■ 代表チームの選手選考や選手起用代表チームの選手選考や選手起用というのは、結果が出なくなると、批判の対象になりやすい。第二次岡田ジャパンのときは、2009年のJリーグの得点王に輝いた国内屈指のストライカーのFW前田(磐田)をあまり召集しなかったことが批判の対象になることが多くて、関塚ジャパンのときは、MF柴崎(鹿島)、FW大前(清水)、MF金崎(当時名古屋)などの実力者がほとんど召集されないことに不満を持つ人が多かった。
サッカーの世界では、強豪国になればなるほど選手層というのは厚くなるのが当たり前なので、「なぜ、この選手が代表チームに選ばれていないのか?」というケースは多くなる。よって、日本よりも選手層の厚い強豪国はもっと大変だと思うが、全ての人が納得できる選手選考や選手起用というのは、絶対にあり得ない。それ故、話のタネになりやすいが、それ故、ほとんど全ての代表監督を悩ませる頭痛の種となる。
Jリーグの試合を観ているとよく分かるが、「日本代表に選ばれてもおかしくない。」というクラスの選手はたくさんいる。日本代表の監督が変わったとしても、DF長友、MF本田圭、MF香川、MF岡崎らは、まず間違いなく、日本代表のレギュラーとして起用されると思うが、他の選手に関しては、監督が交代したら、別の新しい選手に取って代わられる可能性はゼロとは言えない。日本人トップクラスではあるが、突出しているわけではない。
Jリーグのどこか特定のクラブを熱烈に応援している人は、「自分の応援しているクラブの選手が日本代表や五輪代表に入って欲しい。」と願う気持ちがあると思う。この気持ちはよく分かるが、どうしても「身びいき」が入ってしまう。また、似たようなレベルの選手がたくさんいるということは、「代表に呼ばれる可能性のある選手がたくさんいる。」ということであり、さらには、「当落線上で落ちる選手がたくさんいる。」ということでもある。
岡田ジャパンのときも、関塚ジャパンのときもそうだったが、好きな選手やお気に入りの選手が呼ばれないと、代表監督の選手選考に疑問を持つようになって、さらに、監督自身に対して不満を抱くようになるが、似たような実力の選手が何人も横並びでいるような状態であれば、思い通りの選考にならないことは普通にありえる。応援しているチームを持つサポーターがフラットな視点で評価することは難しいが、ある程度の公平さが無いと、発言に深みが出て来ない。
■ 結果を出している日本人フォワード例えば、フォワード(=センターフォワード)に関しては、これまで、ほとんどのケースで「2枠」だった。ブラジルW杯のアジア最終予選のときは、FW前田(磐田)とFWハーフナー(フィテッセ)の2人が召集されることが多かったが、ここ最近は、FW柿谷(C大阪)がファーストチョイスになって、2人目として、FW豊田(鳥栖)が選ばれたり、FW大迫(鹿島)が選ばれたり、FWハーフナー(フィテッセ)が選ばれたり、2番手の座を巡る争いが熾烈になっている。
今シーズンのJ1の得点ランキングの上位の顔触れは、FWマルキーニョス(横浜FM)を除くと、日本人選手ばかりである。J1の30節を終了した時点で、FW大久保(川崎F)、FW佐藤寿(広島)、FW川又(新潟)、FW渡邉千(横浜FM)、FW工藤(柏)、FW柿谷(C大阪)、FW豊田(鳥栖)、FW大迫(鹿島)の8人がすでに17ゴール以上を記録している。昨シーズンはJ1で15ゴール以上を記録した選手はFW佐藤寿とFW豊田の2人だったことを考えると、超・ハイペースである。
当然、8人とも、日本代表に呼ばれる資格と実力があるのは間違いない。PKを除いたゴール数は、FW大久保が18ゴール、FW川又とFW柿谷とFW工藤が17ゴール、FW大迫が16ゴール、FW渡邉千とFW佐藤寿が15ゴール、FW豊田が14ゴールとなっているので、甲乙つけがたいレベルで拮抗している。点の獲れる日本人フォワードが増えてきたことは、ザッケローニ監督にとっても、日本サッカー界にとっても、いい話である。
■ FW柿谷が頭一つリードただ、すでにW杯まで1年を切っているので、全員を日本代表に呼ぶことは不可能である。東アジアカップと柏でサイドハーフでも得点力を発揮できることを証明しているFW工藤は、唯一、サイドハーフとしても今の日本代表に貢献できる選手と言えるが、他の7人については、フォワードの枠組みで力を発揮する選手である。FW前田とFWハーフナーもいる中、「2枠」に食い込むのは、なかなか大変なことである。
したがって、「なぜ、Jリーグで活躍している○○を呼ばないのか?」という話は全くの間違いではないと思うが、同じようなレベルで活躍している選手が「フォワードの枠(=2枠)」を大きく超えるほどたくさんいる中では、絶対に解消しない話であり、監督としては、どこかで割り切らないと、2004年のアテネ五輪のときの山本ジャパンや2008年の北京五輪のときの反町ジャパンのときのように「テストの繰り返し」に陥ってしまう。
現状では、FW柿谷が頭一つリードしている状況と言えるが、最初の東アジアカップの中国戦と韓国戦で結果を出してのが大きかった。特に韓国戦の2ゴールが大きかったと思うが、東アジアカップというと、コンフェデで3連敗を喫したことでザッケローニ監督に対する風当たりが強くなっていた時期である。クラブチームでも同様だと思うが、自分が危機に陥っていた時、危機から救ってくれた選手というのは、監督から特別待遇を受けやすくなる。
■ 若さという武器日本代表においてチャンスは平等に与えられているかというと、「平等である。」とも言えるし、「平等ではない。」とも言える。東アジアカップのメンバー選考を思い出してみると明らかであるが、ベテランの選手が新たに選出されることはほどんない。ザッケローニ監督の選手選考の基本スタンスは「似たような実力や結果であれば、年齢の若い選手を抜擢する。」ということで、この姿勢は就任当初から一貫していて、ザッケローニ監督の特徴の1つと言える。
今回の欧州遠征では、23歳のFW柿谷、23歳のFW大迫が優先されている。もちろん、2人とも東アジアカップでゴールという結果を出したことが大きかったと思うが、若さというのも、大きなセールスポイントになっている。ザッケローニ監督は2014年のブラジルW杯で好成績をおさめたとしても、退任することは間違いないので、ブラジルW杯以後のことを考えなくてもいい立場なので、「我関せず」になってもおかしくないが、2018年のロシアW杯のことも頭に入っている。
クラブチームで若い選手が優先されやすい理由は、「若い選手の方が移籍金を得やすい。」というところもある。もちろん、日本代表が移籍金で利益を得るわけではないが、いついかなる時でも、「現時点でのベストメンバー」をピックアップしていたら、絶対にうまく行かなくなる時期が来る。ザッケローニ監督が言及したことはないと思うが、この先の日本サッカー界のことを考えて、そういう選考基準になっているのは、間違いないところである。
したがって、31歳のFW佐藤寿や31歳のFW大久保については、気の毒に感じるところもあるが、何年か前のことを思い出してみると、FW佐藤寿も、FW大久保も「若さ」や「可能性」がプラスアルファの力になった時期があった。特に、FW大久保の場合、C大阪でプレーしていた20歳前後の若い頃から日本代表クラスの実力を備えていたが、似たような実力でもっと年齢が上の選手よりも優遇されたことが何度もあった。
サッカー界は4年周期なので、23歳と31歳というと「2周り」も違っている。「実力の世界」ではあるが、年齢や将来性が無視できない要素であることは、おそらく、当の本人が一番、よく分かっていることだと思う。そして、また、年月が経って、FW柿谷やFW大迫らが30歳を超えるようになったときは、「年齢」がネックになって、『実力では劣っていない。』と思っている若手選手との争いに敗れることもあるだろう。必然の流れとも言える。
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