■ J2の開幕戦J2の開幕戦。茨城県の那珂市にある笠松運動公園陸上競技場で水戸ホーリーホックとロアッソ熊本が対戦した。水戸は柱谷監督になって5年目のシーズンで、2011年は17位、2012年は13位、2013年と2014年は15位という順位だった。一方の熊本は小野監督になって2年目のシーズンで、昨シーズンは13勝14敗15分けという成績で13位だった。小野監督は2003年から2006年の途中まで広島を指揮した。
ホームの水戸は「3-4-2-1」。GK笠原。DF細川、新里、今瀬、田中雄。MF岩尾、内田航、吉田眞、鈴木雄。FW馬場、宮市剛。国士舘大出身の大卒ルーキーのDF今瀬が開幕スタメンを飾った。クラブOBで日本代表のDF塩谷と重なる部分が多いので、「塩谷二世」と言われている。FW三島康はベンチスタートで、トゥウェンテのFW宮市亮の弟で湘南から期限付き移籍のFW宮市剛が2トップの一角で起用された。
対する熊本は「4-2-3-1」。GK原。DF藏川、クォン・ハンジン、大谷、片山奨。MF高柳、養父、嶋田慎、齊藤和、常盤。FW平繁。新戦力でニューイヤーカップの3試合には出場しなかったFW平繁が開幕スタメンを飾った。2013年は41試合で13ゴール、2014年は怪我に苦しんだが20試合で7ゴールを挙げている。キーパーはJ1の広島から完全移籍となった24歳のGK原が抜擢された。J1では2試合に出場している。
■ ゴールは生まれずスコアレスドロー試合の前半はほぼ互角の展開となる。水戸は前半31分にFW馬場のスルーパスからFW宮市剛が抜群のスピードを見せてキーパーと1対1のチャンスを得るがキーパーのGK原にセーブされる。熊本は前半終了間際に前線に残っていたDFクォン・ハンジンに決定機が訪れるが、水戸のキーパーのGK笠原が好セーブを見せて先制ゴールとはならず。前半は双方のキーパーの活躍もあって0対0で折り返す。
後半は完全にホームの水戸ペースとなる。昨シーズンは31試合で11ゴールと大ブレイクしたMF吉田眞を中心に何度も決定機を作るが、好調のGK原が好セーブを連発してなかなか先制ゴールを奪えない。後半35分には左SBのDF田中雄の高精度のクロスから途中出場で長身のFW三島康が高い打点から強烈なヘディングシュートを放ってネットを揺らすが、これはファールを取られてゴールは認められず。
結局、ホームの水戸は19本のシュートを放ったが、最後までゴールを奪うことはできず。後半は水戸が相手を圧倒したが、試合は0対0の引き分けに終わった。内容では熊本を上回った水戸にとっては悔しいドローとなった。一方の熊本はJ2初出場となるキーパーのGK原の活躍が光った。水戸は第2節はアウェイで昇格候補の一角である千葉と対戦する。熊本は次の試合がホーム開幕戦で水前寺競技場で群馬と対戦する。
■ さらなる飛躍が期待される吉田眞紀人勝ち点「1」にとどまったが、水戸の出来が非常に良かった。ゴールライン上で熊本のDF片山奨がスーパークリアを見せたシーンなど熊本の守備陣の粘り強さもあってゴールを奪うことはできなかったが、攻撃の形は作った。目立ったのはオフに完全移籍で獲得したMF吉田眞である。両チーム最多の7本のシュートを放ったが、入っていてもおかしくないシュートはいくつもあった。存在感は抜群だったと言える。
流通経済大柏高のときから注目を集めていたMF吉田眞は2011年に名古屋に入団したが、2年間で7試合の出場にとどまった。2013年はJ2の松本山雅に移籍したが、ここでも1試合の出場のみ。なかなかチャンスを得ることが出来なかったが、水戸に期限付きで移籍した2014年に31試合で11ゴールを挙げる大活躍を見せた。シャムスカ監督を解任に追い込んだ33節の磐田戦(A)のパフォーマンスは圧巻だった。
プレースタイルは名古屋の先輩となるMF本田圭によく似ている。180センチとアタッカーとしてはサイズに恵まれていて、左利きで、左足の強烈なシュートが武器となる点がMF本田圭とイメージの重なる分で、若い頃のMF本田圭が持っていた我の強さというか、がむしゃらさというか、「自分が決めてやる。」という強い意志を持っている点も似た部分と言える。今シーズンは11ゴールを上回る活躍が期待される。
■ 素材の良さを見せつけた宮市剛注目のFW宮市剛は開幕スタメンを飾った。こちらは2014年に湘南に入団した高卒2年目。1年目は4試合の出場にとどまったが、186センチと恵まれたサイズを持っていて、なおかつ、身体能力も高い。圧倒的なスピードを持っていて、素材的には「日本サッカー史上最高クラス」と言える兄のFW宮市亮ほどの高い評価は受けていないが、大型フォワードとして期待されている若手選手の1人であることは間違いない。
J2屈指のストロングヘッダーであるFW三島康を押しのけて開幕スタメンを飾ったので、柱谷監督から高く評価されていることが分かるが、前半31分に決定機を逃したシーンは残念だった。兄のFW宮市亮を思い起こさせるような抜群のスピードで相手DFをぶっちぎってキーパーと1対1のチャンスを得たが、最後のシュートがやや弱くなってしまった。ただ、潜在能力の高さを見せつけるシーンだった。
水戸はオフに元日本代表のFW鈴木隆が退団した。MF吉田眞がフォワードの位置でプレーする機会も出てくると思うが、FW三島康がフォワードの軸候補の1人で、高卒2年目のFW宮市剛の成長も多いに期待される。FW宮市剛は1995年6月1日生まれなのでリオ世代の1人となる。この世代は有望な大型フォワードが非常に少ないので、水戸で活躍できると五輪代表入りを期待する声も出てくるだろう。
■ ビッグセーブを連発したGK原裕太郎一方の熊本はなかなか自分たちのサッカーができなかった。「中盤をコンパクトにして高い位置からプレッシャーをかけていい形でボールを奪って素早く攻める。」というのが熊本の形で、ニューイヤーカップの3試合は熊本の良さが出るシーンがたくさんあったが、この日は持ち味であるハイプレスがハマらなかった。何とか無失点で抑えて勝ち点「1」を獲得できたが、内容的には今一つだったと言える。
ハマらなかった理由はいくつか考えられるが、1つはFW平繁が1トップに入ったことだと言える。群馬のときもそうだったが、FW平繁という選手はゴール前の得点力の高さに定評があるが、それほど精力的に守備をこなすタイプのフォワードではないので、FW齊藤和であったり、FW巻であったり、そういった選手がフォワードの位置で起用されている時と比べると前からのプレッシャーは弱くなる。
水戸のサッカーとの相性があまり良くなかった点も理由の1つと考えられる。水戸というチームはロングボールを多用するチームであるが、最終ラインは低めである。中盤をコンパクトにして戦おうとするチームではないので、熊本がやりたいと思うようなサッカーに引き込むのは難しい相手だった。水戸のように後方から丁寧にパスを繋いでくるチームではない相手との戦い方に課題を残したと言える。
熊本にとっては難しい試合になったが、キーパーのGK原の活躍が光った。前半にDF新里とMF吉田眞の決定的なヘディングシュートをビッグセーブで防いで、後半にも4度ほどビッグセーブを見せた。最初のDF新里のヘディングシュートを阻止したプレーで気分的に落ち着いて乗ったところもあると思うが、入ってもおかしくないシュートを再三に渡って阻止した。この試合における文句なしのMOMと言える。
小野監督のルートもあって、熊本は広島絡みの選手が多くなっている。FW平繁、MF高柳、DF大谷、GK原とスタメン11人のうちの4人が広島ユース出身で、途中出場のMF中山雄も広島ユースの出身である。GK原にとってはやりやすい環境と言えるが、187センチのサイズがありながら、身体的な能力も高そうで、ダイナミックなプレーが目に付いた。絶対的なキーパーがいない熊本にとって大きな収穫と言える。
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