りであり、ぜいたくをしている
という決めつけを前提に論を進めるから

実際は民間より安いという実態を認められないのではないだろうか。







そもそも、維新の会は消費税増税に反対の立場ではない。

あくまで凍結であり
その時期が来たと維新が判断した際にはゴーサインを送る立場だ。










維新の会の政策は
端的に言えば民営化だと言える。



水道民営化や私立高校への積極的支援が典型的だが、
公的機関は出資者に留まり、運営は民間に委託する。

その財源は人件費削減でねん出する。こういう理屈である。


しかし、この政策は果たして成功しているのだろうか?


本記事は大阪の高校無償化を対象に
この点を検証するものである。



大阪府の公立高校と私立高校の費用を比べてみた

上記記事は、今年(2019年)大阪で高校受験をした学生の保護者が書いたもので
同記事によると、大阪でも学費がかかることが書かれている。


例えば、入学金と振興費、学年諸費の合計は
公立高校が3万2710円であるのに対して私立は29万である。

受験料も私立が2万円であるのに対して公立は2200円。桁が違う。

教科書にかかる費用は効率が2万円であるのに対して
私立は4万円である。


ここで重要なのは、あくまで支援するのは授業料に関してのみであって、
上に述べたような別途費用は保護者が負担するという点である。

そのため、格差を埋めるという名目でありながら、
実際に恩恵を受けるのは中産層であることが指摘される。



平成28年度以降に入学した皆さんへの授業料支援制度について



肝心の授業料だが、実はこれも
免除されるのはごく一部の世帯でしかない。


上にあるように親権者(父母)の合計年収が590万、
平均で49万であった場合に限り免除となる。

総務省の調べによれば、
大阪府の35~39歳の平均年収が509万、40~44歳のそれが562万なので、
例えば父親が正社員、母親がパートタイム労働者だった場合には
無償化の対象外になるケースが少なくない
と言える。


次に20万の負担となる世帯についてだが、
この20万はあくまで授業料が58万だった場合に限っての話であり、
仮に授業料が65万だった場合には、さらに7万円の負担を強いられる。


以上から、「無償化」と表現するには
あまりにも実体と乖離しているのではないかというのが私が導き出した見解である。



府立高等学校の授業料と就学支援金について

この話題に関して見逃せないのが
府立高校の授業料は国の支援により、すでに免除されているという点である。

府立の授業料は11万8800円だが、この額は国の支援策によって
家庭がその分を支払わなくても良いようになっている。


つまり、世帯によっては私立の授業料が免除になると言っても、
依然、公立高校の学費のほうが安いのである。




生徒減で府立2高を削減 大阪府教委が生徒募集停止 30年度までに計7校閉鎖


仮に「全ての児童に教育を」と考えているのであれば、
私立高校より公立高校を支援したほうが経済的にも効率が良い。


現行の制度に加えて、教科書や制服、修学旅行や卒業アルバム等の雑費を
府が援助するだけで完全無償化は実現できる。

さらに指導力のある教員を育て、質の高い授業を提供すれば
安価で進学率の高い教育を行う都市として箔がつくだろう。


・・・と思うのだが、大阪府は上の記事で書かれているように、
公立高校に対して支援どころか切り捨てる政策を一貫して行っている。


「学生に選択の自由を与える」という名目ではあるが、
 実際には公立から私立へと児童を誘導するのが目的と言っても過言ではない。

まさに教育の民営化である。



https://czemi.benesse.ne.jp/open/nyushi/exam/27/feature/1276092_5206.html

ベネッセ・コーポレーションのページを読んでみても、
大阪の授業料免除制度は、受験産業にとって都合の良い政策であるように感じる。

本来、公立高校の教育の質を高め、教科書代や入学金を援助、埋め合わせたほうが
府にとっても、家庭にとっても、比較的わずかな財源で済ませられる
はずなのに、
それを一切やろうとせずに、私立高校にむけて中途半端な援助を行う。

時には府立高校の廃校までしてしまう。

これは、私立大学や学習塾・通信教育を生業とする民間企業に
利益を誘導するものではないか
というのが私の見解である。


なお、補足として以下のページも紹介しておく。

維新の授業料無償化はネオリベ施策。私学値上げ→固定化の構図




維新の会 「身を切る改革」で教育「無償化」は事実か?


身を切る改革によって私立高校の無償化が実現したと主張する
維新の会のメンバー、その支持者の言葉も現実を反映したものではない。

私立高校の「教育無償化」(実際は授業料免除)制度の予算は
2018年度では192億円だが、議員報酬の切り下げで生まれた財源は7億円に満たない。


この約190億円がコストカットで得たものかどうかは議論の余地が大いにある。



大阪府、平成28年度以降も私学無償化継続へ 多子世帯を優遇 年収上限は引き下げ


なお、
過去の記事を読めば、大阪の授業料免除制度は
年を経るごとに劣化していることがわかる。

身を切る改革によって実現と銘打っても
実際には、徐々に首が回らなくなっているのである。



この状況を打破するには、
先に述べたように民間に教育を輸出するのではなく、
公教育の充実へと舵を切ることが求められるだろう。



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この問題を「参院選FactCheck」として最初に指摘した際には、
所得制限や多子家庭への補助を無償化と呼ぶのは適切ではないとの指摘も多く寄せられた。

例えば、大阪市を完全無償化と呼んでよいかも議論が分かれる。

ファクトチェックの記事では松井代表の発言は「不正確」と指摘したが、
「詐欺ではないか」との意見も寄せられている。

日本維新の会には、そうして点も踏まえて丁寧な説明を求めたい。

一連の記事で日本維新の会に質問を送って回答を求めたが回答は得られていない。

https://news.yahoo.co.jp/byline/tateiwayoichiro/20190720-00134902/

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以上、大阪の高校無償化制度について検討を加えてきたが

結論としては

①公立高校無償化は国の支援によるもの。
②私立高校無償化は一部の世帯に限定され、かつ国の支援を補う形になっている。

③依然、公立高校のほうがはるかに学費が安い。
④にも関わらず、府は公立高校の支援を怠ってきた。

④財源は議員報酬の削減によってねん出したとも言い難く
⑤年々、サービスの内容が劣化している。

⑥この状況を打破するには公教育への支援を増やすことが求められる。

の6点が挙げられるだろう。

上に引用したように、一部の世帯に限定して実施するものを
「無償化」と呼んでよいかどうかは大いに疑問である。


キューバなどの社会主義国では授業だけでなく、
教材も含めて全世帯に対して無償で提供されていることを踏まえれば、
これは「無償」ではなく「免除」と呼ぶべきものであろう。


海外にも奨学金制度や授業料免除制度があるが、
これを差して「無償化」とは呼ばない。


ましてや、あたかも全世帯が無償で教育を受けられるかのように
吹聴されているのだから、このような表現は大いに訂正されるべきだ。





公立高校の無償化制度(あくまで授業料に関してのみだが)は
国によるものなので、維新の会の手柄ではないのだが、
なぜか、この団扇では維新の功績として数えられている。


維新の会の最大の問題点は
教育や外交に対する姿勢以前に、
この平然と嘘をつく態度にあるのではないだろうか。



【ニュース・10/13追記】
「大阪は教育費が実質無償になっている(松井大阪府知事)」って本当???




維新代表が「幼稚園、保育園の無償化が実施されている」とした大阪で、
実際は全市町村の20%未満