横浜Fマリノスの2007年シーズンを振り返る。■ 早野監督が就任。水沼監督が退任し、早野監督が就任した横浜FM。オフには、FW久保とMF奥を放出し、新しいスタートを切った。しかし、序盤は前途多難だった。開幕戦こそ、甲府に1対0で勝利したが、第2節で横浜FCに0対1で敗れて、J1初勝利を許す大失態。サポーターは、不満を募らせた。
転機となったのは、第7節の大分戦。この試合で5対0と快勝すると、第8節の新潟戦でも6対0で圧勝。全員守備から、FW大島のポストプレーを経由し、MF山瀬功、MF山瀬幸らが追い越していく、ムービングサッカーが機能し、快進撃を続けた。
後半戦の開幕戦では、横浜FCに8対1で快勝。横浜ダービーで見事にリベンジを果たした。しかし、終盤に失速し、結局7位でシーズンを終えた。
■ 伝統との狭間その手腕が不安視されていた早野監督だが、1年目にして、戦えるチームを作ったことは評価できる。FW久保、MF奥、DFとドゥトラといった選手を放出し、新しいマリノスの船出は不安いっぱいだったが、大きく落ち込むことなく、リーグを終えたことは、ひとまず評価できる。
そのサッカーは、マリノスの伝統的なサッカーと比べると、一歩進んだサッカーであった。絶対的なストライカー不足もあってシーズン終盤は失速したが、面白いチームを作った。攻守にアグレッシブな姿勢は、確かにサポーターに訴えるものがあった。
しかしながら、横浜Fマリノスという名門チームは、常に優勝争いに参加しなければ評価されないチームである。歯車がかみ合わなくなった終盤戦は連敗を喫し、ナビスコカップも準決勝で敗退。結局、早野監督との契約を更新されず、1シーズンでチームを去った。
■ 日本人最多ゴールをマークした大島今シーズンの横浜FMには、FWマルクス、FWマルケス、MFエウチーニョという3人の外国籍選手が在籍したが、いずれも満足いくプレーは出来なかった。誰1人、J1でゴールを記録することは出来なかったが、J1の18チームの中で、外国籍選手に1つもゴールが記録されなかったのは、横浜FM以外では1チームしかない。
日本人が中心のチームというと聞こえはいいが、実情は、期待された外国籍選手が不調で、日本人だけで戦わざる得ない状況であったということである。
そんな中で、FW久保に代わって前線の核になったのは、28歳の大島だった。レッドスターから獲得した元日本代表のFW鈴木隆行が不振でリーグ戦の出場は2試合にとどまったが、FW大島はシーズンを通してポジションを獲得し、14ゴールを挙げた。
圧巻だったのは、19節の横浜ダービー。前線でボールをおさめつつ、4ゴールをマークし、8対1の劇勝の主役となった。ゴール前以外でも、正確なポストプレーも大きな武器で、大島のポストプレーが攻撃のスピードアップのスイッチとなった。希少価値を持つ選手として、日本代表入りも期待される。
■ フルシーズン働いた坂田06年に初めて日本代表に選ばれたFW坂田は、大島と和製2トップを組んで、9ゴールをマーク。
印象深いのは、25節のG大阪戦。抜群のスピードで相手DFの裏をついて、2ゴールをマークした。シーズン終盤は、ゴール数が伸びなかったが、献身的な守備もマリノス躍進には欠かせなかった。
怪我の多かった坂田が、ついにフルに近い形で働いた。
■ 大黒柱となった山瀬功治背番号10を背負ったMF山瀬功治は、リーグ戦で11ゴールをマーク。鋭い飛び出しと決定力の高さは、J1の中でも際立っていた。
今シーズンは、特に、前に出る強さにより一層磨きがかかって、ドリブル突破が効果的だった。弟のMF山瀬幸宏とのコンビも絶妙で、代えの利かない選手となった。
ただ、中盤の構成を考えると、MF山瀬幸やMF吉田、MF清水といった脇役の選手がMF山瀬功に生かされることで持てる力を十分に発揮したが、2トップのFW坂田とFW大島を含めて、MF山瀬功がその能力をフルに生かせるようにお膳立てをしててあげられるチーム内にいなかった。
したがって、山瀬功が徹底マークに1うと、攻撃は途端に威力を発揮しなくなった。仙台のMFロペスの獲得が噂されているが、山瀬功と波長が合うハイレベルなタレントの獲得が待たれるだろう。
■ 最大の発見となったボランチ河合守備は総じて安定していたが、その中心となったのは、4バックの前に位置したMF河合。不慣れなポジションで起用された河合の活躍は、今シーズン最大の発見となった。
開幕から1ボランチという難しいポジションを任された河合は、守備範囲の広さと優れた危機察知能力で守備の基点となり、さらには正確なつなぎで攻撃の第一歩となった。
183cmという高さも中盤のフィルター役としては稀であり、DFラインの前に位置する大きな壁となった。
■ 小宮山の成長ドゥトラの抜けた左サイドでは、新人のDF小宮山が台頭し、ポジションを獲得した。右利きだが左足のキックの精度は右足以上のものがあり、思い切りのいいドリブル突破も効果的だった。
同じポジションには、五輪代表にも選ばれたDF田中裕介も控えるが、現時点では、日本代表候補にも選ばれた小宮山が一歩、リードしている。
■ 名門復活のために大島・坂田・山瀬功を中心とした和製攻撃陣は、それぞれに持ち味を発揮したが、他チームと比べると、明らかに迫力不足だった。
外国籍選手は、FWマルケス、MFマルクス、DFエウチーニョのいずれもが機能せず、全く戦力として計算できなかった。J1で優勝争いをするには、リーグ戦で20点程度を期待できる助っ人外国人が欲しいところではある。
来シーズンは、桑原監督の就任が噂されている。やはり戦力的に見ると、浦和や鹿島、G大阪らトップクラスと比較すると、一段、見劣りするのは否めない。したがって、大型補強も考えられるのが、若手の芽を摘んでしまわないことも大切である。
20歳前後に、MF乾、MF長谷川、MF水沼といった若年層の日本代表選手を多くそろえており、次代のタレントも控えている。名門チームなだけに最低でも優勝争いに食い込むことが期待されるが、その影響で、将来のある若手選手の芽を摘んでしまったら、元も子もない。
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