トランプ政権:「戦争タカ派なし」から「全員戦争タカ派」へ
2024年11月13日
New Eastern Outlook
2024年のアメリカ大統領選挙までの数週間、前大統領で現在次期大統領のドナルド・トランプがアメリカの海外での戦争を中止し、代わりにアメリカ自体に投資してくれるだろうとアメリカ人や世界中の多くの人々は期待していた。
トランプ政権:「戦争タカ派なし」から「全員戦争タカ派」へ
こうした期待は、トランプ陣営を取り巻く言論に基づいていた。候補者の息子、ドナルド・トランプ・ジュニアは「全てのネオコンと戦争タカ派をトランプ政権から締め出すには最大限の圧力が必要だ」と公に発言したが、これはトランプ候補の選挙運動中の言論を反映している。
トランプ次期大統領の考慮対象と被任命者は全員強烈なネオコンだ
残念ながら、ドナルド・トランプ次期大統領の前回任期時と同様に、これは、ワシントンDCで暮らし、息をしている最も声高な「ネオコンと戦争タカ派」で内閣を埋める前に、戦争に疲れたアメリカ人の支持を確保して、海外の国々のバランスを崩すことを意図した空約束だった。
思惑の継続
トランプ次期大統領の前回政権では、ジョン・ボルトンやマイク・ポンペオやニッキー・ヘイリー等の筋金入りネオコンや戦争タカ派が閣僚を構成し、連中はトランプ大統領がオバマ政権から引き継いだ全ての戦争を継続し、中国やイラン、更にロシアも含め、アメリカの特殊権益集団が長年求めてきた更なる戦争を誘発しようと絶えず働いてきた。
第一次トランプ政権中に、アメリカは中国との貿易戦争を開始し、スマート・フォン・メーカー、ファーウェイを含む中国最大で最も成功している企業を骨抜きにすることを狙った措置を講じ、全欧米諸国での販売禁止や、アメリカを拠点とするグーグルによる、ファーウェイへのAndroidオペレーティング・システム供給停止や、更に、カナダ旅行中のファーウェイCFO孟晩舟を拘留するまでに至った。
第一次トランプ政権下でも、アメリカはオバマ政権から引き継いだ政策として、中国を領土内に包囲・封じ込める手段としてアジア太平洋全域で軍備増強を継続した。
中東では、オバマ政権下で始まったシリア不法占領をトランプ政権は継続し、シリア政府と同盟諸国に対する攻撃を続け、シリアの石油をくすねるのをトランプ大統領は自慢していた。またトランプ政権第一期には、公務でイラクを訪問中のイラン高官カセム・ソレイマニ将軍をアメリカが暗殺したが、これはイラン、イラク両国に対する紛れもない戦争行為だった。それまで、自称「イスラム国」との戦いの上で、シリアとイラクを含む地域全体で、ソレイマニ将軍は成功していた。
ロシア権益の代理人だとトランプ大統領は非難されたが、実際は彼の政権がウクライナ軍に武器供与し始め、ウクライナにおけるロシアとの代理戦争を加速させ、2022年2月に特別軍事作戦(SMO)をモスクワに開始させる最後の一線を越えたのはほぼ確実だ。中距離核戦力全廃条約からアメリカが脱退し、その後、ロシアに向ける中距離ミサイルをバイデン政権がヨーロッパに配備する道を開いたのも第一次トランプ政権の時だった。
アメリカの海外介入を終わらせるという選挙公約に、第一次トランプ政権が著しく違反したため、多くのトランプ支持者は、トランプ大統領の「経験不足」を含む様々な言い訳に頼り、ポンペオやボルトンやヘイリーが本当は何者か彼は知らなかった可能性があり、第二次政権では彼の内閣は、そこで学んだ教訓に基づいて行動するはずだと主張した。
沼地を補充する
時は流れ、トランプ新政権は、ボルトンやポンペオやヘイリーが新政権では役職につかないと発表し、教訓を実際に学んだのだという希望を一時的に高めた。
しかし、この状態は長くは続かなかった。その後、次期国家安全保障担当大統領補佐官はジョン・ボルトンと思想的に似ているマイク・ウォルツになる可能性が高いと発表された。ニッキー・ヘイリーと思想的に良く似たエリス・ステファニックが国連大使に就任すると発表された。またマルコ・ルビオとリチャード・グレネル両人が次期アメリカ国務長官候補として検討されているが、彼らの考えは、トランプの前国務長官マイク・ポンペオやバイデン政権下のアメリカ国務長官アンソニー・ブリンケンと区別がつかない。
トランプ次期大統領が検討し任命した人物は、いずれも海外での戦争、特にロシアや中国やイランに対する戦争を擁護して暮らしてきたが、リビアやシリアやベネズエラや他の多くの国々に対する戦争も主張してきた強烈なネオコンや戦争タカ派だ。ステファニックは、2014年のウクライナを含め、世界中で政治干渉に関与しているネオコン主導の組織、全米民主主義基金の 「専門家 」としてリストアップされている。
トランプ次期政権によるネオコンや戦争タカ派指名は「釣り餌」だと主張する人もいるかもしれないが、トランプ政権がJ・D・ヴァンスを副大統領候補に選んだのは、実際、ウクライナ以外では、戦争と好戦主義が続くぞという公然の宣言だった。
ニューズウィークは「アメリカはロシアではなく中国と戦うための武器が必要だとJD・ヴァンスがティム・ディロンに語る」という記事で「ウクライナへの軍事支援より、インド太平洋の安定と台湾支援をアメリカは優先するべきだ」と明言している。
彼が反対を唱えて選挙戦で勝利した政策に関与していたネオコンや戦争タカ派と、トランプ次期大統領が親密で、彼らを任命したことは、そうでないことを示唆する魅力的な言辞にもかかわらず、トランプ第一次政権によるアメリカ外交政策を切れ目なく継続したのを繰り返すことを意味する。
他地域で戦争を加速させるために、ウクライナを一時停止
すると、ウクライナ紛争を終わらせるとトランプ新政権が決意しているように見えるのは矛盾するように思えるかもしれない。これはアメリカにおける政治移行というより、ホワイトハウスの主やアメリカ議会の支配者が誰だろうと、アメリカ外交政策を左右する選挙で選ばれないアメリカ特別権益団体間での優先順位の変化を表しているにすぎない。
ウクライナでのアメリカ代理戦争は、それを引き起こす上で、一期目トランプ政権も役割を演じた戦争だが、どう見ても終焉しつつある。ウクライナを犠牲にして「ロシアに手を広げさせる」狙いは、可能な限り最大限に実現された。アメリカの備蓄は枯渇し、残されたアメリカ軍事力は、エスカレーションで、イランや中国とのより大規模で危険な戦争のため温存する必要があるため、ワシントンの選択肢は、ウクライナでの攻撃を強化するか、二つの、あり得る戦争の成功可能性が完全に閉ざされる前に、イランと/または中国に軸足を移すかの、いずれかだ。
トランプ次期政権はネオコンや戦争タカ派で占められており、アメリカが据えた分離主義台湾政権の武装を彼らは公然と推進し、最終的に、台湾を中国から永久に切り離そうとしている。台湾独立をアメリカ国務省は公式には支持しておらず、中国は一つで、台湾は中国の一部で、北京に承認された中国政府は中華人民共和国(PRC)のみだとする「一つの中国」政策で北京と二国間協定を結んでいるにもかかわらずだ。
この紛争に備える一環として、オバマ、トランプ、バイデン政権を通じて、アジア太平洋地域における軍事的存在をアメリカは拡大しており、この政策の最も声高な支持者で構成される第二次トランプ政権下でも間違いなく継続されるだろう。
この過程には、現在フィリピン最大の貿易相手国で、最近まで重要なインフラ構築パートナーだった中国とフィリピン間に対立を作り出し、かつてアメリカ植民地の東南アジアの国フィリピに対する米軍の足跡を拡大する口実を作ることも含まれる。これにより、アメリカは、中国と台湾周辺の紛争地帯を近隣の米軍で更に包囲することが可能になる。
バイデン政権は中国に対し「軟弱」だと、アメリカの政治「右派」は主張したが、中国との戦争に備えるため、米軍の徹底的再編が行われたのもバイデン政権下だった。
これには、米海兵隊を高度に機動性がある対艦ミサイル部隊への再編や、戦争が始まった場合、米軍施設に中国が報復するのをより困難にするために、米空軍基地をアジア太平洋地域全体に分散させる機敏な戦力展開(ACE)の採用などが含まれる。
トランプ政権が、その後のバイデン政権下で始まったウクライナにおける対ロシア・アメリカ代理戦争の舞台を整えたのと同様、公然と敵対的な反中国政権が権力を握れば、これら変革された米軍部隊が今や完全配備されることになるだろう。
極めて明らかなのは、アメリカ外交政策が、アメリカの選挙により決定されるわけではないことだ。選挙は、継続する思惑に過ぎないものを国民に売り込むために使われる口実や、その口実を言う人物や、アメリカ外交政策が、選挙があるにもかかわらず、継続的に変化しそこねている理由の言い訳を決めるにすぎない。
今後四年、アメリカの敵意に直面する世界中の国々は、アメリカによる海外侵略が全く不可能な状況を作り出す多極的国際秩序の構築に引き続き取り組まなければならない。これは、アメリカの制裁や強力な軍事的抑止力が及ばない、金融や経済的代替手段を通じて、制裁であれ軍事力であれ、代理介入であれ直接介入であれ、アメリカの強制力を抑制する金融、経済、外交、軍事手段を使用することで実現可能であり、実現されつつある。これにより、もはや自らを押し付けられない世界と建設的に協力するという唯一の選択肢がアメリカの特殊権益集団に残される。
Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、ライター。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/11/13/the-trump-administration-from-no-war-hawks-to-all-war-hawks/
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The New Atlasで筆者本人が本記事について語っている。
The Trump Administration: From “No War Hawks” to ALL War Hawks 35:10Alex Christoforou Youtube
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■はじめに~ウクライナ軍が、米国製ATACMSミサイルでロシア領内を攻撃したことが明らかに! 一方、プーチン大統領は改定した核ドクトリンに署名!「ロシアが核保有国に支援された非核保有国によるいかなる攻撃も共同攻撃と見なす」との内容は、米国がウクライナに許可したATACMSミサイルでのロシア攻撃に該当! 退陣間際のバイデン政権が、停戦を公約に掲げたトランプ氏を選んだ直近の大統領選で示された「現在の民意」を踏み躙り、ウクライナ紛争の火に油を注いで、核戦争の危機に! スロバキアのフィツォ首相は、「和平交渉を妨害し、遅らせる試みだ」と非難!
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