■ 驚きのユーロ2004制覇 グループCに入ったギリシャ代表というと、何と言っても、ユーロ2004が思い出される。開催国のポルトガル、強豪のスペイン、日韓W杯で日本と同組だったロシアと同居する厳しいグループに入ったが、初戦でポルトガルに2対1で勝利するなど1勝1敗1分けでGLを突破すると、準々決勝でフランス、準決勝でチェコ、決勝では再戦となったポルトガルを下してまさかの欧州王者に輝いた。
決勝トーナメントの3試合はいずれも1対0で勝利だったが、スター選手はおらず、守備を重視したサッカーだったこともあって、世界中のサッカーファンから不評を買った。しかし、欧州を制覇したことに変わりはない。(※ 翌2005年に行われたコンフェデでジーコジャパンと対戦したが、後半31分にFW大黒が決勝ゴールを決めて日本が1対0で勝利している。内容も日本が圧倒した。)
ユーロ2004の印象が強烈に残っているが、ユーロの本大会に出場したのは4回だけ。2004年以外では、前回大会(=2012年)でベスト8に入っているが、それ以外は目立った成績は残せていない。そしてW杯となると1994年のアメリカ大会と2010年の南アフリカ大会の2度本大会に出場しているが、通算で1勝5敗。アメリカ大会は3連敗で、南アフリカ大会は1勝2敗だった。
■ ギリシャのFIFAランキングはなぜ高いのか? 日本では「ギリシャには勝てるはず。」、「ギリシャからは勝ち点「3」が欲しい。」と主張する人が多いが、最新のFIFAランキング(=5月発表)は10位と上位に付けている。47位に位置する日本はもちろんのこと、11位のイングランド、12位のベルギー、15位のオランダ、16位のフランスよりも上である。「10位ということはギリシャは実はかなり強いのでは?」という意見もある。
なぜ、ギリシャが10位なのか?それにはいくつかの理由があるが、南アフリカW杯以降の成績は表1のとおりである。合計44試合で24勝5敗15分け。かなりの勝率である。FIFAランキングというのは、スペイン戦であっても、ブラジル戦であっても、とにかく勝たないとポイントが入らない。負けると0ポイントになるが、これだけ勝率が高ければ、安定してポイントを稼ぐことができる。
表1. 南アフリカW杯以降の成績 (2010年-2014年)
| 試合数 | 勝 | 負 | 分け | 得点 | 失点 |
ギリシャ | 44 | 24 | 5 | 15 | 51 | 30 |
日本 | 53 | 32 | 11 | 10 | 98 | 54 |
また、FIFAランキングはW杯の本大会とその地区予選はもちろんのこと、ユーロやアジアカップなど大陸選手権とその予選でも勝つと高いポイントが得られる仕組みになっている。ユーロ予選とユーロの本大会とW杯の欧州予選のギリシャの成績は表2のとおりである。「恵まれたグループに入った。」という事情もあるが、ユーロ予選も、W杯予選も、ほとんど取りこぼすことがなかった。
表2 主要大会のギリシャの成績
| | 試合数 | 勝 | 負 | 分け | 得点 | 失点 |
ユーロ2012 | 予選 | 10 | 7 | 0 | 3 | 14 | 5 |
ユーロ2012 | 本大会 | 4 | 1 | 2 | 1 | 5 | 7 |
ブラジルW杯 | 欧州予選 | 10 | 8 | 1 | 1 | 12 | 4 |
■ 日本のFIFAランキングはなぜ低いのか? 世間一般では「ギリシャのFIFAランキングは高すぎるし、日本はFIFAランキングは低すぎる。」と言われているが、その理由については、「ギリシャはW杯予選やユーロ予選などポイントを得やすい公式戦の割合が非常に高くて、日本は高ポイントを得るのが難しい親善試合の割合が非常に高くなっている。」という点も挙げられる。南アフリカW杯以降の両者の数字は表3のとおりである。
表3. 日本とギリシャの比較 (試合の内訳)
| 合計 | 親善試合 | コンフェデ | W杯予選 | 大陸カップ予選 | ユーロ | アジアカップ |
ギリシャ | 44 | 18 | --- | 12 | 10 | 4 | --- |
日本 | 53 | 30 | 3 | 14 | 0 | --- | 6 |
FIFAランキングのポイントを計算するときに用いられる「試合の重要度に関する係数」は下のとおりである。勝ち点や対戦国間の強さなどを全て掛け算するので、親善試合とW杯の本大会では(他の条件が全て同じであれば)4倍の差が出てくる。最後に試合数で割るので、試合数の多さ・少なさは全く関係ないが、ポイントを得にくい親善試合の割合が高くなるとポイントを伸ばすのは難しい。
1.0: 親善試合(東アジアカップもこれに含まれる。)
2.5: 大陸選手権の予選、FIFAワールドカップ予選
3.0: 大陸選手権の本大会、FIFAコンフェデレーションズカップ
4.0: FIFAワールドカップ本大会
■ ギリシャのFIFAランキングが高い2つの理由 結局、ポイントを獲得しやすいW杯予選やユーロ予選で確実にポイントを稼いでいる点と、ポイントを得にくい親善試合の割合が非常に低いことがギリシャのFIFAランキングが10位と高くなっている主要因と言えるが、ここで別の角度から見ると、親善試合が少ないということは他の大陸のチームと試合をする機会が少ないということである。試しに44試合の内訳を調べると表4のようになる。
比較するためにザックジャパンの数字も入れているが、日本はアジアの国が27試合で、それ以外が26試合なので、ほぼ半々である。それに対してギリシャは44試合のうち40試合が欧州のチームで、それ以外の地域は4試合だけ。2011年2月にカナダ、2011年6月にエクアドル、2014年3月に韓国、2014年6月にナイジェリアと対戦しているが、南アフリカW杯以降ではこれだけである。
表4. 日本とギリシャの比較 (対戦相手:地域別)
| 合計 | 欧州 | アジア | アフリカ | 南米 | 北中米カリブ | オセアニア |
ギリシャ | 44 | 40 | 1 | 2 | 1 | 0 | 0 |
日本 | 53 | 12 | 27 | 1 | 7 | 5 | 1 |
■ 異質性が武器になる日本代表したがって、「他の大陸のチームと対戦する機会が少ない。」という点はギリシャの大きな弱点となる。他の欧州の中堅国の数字も似た感じになると思うが、「欧州選手権では強くて、W杯の欧州予選は危なげなく勝ち上がってきたのに、W杯ではさっぱり。」という国が欧州の中堅国で目立つのはこのあたりに原因があって、欧州の中堅国をW杯で強く推すことができない理由の1つである。
当然、クラブレベルでは南米やアフリカやアジアから来ている選手と対戦する機会はたくさんあるが、国対国の戦いになると雰囲気は変わってくる。日本代表にとっては「ギリシャが非欧州との対戦がほとんどないところ」は付け入る隙になる。そして、MF香川、FW柿谷、MF齋藤学などテクニックやアジリティーの高い選手が何人かいることはギリシャ戦を展望するときのポジティブ要素となる。
最後にさらに別の角度から考えると、アジアの中でも特殊なサッカーをする日本代表というのは「異質性」が大きな武器となる。先のとおり、3月にギリシャと韓国が試合をしており、韓国が2対0で勝利している。「仮想・日本」という意図で韓国を対戦相手に選んだと思うが、日本と韓国は全くプレースタイルが異なる。ギリシャにとって有意義なトレーニングマッチになったかというと疑問である。
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