■ ラウンド16の2試合目2014年のACLのラウンド16。3度目のACL出場で初めてグループリーグを突破したサンフレッチェ広島はアウェーで豪州のウエスタン・シドニー・ワンダラーズと対戦した。1週間前にビッグアーチで行われたラウンド16の1stレグは広島が3対1で勝利した。広島は「1点差で負けてもベスト8に進出できる。」という有利な条件で2ndレグを迎えることができた。
ホームのシドニー・ワンダラーズは「4-2-3-1」。GKコビッチ。DFポレンツ、ビューチャン、スピラノビッチ、ゴレッチ。MFラロッカ、トリフィロ、ヘルシ、小野伸二、ヤコポ。FWハリティ。日本代表として3度のW杯に出場しており、国際Aマッチは56試合に出場して6ゴールを挙げている元日本代表のMF小野はトップ下で先発となった。DFスピラノビッチは浦和でプレーした経験がある。
対するアウェーの広島は「3-4-2-1」。GK林卓。DFファン・ソッコ、塩谷、水本。MF青山敏、柴崎晃、柏、山岸、野津田、高萩、FW石原直。完全にターンオーバーを採用しているが、GK林卓とDF塩谷とDF水本とMF青山敏とFW石原直の5人は、フル出場あるいはフル出場に近い状態なので、かなり負担がかかっている。MF青山敏は先日発表されたW杯メンバーに選出されている。
■ アウェーゴールの差でベスト8ならず・・・試合の序盤は突破するためには「2点以上」が必要なホームのシドニー・ワンダラーズが攻め込むが、広島も前半20分あたりを過ぎると、FW石原直とMF野津田とMF高萩のトライアングルを中心にチャンスを作るようになる。前半はボール支配率では劣勢だったが、チャンスの数はむしろ広島の方が多かったので、0対0で終了したが、思い通りの展開で進んでいった。
しかし、後半10分に右サイドに流れたMF小野のクロスから最後は途中出場の左SBのDFコールに豪快に決められてシドニー・ワンダラーズに先制ゴールを許してしまう。このまま0対1で敗れてもベスト8入りとなる広島だったが、後半40分にまたしても元日本代表のMF小野の嫌らしい浮き球のパスを起点に最後はストライカーのFWサンタラブに決められて0対2となってしまう。
初戦でアウェーゴールを奪われているので、0対2で敗れると敗退となる広島は途中出場のMF川辺が2度ほどチャンスを迎えるが、相手の懸命の守りを崩しきれない。結局、初戦は3対1で快勝したため、「1点差負けでもOK」という有利な条件でアウェーに乗り込んだ広島だったが、アドバンテージを生かすことができなかった。アウェーゴールの差で敗れた広島はラウンド16で敗退となった。
■ 責められる要素ではないターンオーバー広島にとっては、悔いが残る試合となった。広島は11連戦の10試合目ということもあって、まずは「相手に先制されないこと」を重視して試合に挑んだ。5バックに近い形で後ろに人数をかけるやり方だったが、こうなったときの広島の守備は堅い。前半はセットプレーを除くとそれほど危ないシーンはなかったが、後半10分に相手が先制ゴールを奪うと、スタジアムは盛り上がってきた。
ただ、何とか0対1のスコアで持ちこたえていた。あと少しのところまでしのいでいたが、正直なところ、2点目のゴールを奪われる前にも危ないシーンは何度もあった。アウェーで、しかも、アドバンテージを持っていたので、戦い方自体は間違っていなかったと思うが、リスクを冒して攻め込んでくる相手にゴールを許さないことは、どれだけ集中して守っていても、難しいものである。
FW佐藤寿、MF森崎和、MFミキッチがベンチからも外れて、DF千葉もベンチスタートとなった。この点を問題視する人もいるかもしれないが、今シーズンの広島は選手層が厚くなったので、そこが敗因ではない。MF野津田、MF柴崎晃、MF柏、DFファン・ソッコなどは、もちろん、FW佐藤寿やMF森崎和やMFミキッチやDF千葉と同格の選手とは言えないが、近い実力を蓄えている。
むしろ、リーグ戦とACLを並行して戦っており、11連戦の10試合目である。コンディション等を考慮すると、そういったベテランを無理に起用するよりも、チーム力は高まるだろう。GLのときから森保監督がうまくやり繰りして戦ってきたので、ここまではリーグ戦とACLを上手に戦ってきた。今シーズンのターンオーバーに関しては、褒められる対象にはなっても、責められる対象にはならない。
■ 過密日程の影響は隠しきれず・・・試合後に森保監督が語っていたとおり、今のチーム力を考えると、ベスト16というのは不満足である。同じベスト16でも、C大阪の方はチームとしてうまく機能していない状態なので、「これが精一杯」という感じだったが、広島の方はチームとして熟成されており、力的にはシドニー・ワンダラーズよりも上だったと思うので、何とも残念な結果になった。
もちろん、森保監督は過密日程のことを言い訳にすることはないと思うが、広島も気の毒だった。同じACL組のC大阪や川崎Fも同じ条件であるが、11連戦というのは普通ではない。日程を作成している人も苦慮していることは分かるが、「ACLで日本のクラブに上位に行ってほしい。」と強く願うのであれば、大事なラウンド16の2試合目が11連戦の10試合目になるのは、おかしい。
当然、ACL組のリーグ戦の消化試合数が他クラブよりも遅れることは好ましくは無いが、最低でも、ラウンド16の合間に行われたJ1の第13節の試合(=5月10日(土))くらいは延期にしてくれないと、どう考えても不利である。十分に休んだシドニー・ワンダラーズに対して、11連戦の10試合目で、中3日の試合で、しかも、欧州に遠征してきた広島が後半の最後まで体力が持つはずはない。
特に、日本代表候補に選出されて、かつ、リーグ戦も、ACLも、ほぼフル稼働しているDF塩谷、MF青山敏、DF水本、MF石原の4人は3月下旬から全く休みなしで試合や練習をこなしていると思う。広島のチーム力を考えるとベスト16止まりというのは「ちょっと物足りない。」という気もするが、選手たちは良く頑張った。この頑張りを見ると、広島を批判するのはお門違いというしかない。
■ 天才・小野伸二の活躍C大阪に続いて広島もラウンド16で敗退となったことは残念であるが、元日本代表のMF小野が活躍したことは非常に喜ばしい話である。6月からJ2の札幌に加入することが決まっているので、シドニー・ワンダラーズの一員としてプレーするのはこの試合が最後だというが、MF小野はフル出場して2つのゴールに絡んだ。有終の美を飾ったと言えるのではないか。
この日はトップ下でプレーしたが、やはり、存在感はある。前半に惜しいミドルシュートを放ったが、自身のゴールになりそうだったのは、このワンシーンだけ。しかしながら、1点目も、2点目も、MF小野のパスが起点になっている。18歳の頃からそういうプレースタイルだったが、技術的なミスはほとんどなくて、急所を抉るパスをバシバシと出してくる。本当に嫌らしい選手である。
スピードや高さで勝負する選手が多いシドニー・ワンダラーズではアクセントになっているが、このくらい動けるのであれば、札幌でもかなりの活躍が期待できる。札幌は昇格候補と言われていたが、ややスタートで躓いた。起爆剤になれる選手を必要としているが、札幌には有能なアタッカーはたくさんいる。イマイチ、噛み合っていない攻撃陣が様変わり可能性はある。
怪我の影響などもあって、日本代表でも、欧州リーグでも、期待されたほどの活躍はできなかったかもしれない。もちろん、W杯に3回出場しており、十分に大成功の部類であるが、18歳の頃の期待値を考えると、「もっと素晴らしいサッカー人生を送ることができた可能性はあったのに・・・。」と感じるが、天性の明るさを持っていて、人を惹きつけることのできる選手だった。
もう34歳になったので、そろそろ、現役引退がチラつく年齢になっている。次の札幌が現役生活における最後のクラブになる可能性も十分にあるが、思いっきり暴れてほしいところである。観客動員増であったり、クラブのブランド力アップにも貢献できると思うが、やはりピッチ上で活躍してほしい。「まだまだ、小野伸二はできる。」ということを感じたラウンド16の広島戦だった。
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