Tony Cartalucci/Brian Berletic

2024年11月20日 (水)

トランプ政権:「戦争タカ派なし」から「全員戦争タカ派」へ

Brian Berletic
2024年11月13日
New Eastern Outlook

 2024年のアメリカ大統領選挙までの数週間、前大統領で現在次期大統領のドナルド・トランプがアメリカの海外での戦争を中止し、代わりにアメリカ自体に投資してくれるだろうとアメリカ人や世界中の多くの人々は期待していた。



 トランプ政権:「戦争タカ派なし」から「全員戦争タカ派」へ

 こうした期待は、トランプ陣営を取り巻く言論に基づいていた。候補者の息子、ドナルド・トランプ・ジュニアは「全てのネオコンと戦争タカ派をトランプ政権から締め出すには最大限の圧力が必要だ」と公に発言したが、これはトランプ候補の選挙運動中の言論を反映している。

 トランプ次期大統領の考慮対象と被任命者は全員強烈なネオコンだ

 残念ながら、ドナルド・トランプ次期大統領の前回任期時と同様に、これは、ワシントンDCで暮らし、息をしている最も声高な「ネオコンと戦争タカ派」で内閣を埋める前に、戦争に疲れたアメリカ人の支持を確保して、海外の国々のバランスを崩すことを意図した空約束だった。

 思惑の継続

 トランプ次期大統領の前回政権では、ジョン・ボルトンやマイク・ポンペオやニッキー・ヘイリー等の筋金入りネオコンや戦争タカ派が閣僚を構成し、連中はトランプ大統領がオバマ政権から引き継いだ全ての戦争を継続し、中国やイラン、更にロシアも含め、アメリカの特殊権益集団が長年求めてきた更なる戦争を誘発しようと絶えず働いてきた。

 第一次トランプ政権中に、アメリカは中国との貿易戦争を開始し、スマート・フォン・メーカー、ファーウェイを含む中国最大で最も成功している企業を骨抜きにすることを狙った措置を講じ、全欧米諸国での販売禁止や、アメリカを拠点とするグーグルによる、ファーウェイへのAndroidオペレーティング・システム供給停止や、更に、カナダ旅行中のファーウェイCFO孟晩舟を拘留するまでに至った。

 第一次トランプ政権下でも、アメリカはオバマ政権から引き継いだ政策として、中国を領土内に包囲・封じ込める手段としてアジア太平洋全域で軍備増強を継続した。

 中東では、オバマ政権下で始まったシリア不法占領をトランプ政権は継続し、シリア政府と同盟諸国に対する攻撃を続け、シリアの石油をくすねるのをトランプ大統領は自慢していた。またトランプ政権第一期には、公務でイラクを訪問中のイラン高官カセム・ソレイマニ将軍をアメリカが暗殺したが、これはイラン、イラク両国に対する紛れもない戦争行為だった。それまで、自称「イスラム国」との戦いの上で、シリアとイラクを含む地域全体で、ソレイマニ将軍は成功していた。

 ロシア権益の代理人だとトランプ大統領は非難されたが、実際は彼の政権がウクライナ軍に武器供与し始め、ウクライナにおけるロシアとの代理戦争を加速させ、2022年2月に特別軍事作戦(SMO)をモスクワに開始させる最後の一線を越えたのはほぼ確実だ。中距離核戦力全廃条約からアメリカが脱退し、その後、ロシアに向ける中距離ミサイルをバイデン政権がヨーロッパに配備する道を開いたのも第一次トランプ政権の時だった。

 アメリカの海外介入を終わらせるという選挙公約に、第一次トランプ政権が著しく違反したため、多くのトランプ支持者は、トランプ大統領の「経験不足」を含む様々な言い訳に頼り、ポンペオやボルトンやヘイリーが本当は何者か彼は知らなかった可能性があり、第二次政権では彼の内閣は、そこで学んだ教訓に基づいて行動するはずだと主張した。

 沼地を補充する

 時は流れ、トランプ新政権は、ボルトンやポンペオやヘイリーが新政権では役職につかないと発表し、教訓を実際に学んだのだという希望を一時的に高めた。

 しかし、この状態は長くは続かなかった。その後、次期国家安全保障担当大統領補佐官はジョン・ボルトンと思想的に似ているマイク・ウォルツになる可能性が高いと発表された。ニッキー・ヘイリーと思想的に良く似たエリス・ステファニックが国連大使に就任すると発表された。またマルコ・ルビオリチャード・グレネル両人が次期アメリカ国務長官候補として検討されているが、彼らの考えは、トランプの前国務長官マイク・ポンペオやバイデン政権下のアメリカ国務長官アンソニー・ブリンケンと区別がつかない。

 トランプ次期大統領が検討し任命した人物は、いずれも海外での戦争、特にロシアや中国やイランに対する戦争を擁護して暮らしてきたが、リビアやシリアやベネズエラや他の多くの国々に対する戦争も主張してきた強烈なネオコンや戦争タカ派だ。ステファニックは、2014年のウクライナを含め、世界中で政治干渉に関与しているネオコン主導の組織、全米民主主義基金の 「専門家 」としてリストアップされている。

 トランプ次期政権によるネオコンや戦争タカ派指名は「釣り餌」だと主張する人もいるかもしれないが、トランプ政権がJ・D・ヴァンスを副大統領候補に選んだのは、実際、ウクライナ以外では、戦争と好戦主義が続くぞという公然の宣言だった。

 ニューズウィークは「アメリカはロシアではなく中国と戦うための武器が必要だとJD・ヴァンスがティム・ディロンに語る」という記事で「ウクライナへの軍事支援より、インド太平洋の安定と台湾支援をアメリカは優先するべきだ」と明言している。

 彼が反対を唱えて選挙戦で勝利した政策に関与していたネオコンや戦争タカ派と、トランプ次期大統領が親密で、彼らを任命したことは、そうでないことを示唆する魅力的な言辞にもかかわらず、トランプ第一次政権によるアメリカ外交政策を切れ目なく継続したのを繰り返すことを意味する。

 他地域で戦争を加速させるために、ウクライナを一時停止

 すると、ウクライナ紛争を終わらせるとトランプ新政権が決意しているように見えるのは矛盾するように思えるかもしれない。これはアメリカにおける政治移行というより、ホワイトハウスの主やアメリカ議会の支配者が誰だろうと、アメリカ外交政策を左右する選挙で選ばれないアメリカ特別権益団体間での優先順位の変化を表しているにすぎない。

 ウクライナでのアメリカ代理戦争は、それを引き起こす上で、一期目トランプ政権も役割を演じた戦争だが、どう見ても終焉しつつある。ウクライナを犠牲にして「ロシアに手を広げさせる」狙いは、可能な限り最大限に実現された。アメリカの備蓄は枯渇し、残されたアメリカ軍事力は、エスカレーションで、イランや中国とのより大規模で危険な戦争のため温存する必要があるため、ワシントンの選択肢は、ウクライナでの攻撃を強化するか、二つの、あり得る戦争の成功可能性が完全に閉ざされる前に、イランと/または中国に軸足を移すかの、いずれかだ。

 トランプ次期政権はネオコンや戦争タカ派で占められており、アメリカが据えた分離主義台湾政権の武装を彼らは公然と推進し、最終的に、台湾を中国から永久に切り離そうとしている。台湾独立をアメリカ国務省は公式には支持しておらず、中国は一つで、台湾は中国の一部で、北京に承認された中国政府は中華人民共和国(PRC)のみだとする「一つの中国」政策で北京と二国間協定を結んでいるにもかかわらずだ。

 この紛争に備える一環として、オバマ、トランプ、バイデン政権を通じて、アジア太平洋地域における軍事的存在をアメリカは拡大しており、この政策の最も声高な支持者で構成される第二次トランプ政権下でも間違いなく継続されるだろう。

 この過程には、現在フィリピン最大の貿易相手国で、最近まで重要なインフラ構築パートナーだった中国とフィリピン間に対立を作り出し、かつてアメリカ植民地の東南アジアの国フィリピに対する米軍の足跡を拡大する口実を作ることも含まれる。これにより、アメリカは、中国と台湾周辺の紛争地帯を近隣の米軍で更に包囲することが可能になる。

 バイデン政権は中国に対し「軟弱」だと、アメリカの政治「右派」は主張したが、中国との戦争に備えるため、米軍の徹底的再編が行われたのもバイデン政権下だった。

 これには、米海兵隊を高度に機動性がある対艦ミサイル部隊への再編や、戦争が始まった場合、米軍施設に中国が報復するのをより困難にするために、米空軍基地をアジア太平洋地域全体に分散させる機敏な戦力展開(ACE)の採用などが含まれる。

 トランプ政権が、その後のバイデン政権下で始まったウクライナにおける対ロシア・アメリカ代理戦争の舞台を整えたのと同様、公然と敵対的な反中国政権が権力を握れば、これら変革された米軍部隊が今や完全配備されることになるだろう。

 極めて明らかなのは、アメリカ外交政策が、アメリカの選挙により決定されるわけではないことだ。選挙は、継続する思惑に過ぎないものを国民に売り込むために使われる口実や、その口実を言う人物や、アメリカ外交政策が、選挙があるにもかかわらず、継続的に変化しそこねている理由の言い訳を決めるにすぎない。

 今後四年、アメリカの敵意に直面する世界中の国々は、アメリカによる海外侵略が全く不可能な状況を作り出す多極的国際秩序の構築に引き続き取り組まなければならない。これは、アメリカの制裁や強力な軍事的抑止力が及ばない、金融や経済的代替手段を通じて、制裁であれ軍事力であれ、代理介入であれ直接介入であれ、アメリカの強制力を抑制する金融、経済、外交、軍事手段を使用することで実現可能であり、実現されつつある。これにより、もはや自らを押し付けられない世界と建設的に協力するという唯一の選択肢がアメリカの特殊権益集団に残される。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、ライター。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/11/13/the-trump-administration-from-no-war-hawks-to-all-war-hawks/

----------

 The New Atlasで筆者本人が本記事について語っている。
The Trump Administration: From “No War Hawks” to ALL War Hawks 35:10
 Alex Christoforou Youtube
Gabbard DNI. Gaetz AG. Bolton BALLISTIC. EU freak out as Russia wins. Economist, Elensky clueless 31:12
 トゥルシー・ギャバードが国家情報長官
 対イラン強硬派のマルコ・ルビオが国務長官
 国連大使にエリス・ステファニク下院議員
 ステファニク:大学内反戦デモなど「反ユダヤ主義」対応を下院公聴会で追及し、ハーバード大など複数の学長辞任をもたらした議員

  Judging Freedom
COL. Lawrence Wilkerson : Trump and the Defense Department 27:56
 日刊IWJガイド
 「ウクライナ軍が米国製ミサイルでロシアを攻撃! プーチン大統領は改定核ドクトリンに署名! 退陣間際のバイデン政権による核戦争の危機!」2024.11.20号

 ■はじめに~ウクライナ軍が、米国製ATACMSミサイルでロシア領内を攻撃したことが明らかに! 一方、プーチン大統領は改定した核ドクトリンに署名!「ロシアが核保有国に支援された非核保有国によるいかなる攻撃も共同攻撃と見なす」との内容は、米国がウクライナに許可したATACMSミサイルでのロシア攻撃に該当! 退陣間際のバイデン政権が、停戦を公約に掲げたトランプ氏を選んだ直近の大統領選で示された「現在の民意」を踏み躙り、ウクライナ紛争の火に油を注いで、核戦争の危機に! スロバキアのフィツォ首相は、「和平交渉を妨害し、遅らせる試みだ」と非難!

2024年9月29日 (日)

イランに罠を仕掛けたワシントン イランは餌に食いつくだろうか?

ブライアン・バーレティック
9月24日
New Eastern Outlook

 ウクライナ紛争が続き、アジア太平洋地域で緊張が高まる中、ワシントンは中東で、代理勢力イスラエルと増え続ける近隣諸国や組織との間での同様に危険な地域戦争に動いている。

 イランに罠を仕掛けたワシントン イランは餌に食いつくだろうか?

 これには、レバノンとレバノンを拠点とする軍事・政治組織のヒズボラや、シリア・アラブ共和国や、イランやイラク全土のシーア派民兵や欧米メディアが「フーシ派」と呼ぶイエメンを拠点とするアンサル・アッラーが含まれる。

 この地域に広がるこの大規模な国家や組織の集団には共通点がある。つまり、それらは全て、この地域におけるアメリカ優位に対する障害となっており、第二次世界大戦終結以来、それぞれに対してアメリカ自身も直接的および/または間接的に戦争を仕掛けてきた。

 東ヨーロッパでロシアとの代理戦争を仕掛けるため、アメリカがウクライナを取り込み、アジア太平洋地域で台湾を政治的に掌握して中国に対して利用しているのと同様、アメリカはイスラエルを何十年にもわたって政治的、軍事的に注意深く育て、暗殺やテロ攻撃や軍事攻撃、更にはアメリカ自身がもっともらしい否認を求める戦争を誘発するための代理として利用してきた。

 代理であろうとなかろうと、ワシントンは遅かれ早かれイランとの戦争を望んでいる。 この目的のため、武器や弾薬の継続的供給も含まれる毎年数十億ドルの援助をアメリカはイスラエルに行っている。これなしに、イスラエルの様々な侵略戦争は遂行できない。表向き、ワシントンはは中東の平和と安定を求めるふりをしているが、イスラエルへの継続的支援は、この地域を蝕む永続的紛争と不安定さを助長している。

 最近、イスラエルに対し、ガザへの軍事作戦の自制を促しているとアメリカは繰り返し主張している。しかし今年6月、実際は、イスラエル空爆に使用される数千発の爆弾を含む軍需品をアメリカは継続的に送付して、ガザの大規模破壊を可能にしているとロイター通信が報じた

 アメリカとその代理イスラエルは、イスラエルの行動は自衛のためだと主張しているが、暴力は一方的で、ガザはほぼ平らげられ、何万人もの人々が死亡や負傷や避難を余儀なくされている。ガザでの作戦と並行して、イスラエルはレバノンやシリアやイラン攻撃も行っているが、イスラエル軍自身によれば、これらの国々はいずれも昨年10月のハマスによる攻撃に関与していないという。

 これら三国はイスラエルの挑発行為に対する報復に繰り返し抵抗してきた。

 イスラエル:ウクライナ式破城槌の元祖

 イスラエルの好戦的性格は明白で、中東全域でより広範な戦争を誘発し、アメリカが介入を正当化するための十分に文書証拠があるアメリカ政策の一環だ。そして、アメリカと代理勢力イスラエルは、核兵器を含む、正当化が困難または不可能な兵器や戦術を使用する際、その戦争を引用できる。

 2009年、ブルッキングス研究所は「ペルシャへの道はいずれか? イランに対するアメリカの新たな戦略の選択肢」と題する170ページの論文で、イランとの戦争遂行を含む、イラン政府を強制し、封じ込め、最終的に打倒するための様々な手段を詳述した。

 この論文は、アメリカ自身がイランに対し軍事攻撃を開始するのが、いかに困難かを認め、次のように述べている。
…いかなる対イラン軍事作戦も世界中で非常に不評を買う可能性が高く、作戦に必要な兵站支援を確保し、その反動を最小限に抑えるため適切な国際的文脈が必要となるだろう。
 また、次のようにも述べている。
…アメリカが空爆を開始する前に、イランの挑発を理由にして空爆を正当化できれば、遙かに望ましい。明らかに、イランの行動がより非道で、致命的で、いわれのないものであればあるほど、アメリカにとって有利になる。もちろん、世界に気付かせずに、そのようにイランを挑発し、弱体化するようアメリカがこの駆け引きを推進するのは非常に困難だろう。
 イスラエルを利用して最初のイラン攻撃を遂行し、その責任からアメリカが距離を置くことに一章丸々充てられている。「ビビに任せろ:イスラエルの軍事攻撃を許すか、奨励する」と題されたこの報告書は、はっきり次のように述べている。
…この政策選択肢の狙いは、イランの主要核施設を破壊し、それによりイランの国産核兵器能力の獲得を大幅に遅らせることだ。しかしながら、この場合、国際社会による批判とイランの報復両方が、アメリカを逸れ、イスラエルに向けられるのを期待して、イスラエル自身による攻撃をアメリカが奨励したり、場合によっては、支援したりしかねない。
 イスラエルの攻撃は 「自らがイランに対して起こす侵略戦争の前にアメリカ必要な口実をえることになる、アメリカや他の国々を巻き込む可能性があるイスラエルとイラン間のより広範な紛争を引き起こしかねない」とこの報告書は指摘している。

 この政策を念頭に置くと、イランと同盟諸国に対し、イスラエルが着実に挑発的攻撃を強化している理由が理解しやすくなる。イスラエルの挑発行為を通じて、アメリカは自らも参戦できる、より大規模な戦争を誘発し、中東で新たな侵略戦争を始めるのではなく、同盟国を支援しているように見せかけようとしているのだ。

 究極的に、この罠が成功するためには、こうした数多くの挑発行為の一つにイランが報復し、不釣り合い、あるいは「いわれない」とさえ言えるような形でアメリカと同盟諸国が報復しなければならない。

 これまでのところ、イランの対応は極めて慎重だ。

 短期的復讐と長期的勝利

 イスラエルによる暗殺やテロ攻撃や、更には一方的軍事攻撃が、レバノンとシリア両国に対し長年行われてきたが、両国の存続が深刻に脅かされることはなかった。

 実際、アメリカが仕掛けたシリアの生存を脅かしていた代理戦争は、シリア国内でのシリア軍とロシアとイランの安全保障協力により打倒された。

 同様に、長年にわたり、テロや政治干渉や暗殺など直接的、間接的攻撃にイランは耐えてきたが、これら敵対行為が国民国家としてのイランの存続を深刻に脅かすことはなかった。イランを弱体化させ不安定化させることを狙ったアメリカ制裁と政治干渉は、アメリカや代理勢力への報復ではなく、今年初めBRICSに加盟して以来、イランが台頭しつつある多極世界との緊密な協力と参加を通じて、これまで慎重に管理され克服されてきた。

 より広い意味では、多極化した世界が規模と複雑さを増し、アメリカ主導の国際秩序が衰退するにつれ、中東を含む世界のどこででも優位を主張するワシントンの能力が衰えている。このため、世界の勢力均衡が更に不利になる前に、経済力と軍事力の残りの優位性を利用して敵を排除しようとして、ワシントンは時間との戦いを繰り広げている。

 代理戦争であろうとなかろうと、遅かれ早かれ、ワシントンはイランとの戦争を望んでいる。益々必死な挑発行為に対するイランや同盟諸国の短期的復讐心を感情的に満たすための報復は地域全体を破壊しかねない、より広範で、より多大な犠牲を伴う戦争を引き起こしたいワシントンの願望を助長するに過ぎない。

 むしろ、安全保障を強化すべきなのだ。イランと同盟諸国は、国内や地域全体で経済力と政治力を強化するのと同様、軍事力強化を継続する必要がある。レバノンで最近起きた爆発物を仕掛けた電子機器を国内にばらまくテロ攻撃などのイスラエルが実行した挑発の多くは完全に予測可能で予防可能だ

 アメリカと代理勢力が中東を不安定化させようとするあらゆる試みに対し、中東地域とそのパートナーは安定の維持に一層力を入れ、紛争拡大を回避しなければならない。将来の挑発行為が効果を弱め、実行困難になるようにするには、安全保障と外交の努力を継続的に組み合わせる必要がある。

 こうした挑発に反撃するのではなく、それを克服することで、アメリカ主導の一極主義から、より良い多極主義の世界へと世界の勢力バランスを根本的に転換し続けるために必要な時間が他の国々とともに中東は得られる。しかし、それが実現するまでは、アメリカが仕掛けたワシントンが多極主義を葬り去ろうと破壊的戦争を引き起こすことを意図した罠罠を各国は避けなければならない。

 ブライアン・バーレティックはバンコクを拠点とする地政学研究者、ライター。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/09/24/washington-sets-trap-for-iran-will-iran-take-the-bait/

----------

 The Chris Hedges Report イスラエル人ジャーナリスト、新刊The Killing of Gazaを語る。
The Looming Catastrophe in the Middle East (w/ Gideon Levy) | The Chris Hedges Report  54:15

Chris Hedges
Sep 28, 2024
 耕助のブログ
No. 2283 アメリカ流の戦争
No. 2282 ウクライナ紛争について知っておくべきこと
 植草一秀の『知られざる真実』
総裁選裏側の自民長老優勝劣敗

2024年9月22日 (日)

最近のレバノン・ポケベル・テロ攻撃は予測可能、予防可能だった

ブライアン・バーレティック
9月20日
New Eastern Outlook

 レバノン全土でイスラエルが起こし、最少子ども一人を含む、数人を殺害し、数千人を負傷させたこの無差別テロ攻撃を「未曾有の」「 巧妙な」ものと欧米メディアは呼んでいる。この攻撃で、遠隔操作で爆発物を爆発させたポケベル5,000台が使われたと報じられているが、この攻撃には予測不可能なものても、防げないものでもなかった。


 最近のレバノン・ポケベル・テロ攻撃は予測可能、予防可能だった。

 「イスラエルがヒズボラのポケベル5,000台に爆発物を仕掛けたと情報筋が語る」という記事で、ロイターは次のように報じている。  
この作戦はヒズボラにとって未曾有のセキュリティー侵害であり、レバノン全土で数千台のポケベルが爆発し、ヒズボラの戦闘員やベイルート駐在のイラン特使を含む9人が死亡、約3,000人が負傷した。

 レバノン治安筋によると、ポケベルは台湾のゴールド・アポロ社製だが、同社がポケベルを製造したのではなく、自社のブランドを使用する権利を持つ欧州企業が製造したものだと主張している。
 新品のポケベルの中に最大3グラムの爆発物が隠されており、「暗号化されたメッセージが送信され、同時に爆発物が作動した」時に爆発したとロイター通信は報じた。

 ポケベルは台湾を拠点とするメーカーが製造したもので、メーカーは自社ブランドの使用許可を得てヨーロッパで組み立てられたと主張しているとロイター通信は報じている。

 ヒズボラの治安、行政、医療、救援や関連ネットワークに配布するため購入されたポケベルは、製造から出荷までの間ずっと敵の手にあり、その後レバノンに到着したため、少なくともアメリカと代理組織が10年以上にわたり実行してきた十分証拠のあるセキュリティー侵害にさらされた。

 安全保障の防衛は、適切に行われてさえ、ひるむほど困難な作業だ。

 今回、この装置は遠隔起爆装置に改造され、装置を所有している人を重傷または死亡させるか近くにいる人を重傷または死亡させるに十分なエネルギーを持つものになった。

 この攻撃が可能になったのは、安全保障対策の不備や、脅威がこれまで考えられなかったからではなく、国外から技術を調達する危険性が良く知られているにもかかわらず、公的や国内での使用を目的とした製品調達に関わる国家や運用上の安全保障政策と手順が全く欠如していたためだ。

 IT機器を時限爆弾に変える長い実績

 アメリカ国民で元アメリカ国家安全保障局(NSA)契約職員のエドワード・スノーデンはポケベル攻撃はイスラエルの「ハッキング」により装置のバッテリーが改ざんされた結果ではなく、工場または出荷施設で装置が改ざんされて爆発物が挿入された結果だと最初に疑った人物の一人だった。2024年9月18日ソーシャル・メディアXへの投稿で、2013年にNSAチームが輸送中に荷物を開けてIT機器を改ざんした写真をスノーデンは掲載した。

 スノーデンは下記のように発言している。

 
2013年に暴露された大規模監視の極秘写真のことを私は常に考えている。この写真では輸送中の商用貨物 (多くの場合、空港) をNSAが改変し、最終受取人をスパイしていたことが明らかになっている。10年経っても貨物のセキュリティーは改善されていない。

 2015年の記事で、情報技術を他国に依存することによる国家安全保障への影響について、筆者は警告した。その記事で、ポピュラー・サイエンス誌が「interdiction(阻止)」と呼ばれる過程に言及しているのを引用し、その過程について「郵送される物品を途中で取り押さえて、改変した物と入れ替えること」と説明した。

 また、2013年のオーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー記事「インテル・チップがアメリカ・スパイを内部侵入させる可能性:専門家」も引用して、多数のサイバー・セキュリティー侵害について説明し、アメリカ国家安全保障局(NSA)が 「インテルとAMDが製造したチップにバックドアを埋め込み、装置にアクセスして制御できるようにしている」可能性を指摘した。

 既に2013年には、海外で製造されたIT機器が、工場内や輸送中に「セキュリティを損なわれる」リスクが非常に高いため、ロシアや中国などの国々は、公務に不可欠なプロセッサやオペレーティングシステムやコンピューターなどのハードウェアを独自に製造し始めたり、そのようなハードの使用を完全に排除したりする作業手順を作成していた。

 10年以上、海外から調達するITハードは、隠喩的に、情報セキュリティーを危険にさらす時限爆弾だった。今回、この長年のセキュリティーの欠陥に対処する真剣さが欠けていたために、ITハードが文字通り爆弾に改変されたのだ。

 今回はレバノンにとって、余に少な過ぎ、余に遅すぎた

 今日、こうした脅威の危険性はより深く理解されているだけでなく大幅に増大している。現代のスマートフォンはレバノン中で、イスラエル諜報機関に頻繁にセキュリティが損なわれており、ヒズボラ指導部はスマートフォンを捨てるよう構成員に奨励している。

 ロイターは次のように報じている。

 
2月13日のテレビ演説で、携帯電話はイスラエル・スパイより危険で、壊すか埋めるか鉄の箱に閉じ込めるべきだとヒズボラのハッサン・ナスララ事務局長は支持者に厳しく警告した。

 その代わり、ヒズボラは、戦闘員から救援活動に従事する医療従事者まで、この集団の様々な支部の構成員へのポケベル配布を選んだ。

 ITハードのセキュリティ侵害がもたらす一般的危険性は理解されてはいたものの、それを防ぐための効果的な対策は実施されていなかった。

 ハードとソフト全てが海外製造されており、アメリカが頻繁に(多くの場合、業界パートナーと協力して)両方のセキュリティを侵害しているため、侵害されたスマートフォンを廃棄して、アメリカや、その代理組織と結託、または影響下にある業界が同様に製造したポケベルに置き換えるのは、レバノンの国家安全保障やヒズボラの作戦上の安全性を損ねる機会を増やすだけだ。

 ITセキュリティを本気で考える

 ITハードや、それが可能にする情報空間は、国家にとって国境や空域や海岸同様、保護すべき重要な国家安全保障の新領域だ。

 重要な防衛機器が改ざんや破壊や他の方法で危険にさらされると知りながら、アメリカや、その代理組織から、そのような物品を、ヒズボラやイランやロシアや中国が購入しないのと同様に、国家や組織は、自分の情報空間を維持し、使用し、保護するために、敵からの、そうした手段の購入は避けなければならない。

 ヒズボラやレバノン政府や軍や、新興の多極世界の政府や軍や重要機関や組織は、国家安全保障の他分野と同様に、情報技術の面でも、緊急に自立を確立する必要がある。

 コンピュータやプロセッサやスマートフォンや無線やポケベルや他の全ての電子装置を含むコンピュータの個々の部品やソフトやオンライン・プラットフォームの製造は、国家自身または信頼できる同盟諸国により設計、製造、および/またはコーディングされる必要がある。情報領域全体で使用されるハードやソフト設計、製造やコーディング・プロセスは、情報技術を有する政府や組織や機関で働く専門家が監督する必要がある。

 ヒズボラがITハードとソフトを組織の安全保障とレバノンの国家安全保障の中心として優先していれば、この技術の取得、使用、安全保障の確保に専念する組織を創設していたはずだ。専門家が、スマートフォンの代替として検討していたポケベル製造を監督し、エンドユーザーへの輸送を監督していたはずだ。5,000台のポケベルに爆発装置を埋め込む可能性は考えられなかったはずなのだ。

 言い換えれば、ITハードやソフトの購入には、無害な消費者向け商品の購入としてではなく、国家および運用上の安全保障の中心として、この重要技術を危険にさらす機会が与えられれば潜在的な敵がそれを利用するという前提で取り組む必要がある。

 これら商品がどのように設計され、製造され、出荷され、誰に出荷されるかが非常に重要だ。保管チェーンのどこかで、この技術が潜在的な敵の手に渡った場合、購入した機器やソフトは侵害されたと想定する必要がある。

 多極化世界における情報領域のセキュリティー確保

 ロシアや中国のような国々は情報領域とそれを構成するハードやソフトの安全保障確保の点で他国より遙かに進んでいるように見えるが、多くの同盟諸国や潜在的同盟諸国はそうではない。情報空間を国家安全保障領域ではなく、周辺的なものと見なす情報空間に対する時代遅れの考え方が、自己満足や無知や無能という根深い文化を生み出している。

 アメリカやイスラエルや、おそらく台湾に拠点を置くポケベル製造会社(またはヨーロッパのパートナー)が、レバノン全土でこの悪意ある無差別テロ攻撃を実行するのに成功したのは、彼らの特別な能力のせいでも、レバノン側の一時的な安全保障の不備のせいでもなく、レバノンの情報領域が事実上無防備なまま、保護されるべきだという認識すらなく、まして保護するための効果的な戦略がなかったためなのだ。

 この攻撃は阻止できた。将来の攻撃も阻止できる。

 ロシアや中国が陸、空、海の伝統的な国防領域に関する伝統的フォーラムや演習を実施しているのと同様に、情報領域の防衛に焦点を当てたフォーラムや演習も不可欠だ。国家、政府、行政、組織、機関、更には個人に、情報技術主権の重要性、つまり、この技術を自ら作るか、近い同盟諸国から入手するか、工場の現場から輸送、配布まで、透明なプロセスで自ら監督する重要性を印象づけることで、アメリカや代理組織が最近の攻撃で悪用した開いた無防備な門は排除可能だ。

 国家安全保障領域を守ることは、適切に行ってさえ困難な作業だ。情報空間は、これら領域の中でおそらく最も複雑で最も理解されていない領域だ。しかし多くの場合、政治および軍事指導者は、情報空間が、そもそも国家安全保障領域であることを理解していない。この姿勢を変え、既存の共同防衛協力を情報空間に拡大することが、この悲劇が少なくとも簡単に繰り返されないように、また再び試みられた場合に、大規模にならないようにするための第一歩だ。

 ブライアン・バーレティックはバンコクを拠点とする地政学研究者、ライター。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/09/20/latest-lebanon-pager-terrorist-attack-predictable-preventable/

----------

2024年9月11日 (水)

超大国として君臨すべく「超兵器」を探し求めるアメリカ

2024年3月9日
ブライアン・バーレティック
New Eastern Outlook

 唯一の超大国として君臨するために、アメリカは「超兵器」を探し求めている。

 冷戦が終結し、アメリカが唯一の超大国となった後も、「国際秩序」の形成を独占的に維持することを目指しているとアメリカは公然と宣言している。

 この政策は何ら新しいものではない。

 1992年の「アメリカの戦略計画は、ライバル国家が生まれないようにすると主張」という記事で、「建設的行動と十分な軍事力により、その地位を永続させ、いかなる国や国家集団もアメリカの優位性に挑戦するのを阻止できる超大国が支配する」世界を国防総省が作ろうとしていたとニューヨーク・タイムズは指摘している。

 数十年にわたるアメリカの侵略戦争や政治介入や政権転覆や、アメリカが支援するテロや経済制裁や、再台頭するロシアや台頭する中国とアメリカの直接対立激化の舞台を、この政策が整え、これらは全て今日まで続いている。

 冷戦から唯一の「超大国」として浮上したアメリカは、同様に慎重に選んだ紛争を通して自国の軍事的優位性を誇示し、世論を慎重に育成してきた。アメリカは今日に至るまで、1990年と2003年のイラクとの戦争や2011年のリビア政府転覆を、無敵の軍事力の証拠として挙げているが、実際は、標的になった両国は当時欧米メディアが主張したほど強力でも危険でもなかった。

 この見せかけはその後崩壊した。「アメリカの優位性」は今や深刻な課題に直面しているだけでなく、その前提である、世界人口の一部を代表する一国が地球上の他の国々に対して優位性を保持できる、あるいは保持すべきだという概念は、自己破壊的ではないにせよ、完全に持続不可能なことが明らかになった。

 アメリカの軍事力と経済力が目に見えて衰えているだけでなく、中国やロシアや益々多くの他の国々の軍事力と経済力が急速に成長している。

 アメリカ国内の特別利益団体は、世界的優位性を追求し、富と権力を絶えず追求し、近代的で機能的な国民国家が果たすべき多くの目的を犠牲にすることが多い。この過程は近代国民国家の力の重要な柱である産業、教育、文化、社会の調和を意図的に略奪することが含まれることが多い。これはアメリカの経済力と軍事力の崩壊を加速させるだけだ。

 ウクライナがアメリカの弱点を露呈した

 ウクライナにおけるワシントンの代理戦争は、この根本的弱点を世界に明らかにした。アメリカ兵器は、同等の敵国であるロシアに対して無力であることが証明された。

 アメリカの高価な精密誘導砲弾やロケットやミサイルは、従来の砲弾より少量しか製造されなかった。これは従来の砲弾数発で実現できることを、一発で実現できるためだと言われている。たとえば、アメリカ製155mm GPS誘導エクスカリバー砲弾一発で、従来の砲弾10発を必要とする効果を実現できるとレイセオン社は主張している

 量より質という神話は、ウクライナの戦場で崩れ去った。ロシアはアメリカや欧州の代理国より遙かに多くの通常兵器を生産できるだけでなく、独自の精密誘導砲弾(レーザー誘導クラスノポリ)、精密誘導多連装砲システム(トルネードS)、更に大量の弾道ミサイルや巡航ミサイル(イスカンデル、カリブル、Kh-101)など遙かに多くのハイテク精密誘導兵器も生産できる。

 他の分野で、アメリカが持っていない能力をロシアは持っている。キンジャール極超音速弾道ミサイルとジルコン極超音速巡航ミサイルという2種類の極超音速ミサイルをロシアは配備している。また質の上でも、量の上でも、アメリカがかなわない防空・ミサイル防衛能力や電子戦能力もロシアは持っている。

 もしロシアの軍事産業の生産量に匹敵あるいは上回れず、東欧での代理戦争でアメリカが敗れたら、中国沿岸部で中国を包囲し封じ込めようというアメリカの計画は一体どのように展開するのだろう?

 拡大する格差とそれを克服しようとする超兵器

 中国とのいかなる紛争もアメリカが準備不足で脆弱な状態に置かれることを米軍は恐れている。Defense One誌の最近の記事「空軍は太平洋周辺に多くの基地を建設したいと考えている。しかし、それらをどのように守るかはまだ決めていない」で、アメリカの防空・ミサイル防衛システムは、中国とのあり得る戦争に備えて設置される米軍基地の増加を防衛するには高価すぎるし、数が少なすぎると認めている。

 しかし、アメリカの防空ミサイルシステム、特にパトリオット・ミサイルの不足は、アメリカがウクライナにシステムを送り始める前から始まっていたのを忘れてはならない。イエメンのアンサル・アッラーとの紛争の最中にあるサウジアラビアの需要さえアメリカ軍事産業生産は満たせなかった。

 アジア太平洋地域で中国と紛争が起きた場合、米軍の航空機、海軍艦艇、ミサイルの数についても同様の懸念が存在する。

 アメリカの世界覇権獲得の野望と、それを実現するための実際の軍事的手段との間には大きな乖離があり、それが拡大していることを理解して、ワシントンと、アメリカに拠点を置く兵器メーカーは、より安価でより多数の兵器を生産できる新世代兵器を生産するための新たな設計・生産哲学を模索している。

 この取り組みの最前線にいるのは、アレスやアンドゥリルなどの「新興」兵器メーカーだ。アメリカは本質的に中国より革新的だという考えに基づき、アメリカは中国より革新的だと両社は考えている。しかし、この拡大する格差に対処しようとする両社の試みは、アメリカが支配しようとしている現実世界から、アメリカ外交政策が、いかにかけ離れているかを露呈している。

 アレス:より安価だが、より多くのミサイル…

 War Zone誌は「シリコンバレーの支援を受けた新興企業が新しい『安価な』巡航ミサイルのコンセプト飛行をテスト」という記事で、アレス社がどのようにして、高価だが数が少ないアメリカの既存の長距離精密誘導ミサイル兵器庫を、より小型で安価で、より多数のミサイルで増強しようとしているかを説明している。

 小型で安価なミサイルは、レイセオン社のトマホーク巡航ミサイルやロッキード・マーティン社の統合空対地スタンドオフミサイル(JASSM)など、より高価なミサイルに比べると性能は劣るが、大量生産される予定だ。より安価なアレス社製ミサイルは優先度の低い標的に使用され、性能は高いが数が少ない同種ミサイルは重要な標的に使用される。

 記事は次のように主張している。
 
現在の仕様も計画中の仕様もまだ公表していないようだが、ミサイルの単価を30万ドルにすることを目標にしているとアレス社は述べている。

 アレス社のミサイルが実際戦場に届くまでにどれほど時間がかかるかということに加え、これらミサイルを1発30万ドルで製造するという公表された目標すら、中国どころかロシアの軍事産業生産に匹敵するか、それを上回るために必要な革命的イノベーションには程遠いように思われる。

 ウクライナを拠点とするメディアによれば、ロシアは既に遙かに高性能なミサイルを1基30万ドルという低価格で生産しているためだ。ディフェンス・エクスプレスは2022年の記事「ロシア・ミサイルの実際の価格はいくらか:「カリブル」、「Kh-101」、「イスカンデル」ミサイルのコストについて」で、カリブル巡航ミサイルのコストは30万ドルから100万ドルの間としている。これは欧米諸国で生産される同等ミサイルより遙かに安い。

 2022年の記事は、当時ロシアのミサイル備蓄が枯渇したと欧米が報じていたため簡単に却下されたが、その後、ロシアはウクライナ全土の標的に向け毎年4,000発以上のミサイルを発射していることを同じ欧米メディアが認めている。これは、ロシアのミサイル生産が大量なのと同様に、経済的なことを示唆している。

 したがって、アレス社が最初のミサイルを製造する前でさえ、同社が実現しようとしていることの前提そのものが、ロシアの軍事産業基盤が既に大規模に行っていることに遠く及ばず、まして中国の軍事産業基盤が何を成し遂げられるかは言うまでもない。

 また、アレスが提案する低価格ミサイルと同じくらい安価な高性能兵器に加えて、ロシアと中国両国は、より安価でそれほど高度でない兵器で既存兵器を増強することも十分可能な現実もある。

 UMPKを搭載したFABシリーズ滑空爆弾をロシアが配備したのは、この好例だ。誘導滑空爆弾は、特殊軍事作戦の過程で構想から量産へと進み、戦闘での性能に基づいて改良が加えられ、より高価な長距離精密誘導兵器に代わる、より安価で、より多く、それでも効果的な代替品となった。

 多くの点で、アレスがやろうとしていることは、ロシアと中国が既に行ってきたこと、そして今後も行っていくだろうことの劣悪な模倣だ。

 Anduril: 中国とロシアを上回る革新…

 アレス社と同様、アメリカに拠点を置く兵器製造会社アンドゥリル社は、ウクライナ紛争の中でロシアが欧米諸国より生産量が多く、中国の軍用機、艦船、ミサイルの生産量がアメリカや欧州の代理諸国を上回る中、より安価でより多数のシステムが戦況を均衡させるのに役立つと考えている。

 アンドゥリルは、これを「ソフトウェア定義製造」を通じて実現するよう提案している。同社によれば、このプロセスにより、電気自動車メーカーのテスラは、自社のソフトウェアと電子機器を中心に車両を製造することで、従来の自動車メーカーより優れた車両をより多く製造できるようになったという。

 利点は明らかだ。従来の自動車メーカーは物理的な自動車を自社で製造しているが、現代の自動車で使用されているオペレーティング・システムやセンサーや他の電子部品やシステムなど、サブシステムの多くは他企業に外注されている。多くの場合、このソフトウェア、センサー、その他様々な部品は、多数の異なる企業に外注されている。自動車設計を変更するには、この多数の企業と連携する必要があり、変更や改善が面倒になる。

 すべてのサブシステムを単一の社内開発ソフトウェアに組み込み、その周りにハードウェアを構築することで、変更をより迅速に行うことができ、結果として、より高品質の自動車をより迅速に大量生産できるようになる。

 アンドゥリルは、この同じプロセスを使用して、中国に匹敵するか、中国を上回る大量のドローンやミサイルや他の武器や弾薬を製造することを想定している。アンドゥリルにとっての問題は、ソフトウェア定義の製造が中国の広大で高度な産業基盤で既に広く使用されていることだ。この「利点」が意味をなさなくなったため、アメリカは再び大きな不利な立場に立たされている。中国は、従来の軍事兵器、弾薬、装備をアメリカより遙かに大量に製造できるだけでなく、ドローンやミサイルなどの高度で急速に改良されたソフトウェア定義システムを構築することもできる。

 これは、アメリカが何をしようと、中国はそれを遙かに上回る規模でより良く実行できることを意味する。

 誤った前提、悲惨な結末

 アレスとアンドゥリルの前提は根本的に間違っている。両社は、ウォール街やワシントンで彼らが奉仕する特別利益団体と同様、アメリカはロシアや中国のような敵国より本質的に優れていると信じている。彼らの共通認識では、アメリカが直面する不利は偶発的なもので、それを克服するには十分な政治的意志を喚起するだけでよいのだ。ロシアと中国がより大規模で有能な産業基盤を持っていることは、アメリカ自身の政治的焦点と意志の一時的欠如と見なされており、アメリカの産業基盤を拡大する措置を講じることで、アメリカは必然的に再びトップに立つことになる。

 現実には、ロシアと中国の産業基盤は、アメリカの政治的意志がどんなに強くても克服できない要因を含む様々な要因により、アメリカより大きい。特に中国の人口はアメリカの4倍だ。中国は毎年、科学、技術、工学、数学の分野でアメリカより何百万人も多く卒業しており、その産業基盤(軍事や他のもの)の物理的規模は、この人口統計上の不均衡を反映している。

 たとえアメリカが軍事産業基盤を改革し、利益主導の民間産業を解体して目的志向の国有企業に置き換える政治的意思を持っていたとしても、アメリカが同様に教育制度を改革し、学生から一銭残らず搾り取るのではなく、熟練労働者を育成するようにしたとしても、アメリカが産業基盤拡大の基本的前提条件である国家インフラに投資したとしても、中国が既に、これら全てを実行し、アメリカとG7諸国を合わせたより人口が多い中でそれを実行した現実に直面することになる。

 世界人口の5%未満しかないアメリカが、他の95%に対して優位性を維持すべきだという前提は根本的に間違っている。

 アメリカ人が他の国々より本質的に本当に優れているのでなければ(実際はそうではないが)、世界を支配するには世界の人口の残り95%を分裂させ破壊するしかない。多くの点で、これが何世代にもわたる欧米諸国の世界覇権を特徴づけてきたものであり、今日ワシントンがやろうとしていることなのだ。

 それにもかかわらず、経済力と軍事力の面で世界が追いついてきたのは、まさにアメリカが本質的に優れているわけではないからだ。欧米の覇権は歴史上の例外で、欧米の優位性の証明ではない。経済力と軍事力の面で世界が追いつき、数でも優位に立ったことで、次の世紀は多極化した世界によって決まるだろう。

 この台頭しつつある多極世界では、それを生み出した要因、すなわち紛争より協力に基づく地政学的勢力均衡、利益より目的によって推進される産業やインフラや、闇雲な権力の追求よりも、実践的教育と勤勉によって築かれる進歩が、この新しい世界の基本原則としてしっかり定着されなければならない。

 多極化世界がアメリカの分断と破壊の試みを乗り越え、そもそも多極化した世界を生み出した原理に投資し続ければ、アメリカ製のいかなる超兵器もそれを克服できない。

 ブライアン・バーレティックはバンコクを拠点とする地政学研究者、ライター。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

 記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/09/03/us-seeks-super-weapons-to-reign-as-sole-superpower/

----------

 Judging Freedom
Pepe Escobar : Russia, China, and Global Cooperation  27:48

 植草一秀の『知られざる真実』
吉田晴美氏だけが消費税減税公約

 日刊IWJガイド
 「大手メディアが報じない『令和の米騒動』の真実! 大阪でコメ先物取引が始動直後に連日ストップ高を記録! 主食である米が投機対象に!」

■はじめに~大手メディアが報じないコメ不足と価格高騰の真実! 大阪でコメの先物取引「堂島コメ平均」が始動すると、連日ストップ高を記録! 山田正彦元農水相は、投機目当てのコメの買い占めで、米価が急騰し、死者まで出た大正7年の米騒動をあげ、「私達の大事な主食である米を絶対に投機の対象にしてはいけない」と批判! さらに補助金を払って減反政策を進める一方、1993年のWTOウルグアイ・ラウンドで決められた「アクセス米」を、義務でもないのに国内米価の2倍以上で米国から購入している事実を指摘し、「そのようなお金があるならすぐにでも食料備蓄を始めるべき」と、米国を利するだけの売国政治を批判!!

■9月になり、IWJの第15期も2ヶ月目に入りました! IWJの財政的状況は大ピンチです! 岩上安身の体調不良も、7月、8月と続き、たいへんご迷惑をおかけしました! 8月は31日間で、85件、156万2260円のご寄付・カンパをいただきました! 第14期の月間目標額は400万円で、仮にその目標額に当てはめると、39%どまり! 相当に厳しい状況です! 他方で、「IWJしか報じられない情報」が、激増しています! 岩上安身のコロナ感染以降、続く体調不良もあり、この週末も、岩上安身の体調不良で、発行が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。こうした時だからこそ、ぜひご支援をお願いいたします!

■<インターネット上の「言論の自由」と「検閲」(その5)>ブラジルがSNSのX(旧ツイッター)を禁止! ブラジルのアレクサンドル・デ・モラエス最高裁判事対イーロン・マスク氏の戦いの背後に何があるのか? ルラ大統領派がボルソナロ前大統領派の勢力拡大を阻止!?

2024年7月22日 (月)

宇宙を拠点とする戦争:問われるアメリカの優位性

2024年7月12日
ブライアン・バーレティック
New Eastern Outlook

 上空の戦場

 アメリカは冷戦中から21世紀最初の10年間で、全地球測位システム(GPS)による衛星航法や様々な偵察・通信衛星など、宇宙ベースの軍事能力において優位を確立した。これにより米軍は地球上のどこでも標的データを利用して部隊を調整できるようになった。

 衛星航法により、155mmエクスカリバー砲弾、HIMARSおよびM270から発射される誘導多連装ロケットシステム(GMLRS)ロケット、米軍戦闘機から投下される統合直接攻撃弾(JDAM)など、GPS誘導兵器の配備が実現した。

 GPSとデジタル・シーン・マッチング・エリア・コレレータ (DSMAC) と呼ばれるプロセスの両方を使用する長距離精密誘導兵器は、偵察衛星から提供される画像を利用して標的を見つけ、特定座標を取得して、兵器自体を誘導する。

 このような兵器は1990年代以降、アメリカの様々な戦争で使用され、大きな効果を発揮した。

 ソ連は独自の衛星航法システム、全地球航法衛星システム(GLONASS)を開発し、現在もロシア連邦はこれを採用しているが、このシステムの兵器誘導使用は比較的最近まで広く行われていなかった。大規模な使用は2015年以降シリアで確認され、最近では特別軍事作戦(SMO)で確認されている。

 公開情報によると、ソ連とロシアの偵察衛星は、アメリカの偵察衛星に比べて遙かに少ない数しか使用されていない。アメリカとロシアは、どちらも通信衛星を持っているが、6,000基を超える衛星からなる低軌道(LEO)インターネット衛星群「スターリンク」を持っているのはアメリカだけだ。

 スターリンクは、地球上のどこにでも低遅延のインターネット接続を提供する。スターリンクを使用する軍隊は、部隊同士の通信が可能になるだけでなく、従来の無線信号による伝送より遙かに優れた空中ドローンや海上ドローンなどの遠隔制御兵器の誘導が可能になる。スターリンクとの接続が維持されている限り、このようなドローンの航続距離は燃料や電気の充電量によってのみ制限される。

 これにより、今日の戦場でもアメリカと同盟諸国は優位に立っているが、こうした優位性は打ち消されており、ロシアだけでなく中国も同様の能力を開発している。

 対策

 こうしたアメリカ兵器は最近まで現代の戦闘を特徴づけており、多くの欧米専門家は戦場で比類のない優位性をアメリカと同盟諸国が享受していると信じていた。ソ連と当初ロシア連邦は宇宙ベースの能力を利用した精密誘導兵器の製造を優先していなかったが、両国ともこうした能力を利用したアメリカ-NATO兵器の危険性を認識し、対抗手段に多額投資を行った。

 その結果、ロシアは近代的な防空・ミサイル防衛システムや、様々な電子戦能力を開発し、どちらも世界最高レベルとみなされるようになった。

 アメリカ製GPS誘導兵器がウクライナ軍に移管されれば、ウクライナの「状況は一変する」と欧米の専門家は予測した。数週間の使用で、これら兵器の多くはロシアの迎撃能力やGPS信号の妨害により無力化され、標的を逸れた。

 2023年5月の「ロシアによるアメリカ提供のロケット・システム妨害がウクライナの戦争努力を複雑化」と題した記事で、ロシアの電子戦によりHIMARS発射のGMLRSが目標を外したとCNNは報じた。

 2024年5月の「ロシアの妨害によりウクライナでアメリカのハイテク兵器の一部が無効に」と題した記事で、空中投下されたJDAMや155mmエクスカリバー砲弾など、他のアメリカ製GPS誘導兵器も妨害されているとワシントンポスト紙は報じている。

 ロシアの妨害問題があまりにも深刻になり「ワシントンは故障率の高さを理由にエクスカリバー砲弾の提供を中止した」と記事は指摘している。

 ロシアはアメリカ製GPS誘導兵器を妨害する能力があり、ロシア軍に多大な防衛力を与えている。ロシアはまた、独自の衛星誘導兵器を開発し、現在では大規模に配備している。これにはトルネードS誘導ロケット、イスカンデル弾道ミサイル、様々な長距離巡航ミサイルやFAB爆弾シリーズと呼ばれるロシア版JDAM(弾薬250~3,000kg)が含まれる。

 ロシアは、衛星誘導兵器を妨害し、自国の同種兵器で対抗するだけでなく、ウクライナのアメリカ衛星通信ネットワークへのアクセスを妨害することにも成功している。これには、ロシアの妨害によって妨害されたスペースXの革新的なスターリンク・ネットワークも含まれると、2024年5月の「ロシア、新たな取り組みでウクライナのスターリンク・サービスを益々妨害」と題した記事でニューヨークタイムズは報じている。

 ウクライナのスターリンク使用の妨害について報じただけでなく、独自のスターリンク端末をロシアが保有し、ウクライナ軍が持っていた多くの優位性をロシア軍が享受できるようになっているともニューヨーク・タイムズ紙は報じた。

 「ゲームチェンジャー」となるはずだったアメリカの宇宙拠点能力に依存する兵器とネットワークは、ウクライナを極めて不利な立場に置いた。欧米諸国が共同で少量の高度に洗練された兵器とネットワークに投資した代償として、砲弾や装甲車など大量の安価な兵器に十分な投資ができず、ウクライナはどちらもほとんど手に入らなかった。

 アメリカと欧州は、これらのより単純だが依然として不可欠な武器や弾薬の面でロシア(および中国)に追いつくため軍事産業能力の再構築を試みる一方、ロシアと中国は高度な宇宙ベースの能力の面で追いつきつつある。

 ギャップを埋める

 ロシアと中国はともに、独自のLEOインターネット衛星群を展開する計画だ。両国は、偵察衛星増設にも投資している。特に中国は、欧米諸国を驚かせるほどの速度で差を縮めている。

 2024年3月号の「中国の衛星は急速に進歩している。人民解放軍は恩恵を受ける」という記事でエコノミスト誌は次のように報じている。

 
中国は過去10年間で運用中の衛星の数を大幅に増やし、現在合計600基を超えている。そのうち360基以上が情報収集・監視・偵察(ISR)衛星で、太陽光、赤外線、レーダーパルスの反射を利用して地球を観測する。中国のISR艦隊はアメリカに次ぐ規模で、その能力は世界市場で注目を集めている。最近、ウクライナの衛星画像をロシアの傭兵組織ワグナー・グループに提供した疑いで、アメリカは中国企業2社に制裁を科した。


 中国衛星の量と質は向上しており、幅広い経済的、軍事的用途が可能となっている。

 欧米諸国の企業と同様、衛星画像を顧客に提供している中国企業は、ロシア軍がウクライナが受け取っているのと同じ最新の画像を利用できるようにし、ISRの面で公平性を保つ一方、ロシアが遙かに大規模な長距離ミサイルとドローン兵器の優位性を活かして標的データをより有効に活用できるようにしているのかもしれない。

 ロシアは独自の宇宙ベースのISR機能を備えているが、高解像度の画像を撮影するLEO衛星は対象地域を短時間しか通過できず、同じ地域を再び通過するには時間が必要なため(衛星の軌道によって数時間から数日かかる場合もある)、ロシアが利用できる衛星の数が増えるほど、特定の地域からより頻繁に写真を受信できるようになる。

 また、静止軌道(GEO)にある中国衛星が太平洋を含む地球の広大な地域を「監視」し、アメリカの軍艦や他の船舶をリアルタイムで追跡できるともエコノミストは述べている。中国の宇宙能力が急速に成長していることを踏まえ、「その結果、宇宙における相互確証脆弱性の時代が到来するかもしれない」とエコノミストは結論付けている。

 これには、地球上の戦争を支援する宇宙ベースの能力だけでなく、軌道上の他国の宇宙ベースの能力を標的にできる能力も含まれる。

 軌道戦争

 アメリカ、ロシア、中国はいずれも、航空機または地上から発射された対衛星ミサイルのデモンストレーションを実施し、各国の古くて機能不全の衛星破壊に成功した。

 更にアメリカは、一度に数百日間軌道上に打ち上げ、1回のミッション中に軌道を数回変更し、地球に戻って修理され、再び打ち上げられる無人宇宙飛行機X-37を開発した。

 この宇宙飛行機の任務は機密扱いだが、他国の衛星を「検査」したり、標的衛星を無力化したり破壊したりできる兵器を搭載したりすることも可能だと推測されている。

 しかし、そのような能力を持つのはアメリカだけではない。中国の再使用型実験宇宙船も同様に打ち上げられ、長期間にわたり軌道上に留まり、軌道を変え、様々な積荷を運び、地球に戻って改修され、再利用される。理論上、アメリカのX-37が実行できるあらゆるミッションを実行できるはずだ。

 再利用可能な打ち上げシステム

 ロシアや中国がアメリカとの差を完全に埋められるかどうかは、いくつかの重要な能力にかかっている。アメリカがそれら能力をすべて保有できるのは、アメリカの伝統的航空宇宙大手であるロッキード、ボーイング、および両社の合弁企業であるユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)に勝る比較的新しい企業、スペースXのおかげだ。

 SpaceXの成功は、人類文明を多惑星にすることに重点を置いた同社の目的主導の哲学から生まれている。この目標を追求して、SpaceXは再利用可能なロケットに革命を起こし、経費を大幅削減しながら年間の打ち上げ頻度を大幅に増やした。

 ファルコン 9 ロケットはペイロードを軌道に打ち上げ、第1段のブースターは独自のロケット・エンジンの力で地球に帰還する。ブースターは回収され、検査され、1週間ほどで飛行再開可能だ。

 中国は現在、年間60回以上の軌道打ち上げを行っている。2020年と2021年には、中国の打ち上げ回数はアメリカを上回った。しかし、スペースXのファルコン9ロケットファミリーの成功と使用拡大により、アメリカは2022年と2023年に更に多くの打ち上げを実施しており、今年も中国を上回ると予想されている。

 ペイロードを迅速かつ安価に軌道に打ち上げる能力により、SpaceXはStarlink衛星群を構築できる。また、アメリカや他の顧客は、ほぼオンデマンドで衛星を打ち上げることも可能になる。

 将来、敵によって衛星が無力化または破壊される紛争が発生した場合、この能力により、アメリカは衛星が製造され次第、または戦略的に保管されている重要な衛星が準備され、ファルコン9ロケットに統合され次第、衛星を交換できるようになる。

 これは現在ロシアと中国が欠いている能力だ。再利用性は、SpaceXがアメリカ政府に提供している打ち上げ頻度と能力を達成するための鍵となる。

 ロシアと中国は再利用可能なロケットを開発している。ロシアのアムールロケットは、外見はスペースXのファルコン9に似ているが、最初の試験飛行までまだ何年もかかる。

 一方、中国には再使用型を含むロケット開発に携わる国有企業、民間企業が多数あり、2024年6月には中国航天科技集団傘下の上海航天技術研究院が直径3.8mの再使用型第1段ブースターの12km試験飛行を実施した。来年には実物大ロケットの試験飛行が予定されている。

 SpaceX がアメリカ政府に提供している機能は、組織的逸脱の結果だ。アメリカ政府と、外交政策と国内政策を支配する特別利益団体は、富と権力の蓄積を動機としている。ロッキード、ボーイング、および彼らの共同企業であるユナイテッド ローンチ アライアンスは、現代の典型的なアメリカのイノベーションと進歩をより正確に表している。ULA は昨年、3 機のロケットしか打ち上げなかった。この企業は、SpaceX が追求してきた広範囲にわたるイノベーションへの投資を避けることで利益を最大化している。SpaceX の急速なイノベーションは、アメリカ産業の大半が利益主導であるのに対し、SpaceX は目的主導であるため、アメリカ産業全体で再現できない。

 だからこそ、中国が目的志向の政策と産業を維持すれば、宇宙拠点の能力に関するアメリカとの差は、差が拡大する前に、最終的には中国に有利な形で縮まることになるだろう。

 民間企業と国有企業の組み合わせと目的志向の政治体制を組み合わせて、中国は、半導体生産、電気自動車、スマートフォンから造船、ミサイル、鉄道に至るまで、既にあらゆる分野で産業と技術の格差を埋める能力を発揮している。

 再使用型ロケットを中国が習得すれば、スターリンクを模倣した膨大な数の衛星群を軌道上に投入し、衛星を製造したり、打ち上げロケットに統合したり、できる限り早く交換する能力や、地球の経済圏や戦場上空の軌道上で必要とされる他の重要な能力が、中国にとって十分に手の届く範囲になるだろう。

 アメリカの優位性が経済や軍事の領域で他の分野でも損なわれてきたと同様に、宇宙での優位性も長くは続かないかもしれない。アメリカが他の全ての国々に対して建設的な役割を担うのではなく、持続不可能な覇権を追求する限り、ロシアや中国や他の多極化世界が地球上や上空で拡大を続ける一方、アメリカは財政面でも人的資源の不当な配分に苦しみ続けることになるだろう。

 ブライアン・バーレティックはバンコクを拠点とする地政学研究者、ライター。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/07/12/space-based-warfare-americas-dominance-challenged/

----------

 ブライアン・バーレティック youtubeで同じ話題を語っている。

Space-Based Warfare: America’s Dominance Challenged 36:13


益々使いにくくなるココログに辟易、というか追い出されたようなものだが、以後下記に移行する。

https://eigokiji.livedoor.blog/

 Alex Christoforou YouTube バイデン撤退。カマラを後継指名。

Biden out. Dems unite behind Kamala 5:01


東京新聞も号外。

 日刊IWJガイド
「ウクライナのネオナチ『アゾフ』が欧州資金集めツアーを開催! ドイツはナチスの反省も忘れ、ベルリンとハンブルクでトークショーを実施!」

7月17日付ロシア『RT』は、次のように報じています。

 「ウクライナ陸軍第3独立強襲旅団は、フェイスブックへの投稿で、7月下旬から8月上旬にかけて、ポーランド、ドイツ、オランダ、ベルギー、チェコ共和国、リトアニアの9都市を訪問すると発表した」。

 「投稿の1つには、『イベント参加者はウクライナ軍兵士と話をして、旅団での任務の真実を知り、前線での話を聞くことができる』と書かれていた」。

2024年7月 5日 (金)

台湾海峡を「地獄の光景」に変えるワシントン計画が根本的に間違いな理由

2024年6月24日
ブライアン・バーレティック
New Eastern Outlook

 

 アメリカと同盟諸国が軍隊を動員できるまで最大一「ヶ月」、中国軍と戦うのに、無人システムに依存するアメリカ防総省の戦略について、「米軍は中国の台湾攻撃を阻止するため『地獄の光景』を計画している」と題するジョシュ・ロギンによる論説記事で、ワシントン・ポストは根本的に誤った評価を示している。

 

 この戦略をもっともらしいものとしてワシントン・ポストは売り込もうとしているが、その戦略が実行され実際に成功する可能性に関して、新聞自体が疑問視している。

 

 不完全な前提に基づいた不完全な戦略

 

 戦略自体の欠陥を検討する前に、まずこの戦略が使われる「台湾防衛」という前提全体が完全に間違っていることを指摘しなければならない。

 

 自らの公式ウェブ・サイト「アメリカと台湾の関係」という項目で「我々は台湾独立を支持しない」とアメリカ国務省は明確に認めている。

 

 アメリカ政府が台湾の独立を承認も支持もしない場合、台湾は暗に他国に「従属する」ことになる。1972年の上海コミュニケで示されたアメリカ自身の「一つの中国」政策によれば、その国とは中国で、唯一合法政府は中華人民共和国(PRC)だ。

 1972年の文書では次のように詳しく説明されている。

 

 台湾海峡の両側にいる全ての中国人が、中国は一つで、台湾は中国の一部だと主張していることをアメリカは認めている。アメリカ政府はその立場に異議を唱えない。

 

 したがって、台湾と中国の他地域とのいかなる交流も中国の内政問題で、国際法、より具体的には国連憲章と国家の領土保全と政治的独立の保証に従い、アメリカには干渉する権限がない。

 

 国連憲章は明確にこう述べている。

 

 すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。

 

 台湾の独立運動に対するワシントンの非公式支援は、台湾の地位に関する北京との合意に反しており、そもそも国際法違反なのは明らかだ。無人システムを含むいかなる軍事力を使っても、中国内政問題に介入するというアメリカの計画は、国際法の下では全く不完全な弁護の余地がない立場から始まっている。

 

 ドローンによる「地獄の光景」が機能しない理由

 

 ドローン軍で戦い勝利すると米軍計画者が想定している水陸両用侵攻以外にも、アメリカが支援する分離主義や台湾に対する中国主権侵害に対処する方法を中国は多数持っている。

 

 台湾の地方行政をワシントンが政治的に掌握しているにもかかわらず台湾経済は中国他地域に大きく依存している。台湾産業輸出のほぼ半分が中国他地域に輸出されている。台湾の広範な半導体や電気部品産業に必要な原材料を含め中国他地域からの輸入も不可欠だ。

 

 単に貿易を断つだけで、台湾は存続可能な経済体として機能しなくなる。中国軍航空部隊、潜水艦部隊や中国の大規模ドローン能力により強制される封鎖と相まって、決して起きない侵略を阻止するためにドローンを使用するというワシントンの「地獄絵図」戦略は意味をなさない。

 

 だが、もし台湾島周辺で中国軍がアメリカ無人機と交戦したらどうなるだろう?

 

 ワシントン・ポスト論説は下記のように主張している。

 

 地獄の光景計画が進展していることを示す公的兆候がいくつかある。3月、まさにこの任務のため無人水上艦艇と空中ドローン群を建造する「レプリケーター」と呼ばれる計画に10億ドル費やすと国防総省は発表した。レプリケーター計画は、ドローン技術でウクライナが革新を起こしたロシア・ウクライナ戦争からアメリカも教訓を得ていることを示しているとパパロは述べた。

 これらシステムの配備時期は不明だ。アメリカのシンクタンクが実施したほとんどの軍事演習によると、攻撃時にドローン群が準備できていない場合、紛争が長期化する恐れがあり、米海軍と空軍の資産に大きな損失をもたらし、日本や韓国やフィリピンなどの同盟諸国にまで拡大する可能性がある。

 

 これは、アメリカ・インド太平洋軍の新司令官サミュエル・パパロ米海軍提督発言をワシントン・ポストが引用した後のことだ。パパロ提督は計画の詳細を明らかにするのを拒否したが「これは現実のもので、実現可能だ」と主張した。

 

 アメリカと同盟諸国がウクライナに送ったドローンが成果を上げていないことを考えると、ワシントン・ポストがウクライナに言及したのは実に皮肉だ。これには、トルコのバイラクタルTB-2ドローンなどの、より大型の長距離攻撃用ドローンだけでなく、アメリカ製スイッチブレードのような小型神風ドローンも含まれる。

 

 ウクライナが最も効果的に活用したドローンは、中国から購入したものか、中国で調達した部品から作られたものだ。

 中国国営メディア「環球時報」が発表したワシントンの「地獄絵図」計画に対する反論の中で、この戦略を推進する欧米メディアが明らかに省略している、非常に明白な、いくつかの要素を胡錫進は指摘している。

 

 アメリカより多くのドローンを、中国はより安価に、より速く、より高性能に製造できると胡錫進は指摘している。ウクライナ軍がドローン戦争でわずかな成功を収めているのは、アメリカ兵器製造業者が開発したドローンではなく、ウクライナ人が軍事目的で改造した中国製ドローンによるものだというウクライナ現地の現実を考えると、胡錫進の結論は大げさな主張から程遠い。

 

 台湾周辺での中国との戦争に関するアメリカの議論で省略されている、もう一つの要素は、そもそも戦場に赴くためアメリカが移動しなければならない距離だ。太平洋で隔てられているため、台湾海峡や周辺地域に到達するまでアメリカは何千キロも移動しなければならない。

 

 韓国と日本とフィリピンにまたがる軍事基地ネットワークをアメリカは維持しているが、依然アメリカは本土からこれら基地に物資を補給する必要があり、台湾海峡に到達するため米軍は依然何百キロも移動しなければならない。一方、現場が中国なので、中国軍は既にそこに駐留している。

 

 人口が多く、産業基盤が大きく、軍事産業の生産能力も大きく、軍事力も同等の国と、その国の海岸沿いで戦争するのは、台湾を中国の一部として正式に認めながら中国から「台湾を守る」という考え同様、全く非合理的で、そのような紛争は始まる前から失敗する運命にある。

 

 死と破壊を引き起こす能力を米軍が持っていることに疑いの余地はない。しかし世界中に引き起こした混乱の渦中で勝利を収められるかどうかは極めて疑わしい。ウクライナでのロシアとの代理戦争の方が、中国本土沖合で中国と戦うよりも多くの点でアメリカにとって有利だが、それでもアメリカと同盟諸国は代理戦争で負け続けている。

 

 ワシントンの「地獄の光景」戦略の背後にある能力を評価するのは困難だ。戦略の一部たりとも公表されていないこと、そして近年、アメリカ軍が世界の他地域でいかに劣悪な実績を示してきたかを考えれば。アメリカ軍の弱さから、ワシントンは「フグ」戦略に頼らざるを得なくなったのかもしれない。つまり実際より遙かに大きく強力だと敵に思わせるために、アメリカ軍は自分を誇張しているのだ。更なる抑止力として、フグは棘や毒も使う。しかし自然界では、多くの種がフグの欺瞞を見破り、棘や毒をうまく利用して簡単にフグを捕食できるよう進化してきた。

 

 中国もワシントンのはったりを見抜く能力がありそうだし、台湾の主権を維持するよう北京を説得するためワシントンが使っている「とげとげしい棘と毒」を乗り越えて働くのは苦労する価値がない。

 

 また、ワシントンの目標は実際には台湾を「防衛」することではなく、台湾を中国の他の地域と完全に再統一するための代償をできるだけ高くすることなのを忘れてはならない。戦闘の最中に台湾が取り返しがつかないほど破壊されるのは、台湾の人口、産業、インフラのかなりの割合が最終的に完全に中国の他の地域と統合されることよりもワシントンにとって、ずっと都合が良い。

 

 2023年1月に発表された論文「次なる戦争、最初の戦い:中国の台湾侵攻をシミュレーションする」で、台湾を巡る中国とアメリカの紛争可能性をシミュレーションした結果、アメリカ政府と軍需産業が出資するシンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)は下記のことを認めている。

 

 アメリカと台湾は中国による侵攻阻止に成功したが、台湾のインフラと経済に与えた甚大な損害により、効果も薄れてしまった。

 

 注目すべきは、これがCSIS最良のシナリオだったことだ。おそらく、この最後の点こそ、台湾の人々がもっとも考慮すべき点だろう。

 

 自国の主権と領土保全を守るため、中国には明らかにどんな代償も払う覚悟がある。自国権益のためなら、代理国家を完全に犠牲にする覚悟があることをワシントンは繰り返し示してきた。台湾の人々が本当に選択できる唯一の選択肢は、統一か殲滅だが、殲滅は、中国の政策立案者ではなく、中国を困らせるためアメリカが意図的に仕組んだものであることを理解しなければならない。

 

 ブライアン・バーレティックはバンコクを拠点とする地政学研究者、ライター。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

 

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/06/24/why-washingtons-plans-to-turn-taiwan-strait-into-hellscape-are-fundamentally-flawed/

----------

 

 Dialogue Works

 

Russia has Destroyed Ukraine's Army and Demilitarized NATO | Scott Ritter 49:26

 

 植草一秀の『知られざる真実』

 

国際政治動乱の時代

 

 日刊IWJガイド

 

「トランプ政権誕生でNATOは東方拡大を停止する! 国防費2%基準を達成していない加盟国は米国の軍事的な保護が受けられない!」

■はじめに~トランプ政権誕生でNATOは東方拡大を停止する! 国防費2%基準を達成していないNATO加盟国は米国の軍事的な保護が受けられない! トランプ陣営はウクライナ紛争に関して、民衆に圧倒的に支持された欧州の急進右派勢力と連動しながらロシアとの和平を求める方向へ! トランプ陣営の平和志向路線を支援する有識者60人による公開書簡を全文仮訳!

■7月に入り、IWJの第14期も最後の1ヶ月です! 6月30日間のご寄付・カンパ額が確定しました! 6月は、102件、135万6700円と、目標額の34%の達成率でした! これは相当危機的な数字です! 今期第14期は、8ヶ月連続で目標金額に届かず、累積の赤字額は1000万円近くになっています。他方で、「IWJしか報じていない情報」が、日々、増えてきています! そのIWJを支えるのは、皆さまからいただく会費とご寄付・カンパだけです。有料会員登録と、ご寄付・カンパで、どうか財政難のIWJが、独立メディアとして報道・言論活動を継続できるよう、皆さまのご支援をよろしくお願い申し上げます!

■【中継番組表】

■『ニューヨーク・タイムズ』は「バイデン大統領の支持者」が、「もしもあと2回、あのようなこと(トランプ氏とのテレビ討論での失敗)があれば、我々は違う場所にいる(選挙から撤退する)ことを、大統領はわかっている」と語った報道! ホワイトハウスのジャンピエール報道官は「まったくの誤り」だと否定! 民主党の最大の献金者のひとり、ネットフリックスの共同創業者リード・ヘイスティングス氏は、「バイデン氏は退き、力強い民主党指導者が、トランプ氏を倒す必要がある」と表明!『タイム』誌は「明確な有力候補はいない。バイデン氏はましな選択肢」と擁護!

2024年6月25日 (火)

ロイター、ワシントンの世界的偽情報キャンペーンを暴露:話の続き

2024年6月18日
ブライアン・バーレティック
New Eastern Outlook

 

 長年多くの人が知っていた事実、つまり、弱体化を狙い、政府を転覆させようとしている国々を標的にして、アメリカ政府と様々な省庁や機関が世界規模の偽情報キャンペーンを展開していることをロイターが裏付けた。

 

 ワシントンはアメリカ「同盟諸国」を意図的に傷つけていた

 

 「中国を弱体化させるため、パンデミックのさなか、国防総省は秘密裏に反ワクチンキャンペーンを展開していた」という題名の記事は下記を認めている。

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックがピークを迎えた際、この致死的なウイルスによる被害が特に大きかったフィリピンにおける中国の影響力拡大に対抗するため、米軍は秘密裏に作戦を開始した。

 

 この秘密作戦はこれまで報道されていなかった。ロイターの調査で、中国が供給しているワクチンやその他の救命支援の安全性と有効性に疑念を抱かせるのが目的だったことが判明した。フィリピン人を装う偽インターネット・アカウントを通して、軍プロパガンダ活動は反ワクチン・キャンペーンに変貌した。マスクや検査キットやフィリピンで最初に利用可能になるワクチンである中国のシノバックワクチンの品質をソーシャル・メディア投稿で非難した。

 

 このキャンペーンがフィリピンだけでなく、東南アジアの他地域や更に遠く離れた地域でも実施されたことを記事は明らかにしている。

 

 米軍に実行されたアメリカ政府キャンペーンは、中国のシノバック社製ワクチンや同社が製造した防護具に欠陥があると実際に信じていたために実行されたのではなく、ひたすら中国を密かに傷つけるために実行されたのだ。

 

 偽情報キャンペーンに関与した軍高官発言を引用して「我々はこれを公衆衛生の観点から見ていなかった。中国を泥沼に引きずり込む方法を考えていた」とロイター通信は報じた。

 

 医師らにもインタビューし 「潜在的な地政学的権益のために民間人を危険にさらした」とロイター通信は報じた。

 

 米軍だけが犯人ではない

 

 ロイター記事は明らかに不安を掻き立てる内容だが、中国のワクチンや医療機器に関するアメリカの偽情報や操作や強要の全容を明らかにすることからは程遠い。

 

 米軍がソーシャルメディアで展開した大規模作戦に加えて、全米民主主義基金(NED、ロシアで禁止されている)を通じて、アメリカ政府が東南アジアを含む標的国で長年かけて育成した様々な野党集団や政党に対し、メディアだけでなく街頭でも同様の主張を広めるようアメリカ国務省は呼びかけている。

 

 タイでは、タイ政府に中国との協力をやめ、アメリカ、より具体的にはアメリカ製薬大手ファイザーとモンデラからワクチンを調達するよう要求する一連の抗議活動を通じて、億万長者から政治家に転身したタナトーン・ジュアンルーンルアンキット率いるアメリカ支援を受ける「未来前進党」とNEDから資金提供を受けた野党運動が、国防総省が認めた嘘と偽情報を広めるのを助けた。

 

 「中国のシノバック・ワクチンがタイ反政府抗議運動の巻き添えにされた経緯」でサウスチャイナ・モーニング・ポストは2021年記事次のように報じている。

 

 タイ反政府運動は、政治や王室の改革を求める声を超え、プラユット首相のパンデミック対応や、デルタ航空による第3波が続く中でのシノバック・ワクチンへの依存に焦点を当てている。

 

 反対派が具体的には誰か、また彼らが「偶然にも」国防総省の主張をバンコクの街頭に持ち込む動機となった不利な関係を持っていた可能性があるかに関する言及を記事は避けている。

 

 アメリカが支援する野党がこのような抗議活動を行っていたのは明らかに偶然ではなかった。特に、アメリカが支援するタイ野党が繰り返し主張していた反中国主張の発信源が国防総省であることをロイターが明らかにした今となってはなおさらだ。

 アメリカは、軍が行うメディア活動だけでなく、世界中で育成し資金提供している野党集団や政党など自国の資産をすべて活用し、同様にワシントンの対中国世界的偽情報作戦にも参加した。

 

 これは決して一例ではなく、タイ(や他地域)のアメリカが支援する野党勢力は、タイが領有権を主張していない南シナ海など、タイと直接関係のない問題も含め、考えられるあらゆる問題で中国に対して、ワシントン側に立ってきた。

 これはアメリカ最初で最後の偽情報作戦ではなかった

 

ロイターは、現在アメリカが認めるところの、同盟国と敵国の両方に故意に危害を与えている単一の偽情報キャンペーンのこの一側面に主に焦点を当てているが、同レポートでは、同様のキャンペーンが他にも多数存在することを示唆している。

 ロイターは下記のように指摘している。

 

 秘密心理作戦は、最も機密性の高い政府プログラムの一つだ。その存在を知っているのはアメリカ諜報機関や軍事機関内の少数の人間だけだ。こうしたプログラムは、暴露されると外国との同盟関係に損害を与えたり、ライバルとの対立を激化させたりする可能性があるため、特別な注意を払って扱われている。

 

 具体的キャンペーンにロイターは言及していないが、アメリカ政府が中国に対する世論を損ねるのを目的とした同様の偽情報作戦を実施してきたことは認めている。

 

 ロイターはこう認めている:

 

 3月、ロイター通信はトランプ大統領が2019年に中央情報局(CIA)に、中国のソーシャル・メディア上で中国政府に対する世論を反政府に向ける秘密作戦の開始を許可したと報じた。その取り組みの一環として、少数の工作員が偽オンラインIDを使い、習近平政権を中傷する言説を広めた。

 

 こうした作戦は今日も続いており、ファーウェイ社製通信機器から大規模インフラプロジェクトに至るまで、他の中国製品やプロジェクトの品質や安全性に疑問を投げかけている。狙いは全て、アメリカの代替品を発展途上国に供給したり販売したりすることではなく、発展途上国が発展する機会を全面的に否定することにある。

 

 中国製ワクチンや防護医療機器の場合と同様、アメリカが支援するタイ野党勢力は、こうした他のメディア作戦を拡大する上で直接的な役割を果たしてきた。

 

 例えば、タナトーン・ジュアンルーンルアンキットの言葉を引用し、既に中国が建設した高速鉄道が稼働しているラオスを経由しタイと中国を結ぶ高速鉄道を共同建設するタイ政府計画をブルームバーグは非難した。

 

 中国の一帯一路構想をアメリカ国務省は頻繁に非難し、各国を借金と中国依存に「陥れる」手段だと非難している。

 

 2018年の「タイに必要なのは中国製高速鉄道ではなくハイパーループだと軍事政権批判者」という記事は下記のように報じている。

 

 タイ軍事政権に反対する政治家に転身した大物実業家はハイパーループ技術がより現代的な代替案を提供しているとして、中国との56億ドル高速鉄道プロジェクトを批判した。

 

 タナトーン・ジュアンルーンルアンキットは記者会見も主催し、中国・タイ高速鉄道の代替案として、存在しない「ハイパーループ」を宣伝した。この催しで彼は、中国が建設したインフラに反対する真の目的を明らかにした。

 

 過去5年間、我々は中国を重視しすぎていたと思う。我々は中国の重要性を減らし、欧州や日本やアメリカとの関係のバランスを取り戻したいと考えている 。

 

 現実には、タイは中国に地理的に近く、共通の文化的・歴史的つながりがあり、実際的観点から言えば、中国はタイ最大の貿易相手国で、投資国で、観光供給源で、インフラ・パートナーで更に防衛分野でも益々提携相手となっているため、中国を重視している。

 

 成功し成長しつつある関係を縮小し、中国が提供する機会に代わる選択肢を提供できないアメリカや欧州や日本という属国諸国に軸足を移すのは非合理的政策だ。そのような政策を提案する連中が、タイではなくアメリカ権益に奉仕する場合のみ「合理的」だ。

 

 タナトーン・ジュアンルンルアンキット自身がワシントンと密接な関係にあることや、彼の野党活動がワシントンから資金提供を受けている事実を考慮すると、タイを犠牲にしてアメリカの権益にかなう政策を提案していることは驚くに当たらない。

 

 これは、世界中でアメリカが行っている操作や強要の規模がどれほど大きいかを示すささやかな例に過ぎない。これはソーシャル・メディアを利用する不正行為や虐待行為を遙かに超えており、反対運動や政党を立ち上げて中国反対を表明するだけでなく、各国政府を政治的に掌握し、傀儡政権を権力の座に就かせ、標的国(この場合タイ)の犠牲のもとアメリカ権益に奉仕するよう政策を不合理に歪め、各国が中国と協力するのを強要的に阻止するに至っている。

 

 これは米軍だけでなく、アメリカ国務省やワシントンが構築し、資金提供し、指揮している組織や政党の広大な世界ネットワークを通じても行われている。

 

 各国の情報空間内でアメリカが行っている悪行を理解し、こうした悪行の媒介をしているソーシャル・メディアを管理して、こうした悪行から国民を守る必要があることを世界各国が理解するのが重要だ。

 

 標的にされた国に事務所を開設するよう外国ソーシャルメディア企業に強制し、ワシントンなどの外国組織による悪質偽情報活動を禁じる現地法違反に対し責任を問い、アメリカを拠点とするソーシャル・メディアに代わる現地プラットフォームを開発し、標的にされた国は、自らの情報空間を誰がどんな目的で使用できるかやら、最近記事でロイターが暴露したようなワシントンによる操作や強要を容認するかどうか決定できるのだ。

 

 既に各々の情報空間安全確保を大いに推進している中国とロシアは、両国が既に世界に輸出している防衛品目リストに、情報空間の防衛手段を追加可能かもしれない。

 

 ブライアン・バーレティックはバンコクを拠点とする地政学研究者、オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

 

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/06/18/reuters-exposes-washingtons-global-disinformation-campaign-the-rest-of-the-story/

----------

 

 RT 野蛮なクリミア攻撃にクレムリンが警告

 

Kremlin issues warning over ‘barbaric’ Crimea attack

 

 Alex Christoforou YouTube

 

Russia blames US for Crimea strike. Budanov hints NATO plan. Habeck blames Russia. Boris slams Nigel 27:01

 

 マージョリー・テイラー・グリーン共和党下院議員は「(偵察衛星で得たデータを元に)ロシア兵器でフロリダ海岸を攻撃するようなもの」とXで非難している。

 

 クリス・ヘッジズ氏 2023年8月20日 St. James Church of Cultureで行ったアサンジを称える訓話。

 

The Chris Hedges Report

A Sermon by Chris Hedges: The Crucifixion of Julian Assange

Chris Hedges
Jun 25, 2024

 

 植草一秀の『知られざる真実』

 

都知事選のカギは投票率

 

 デモクラシータイムス

 

【横田一の現場直撃 No.273】 ◆逃げる小池 追う横田 ◆マイナ河野の人気急落 ◆石破 選挙制度改革に意欲 1:09:55

 

 日刊IWJガイド

 

「第5次中東戦争の懸念! ネタニヤフ首相がヒズボラとの戦いのため『軍の一部レバノン国境に移す』と発言! その先にはイランが!」

中東で新たな全面戦争の懸念! ネタニヤフ首相が「ガザでの激しい戦闘はほぼ終結した」と述べ、ヒズボラとの戦いを念頭に「激戦が終われば、軍の一部を、北(レバノン国境)に移動させる」と発言! 国連のグテーレス事務総長は「レバノンを第2のパレスチナ自治区ガザにしてはならない」と表明! 米バイデン政権高官は、イスラエルの高官に「ヒズボラとの全面戦争が発生した場合、バイデン政権はイスラエルを支援する用意がある」と伝えたとの報道も! ヒズボラの先に見すえるのは、イランとの戦争! 第5次中東戦争となれば、ロシア・ウクライナ紛争の拡大、東アジアでの複数の戦争の勃発と共に、第3次世界大戦へと向かう危険性が!!


■【本日のニュースの連撃! 3連弾!】

■【第1弾! 米国が提供したATACMSミサイルで、ウクライナ軍がクリミアを攻撃! 子供2人を含む民間人3人が死亡! 151人が負傷!! ロシアはテロ事件として捜査を開始!】米共和党のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員は「こんなことは起こるべきではなかった。ロシアがロシアの衛星を使って、フロリダの海岸にクラスター弾を発射したことを想像してみてほしい」とXに投稿! バイデン大統領は、これまで何度もウクライナへの長距離兵器の供与を否定! 理由は「第3次世界大戦になるから」。米国はロシアとの第3次世界大戦を「覚悟」したのか!?(『スプートニク日本』、2024年6月23日)

■【第2弾! 米下院で、50年以上実質「任意」状態だった、選択的徴兵制度への自動登録を盛り込んだ年次国防権限法が可決!】上院での可決の可能性は低いものの、米国では「ウクライナ戦争に関連して、徴兵制復活を求める軍事文書や報告書が増えている」との指摘も!!(『FOXニュース』、2024年6月14日)

■【第3弾! 大阪万博は世紀の「13兆円の無駄遣い見本市」になる!? 倍増する建設費は国民が負担! 経済効果はお友達シンクタンクが試算した皮算用!】(『日経ビジネス』、2024年5月22日)

2024年6月19日 (水)

ウクライナに流入する「数十億ドルの兵器」という神話の裏

2024年6月13日
ブライアン・バーレティック
New Eastern Outlook

 

 2024年6月8日のブルームバーグ記事「プーチン大統領、ウクライナで打開策を講じる時間がなくなりつつある」で、ウクライナで進行中の紛争に関しキーウに有利な楽観的予想が示された。

 

 ハリコフで新たに開かれた前線を含む戦線に沿ってロシアは「限定的前進」を遂げており、ウクライナに「数十億ドルの兵器が流入し始め」ているため、ウクライナ軍は「反撃」する機会を与えられるだろうと記事は主張している。

 

 ブルームバーグが引用する「数十億ドルの兵器」とは、アメリカ議会での予算承認が何カ月も遅れた後、アメリカ軍事援助が再開されたことを指している。しかし予算が遅れる前からアメリカのウクライナへの兵器移転の影響が弱まっていたことを想起し、これらパッケージの実際の量とロシアの軍事生産量を詳しく見ると全く異なる話が浮かび上がってくる。

 

 アメリカの兵器の新たな流入がロシアの軍事的優位性を損なっているとブルームバーグは主張している。しかし、これは全く事実ではない。

 

 砲弾

 

 アメリカの最新兵器パッケージには、他の品目とともに、切実に必要とされていた155mm砲弾や自慢のジャベリン・ミサイルを含む対戦車兵器が含まれていた。国防総省公式報道発表には、これら兵器や弾薬の数量は記載されていなかった。

 アメリカとヨーロッパの砲弾生産量がロシアの数分の一と少ないことは良く知られている。2024年5月のビジネスインサイダー記事によると、今年のロシア砲弾生産数は450万発であるのに対し、アメリカとヨーロッパを合わせた量はわずか130万発だ。

 

 2024年6月7日のブルームバーグ記事「アメリカの戦争機械は基本的な砲兵を十分な速さで製造できない」によると、欧米諸国の砲弾生産がロシアの生産数に匹敵、あるいはそれを上回るほど大幅に増加するという見通しは非現実的だ。

 

 限られた材料投入量、訓練を受けた人材の不足、砲弾自体とその様々な個別部品両方を生産する物理的生産拠点を大幅に拡大する必要性や、これら各要素を拡大するための継続的資金調達の必要性など様々な要因がブルームバーグ記事で言及されている。これら全てに時間がかかる。

 

 記事によると、2025年までにアメリカは155mm砲弾を月間最大6万8000発生産する必要があるという。たとえ欧州がこの生産数に匹敵したとしても、それはウクライナの1日6000発の発射速度を達成するための月間必要量の3分の2にしか相当せず、それでもロシアの1日発射数に遠く及ばず、ウクライナは不利な立場に立たされることになる。

 

 ウクライナが切実に必要としている、より高度な兵器に比べれば、砲弾生産は比較的簡単だ。これにはジャベリン・ミサイルのような対装甲兵器も含まれる。

 

 ジャベリン対戦車ミサイル

 

 かつては欧米メディア全体が「形勢を一変させる」と称賛したジャベリンだが、今や見出しにもほとんど登場せず、記事の奥深く埋もれてしまうことさえある。アメリカ政府と軍需産業が出資する戦略国際問題研究所(CSIS)によると、ロシア特別軍事作戦(SMO)初期段階で、数千発のミサイルがウクライナに引き渡され、2022年後半時点で、その数はアメリカ総保有数の約3分の1にあたる7,000発に上る。

 

 以来ジャベリン・ミサイルを生産するロッキード・マーティンは2024年の報告で生産を最大15%拡大し、月間約200発、年間最大2,400発のミサイルを生産すると主張している。

 

 2,400発のミサイルは、毎年全てウクライナに送られるわけではない。ミサイルと、それを発射する少数のコマンド発射装置(CLU)は、アメリカや他のNATO加盟国や世界中のロッキード社顧客に必要とされている。しかし、2,400発のミサイル全てが毎年ウクライナに送られると仮定し、アメリカの備蓄が危機的レベルにあるため、ウクライナに毎月の生産量から選ばれたジャベリンが送られると仮定しよう。

 

 これは、毎月200台のロシア戦車が損傷または破壊され、年間で2,400台になることを意味するのだろうか。いや。米軍自身の研究によると、訓練を受けた米兵でさえ、ジャベリン、TOW、AT-4システムを使用した場合の命中率は19%だ。これらは全て、特別軍事作戦中にアメリカがウクライナに送ったものだ。

 

 たとえウクライナが月200発のミサイルを受け取り、それをロシア装甲車両に発射したとしても、命中するのは月に38発程度に過ぎないことを意味する。その38発中、重大な損害や完全な破壊につながるものは更に少ない。

 

 これら過度に楽観的な数字を、ロシアの戦車や他の装甲車両生産と比較すると状況がより明確になる。

 

 ロシアの軍事生産について論じた2024年3月のCNN記事によると、ロシアは月に最大125台の戦車を生産していると認めている。他の西側情報筋によると、ロシアは月に最大250台の装甲車両も生産しており、合計月に375台の装甲車両を生産しているという。

 

 アメリカが毎月生産するジャベリン・ミサイルを全てウクライナに直接送ったとしても、ウクライナができる攻撃は38発であるのと比較してほしい。それを破壊すべくジャベリン・ミサイルをアメリカが生産する量より遙かに多くの装甲車両をロシアは生産している。欧米諸国で生産される他の対装甲兵器(例えば、年間1,000発のTOWミサイルを生産)についても同様で、いずれも備蓄枯渇と月間生産率低下に直面している。

 

 ウクライナに送られるジャベリン・ミサイルや他の兵器の数は、実際は月間総生産数より遙かに少ないことを考慮すると、アメリカ(とヨーロッパ)軍事支援の実際の規模と、現在ウクライナに流入している「数十億ドルの兵器」が、ロシア軍が既存の戦線に沿って圧力を強め続けるだけでなく、全く新しい戦線を開き、ウクライナに更に広範な戦略的ジレンマをもたらし、既に不足している要員や装備や弾薬を更に悪化させる中、ロシア軍の進撃を遅らせるどころか阻止するウクライナ能力に大きな変化をもたらさないことがわかり始めている。

 

 空虚な言辞

 

 ブルームバーグが「プーチンは時間切れ」という記事を「アメリカの戦争機械は基本的な大砲を十分な速さで製造できない」という記事で、その価値を低めたにもかかわらず、ウクライナに有利な方向に流れが変わりつつあると読者を説得しようとする同紙や他の欧米メディアによる試みは、紛争の方向転換を図るウクライナの2023年の「反撃」を売り込むため使われたのと同じ空虚な言辞の繰り返しだ。

 

 現実には、2023年のウクライナ軍事作戦はロシア軍によって完敗し、ロシア軍はウクライナの人員や装備や弾薬備蓄を壊滅させただけでなく、その過程で自らの数量や能力を強化することに成功したのだ。

 

 最近ハリコフで失った領土を取り戻そうとするウクライナの試みは、2022年と2023年の攻勢と同じ成果のない結果に終わるだろう。かけがえのない訓練された人員や装備で確実に多大な犠牲を払うだろうが、実際に領土を奪取できる可能性は疑わしい。

 

 ウクライナ全土で戦闘の潮目が変わると予感させる今日の欧米諸国の見出しは、領土や人命や将来にわたる経済見通しの点でウクライナに莫大で消えない犠牲を強いる、勝ち目のない紛争でウクライナが戦い続けるよう促す今やお馴染みの繰り返しだ。

 

 しかし、これまで何度も指摘されてきた通り、勝ち目のない代理戦争にウクライナを巻き込むことは、2019年にランド研究所論文「ロシアに手を広げさせる:有利な条件での競争」Extending Russia: Competing from Advantageous Groundで早くも表明されたアメリカの狙いであり、そこでは以下のように述べられていた。

 

 強力な軍事支援を含むウクライナに対するアメリカ支援の拡大は、ドンバス地域を掌握するためにロシアが払う犠牲(血と資産の両方)を増大させる可能性が高いはずだ。分離主義者に対するロシアの更なる支援やロシア軍増派が必要になる可能性が高いはずで、支出増大や装備損失やロシア人死傷者の増加につながる。後者は、ソ連がアフガニスタンに侵攻した時のように、国内でかなり物議を醸すことになりかねない。

 

 だがこう警告していた。

 

 しかしながら、このような動きは、ウクライナとアメリカの威信と信用に膨大な代償をもたらしかねない。これによって、ウクライナ人死傷者や領土喪失や難民流出が不釣り合いに大きくなる可能性がある。ウクライナにとって不利な和平に至る可能性さえあるのだ。

 

 2019年当時でさえ、アメリカが支援する対ロシア代理戦争で、ウクライナは勝てないはずだとアメリカ政策立案者連中は明らかに認識していた。本当の狙いは、ロシア勝利の代償を高くして、ロシア経済を弱体化させ、ロシア社会を分裂させ、最終的にソ連のような崩壊を引き起こすことだった。このような代理戦争でウクライナが破滅するというランド研究所の予想は明らかに現実のものとなったが、この政策で想定された「恩恵」はまだ現れておらず、この時点では妥当性すらないように思える。

 

 従って、ウクライナが間もなく幸運に恵まれるという欧米諸国の言説は進行中の紛争の本当の分析に基づくものではなく、むしろ戦い続ければ災難が待ち受けていると警告する実際の分析にもかかわらず、戦い続けるようウクライナを促すことを狙ったプロパガンダだ。

 

 この過程が一体どこまで進行し、アメリカとお仲間連中が、ウクライナをもはや戦場に追いやらず、代わりに交渉の席に着かせるようになるのかは時が経てばわかるだろう。その間、ウクライナに流入する「数十億ドルの兵器」は、これまでと同じ影響を及ぼし続け「不釣り合いに大規模なウクライナ人死傷者、領土喪失、難民流入」を確実にし、最終的にウクライナを「不利な平和」へと導くことになるだろう。

 

 ブライアン・バーレティックはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

 

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/06/13/behind-the-myth-of-billions-in-arms-flowing-into-ukraine/

----------

 

 The Duran 予想通り、スイス・平和サミット悲惨な終了。

 

Russia wins Swiss summit. NYT resurrects Istanbul ceasefire 43:23

 

 スコット・リッター氏新刊案内

Scott Ritter Extra

Covering Ukraine

The Scott Ritter Interviews Through the Eyes of Ania K

Scott Ritter
Jun 18, 2024

 

 伝記洗脳箱の都知事選呆導、真面目に見ていない。もっぱら『かちかち山』の再現を夢想している。


 おばあさんを汁にして、おじいさんに食わせたたぬきはウサギに背中に火をつけられ、やけど薬だと唐辛子を塗られ、泥船に乗るが脆くも崩れ...

2024年6月 6日 (木)

鋼鉄に埋もれる:軍事生産とウクライナにおけるNATO代理戦争

2024年6月3日
Brian Berletic
New Eastern Outlook

 

 隣国ウクライナで、選挙で選ばれた政権が打倒され、その後のアメリカとNATO諸国による同国の軍事化によって、ロシアの特別軍事作戦(SMO)が開始されて、現在三年目を迎えているが、それがロシアの巨大な軍事産業基盤の恩恵を受けているのは明らかだ。

 

 かつては粗悪で時代遅れのロシア兵器が「画期的な」NATO兵器に打ち負かされつつあるというニュースで溢れていた欧米メディアが、今やロシアの軍事生産と、それに追いつけないNATO状況のギャップが拡大しているという見出しを掲げている。他の見出しも、過去二年以上の戦闘で、かつて自慢していたNATO兵器が欠点を露呈していると認めている。

 

鋼鉄に埋もれる:ロシアの砲弾と滑空弾生産

 

 こうした見出しの中に、スカイニュースの2024年5月下旬記事「ウクライナの欧米同盟諸国の約三倍の速さ、約4分の1の費用でロシアは砲弾生産をしている」があり、下記のように認めている。

 

 ロシアの工場で今年約450万発の砲弾が製造または改修されると予測されているのに対し、欧州諸国とアメリカを合わせた生産量は約130万発であることが公開情報を基にベイン・アンド・カンパニーが行った砲弾に関する調査で判明した。

 

 ウクライナでの戦闘を決定づける最も決定的な要因の一つは火砲だ。アメリカ政府と欧米諸国企業が資金提供する外交問題評議会が2024年4月に発表した報告書「戦争兵器:ロシアとウクライナの競争」には次のように書かれている。

 

 火砲は数世紀にわたり「戦いの王」として知られてきたが、これは今日もほぼ変わらない。ロシア・ウクライナ戦争では砲撃が両軍死傷者の約80パーセントを占めている。アメリカの援助打ち切り後のここ数カ月で、ウクライナの砲撃が5対1から10対1に減ったのは、一層不吉だ。

 

 もし5対1から10対1で武器でウクライナが劣勢なら、死傷者も同様にこの差を反映することになる。イギリス国防省を含む欧米諸国の様々な情報源によると、ロシアが「35万5000人」の死傷者を出しているのに対し、ウクライナは約5倍から10倍、つまり170万から350万人のウクライナ人死傷者を出している。

 

 より現実的に考えると、ロシアの損失は5万人、ウクライナの損失は50万人の可能性が高い。

 

 NATOとそのウクライナ代理勢力にとって懸念が高まっているもう一つの分野は、ロシアがウクライナ防空網の残存範囲外にロシア軍用機で投下する精密誘導滑空爆弾を使用していることだ。ロシアの圧倒的な砲兵力の優位性をもってしても不可能な規模で、この爆弾は、ウクライナの要塞を標的にして破壊できる。

 

 2024年5月下旬の「ロシアの滑空爆弾がウクライナ都市を安価に破壊」と題する記事でBBCは次のように説明している。

 

 ウクライナでの攻勢を進めるため、安価ながら破壊力の大きい兵器「滑空爆弾」をロシアは益々多く使用している。

 

 現在、国境を越えてハルキフ近郊にロシアが侵攻する際、ウクライナ北部の町ヴォフチャンスクを攻撃するため、わずか一週間で200発以上の砲弾が使用されたとみられる。

 

 3月だけで同様爆弾が3,000発投下されたとウォロディミル・ゼレンスキー大統領は述べた。

 

 ウクライナはアメリカと同等の統合直接攻撃弾(JDAM)を受領したが、減少する戦闘機と優れたロシアの電子戦(EW)能力と相まって、この能力も無意味になっている。

 

 2023年6月に発表した報告書「JDAM阻止:ロシア電子戦によるアメリカ兵器への脅威」の中で、アメリカ兵器の欠点と、ロシアの妨害からアメリカの滑空爆弾を守る技術的課題をアメリカが解決する可能性が低いことをロンドンに拠点を置く王立統合安全保障研究所(RUSI)は詳細に説明している。

 

 たとえロシアの電子戦能力をアメリカが克服できたとしても、アメリカと欧州製の滑空爆弾の数は、それを搭載できる戦闘機と訓練を受けたパイロット不足により、ロシアが使用する数のほんの一部にとどまるはずだ。

 

 期待に応え損ねているNATOの「奇跡の兵器」

 

 アメリカ製JDAMが標的に命中し損ねているのに加えて、ウクライナに供与された他の多くの精密誘導兵器もロシアの電子戦妨害に直面しており、その中にはアメリカ製エクスカリバー155mmGPS誘導砲弾や、アメリカ製HIMARSおよびM270発射装置に発射される誘導多連装ロケットシステム(GMLRS)、HIMARSおよびM270システムに発射されるアメリカ製の地上発射小口径爆弾(GLSDB)などがある。

 

 これら兵器は戦場で効果的に使用されているが、ロシアの電子戦能力により全体的有効性が阻害されている。また同等のロシア兵器より供給が少ないため、ロシアに決定的優位性をもたらしている。

 

 ウクライナでの戦闘を通じて明らかになった他の「形勢を一変させる」兵器には、ドイツ製レオパルト1と2主力戦車(MBT)とイギリス製チャレンジャー2 MBTがあり、どちらも失敗したウクライナの2023年攻勢で使用された。

 

 アメリカ製M1エイブラムス主力戦車もウクライナに供与された。これらは2023年の攻勢時には留め置かれていたが、代わりに今年ロシア軍が勝利したアヴデーエフカでの戦闘で戦場デビューを果たした。

 

 戦場で燃えるM1エイブラムスの画像や映像は、ウクライナにおける他の欧米諸国主力戦車の結果の例外でないことを示している。

 

 最近の記事で、M1エイブラムスの使用を試みたウクライナ人乗員にCNNはインタビューし、彼らの苛立ちと失望を報じた。

 

 「ウクライナ兵、アメリカ供給の戦車はロシア攻撃の標的になっていると語る」と題されたこの記事は、次のように認めている。

 

 イラクでサダム・フセイン政権軍や反政府勢力と戦うために使用された米軍の主力戦車(総経費1000万ドル)には最新兵器を阻止できる装甲が欠如しているとドイツで訓練を受けた乗員らは語った。

 

 「この戦争には装甲が不十分だ」とコールサイン「ジョーカー」の乗員の一人が語った。「装甲は乗員を守らない。実際に、今やドローン戦争だ。だから今では戦車が出ると、連中は必ずドローンで攻撃しようとする」

 

 これは欧米諸国の装甲車両の「生存性」を称賛する欧米諸国の専門家や評論家の主張と矛盾する。

 

 記事は、多くが運用不能となっている戦車の兵站と保守の課題も取り上げている。

 

 記事は、下記のように認めている。

 

…戦車には技術的問題があるようだ。

 

 木の下に駐車していた一輌は、ポーランドから輸送されたばかりだったにもかかわらず、エンジン・トラブルのため、CNN取材中ほとんど動かなかったと取材班は言う。また雨や霧の中では結露で車内の電子機器が壊れることもあると兵士は不満を漏らしている。

 

 また、ウクライナのM1エイブラムス戦車に提供された弾薬は戦車同士の戦闘用だとCNNは報じたが、記事はそういう場合はまれだと認めている。そそではなく、戦車は歩兵陣地を攻撃するための突撃砲として使用されているので、高爆発性弾薬の方が適しているが、どうやら十分な数が供給されなかったようだ。

 

 最後に、アメリカ製M1エイブラムス戦車の失敗は、アメリカとNATOが決して想定していなかった、十分な火砲と航空支援がない形で:ウクライナが戦車を使用しかねない事実による可能性もあるとCNNは認めている。

 

 CNNは次のように報じている。

 

 戦車がNATOスタイルの戦争、すなわち戦車と歩兵が前進する前に空軍と砲兵が戦場を準備する戦争のために作られていることにウクライナ軍乗員は不満を表明した。キーウは長い間、砲兵と空軍の不足を嘆いてきた。

 ウクライナは空軍も砲兵もないため、M1エイブラムスを含むウクライナ軍に移管された複雑で重く信頼性の低い欧米諸国の戦車は全て特に脆弱だ。

 

 予想可能な結果

 

 ウクライナへの欧米諸国の兵器供与が「形勢を一変させる」結果を予想する多くの欧米諸国の見出しと対照的に、アメリカと欧州のハードウェアの失敗は完全に予測可能だった。

 

 欧米諸国の軍事的優位性という神話は、全て、数十年にわたる複数の紛争で生じた一連の不一致に基づいていた。アメリカと同盟諸国は訓練も装備も不十分な軍隊の国々と戦争してきたのだ。これらの国々の多くは「ソ連」または「ロシア」の軍事装備を運用していたとされるが、それは最先端装備から数世代遅れており、装備を十分活用できない組織化不十分な軍隊に運用されていたのだ。

 

 こうした多くの不利な点にもかかわらず、数十年にわたり、アメリカの侵略戦争の標的となった国々は、少なくとも理論上、アメリカと欧州の兵器には限界があり、同等またはほぼ同等の敵との戦闘では脆弱なことを証明していた。このことや訓練や兵站に関する課題などの他の要因により、ウクライナの戦場における欧米諸国兵器の有効性(またはその欠如)は予想可能だった。

 

 欧米諸国の軍事的優位性という神話は今やウクライナで完全に打ち砕かれ、欧米諸国の兵器は量的にも質的にも限界に達し、戦場でロシア軍に決定的優位性を与えているが、欧米諸国は機会を捉えられないことが明らかになった。

 

 前述のスカイニュース記事は、ロシアの滑空爆弾の数が膨大かつ増加していると論じているが、欧米諸国全体の軍事産業生産が不十分なため、欧米諸国から提供される兵器が不足していることも指摘している。

 

 この記事には「最前線の戦争で工場が勝ち得る」という題の部分があり、下記のことを認めている。

 

 武器と弾薬生産の重要性から、ウクライナ戦争の勝敗は最前線ではなく、工場の生産ラインで決まる可能性があると多くの専門家は述べている。

 

 これは「アマチュアは戦略を語り、プロは兵站を語る」という格言を反映している。

 

 欧米諸国の兵器メーカーは十分な注文があった場合にのみ生産能力を拡大すると記事は説明している。これにより利益は最大化されるが、即応性が犠牲になる。生産拡大は費用のかかる過程であり、資源や、更に重要なことに時間が必要なのだ。

 

 ロシアの国営兵器製造企業は即応性を優先し、注文に関わらず過剰生産能力を維持しているため、欧米諸国の工場が一年以上もかかるのに対し、ロシアは数ヶ月という比較的短期間で生産を増強できる。

 

 ウクライナの現在の危機が、少なくとも部分的には、SMOが始まる何年も前からロシアが軍事産業生産と兵站に長期的に重点を置いてきたことと、これだけの規模や激しさや、これ程長期にわたる運用を決して想定していなかった欧米軍事産業基盤による武器を使って代理戦争を戦っている欧米諸国集団との対立の結果であることは明らかだ。

 

 欧米諸国が共同で軍事産業の生産拡大に真剣に取り組む頃には、ロシアは既に数年先を行く状況にある。例えば、アメリカと欧州の砲弾生産合計は、2025年から2027年の間に年間250万から300万発に拡大すると予測されている。これはロシアの現在の生産量より少ない。2025年から2027年までにロシアが生産量を更に拡大しているのはほぼ確実だろう。

 

 ワシントンやロンドンやブリュッセルの政策立案者の間では、この紛争におけるウクライナの「勝利」は決して本当の狙いではなかった。2019年のランド研究所論文「ロシアの手を広げさせる」が認めている通り、常に、この計画の狙いは莫大な費用を伴うロシアによるウクライナ介入を誘発し、ロシアを過度に拡大させ、ソ連のように崩壊を引き起こす可能性だった。ウクライナ紛争は「不釣り合いに多くのウクライナ人の死傷者、領土の喪失、難民の流入を引き起こす可能性がある。ウクライナを不利な平和に導く可能性さえある」と論文は予測していた。

 

 今日、かつて東西間でバランスを取り、両世界との商売で利益を得ていた東欧の国ウクライナにおけるロシアとのワシントン代理戦争の余波が一体どのようなものかを我々は見ている。ウクライナを本当に支援する能力も意欲もない同盟諸国の利益のために、ウクライナは、ロシアの鉄鋼に埋もれつつある。

 

 戦闘の明らかな結末(2019年初頭には既に良く知られていた結末)にもかかわらず、ウクライナが非合理的に戦い続けるのを促すように欧米諸国全体から発せられる言説の多くは作られている。多くのウクライナ人の心の中に、ロシアに対する深い憎悪が意図的に植え付けられているが、彼らの本当の敵は常に欧米諸国全体の指導部だった。利益、権力、影響力の永続的ながら最終的には持続不可能な獲得を前提とする欧米諸国の政策立案者の近視眼的性質は、欧米諸国全体自身さえ最大の敵にしているのだ。

 

 勝てないだけでなく(そもそも勝つ見込みもなかった)戦争の結末が全て戦場で決まるとすれば、より賢明な助言が勝ち、より適切な欧米外交政策が採用され、ウクライナが最終的に交渉の席に着き、戦いが長引けば長引くほど最終的に「ウクライナ」が小さくなる戦争を終わらせるまで、この自己破壊過程がいつまで続くか時が経てば分かるだろう。

 

 一方、ロシアの軍事工業生産は成長を続けている。砲弾や装甲、航空戦力、滑空爆弾、ドローン、防空システム、あらゆる種類のミサイルは生産量が増大しているだけでなく、品質の向上に向けて開発が進められている。多くの場合、ロシアの軍事装備は欧米諸国の装備の能力を超えている。品質に関係なく、単純に量が多いため、戦場で敵を鋼鉄で「葬り去る」ことができるのだ。

 

 Brian Berleticは、バンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

 

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/06/03/buried-in-steel-military-production-natos-proxy-war-in-ukraine/

----------

 

 The New Atlasでも、本人が同じ話題を語っている。

 

Buried in Steel: Military Production & NATO’s Proxy War in Ukraine 40:46

 

 George Galloway MOATAS 最新番組は、今回のパスポート没収を巡るスコット・リッター・インタビュー

 

INTERVIEW: Land of the free, home of the grave 19:09

 

 日本語で検索しても、属国大本営広報部で、彼のパスポート没収を扱う記事は見当たらない。日本語記事はSputnikのみ? 英語で検索しても、宗主国大本営広報部は全く報じていないようだ。

 

 デモクラシータイムス

 

<小池潜行 自公維野合>【山田厚史の週ナカ生ニュース】 1:47:50

 

 今朝の孫崎享氏メルマガ題名

 

ウクライナ戦争和平は①NATOはウクライナに拡大しない、②東南部の帰属は住民の意思に従うを軸に実現できると思う。上記二点米国、NATO側はこれまで受け入れを表明していない。この中バイデンは「ウクライナの平和はNATO加盟を意味するものではない」と発言。支離滅裂気味。

 

 日刊IWJガイド

 

「ロシア領への直接攻撃を認める西側諸国の決断に、ロシアが警告! しかしマスコミはまたも甘い見通し!」

はじめに~ウクライナ対ロシアという2ヶ国間の「紛争」の枠組みを大きく踏み越える軍事的エスカレート! 西側諸国は、ウクライナに長距離攻撃可能な兵器を供与し、ロシア領内を直接、攻撃することを認める! 前ロシア大統領のメドベージェフ・ロシア安全保障会議副議長が、このエスカレーションに深刻かつ真剣な警告!「西側諸国との現在の軍事紛争は、最悪のシナリオ通りに発展している。NATOが使用する兵器の威力は絶えずエスカレートしており、紛争が最終段階に移行する可能性を誰も排除できない」! この警告を、日本のマスメディアはことごとく真剣に受け止めず、スルー!! またもや見通しを誤る可能性大!!

2024年5月 9日 (木)

ウクライナでの教訓を学ばずにイギリスは「威力ある」戦車チャレンジャー3号を発表

2024年4月29日
Brian Berletic
New Eastern Outlook

 「イギリスで最も威力ある戦車」が生産ラインから出ているとイギリス国防省が発表した。「ヨーロッパで最も威力ある戦車の一つ、チャレンジャー3の入手に更に一歩近づいている」と声明で、イギリス陸軍兵士が主張することになるだろう。

 しかし、いくつかの例外を除いて、ラインメタルBAEシステムズとのほぼ9億9,000万ドルの契約に基づいて製造されたチャレンジャー3主力戦車の詳細は、目的より利益を重視し、ウクライナで進行中の紛争から重要な教訓をイギリス政府と軍隊は学べていない。

 チャレンジャー3は本当に「新しい」わけではない

 最初の発表と価格は、チャレンジャー3が新たに生産された戦車であることを示唆しているが、実際は既存のチャレンジャー2戦車を改修し近代化したものだ。

 2024年4月の「イギリスで最も威力ある戦車が試験に入る」という題名の記事で、イギリス陸軍既存のチャレンジャー2戦車221輌が改修/近代化されたチャレンジャー3127に「スリム化」されるとBBCは主張した。国防省声明は、チャレンジャー3号は合計148機引き渡されるとしている。

 既存戦車を改修し近代化したにもかかわらず、9億9,000万ドルの計画は戦車一輌あたり約600~800万ドルに相当し、改修/近代化されたロシアのT-72B3、T-90M、またはT-80BVM戦車より数倍高価で、最近のBusiness Insider記事によると、ロシアの最新戦車T-14 Armataと同じくらい高価で、価格は500万ドルから900万ドルと考えられている。

 改修され近代化された主力戦車は依然戦場で効果的に機能する。戦車の最も重要な特性は火力、防御力、機動性で、これらは全て近代化計画中に改良されることがよくある。

 ロシアは、改修および近代化計画により戦場で効果的な装甲を大量に配備できることを証明しているが、そのような計画の成功の鍵は、その過程が迅速かつ安価に行われることだ。「不毛の樽」と題する2022年11月の記事で、ロシアの戦車産業は年間最大250両の新型車両を生産し、更に最大600両を近代化する能力があると欧米資本のメディア、ノーバヤ・ガゼータは主張した。これは、2040年までに計画されている全てのチャレンジャー3戦車の総数より遙かに台数が多い。

 時代遅れの設計哲学を強化

 イギリスのチャレンジャー3戦車がその高価格と少量を正当化できるという証拠はない。戦車がどれほど効果的でも、数が少ないため、同等または同等の敵との大規模作戦では不利になる。

 チャレンジャー3の基になっているチャレンジャー2主力戦車は既にウクライナで実験され、性能は低かった。イギリスの在庫にあるチャレンジャー2の数は全体的に少ないため、戦闘で使用するためにウクライナ軍に移送できたのは14輌だけだった。ウクライナの攻勢が失敗に終わる2023年9月、最初のチャレンジャー2号は、おそらく地雷により、ロシア軍に破壊されたとイギリス・メディアは報じた。

 2023年攻勢の中「突破口」に備えてチャレンジャー2号戦車を予備としてウクライナが保有しているのではないかという憶測があったが、そのような作戦は行われなかった。

 その代わり、チャレンジャー2派、前線の要塞を攻撃するための高価で、重く、過度に複雑な突撃砲として使用されていたと報告書は主張している。同様の報告書で、チャレンジャー2は「重すぎ」、保護が欠如し、「過度の保守」が必要だと批判されている。報道によると、重い重量と比較的出力の低いエンジンが組み合わさったため、この戦車はウクライナの泥だらけの地形で動けなくなったという。また、その重さから、戦場を横切っている戦車を支えられない橋を渡る際も問題が生じる。

 同様の設計思想を採用した他の欧米主力戦車も同じ挫折を経験した。

 また他の欧米主力戦車と同様、チャレンジャー2の多くのシステムは不必要に複雑だった。この戦車は、最新の戦車のようなトーションバーの代わりに、油圧空気圧サスペンションを使用している。複雑なサスペンションシステムにより、主砲の精度が向上すると考えられている。サスペンションの複雑さが増すことで、修理用交換部品の数が増えるとともに、より複雑な保守作業が必要となり、既に悲惨なウクライナでの物流上の課題が一層複雑になった。

 チャレンジャー2は、他のNATO戦車設計で使用されている120mm滑腔砲とは対照的に、独特のライフル主砲を使用したため、弾薬の別途供給が必要となり、戦場で戦車を維持するのが更に困難になっていた。

 チャレンジャー3は実際にはチャレンジャー2より重いが、同様の大きさと出力のエンジンの使用が予想されており、これは、余分な重量を支えられる橋を見つけるのと同様に、困難な地形を横断するのが一層困難になることを意味する。チャレンジャー3には、チャレンジャー2の複雑な水圧空気圧サスペンションの改良版が使用される。

 全体的改善としての設計上の決定の1つは、共同作戦演習や戦場で改良された戦車の兵站的負担を軽減するチャレンジャー3がNATO標準弾薬を使用できるようにする120mm滑腔砲の使用だ。

 全体として、チャレンジャー3は時代遅れの設計哲学を強化したもので、少数の複雑な戦車が、低品質な、より多くの敵の戦車に対し、優位性を獲得することを目的としていた。今日、現代のロシアの主力戦車は、数キロメートルの射程で射撃し、最初の射撃で標的に命中させられる。ロシアの主力戦車は主砲から対戦車誘導ミサイル (ATGM) も発射するため、実際には欧米戦車の射程外の標的と交戦できる。

 しかし、ウクライナが証明している通り、戦車対戦車の戦闘は比較的まれだ。双方が広汎な移動プラットフォームに搭載される可搬性の高い対戦車誘導ミサイルを使用しており、対戦車用には神風ドローンを使用する。代わりに、戦車は、敵の防御に対する攻撃や長距離直接射撃兵器として使用される。これらの役割は、いずれも、チャレンジャー2や3の設計に含まれる高価で複雑な機能を必要としない。

 代わりに、主力戦車が攻撃を受け重大な損傷を受けたり破壊されたりする可能性が高いため効果的戦車を最も速く最も安価に生産できる国が消耗戦略で本質的に有利になる。

 これら教訓を、チャレンジャー3は全く学んでいないことを示している。

 アメリカのM1エイブラムスやドイツのレオパルト2など他の欧米戦車同様、チャレンジャー3は、組織化が不十分で武装が不十分な過激派に対し武器を組み合わせる、数十年にわたる「小さな戦争」の中で開発された兵器だ。その役割でさえ、欧米諸国の大きく重く複雑な設計哲学は、世界中の戦場で普及した安価で効果的なロシアの対戦車ミサイルの餌食になり始めている。

 これら大型で複雑で高価な主力戦車の改良版を製造し続ける動機は、戦場での有効性への狙いではなく、主に経済的利益への欲求から生じている。全く新しい主力戦車の開発には、研究開発に多額の資金が必要となるだけでなく、最終的に製造するための新たな工具類も必要で、たとえそれら戦車が現代の戦場にどれほど不適切であれ、さほど大掛かりではない (が効果も遙かに少ない) 改良を既存戦車に行うことで金を儲けられるのだ。

 初代チャレンジャー3の配備に関するグラント・シャップス国防長官の次のような発言をBBCは記事で引用している。

 イギリスが直面する脅威が進化するにつれ、より危険な世界で、チャレンジャー3のような車両の必要性が不可欠となっている。

 しかし、過去20年、イギリスやアメリカや欧州同盟諸国が戦ってきた多くの戦争や代理戦争は、全て自分たちが選んだ紛争で、欧米集団が直面しているとされる「脅威」に関する意図的な嘘に基づいて、そうした介入が国民に売りこまれたことが多かった。

 現実は、目的よりも利益を優先する、この考え方こそ、インフラや教育や医療から「必要不可欠な」チャレンジャー3のような高価で役に立たない兵器計画に公共資源を振り向けて、欧米の民衆の福祉や幸福に最大の脅威をもたらしているのだ。

 Brian Berleticは、バンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/04/29/uk-unveils-lethal-challenger-3-failing-to-learn-lessons-from-ukraine/

----------

 New Atlasで彼は同じ話題を語っている。

Britain's "Newest" Tank: Challenger 3, Failing to Learn Lessons from Ukraine 24:00

 イスラエルの戦争犯罪を告発した南アフリカには驚いた。南アフリカのナレディ・パンドール国際関係協力大臣の演説を聴いて納得。属国与党と違って、主権国家には、まともな政治家がいるのだ。イスラエル軍戦争犯罪を告発する南アフリカ文書は現在IWJで翻訳中と聞いている。

Viral Naledi Pandor Lecture To Arrest Netanyahu Shakes the World ! 49:49

 ジョージ・ギャロウェイMOATSのインタビューで、エジプトは「物乞い国家(beggar state)」。アメリカとて精神的には「物乞い国家」だと彼もスコット・リッターも。

INTERVIEW: Egypt, a beggar state 16:27

  DanielDavis/DeepDiveで、ゼレンスキーも欧米も現実から遊離しているとミアシャイマー教授

John Mearsheimer Zelensky & the West Detached from Reality 1:05:32

 The Chris Hedges Report Fish氏の挿絵が秀逸。懐かしいStrangelove名画のもじり。

The Nation’s Conscience

The courageous stance of students across the country in defiance of genocide is accompanied by a near total blackout of their voices. Their words are the ones we most need to hear.

Chris Hedges
May 08, 2024

 日刊IWJガイド

はじめに~スクープ! なんと、150万人近くのパレスチナ人難民が追い詰められた、ガザ地区南部のラファへのイスラエル軍による攻撃に、米国はひそかにGOサインを出し、全面協力していた!! ほんの2ヶ月前には、バイデン政権あげて猛反対のポーズ! しかも、イスラエル軍のラファ侵攻直後に、米国はイスラエルへの武器供与を拒否したと発表したというのに!

IWJへのご寄付・カンパは、11月から3月までの5ヶ月間連続して目標に未達で、不足額は合計972万3789円にもなります!「IWJしか報じていない情報」がますます増えている中、今後も目標未達となると、IWJは活動できなくなる可能性が出てきます! 有料会員登録と、ご寄付・カンパで、どうか財政難のIWJへの強力なご支援をよろしくお願い申し上げます!

【中継番組表】

<インタビュー報告>「岸田政権にまで至る第2次安倍政権の路線は、大企業だけ良くする円安政策を進め、憲政史上最長の政権を築いた。そもそも最初から、『アベノミクス』は、中小零細企業を救う気は、まったくなかった。まして、非正規労働者を救おうなどと、思ってもいなかった」! 岩上安身によるエコノミスト田代秀敏氏への緊急連続インタビュー第4弾!

<米国内の大学で親パレスチナ、シオニスト・イスラエルによるジェノサイド反対学生運動が拡大(その5)>【5月2日、コロンビア大学ハミルトン・ホールで警察が発砲!? ニューヨーク市警は地元メディアの指摘を受けるまで発砲事件を隠蔽! UCLAでは、数百人の警察がキャンプを強制撤去し、209人の学生を逮捕! バイデン大統領は、「我々は人々を黙らせたり、反対意見を鎮圧したりする権威主義国家ではない」が、「我々は無法国家ではない、秩序が勝たなければならない」と、一連の親パレスチナデモに初声明! これこそ「虐待者が突然、被害者に変身する反作用的な虐待(reactive abuse)」の典型的なケース!】

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

エチオピア 911事件関連 Andre Vltchek Caitlin Johnstone CODEPINK Eric Zuesse Finian Cunningham GMO・遺伝子組み換え生物 ISISなるもの James Petras John Pilger Mahdi Darius Nazemroaya Mike Whitney Moon of Alabama NATO NGO Pepe Escobar Peter Koenig Prof Michel Chossudovsky Saker SCO Scott Ritter Stephen Lendman Thierry Meyssan Tony Cartalucci/Brian Berletic TPP・TTIP・TiSA・FTA・ACTA Unz Review Wayne Madsen WikiLeaks William Engdahl wsws アフガニスタン・パキスタン アメリカ アメリカ軍・軍事産業 アルメニア・アゼルバイジャン イギリス イスラエル・パレスチナ イラク イラン インターネット インド イーロン・マスク ウォール街占拠運動 ウクライナ オセアニア・クアッド オバマ大統領 オーウェル カジノ カナダ カラー革命・アラブの春 ギリシャ クリス・ヘッジズ グレート・リセット サウジアラビア・湾岸諸国 シェール・ガス・石油 シリア ジーン・シャープ ソマリア ソロス タイ チベット チュニジア・エジプト・リビア・アルジェリア テロと報道されているものごと トヨタ問題 トランプ大統領 トルコ ドイツ ナゴルノ・カラバフ ノーベル平和賞 バイデン政権 バングラデシュ パソコン関係 ヒラリー・クリントン ビル・ゲイツ フランス ベネズエラ ベラルーシ ホンジュラス・クーデター ボリビア ポール・クレイグ・ロバーツ マスコミ ミャンマー ユダヤ・イスラム・キリスト教 レバノン ロシア 中南米 中国 中央アジア 二大政党という虚構・選挙制度 伝染病という便利な話題 北朝鮮・韓国 地球温暖化詐欺 地震・津波・原発・核 宗教 憲法・安保・地位協定 授権法・国防権限法・緊急事態条項 文化・芸術 新冷戦 新自由主義 日本版NSC・秘密保護法・集団的自衛権・戦争法案・共謀罪 旧ユーゴスラビア 映画 東ヨーロッパ・バルト諸国 東南アジア 民営化 無人殺戮機 田中正造 英語教育 読書 赤狩り 通貨 選挙投票用装置 難民問題 麻薬 麻薬とされるマリファナについて

お勧め

  • IWJ
    岩上安身責任編集 – IWJ Independent Web Journal

カテゴリー

ブックマーク

最近のトラックバック

無料ブログはココログ