■ 大一番J2の第25節は大一番。12勝6敗4分で勝ち点「40」。4位に位置するアビスパ福岡と、12勝5敗6分で勝ち点「41」。3位のジェフ千葉の直接対戦。順位的には千葉が上回っているが、福岡の方が消化試合が1つ少ないため、実際には福岡が上の立場にいる。
ホームの福岡は<4-2-3-1>。GK神山。DF山形辰、丹羽、田中、中島。MF末吉、中町、久藤、城後、永里。FW大久保。FW岡本がスタメンから外れてFW大久保が19節以来のスタメン。MF城後は24節のカターレ富山戦で2ゴールを挙げている。
対するアウェーのジェフ千葉は<4-5-1>。GK岡本。DF和田、福元、青木良、坂本。MF山口、佐藤勇、工藤、太田、谷澤。FWネット。DF和田が右サイドバック、DF坂本が左サイドバック。1トップでFWネット。FWネットはここまで8ゴールを挙げている。
■ 劇的な勝利試合は大一番ということで硬さの見える福岡に対して千葉が攻め込む。福岡イレブンがうまく試合に入れなかった隙に、前半8分にDF青木良がロングシュートを突き刺して1点を先制する。DF青木良は今シーズン2ゴール目。福岡はオーバーラップしてきたDF青木良の動きを捕まえ切れなかった。前半半ばまでシュートがなかった福岡は、MF末吉とMF城後がDFラインの裏に抜け出して決定的なシュートを放つが枠外。追いつくことは出来ずに0対1で前半を折り返す。
後半は立ち上がりから福岡が猛攻。中盤でセカンドボールを奪えるようになって波状攻撃を見せるようになる。しかし、この日の福岡がミドルシュートの精度が低く、シュートが枠に行かないケースがほとんどで、追いつくことは出来ない。
試合は1対0のままで進んで千葉が逃げ切るかと思われた後半36分に福岡はセットプレーの流れから途中出場のFW田中が強烈なシュートを突き刺して同点に追いつくと、さらに後半43分にもカウンターからMF中町のパスからMF城後が左足で決めて逆転に成功する。
結局、2対1でホームの福岡が劇的な勝利。これで福岡が3位に浮上。4位に転落した千葉との勝ち点差を「1」とした。福岡は次節はアウェーで横浜FCと対戦。千葉はホームで首位の柏レイソルと対戦する。
■ 雨の中の死闘3位の千葉と4位の福岡の直接対決には12,065人のサポーターが集まった。後半から激しい雨が降ってきて、ピッチ上の一部では水がたまっていて、うまくボールコントロールが出来ない悪コンディションとなったが、昇格に燃える両チームの激突で、試合はヒートアップした。
上位争いはJ1でも見られるが、J2の場合は「昇格を狙って昇格できなかったときの代償」が非常に大きくて、抱えているものはJ1の上位チームよりも大きくなる場合が多い。したがって、J2の上位対決は好勝負になることが多いが、この試合も期待通りの熱戦となった。
残り10分を切って千葉が1点をリード。経験のある選手の多い千葉がそのまま逃げ切るかと思われたが、ホームの大声援に後押しされた福岡が2点を奪って勝ち点「3」を獲得。J2は4年目で、2006年以来J1から遠ざかっている福岡であるが、大きなチャンスが巡ってきた。
■ 決勝ゴールは城後寿Jリーグの中でも随一と言えるほど、「大一番に弱い」というイメージのある福岡であるが、今シーズンの中でも最大の決戦といえる3位の千葉との直接対決を制して、J1昇格の可能性を高めた。もともと試合数が1試合少ないので、福岡にとっては「ドロー」でも悪くはなかったが、同点に追いついた勢いを「逆転」にまでつなげた。
決勝ゴールはMF城後寿。大怪我から復帰してきたのが第17節。以降の8試合で5ゴールを記録しチームを牽引している。国見高校ではFC東京のFW平山相太の1年下にあたり、当時からポテンシャルは高く評価されており、福岡でも背番号「10」を与えられた。しかし、ずっと期待に応えられずにいたが、大怪我を乗り越えてきて、一皮剥けたような活躍を見せている。試合終了間際に利き足ではない左足であれだけコントロールされたシュートを放てるのは「並」ではない。
この決勝ゴールを導いた1つの要因は篠田監督の選手起用。1点ビハインドの福岡は後半28分にFW大久保に代えてFW岡本を投入する。ここ最近はFW岡本がスタメン出場を続けていて、元の布陣に戻したことになるが、それまでの時間でMF城後は消えるいることが多く、高さ等を考えると「FW大久保 out」ではなく、「MF城後 out」が妥当かと思われたが、篠田監督はMF城後をピッチに残したが、これがピタッとはまった。
■ チームを支えるダブルボランチシーズン前の補強はそれほど積極的ではなく、前評判もそれほど高くはなかった福岡であるが、新加入のMF中町、MF末吉、MF永里の3人が中盤でポジションをつかんでいて、ともにチームには欠かせない存在となった。MF中町は1試合、MF末吉は3試合でスタメンを外れただけ。それ以外はすべてスタメンで出場している。
ここ数年、福岡はボランチのポジションに人材を欠いていて、フル出場を期待しにくいベテラン選手か、外国人選手がつとめることが多く、チームがなかなか安定しなかったが、若いMF中町とMF末吉のダブルボランチになったことで軸が出来て、チーム力は向上。未来への光も見えてきた。
注目されるのは、より攻撃的な役割を担っているMF中町であり、今シーズンはボランチのポジションながら8ゴールを記録。この試合でもMF城後の決勝ゴールをアシストしたように、オールラウンドな活躍が目立つが、MF末吉のパフォーマンスも高く、この日はMF中町以上に目立っていた。175cmということでそれほど大きな選手ではないが、体の強さもあって、派手さはないがボールコントロールも安定している。
■ 田中佑昌の同点弾1点ビハインドで投入されたFW田中佑昌の同点ゴールも非常に大きかった。それまで時間は押し気味の展開になっていたが、シュート精度を欠いて嫌な流れになっていただけに、大きなゴールだった。ルーズボールに対して正確にトラップして右足で思い切ってシュートが打てる位置にボールをコントロールできたことが大きかった。そのシュートは、カバーに入ってきた千葉の選手二人に当たっても負けないだけの威力があった。
福岡は他チームと比べると選手層は薄くて代えの利かない選手が多い。今後、出場停止等でメンバーが落ちたときにどうカバーできるかが大きなポイントになりそうだが、切り札としてFW田中佑が控えているというのは心強いところである。「走り」でチームに勢いをもたらすことの出来る選手であり、この日のように劣勢のときにFW田中がどれだけ仕事が出来るかで、勝ち点「3」になるか、「1」になるか、「0」になるか、大きく変わってくる。
■ 痛い逆転負け一方の千葉にとっては痛い逆転負けとなった。3位とはいえ、実質は福岡の方が有利な立場だったこともあって、ドローでは好ましくはなった。そのため、追いつかれた後に攻めに出るしかなかったが、その裏を突かれて手痛い失点を喫した。次節は千葉ダービーで柏レイソル戦が控えているが、この試合に勝てないと江尻監督のクビも危うくなる。
190cmのFW大久保に対して空中戦では劣勢になるかと思われたが、DF福元とDF青木良が頑張っていてFW大久保に仕事をさせていなかっただけに、終盤の連続失点は悔いが残るところ。失点シーンはセットプレーとカウンターなので仕方がない面もあるが、後半になってシュートシーンへの対応が遅くなっていた。シューターへケアすることが徹底できていなかった。
■ アウェーでの弱さこれで千葉はアウェーゲームは12試合で2勝5敗5分。12試合で11ポイントしか取れておらず、上のチームと離される要因となっている。フクアリというホームスタジアムを持っていてホームで強いのは理解できるが、これだけアウェーで取りこぼしている原因はすぐには思いつかない。
考えられるのは安定してゴール前で脅威を与えられる存在がFWネットくらいであり、2列目の選手は波のある選手が多いので、リズムに乗れたときは問題ないが、リズムに乗れないときにパフォーマンスが低下することが考えられる。元日本代表のMF村井、スーパーサブのFW林といった選手もベンチに控えているが、彼らの経験が必要な時期に入っているかもしれない。
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