■ ザックの人間性ザックジャパンが誕生して2年半が経過した。改めて記述するまでもないが、ザッケローニ監督はイタリアでも有名な監督であり、評価の高い指導者の1人である。ウディネーゼの監督をしていた95-96、96-97、97-98シーズンに評価を高めて、その後は、ACミラン、ラツィオ、インテル、トリノ、ユベントスで指揮を執った。
イタリアのマスコミというのは、サッカーに関しては、「世界一、厳しい」と言われているが、長年、手厳しいイタリアのマスコミを相手にしてきたこともあって、非常に慎重な人である。もともと、思慮深い性格なのかもしれないが、会見等で、軽はずみなことは、一切、言わない。
考えてみると、来日してから、ザッケローニ監督が選手を名指しで批判したというのは、記憶にない。これだけ試合を重ねてきたので、いい試合ができないこともあったが、出来の良くない選手を批判することもなく、選手をかばうコメントが多かった。もちろん、その裏では、しっかりと指摘をしたり、アドバイスを送っていると思うが、公の場でネガティブな感情を出したことは無かったと思う。
ごくたまに、試合中、レフェリーの判定にクレームを付ける姿を見ることはあるが、会見の場で、相手チームを挑発するようなこともなく、メディアを批判することもない。イタリア人というと、パンツェッタ・ジローラモさんの影響もあって、ちゃらんぽらんで、いいかげん人たちというイメージもあるが、一般人が思い浮かべるイタリア人とは正反対である。
■ 日本へのリスペクト日韓W杯で指揮を執ったフィリップ・トルシエ監督には、若干、その傾向があったが、サッカー大国やサッカー強国からやって来た人は、上から目線になって、母国と違うことを良しとせず、母国と違う日本の風習などを否定しがちである。しかしながら、ザッケローニ監督はそうではない。
当然、イタリアを含む欧州サッカーのいいところをたくさん知っていると思うが、その一方で、問題点があることもきちんと認識している。「イタリアではこうだから。」、「フランスでは当たり前。」、「ブラジルでは常識だから。」というだけでは、説得力は乏しくて、反発心も生まれるが、ザッケローニ監督がそういう上から目線で発言したことは、一度もない。
そして、知識や経験が豊富なので、どっしりと構えることができて、わざわざ、自分を強く見せるために権威付けをする必要もない。日本のことも、欧州のことも、どちらにも精通していて、その豊富な知識を基に、日本サッカーがどう進むべきか、道筋を示してくれるので、ザッケローニ監督の言うことには、しっかりと耳を傾ける必要があるし、大きく道を外すことはないだろう。
嬉しいのは、日本サッカーやJリーグのことをリスペクトしてくれることで、Jリーグが開催されているときは、日本全国の至るところでザッケローニ監督が試合を観戦している姿を確認することができる。関東圏以外のスタジアムにこれほど頻繁に視察に訪れる代表監督はいなかったと思う。控えめな性格で、雄弁ではないが、仕事には熱心に打ち込んで、情も厚くて、「古き良き日本人」の香りも漂ってくる。
■ ザックの決断力南アフリカW杯の後、監督選びの仕事を任された原博美氏がどこまでザッケローニ監督のことを知っていたのかは、定かではないが、ザッケローニ監督と日本人、あるいは、ザッケローニ監督と日本社会の相性は非常に良かったと思う。当時、後任の候補として、何人かの指導者の名前が挙がったが、本当にザッケローニ監督に決まって良かったと思う。
ここ最近、「メンバーを固定しすぎる。」と批判されることもあるが、2011年1月のアジアカップの前に、大胆なモデルチェンジを行っており、南アフリカW杯の頃と比べると、メンバーは大きく変わっている。世代交代というのは、「いつの間にか世代交代が完了している。」というのがベストだが、ほとんどの人が気が付かないうちに、世代交代を完了させて、軸となる選手を変えてしまった。
中でも、一番の成果は、当時、怪我上がりで、VVVでも、それほど試合に出場していなかったDF吉田をレギュラーに抜擢したことである。DF闘莉王は健在で、DF中澤もいるので、当初は、DF吉田を使い続けることに対して、疑問を感じる人は多かったが、DF吉田は期待に応えて、プレミアリーグでレギュラーを張るまでに成長を遂げた。今では、日本サッカー界の財産になっている。
その過程では、中途半端なことはしなかった。待望論も出ていたDF闘莉王とDF中澤には関心を寄せず、DF吉田を使い続けるというのは、なかなかできることではないが、我慢して使い続けた。それなりに時間が経過した後だったならば、能力や状況を把握できるので、こういった選択も可能と言えるが、就任して半年も経っていない段階で、DF吉田を抜擢することを決めた決断力は、見事と言うしかない。
ブラジルW杯まで、あと1年4か月程度となったが、ブラジルW杯の後も、ザッケローニ監督が日本代表を率いることは、想像しにくくて、本大会での結果に関係なく、日本代表監督を退く可能性は限りなく高い。そうなると、次の監督をどうするのか、サッカー協会もそろそろ考え始める時期に入っているが、これだけハマる監督は珍しいので、誰が後任監督になっても、大変だと思う。
関連エントリー 2012/01/18
こんな選手をザッケローニ・ジャパンに・・・。 (その3) 2012/04/07
FW久保竜彦がW杯の舞台でプレーしていたら・・・ 2012/07/20
関塚監督の評価について 2012/09/28
佐藤寿人の日本代表招集はあるのか? 2012/12/27
日本人の年間最優秀選手を考える。 (2012年版) 2013/01/24
日本人の海外移籍をどう考えるか? 2013/02/08
正しい日本代表の叩き方を考えてみる。
- 関連記事
-