■ 対照的な両チーム5月の7試合を5勝2分け。14得点2失点と見事な成績を残した湘南ベルマーレ。13勝2敗3分けで首位を走る。対するはロアッソ熊本。湘南とは対照的に、5月の7試合で5敗2分け。4勝10敗4分けで16位と苦しい戦いが続く。
ホームの湘南は<4-1-2-3>。GK野澤。DF臼井、ジャーン、村松、山口。MF田村、寺川、坂本。FWアジエル、田原、中村。FWトゥット、FW阿部がベンチスタート。
アウェーの熊本も<4-1-2-3>。GK吉田。DF市村、チョ・ソンジン、福王、原田。DF石井、宮崎、山本。FW宇留野、藤田、西。FW木島が怪我もあってベンチスタート。3トップの中央にFW藤田俊哉が入る苦肉の策。
■ ジャーンの同点ゴールでドロー試合は16位に低迷しているとは思えないほど熊本が優勢に試合を進める。
3トップの中央に入ったFW藤田が自在のポジショニングで湘南を混乱に陥れる。前半15分にFW藤田のラストパスを受けたFW西が決めて先制すると、その3分後にも、同じく、FW藤田とFW西のコンビで追加点。FW西はプロ初ゴールを含む2ゴールの活躍。
前半38分にMF寺川のゴールで1点差に迫られるが、前半終了間際にもDFチョ・ソンジンのゴールで3点目。3対1で熊本リードで折り返す。
後半開始から湘南はFWトゥットを投入。すると、後半17分にFWアジエルのスルーパスからFW田原が抜け出してPKをゲット。1点差に迫ると、試合終了間際にもDFジャーンが混戦から決めて湘南が土壇場で同点に追い付く。
結局、熱戦となった試合は3対3のままで終了。両チームが勝ち点「1」を獲得した。
■ 藤田俊哉のセンターフォワード基本的に3トップを採用する熊本。シーズン前にFW高橋泰がアビスパ福岡に移籍し、今シーズン、難波のゴンことFW中山悟志や186cmの長身のプレイメーカーのFW小森田友明を起用してきたが、なかなか、思うような効果を発揮せず、この日はFW藤田俊哉を起用。この奇策は、想像以上に成功した。
174cmのFW藤田は空中戦では全く威力を発揮しないが、3トップの中央というポジションにとらわれず、サイドに流れたり、中盤まで下がってきたり、予測不能の動きを見せる。そのFW藤田の作ったスペースに対して、MF宮崎とMF山本の二人の攻撃的MFがうまく飛び込んで有効利用し、前半30分あたりまでは、全盛期のジュビロ磐田を思わせる流れるようなパスワークを見せた。
F藤田を中央に置いて、FW西、FW宇留野、MF宮崎、MF山本の5人の攻撃陣でゲームを行うのはおそらく初めてのことであり、十分なトレーニングがされてきたわけではなかっただろうが、試合の中で感覚をつかんで、ぶっつけ本番とは考えられないコンビネーションの良さを見せた。
熊本としては引き分けに終わったとはいえ、いいイメージをチーム内に植え付ける事が出来たという点で貴重な体験となった。この新布陣の問題といえるのは、FW藤田に大きな負担がかかってしまうことであり、また、FW木島というエースをどう扱うかである。FW木島のドリブルとシュートに向かう積極性は大きな武器であるが、チームプレーという観点から言うと、FW西やFW宇留野と比べて劣る部分がある。
■ 2ゴールの西弘則熊本は新人のFW西弘則が2ゴールの活躍。6試合ぶりのスタメン出場となったが、FW藤田俊哉とのコンビネーションが抜群で、ともにFW藤田のアシストで2ゴールを決めた。
今シーズンのJ2は、東京VのFW林陵平、サガン鳥栖のFW池田圭、横浜FCのFW西田剛、FC岐阜のFW西川優大とFW染矢一樹とFW佐藤洸一のトリオ、徳島のFW佐藤晃大と新人選手の当たり年となっているが、熊本のFW西弘則も期待のアタッカーの1人。
FW西は流経大出身であるが、前述の選手は全て大学卒の攻撃的なアタッカンテ。以前であれば、J1のクラブに流れていたようなレベルの人材が、自分の将来を冷静に見極めた上で、ある程度の出場機会が見込まれるJ2クラブに入団するケースも増えている。彼らは、J1ほど早急に結果を求められない状況で、試合を重ねるごとに力を蓄えていく。
■ 追いついた湘南対する湘南は2点ビハインドを追いついてドロー。首位を守った。
前半は熊本の出来が素晴らしかったこともあってボールを奪うポイントが定まらず、なす術がなかったが、後半にFWトゥットが入ると前線におさめどころができて、守備面でも先手が打てるようになった。
最後まで11人全員がハードワーク出来る事が湘南の持ち味であるが、この試合も最後の最後で同点ゴールを奪う勝負強さを発揮。悪いながらも勝ち点を稼ぐことが出来るのは大きい。
■ 絶対的な存在のアジエルゴールランキングを見ても、湘南には得点ランキング上位の選手はいないが、MF坂本が7点、MFアジエルが6点、MF中村が5点、FW田原が4点、FWトゥットとMF寺川とDFジャーンが3点と、まんべんなく点が取れている。
これも湘南の武器であるが、攻撃に関して言うと、FWアジエルだけは別格で、ほとんどのチャンスはFWアジエルが演出する。FWアジエル以外の選手であれば、ある程度の穴埋めは可能であるが、FWアジエルがいなくなると、攻撃は行き詰るだろう。
昇格を争うライバルチームのC大阪にはMF香川、仙台にはMF梁勇基、札幌にはMFクライトン、甲府にはMF藤田健がいて、彼らもチームの中心として欠かせないが、依存度でいうと間違いなく、湘南のFWアジエルが一番、高いだろう。
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