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問題となっている福島第一原発汚染水海洋放出と夏の東京オリンピック


<記事原文 寺島先生推薦>

Fukushima Daiichi Radioactive Dumping and the Summer Olympics in Japan In Question

New Eastern Outlook

2021年4月18日

ウラジミール・オディンツォフ(Vladimir Odintsov)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2021年5月26日

 日本の内閣は、非常事態下にある福島第一原子力発電所から、同敷地内にすでに溜まっている大量の水を放出することについて、正式な決定を下した。現在、福島第一原発の敷地全体には、これらのタンクが並んでおり、その中には、浄化されているにもかかわらず、抽出できない放射性トリチウムの同位体で汚染された水が125万トン以上も入っている。トリチウムを分離すればいいのだが、これが非常に難しく、コストもかかる。この技術のテストは部分的には日本で行われたが、本格的な運用は一度もされていない。

 日本政府の発表によると、福島第一原発から汚染水が放出される海域の年間の放射能レベルは、水中で最大0.62マイクロシーベルト、大気中で最大1.3マイクロシーベルトとなり、これは「最大許容濃度」の範囲内に収まると考えられている。

 しかし、福島第一原子力発電所の事故、そして(その結果)放射性物質が環境に入り込んだことによって、(汚染)水がまだ放出されていない現段階でもすでに複数の否定的な影響が指摘されている。2018年には、カリフォルニア産ワインに、福島原子力発電所の事故による放射性粒子が含まれていることが判明している。また、韓国で栽培された野菜や、日本の沿岸で獲れた魚からも、ヨウ素やセシウムの放射性同位元素が少量検出された。

 専門家によると、福島第一原子力発電所からの放射性物質を含んだ水は、部分的に浄化されているとはいえ、海の魚を食べた結果として人体に入ると、外部放射線よりも何倍も有害な内部被曝をさらに引き起こすという。日本政府の論理は明らかに間違っている。また原子力産業の企業ならばどこでも言うことに、太平洋は広大だから、タンクに残った放射性核種の濃度は希釈すれば下がる、という言い方がある。しかし、人間にとっては、環境の中のそのような放射性核種は大きな危険をもたらすのだ。なぜなら、それは食物連鎖に取り込まれ、最終的には人間の体内に入り、内部被曝を引き起こすからである。そして、それがほとんどの病気の原因となる。日本が放射性物質を含んだ水を海に流せば、地球上の生命は、一層危険な状態に曝されるのだ。それは日本だけには止まらない。まず日本人自身がこのことを知るべきなのだ。なぜなら、日本人は、アメリカ空軍による広島と長崎への核爆弾投下と、それに伴う国土と環境への放射能汚染の苦しみをすでに味わった経験があるからである。

 海流の構造に従えば、原子力発電所の周辺で放射性物質を含んだ水が放出されれば、漁場は確実に被害を受けることになる。そこで魚を捕獲し、それを国際的な食品市場に供給しているのは日本の漁師たちだけではない。

 福島県民、特に全日本漁業協同組合連合会は、国の「安心発言」にもかかわらず、この投棄に反対している。また、日本に隣接する国、特に中国、韓国、ロシアからも深い懸念が表明されている。

 特に、韓国国務調整室のクー・ユン・チョル所長は、4月12日の説明会で次のように述べている:

 「福島第一原子力発電所の汚染水を海に投棄するという決定は、周辺国の安全と海洋環境を危険にさらすだけでなく、近い隣国である我が国と十分な議論をすることもなく、許可を得ることなく、日本が一方的に決定したものです。わが国の国会、市民社会、地方自治体、地方議会は、すべてこの投棄の決定に反対しています。日本国内ですら、漁師だけでなく、専門家や社会も強く反対しています。」

 彼はまた、韓国は以前から福島近辺の8県からの水産物の輸入を禁止しており、一般的にすべての水産物を徹底的に精査していると述べた。ここ数カ月、放射性物質の持ち込みに関する検証手続きと追跡措置が強化されてきたが、今回、韓国はすべての輸入水産物の生産地をさらに厳密に監視し、その放射能レベルをチェックすることになるだろう。クー・ユン・チョルは、韓国はこの問題について、IAEAやWTOなどの国際機関との連携を強化する予定であることを強調した。

 日本が福島第一原発からの浄化水の放出を決定したことに対する中国当局の鋭い否定的な反応は中国外務省が4月12日に発表した声明の中に込められている:
 「このような行為は極めて無責任であることははっきりしており、健康に深刻な損害を与え、近隣諸国の住民の安全を脅かしている。」

 中国外交部が強調しているように、日本側のこのような一方的な行動は、「太平洋水域の放射能汚染につながり、遺伝的障害を引き起こす可能性がある。」

 日本のメディアがずっと以前から報じていたことであるが、日本政府は福島第一原子力発電所の浄化水を速やかに排出する決定の準備をしてきた。その目的は日本でのオリンピック開催までに十分な時間を取ってこの決定を下すことだった。

 この件に関しては、昨年、日本でのオリンピック開催を2021年夏まで延期するという決定がなされたことを思い出すのがよい。当時の首相(安倍晋三)が、福島第一原子力発電所における事故後の状況は日本政府によって制御されていると断言した後のことだ。今の状況で放射能汚染水を太平洋に捨てなければならないと表明することは、目前に迫った東京オリンピック参加のために到着するアスリートたちの健康を巡って、どうしても、激しい議論を引き起こすことになるため、今打ち出す選択肢としてはこれ以上ないというくらい間が悪いものとなるだろう。例えば、サーフィン競技は福島から250キロ南の太平洋上の釣ヶ崎で行う計画だったし、他にも原発から60キロ以内で想定されていた大会もあった。

 東京オリンピックは、コロナウイルスのパンデミックにより、2020年夏から2021年に延期されたことは誰でも知っている。2021年7月23日から8月8日まで日本で大会が開催される計画だった。

 しかし、最近、東京でのオリンピック開催に関する住民の社会調査を行った共同通信社によると、日本人のほとんどが2021年の開催に反対している。 調査対象となった日本人の39%が開催中止に賛成し、約33%が開催延期に賛成している。また、2021年の夏に世界中から何千人ものアスリートが日本の首都にやってくることに肯定的な日本人は、わずか24.5%だった。

 このような状況の中、日本の新政府(管政権)は、日本の国民がどう思っているのか、の上でバランスを取りながら、オリンピックを中止する客観的な理由を見つけ出し、それを「面目を失わずに」発表する機会を数ヶ月間模索してきた。最終的には、イギリスのThe Times紙が責任ある情報源を引用して報じたように、日本政府は「Covid-19パンデミックのために」東京での夏季オリンピックを中止するという決定へと暗黙のうちに傾いている。そうは言っても2032年のオリンピック開催の権利を主張する心積もりではいる。

 オリンピック開催はしないことは決まりつつあるのだから、福島第一原子力発電所の貯蔵タンクから水を捨てるという決定は、日本政府の代表者たちの心の中でいつまでもぐずぐずしていることはなかった・・・。

 しかし、問題がひとつ残ることになる:この二つのことが決定された後、他ならぬ日本人が、東京オリンピックに参加する選手たちが、そして国際社会が、現在の日本政府をどのように記憶の中に留めるか、ということだ。

Vladimir Odintsov, expert politologist, exclusively for the online magazine ‘New Eastern Outlook’.

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